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【等級別】精神障害者保健福祉手帳のメリットは?1級・2級・3級の基準と受けられるサービスを解説

うつ病や統合失調症、発達障害などの精神的な不調や特性を抱えながら生活する中で、「精神障害者保健福祉手帳」という言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。「手帳を持つと、どんな良いことがあるの?」「そもそも、自分の症状で申請できるのだろうか」「等級によって何が違うの?」「申請するのは大変そうで、一歩が踏み出せない」など、様々な疑問や不安な気持ちがあるかもしれません。

この記事では、精神障害者保健福祉手帳がどのようなものなのか、1級・2級・3級といった等級の具体的な基準、そして手帳を取得することで得られるメリットや福祉サービスについて、深く掘り下げて分かりやすく丁寧に解説します。手帳は、決して「障害者」のレッテルではなく、あなたが社会の中でより安心して、自分らしく生活し、働くための大切なツールです。この記事が、あなたの次の一歩を考えるための、信頼できる情報源になれば幸いです。

精神障害者保健福祉手帳とは?

まずは、この手帳がどのような目的で作られ、誰が対象となるのか、基本的な知識から見ていきましょう。

精神障害のある方の自立と社会参加を支援する制度

精神障害者保健福祉手帳は、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」に基づき、なんらかの精神疾患があるために、長期にわたって日常生活や社会生活に制約がある方に対して交付される、全国共通の証明書です。この手帳を持つことで、障害のある方が様々な支援やサービスを利用しやすくなり、経済的な負担を軽減したり、就労の機会を得たりと、自立した生活を送り、社会へ参加することを後押しすることを目的としています。つまり、単に障害があることを証明するだけでなく、より豊かな社会生活を送るための「パスポート」のような役割を果たします。

対象者と発達障害の扱いについて

手帳の対象となるのは、原則として全ての精神疾患です。具体的には、以下のような疾患が含まれます。

  • 統合失調症
  • うつ病、双極性障害などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
  • 高次脳機能障害(記憶障害、注意障害、遂行機能障害など)
  • 発達障害(ASD、ADHD、学習障害など)
  • その他の精神疾患(PTSD、パニック障害、強迫性障害など)

発達障害の「専用の手帳」はなく、この精神障害者保健福祉手帳の対象に含まれます。また、知的障害(知的発達症)も併せ持っている場合は、「療育手帳」と両方を取得することも可能です。

精神障害者保健福祉手帳の等級(1級・2級・3級)と判断基準

精神障害者保健福祉手帳には、障害の程度に応じて1級、2級、3級の3つの等級があり、受けられるサービスの内容や割引率が変わることがあります。

障害等級の判断基準

等級の判断は、提出された医師の診断書をもとに、「精神疾患の状態」と「能力障害の状態」の2つの側面から総合的に評価されます。

精神疾患(機能障害)の状態
うつ状態や幻覚・妄想、意欲の低下、記憶障害といった、病気の症状そのものの重さ。

 

能力障害(活動制限)の状態
症状によって、日常生活や社会生活を送る能力がどれくらい制限されているかの度合い。

 

特に「能力障害の状態」は、診断書において以下の8項目で具体的に評価され、等級判定の重要な資料となります。

    • 適切な食事摂取
    • 身辺の清潔保持、規則正しい生活
    • 金銭管理と買い物
    • 通院と服薬
    • 他人との意思伝達・対人関係
    • 身辺の安全保持・危機対応
    • 社会的手続きや公共施設の利用
    • 趣味・娯楽への関心、文化的社会的活動への参加

 

【等級別】認定基準の目安

1級の認定基準

「精神障害であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの」と定義されています。他者の援助がなければ、食事や入浴、着替えといった基本的な日常生活を送ることがほとんど不可能な状態を指します。常に誰かの援助が必要で、一人での外出も極めて困難な状態です。

2級の認定基準

「精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は制限を加えることを必要とする程度のもの」と定義されています。必ずしも他者の援助が必要とは限りませんが、一人で安定して日常生活を送ることが難しく、計画的な金銭管理や家事が困難であったり、対人関係のストレスから集団活動に参加できなかったりします。働くことにも大きな支障がある状態とみなされます。

3級の認定基準

「精神障害であって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、又は制限を加えることを必要とする程度のもの」と定義されています。日常生活は概ね自立して送れますが、職場での急な予定変更への対応や、複雑な対人関係の調整などにうまく対処できず、働く上で一定の配慮が必要な状態です。

手帳の取得で受けられるメリット・福祉サービス

手帳を取得することで、経済的な負担の軽減や、就労の機会拡大など、生活の安定につながる様々なメリットを受けることができます。

① 税金の控除・減免

手帳を持っている本人、またはその人を扶養している家族は、所得税や住民税の「障害者控除」を受けることができます。会社員の場合は年末調整で、自営業の方などは確定申告で手続きを行います。

 

障害の区分 所得税の控除額 住民税の控除額
特別障害者 (1級) 40万円 30万円
同居特別障害者 75万円 53万円
普通障害者 (2級・3級) 27万円 26万円

※「同居特別障害者」とは、納税者自身または配偶者、扶養親族が1級の手帳を持ち、常に同居している場合を指します。このほか、相続税や贈与税、自動車税などの減免制度もあります。

