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日本のカウンセリング利用率はなぜ6%?我慢の文化がもたらす危機と相談の重要性

あなたは、心の中にモヤモヤとした悩みを抱えながらも、「これくらいで相談するのは大げさかもしれない」「誰かに話しても迷惑をかけるだけ」と、一人で抱え込んでいませんか?

実は、日本でカウンセリングなどの心理的なサポートを利用したことがある人は、わずか6%程度だと言われています。これは、欧米諸国の利用率が50%近いのと比べると、驚くほど低い数値です。背景には、「弱音を吐くべきではない」という我慢の文化や、精神科・カウンセリングへの根強い偏見があると考えられます。

しかし、その「我慢」が、知らず知らずのうちに心を追い詰め、社会全体にも大きな損失をもたらしているとしたらどうでしょうか。

この記事では、日本のカウンセリング利用率が低い現状とその背景にある要因を、客観的なデータと共に解き明かしていきます。さらに、一人で悩みを抱え込むことのリスクや、もっと気軽に相談するための具体的な方法、そして私たち就労継続支援B型事業所のような身近な相談先についてご紹介します。この記事を読み終える頃には、専門家への相談が特別なことではないと理解でき、あなたに合った第一歩を踏み出すためのヒントが見つかるはずです。

日本のカウンセリング利用率の現状

海外と比較して著しく低い利用率

日本のメンタルヘルスケアへのアクセスは、他の先進国と比較して大きな課題を抱えています。経済協力開発機構(OECD)の調査によると、うつ病や不安障害などで専門家の診察や治療を受けた人の割合は、欧米の多くの国で30%〜50%にのぼるのに対し、日本は10%にも満たないというデータがあります。

カウンセリングの利用経験者に絞るとその割合はさらに低く、ある調査では約6%という結果も出ています。多くの人が心に不調を感じながらも、専門的なサポートに繋がることができていないのが日本の現状です。気軽に心療内科を受診したり、カウンセラーに相談したりすることが文化として根付いている国々と比べ、日本には心理的なサポートを受けることへの高いハードルが存在していると言えるでしょう。

メンタルヘルスの不調を抱える人の割合

カウンセリングの利用率は低い一方で、日本で心の不調を抱える人の割合は決して少なくありません。厚生労働省が実施した「労働安全衛生調査」によると、現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合は、8割を超えています

特に近年は、新型コロナウイルス感染症の拡大や社会経済状況の変化により、多くの人が将来への不安や孤独を感じやすい状況にあります。実際に、コロナ禍以降、子どものうつや不安が増加しているという調査報告もあり、メンタルヘルスの問題は全世代的な課題となっています。これほど多くの人がストレスや悩みを抱えているにもかかわらず、その多くが専門的なケアにつながっていない。このギャップこそが、日本のメンタルヘルスにおける最も大きな課題の一つです。

なぜカウンセリングの利用が進まないのか その背景にある要因

なぜ日本では、これほどまでにカウンセリングの利用が進まないのでしょうか。その背景には、単に個人の意識の問題だけでなく、文化や社会構造に根差した複数の要因が複雑に絡み合っています。

文化的背景としての「我慢」の価値観

他人に弱みを見せることへの抵抗感

日本の社会には、古くから「我慢は美徳」「人に迷惑をかけてはいけない」といった価値観が根付いています。辛いことや苦しいことがあっても、それを表に出さず、自分の力で乗り越えることが一人前である、という考え方です。この文化は、協調性を重んじ、社会の調和を保つ上で良い面に働くこともあります。しかし、ことメンタルヘルスの問題においては、「悩みを相談すること=弱みを見せること、人に迷惑をかけること」という意識に繋がりやすく、助けを求めることへの強い抵抗感を生み出す原因となっています。

「気の持ちよう」で解決しようとする風潮

精神的な不調は、医学的なアプローチが必要な状態であるにもかかわらず、「気の持ちよう」「根性が足りない」といった精神論で片付けられてしまうことが少なくありません。特に、上の世代などではその傾向が強く、家庭や職場で悩みを打ち明けても、「誰でも辛いことはある」「もっと頑張れば乗り越えられる」といった言葉で返されてしまい、適切なサポートに繋がれないケースが見られます。こうした風潮が、当事者をさらに孤立させ、相談する意欲を削いでしまうのです。

精神科やカウンセリングへの偏見と誤解

特別な人が行く場所というイメージ

「精神科やカウンセリングは、精神的に非常に重い病気の人が行く場所だ」というイメージも、利用のハードルを高くしている一因です。風邪を引いたら内科に行くように、心の不調を感じたら気軽に専門家を頼る、という感覚がまだ一般的ではありません。「自分は病気ではない」「こんなことで相談するのは大げさだ」といった思い込みが、早期相談の機会を逃すことに繋がっています。実際には、病気かどうかに関わらず、キャリアの悩みや人間関係のストレス、漠然とした不安など、幅広いテーマでカウンセリングは活用されています。

キャリアへの影響を懸念する声

特に働く世代にとって、精神科やカウンセリングに通っていることが、職場での評価や今後のキャリアに悪影響を及ぼすのではないか、という不安は根強いものがあります。通院の事実を知られることへの恐れや、昇進・昇格に不利になるのではないかという懸念から、会社に知られずに一人で問題を抱え込もうとする人は少なくありません。こうした不安は、オープンに助けを求められる職場環境が十分に整備されていないことの裏返しとも言えるでしょう。

経済的な負担とアクセスの問題

カウンセリングは保険適用外が基本

日本の医療保険制度では、精神科や心療内科での「診察」は保険適用となりますが、臨床心理士や公認心理師による「カウンセリング」は、原則として保険適用外(自費診療)となります。1回あたりの料金相場は5,000円から15,000円程度と比較的高額であり、継続的に利用するとなると経済的な負担は決して軽くありません。この費用面でのハードルが、カウンセリングの利用をためらわせる大きな要因となっています。

どこに相談先があるかわからない

そもそも、自分の悩みに合った相談先がどこにあるのか、情報自体が不足しているという問題もあります。公的な相談窓口、医療機関、民間のカウンセリングルーム、NPO法人など、相談先は多岐にわたりますが、それぞれの特徴や違いが分かりにくく、自分に合った場所を見つけ出すのが困難な状況です。インターネットで検索しても情報が多すぎたり、逆に地域によっては相談機関の数が限られていたりするため、適切なサポートにたどり着く前に諦めてしまう人も少なくありません。

カウンセリング利用率の低さがもたらす静かな危機

カウンセリングの利用率が低いという事実は、単に「悩みを相談する人が少ない」というだけでは終わりません。その背後では、個人、そして社会全体に静かな危機が進行しています。

個人のメンタルヘルス悪化と孤立

適切な時期に専門家のサポートを受けられないことで、うつ病や不安障害といった精神疾患の症状が悪化してしまうリスクが高まります。風邪のひき始めに休めばすぐに治るものが、無理を続けることで肺炎になってしまうのと同じです。症状が悪化すると、休職や離職を余儀なくされたり、友人や家族との関係がうまくいかなくなったりと、社会的な孤立に繋がることも少なくありません。誰にも相談できないまま一人で苦しみを抱え、次第に社会との接点を失っていくという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

生産性の低下による社会経済的な損失

個人の問題は、社会全体の問題にも直結します。特に企業活動において、従業員のメンタル不調は大きな経済的損失を生み出します。

注目されているのが「プレゼンティーイズム」という概念です。これは、出勤はしているものの、心身の不調が原因で本来のパフォーマンスを発揮できない状態を指し、欠勤(アブセンティーイズム)よりも企業に与える損失が大きいと言われています。ある調査では、メンタル不調によるプレゼンティーイズムなどの社会的コストが、日本全体で年間10兆円以上にのぼるとの推計もあります。従業員が気軽に相談できる環境を整えることは、個人の健康を守るだけでなく、企業の生産性を維持・向上させ、日本経済全体を活性化させる上でも不可欠な「健康投資」なのです。

問題の深刻化と二次障害のリスク

メンタルヘルスの問題が未治療のまま放置されると、より深刻な問題へと発展する「二次障害」のリスクも高まります。例えば、うつ病による気分の落ち込みや不安を紛らわすために、アルコールや薬物への依存が始まってしまうケースがあります。また、社会への恐怖心から長期的なひきこもり状態に陥ったり、不安障害がパニック障害や摂食障害などを併発したりすることもあります。早期に適切なケアに繋がっていれば防げたかもしれない問題が、我慢や孤立によってより複雑で解決困難な状態になってしまうのです。

我慢しないで相談するための第一歩

「我慢しないで」と言われても、すぐに相談するのは勇気がいるかもしれません。しかし、心の負担を軽くするための選択肢は、あなたが思っているよりも身近に、そして多様に存在します。ここでは、相談への第一歩を踏み出すための具体的なヒントをご紹介します。