② 公共料金や施設の割引

公共料金
NHK放送受信料が等級や世帯の課税状況により半額または全額免除されます。また、自治体によっては上下水道料金が割引になる場合があります。

 

公共交通機関
都営交通や多くの自治体のバス・路面電車などで、運賃の割引が受けられます。タクシーも多くの会社で1割引になります。

 

公共施設など
美術館、博物館、動物園、映画館などの入場料が割引または無料になる場合があります。

 

携帯電話料金
大手携帯電話会社では、基本使用料などが割引になる障害者割引サービスがあります。

 

③ 医療費の助成

精神科への通院医療費の自己負担を原則1割に軽減する「自立支援医療(精神通院医療)」に加え、自治体によっては独自の「心身障害者医療費助成制度」を設けている場合があります。これは、健康保険を使って医療機関にかかった際の自己負担分(1割〜3割)を、さらに助成してくれる制度です。対象となる障害等級や所得制限は自治体によって異なるため、お住まいの市区町村のウェブサイトなどでご確認ください。

④ 就労に関する支援

働く意欲のある方にとって、就労面でのサポートは非常に大きなメリットです。

障害者雇用枠への応募
一般の採用枠とは別に、障害者手帳を持つ人を対象とした「障害者雇用枠」に応募できます。企業から障害への「合理的配慮」(業務内容の調整、通院への配慮など)を受けながら働けるため、安定して長く働きやすいという利点があります。

 

就労支援サービスの利用
一般企業への就職を目指す「就労移行支援」や、支援を受けながら働ける「就労継続支援(A型・B型)」といった、専門的な福祉サービスを利用できます。

 

精神障害者保健福祉手帳の申請・更新手続き

ここでは、実際に手帳を申請したり、更新したりする際の、具体的な流れとポイントを解説します。

申請から交付までの基本的な流れ

    1. 市区町村の窓口で相談・書類入手
      お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、申請書と診断書の用紙を受け取ります。
    2. 主治医に診断書の作成を依頼
      かかりつけの精神科の主治医に、手帳申請用の診断書の作成を依頼します。
    3. 必要書類を窓口に提出
      申請書、診断書、顔写真、マイナンバーがわかるものなどを揃えて、再度窓口に提出します。
    4. 審査・交付
      都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターで審査が行われ、交付が決定すると自宅に通知が届き、窓口で手帳を受け取ります。審査には1〜2ヶ月程度かかります。

 

申請の重要ポイント:診断書の依頼方法

等級は診断書の内容に大きく左右されるため、医師に自分の状態を正確に伝えることが非常に重要です。しかし、診察の短い時間で全てを話すのは難しいものです。そこで、事前に「日常生活での困りごと」をメモにまとめて医師に渡すことをお勧めします。特に、前述の「能力障害の8項目」に沿って、各項目で「できること」「助けがあればできること」「できないこと」を具体的に書き出しておくと、医師が診断書を作成する際の大きな助けとなり、実態に即した等級判定につながりやすくなります。

有効期限と更新手続き・不服申し立て

手帳の有効期限は交付日から2年間で、継続して利用するには2年ごとの更新が必要です。更新申請は有効期限の3ヶ月前から可能で、原則として診断書の再提出が必要になります。万が一、決定された等級に納得がいかない場合は、結果を知った日の翌日から3ヶ月以内であれば、都道府県知事に対して不服申し立て(審査請求)を行うこともできます。

手帳を持つことのデメリットはある?

手帳を持つこと自体に制度上の明確なデメリットは基本的にありません。手帳を持っていることを自分から伝えなければ他人に知られることはありませんし、サービスを利用するかどうかも本人の自由です。ただし、以下のような点をデメリットと感じるかもしれません。

    • 申請・更新の手間と費用
      役所での手続きや、診断書の作成費用(数千円程度)がかかります。
    • 心理的な抵抗感
      「障害者」というレッテルを貼られるようで抵抗を感じる方もいます。しかし近年は、プライバシーに配慮し、障害名などが記載されないカード形式の手帳を選択できる自治体も増えています。
    • 保険加入への影響
      民間の生命保険や住宅ローンでは、加入が難しくなったり、条件が付いたりする場合があります。

 

手帳取得を機に自分らしい働き方を 就労継続支援B型事業所オリーブで

精神障害者保健福祉手帳の取得は、あなたの生活を支え、可能性を広げるための一つの有効な手段です。特に「働く」ということについて、手帳があることで、これまで諦めていた選択肢が見えてくるかもしれません。手帳は、あなたを定義するラベルではなく、新しい扉を開けるための「鍵」なのです。「障害者雇用に興味はあるけれど、すぐに企業で働くのは不安」「まずは自分のペースで働くことに慣れ、自信を取り戻したい」と感じている方は、就労継続支援B型事業所オリーブで、働く準備を始めてみませんか。

オリーブでは、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方々が、それぞれの体調やペースを大切にしながら、データ入力や軽作業などの仕事に取り組んでいます。雇用契約を結ばないため、週1日・短時間からでも利用でき、安定した生活リズムを作りながら、働くことへの自信と喜びを育んでいくことができます。手帳の取得を機に、ご自身の新しい可能性を探したい方は、ぜひ一度、お近くのオリーブへ見学・相談にお越しください。

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