カウンセリングの種類と自分に合う選び方

カウンセリングには様々なアプローチがあります。自分の悩みや目的に合わせて選ぶことが大切です。

カウンセリングの種類 特徴 こんな人におすすめ
認知行動療法(CBT) 物事の受け取り方(認知)や行動のパターンに働きかけ、ストレスを軽減する具体的な方法を学ぶ。 ・考え方の癖を直したい

・うつ病や不安障害で悩んでいる

・具体的な問題解決スキルを身につけたい

来談者中心療法 カウンセラーが共感的に話を聴くことを重視し、相談者自身が自分の力で問題解決できるようサポートする。 ・まずはじっくり話を聞いてほしい

・自分の気持ちを整理したい

・自己肯定感を高めたい

精神分析的心理療法 意識下の心の動き(無意識)に焦点を当て、現在の問題が過去の経験とどう結びついているかを探る。 ・自分の問題を深く掘り下げたい

・同じような対人関係のパターンを繰り返してしまう

カウンセラーを選ぶ際は、「臨床心理士」や「公認心理師」といった信頼できる資格を持っているかを確認するのも一つのポイントです。また、カウンセラーとの相性も非常に重要なので、初回はお試しで受けてみるのも良いでしょう。

費用負担を軽減する公的支援や制度

カウンセリングの経済的な負担を軽減するための公的な制度も存在します。

自立支援医療(精神通院医療)
精神疾患の治療のために継続的に通院が必要な場合、医療費の自己負担額が原則1割に軽減される制度です。カウンセリングが治療の一環として医師の指示で行われる場合などに適用される可能性があります。
自治体の相談窓口
多くの市区町村では、保健所や精神保健福祉センターなどで無料のカウンセリングや相談会を実施しています。回数に制限がある場合が多いですが、最初の相談先として気軽に利用できます。
企業のEAP(従業員支援プログラム)
お勤めの会社によっては、提携しているカウンセリング機関で無料または割引価格で相談できる制度(EAP)を導入している場合があります。プライバシーは守られるので、人事部や福利厚生の案内を確認してみましょう。

これらの制度をうまく活用することで、経済的な心配をせずに専門家のサポートを受ける道が開けます。

身近な相談先としての就労継続支援B型事業所

医療機関やカウンセリングルームに行くのはまだハードルが高い、と感じる方もいるかもしれません。そんな方にとって、「就労継続支援B型事業所」が身近な相談場所になることをご存知でしょうか。

就労継続支援B型事業所は、障害や心身の不調を抱える方が、自分のペースで軽作業などを行いながら工賃を得られる福祉サービスです。しかし、その役割は単に「働く場所」だけではありません。

多くの事業所には、利用者の悩みや不安に寄り添う「支援員」が常駐しています。日々の作業のこと、人間関係のこと、将来のことなど、心の中にあるモヤモヤを気軽に話せる相手がいることは、大きな安心感に繋がります。医療機関ではありませんが、福祉の専門家がいる「信頼できる居場所」として、社会との繋がりを保ちながら心を回復させていく場でもあるのです。

一人で抱え込まずオリーブで悩みを話してみませんか

もしあなたが、一人で悩みを抱え、社会との繋がりや働くことへの一歩を踏み出せずにいるのなら、私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」で、その気持ちを話してみませんか?

専門スタッフによる個別相談とサポート体制

オリーブには、障害福祉の経験が豊富な支援員が在籍しています。私たちは、あなたの話にじっくりと耳を傾け、一人ひとりの個性や体調に合わせた「個別支援計画」を作成します。画一的なサポートではなく、あなた自身がどうなりたいかを尊重し、目標達成に向けて一緒に歩んでいくパートナーでありたいと考えています。日々の小さな不安から、将来のキャリアに関する悩みまで、どんなことでも安心してご相談ください。

自分のペースで通える安心できる環境

オリーブの最大の特長は、無理なく自分のペースで通えることです。「毎日通うのはまだ自信がない」という方でも、週に1日、半日だけの利用からスタートできます。まずは安定して通える場所、安心して過ごせる居場所を見つけることが、次へのステップに繋がると私たちは信じています。同じような経験や悩みを持つ仲間と出会えることも、きっとあなたの心を軽くしてくれるはずです。

まずは見学からお気軽にお問い合わせください

コラムを読んで、「少し話を聞いてみたい」「事業所の雰囲気を見てみたい」と感じていただけたら、ぜひ一度、お気軽に見学にいらしてください。見学や個別相談は無料で、無理な勧誘は一切ありません。あなたの悩みを、私たちに少しだけ分けていただけませんか。ご連絡を心よりお待ちしています。

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