
近年、大きな注目を集めている「eスポーツ」。単なるゲームとしてだけでなく、年齢や性別、そして障害の有無を問わず、誰もが同じ舞台で競い合える新たなスポーツとして、その可能性を大きく広げています。特に、障害のある方々にとっては、これまでになかった新しい働き方や社会参加の形を生み出す力強い選択肢となりつつあります。
デジタル空間を舞台とするeスポーツは、物理的な制約が少なく、発達障害の特性である高い集中力などが「強み」として発揮されやすい世界です。すでに多くの企業が障害者アスリートを雇用する「eスポーツ実業団」を設立し、就労継続支援事業所でも新たな仕事として導入する動きが活発化しています。
この記事では、eスポーツがなぜ障害者雇用や就労支援の現場で注目されているのか、その理由と具体的な事例、そして未来の可能性について詳しく解説します。あなたの「好き」や「得意」が、新しい仕事につながるヒントがここにあります。
障害の有無を超えて競えるeスポーツの世界
近年、急速にその市場を拡大し、文化として根付き始めたeスポーツ。まずは、その基本的な概念と、なぜ障害のある人々の活躍の場として注目されているのかを見ていきましょう。
市場が拡大するeスポーツとは
eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)とは、コンピューターゲームやビデオゲームを使った対戦を、スポーツ競技として捉える際の名称です。国内外で大規模な大会が開催され、高額な賞金がかけられるなど、その市場規模は年々拡大を続けています。
もはや単なる「ゲーム」や「遊び」ではなく、高度な戦略性、チームメンバーとの連携、そして一瞬の判断力と精密な操作が求められる、れっきとした「競技」なのです。多くの観客を熱狂させるエンターテイメントでもあり、ひとつの巨大な産業として成長しています。
デジタル空間だから生まれるバリアフリーな環境
eスポーツの最大の魅力の一つは、その「バリアフリー性」にあります。競技の舞台は、インターネットを介したデジタル空間。そのため、性別や年齢、国籍、そして身体的なハンディキャップといった物理的な垣根を越えて、誰もが同じ土俵で競い合うことが可能です。
例えば、車いすを使っている人も、義足を使っている人も、あるいは対面でのコミュニケーションに苦手意識がある人も、アバター(自分の分身となるキャラクター)を介してフラットな関係性を築き、チームの一員として活躍することができます。このインクルーシブな環境こそが、eスポーツが障害のある方々の新たな可能性を切り拓く舞台として期待される大きな理由です。
なぜeスポーツで障害が「個性」になるのか
eスポーツの世界では、これまで「障害」と捉えられがちだった特性が、競技においてユニークな「個性」や「強み」に変わり得ます。その理由を、競技の特性や実際に活躍する選手の事例から探ります。
身体的なハンディキャップが影響しにくい競技性
多くのeスポーツタイトルは、勝敗を決する要素が、コントローラーやマウス、キーボードを操る指先の精密な動き、瞬時の判断力、そして戦略的な思考力に集約されています。全身をダイナミックに使うフィジカルスポーツとは異なり、身体能力の差が勝敗に直結しにくいのが特徴です。
このため、身体に障害があっても、練習と戦略次第で健常者と対等以上に渡り合うことが可能です。むしろ、限られた身体機能を最大限に活用する集中力や工夫が、他のプレイヤーにはない独自のプレイスタイルを生み出すことさえあります。
集中力や戦略的思考が強みになる
特に、発達障害のある方の中には、特定の物事に対して驚異的な集中力を発揮する「過集中」という特性を持つ人がいます。eスポーツは、長時間にわたって高い集中力を維持することが求められるため、この特性が大きなアドバンテージとなり得ます。
また、複雑なゲームのルールやデータを記憶し、論理的に戦略を組み立てる能力に長けている人も少なくありません。こうした情報処理能力や戦略的思考力は、eスポーツにおいて勝利を掴むための重要な武器となります。これまで社会生活で困難を感じていた特性が、eスポーツの世界では高く評価される「才能」に変わるのです。
障害のあるプロ選手の活躍事例
世界に目を向ければ、障害を乗り越えて活躍するプロのeスポーツ選手は数多く存在します。彼らは、特別なデバイスを駆使したり、独自のプレイスタイルを確立したりすることで、健常者のトッププレイヤーと互角以上の戦いを繰り広げ、多くの人々に勇気と感動を与えています。
日本でも、障害のある当事者がeスポーツの大会で活躍したり、その経験を発信したりするケースが増えています。こうしたロールモデルの存在は、「障害があっても夢を諦める必要はない」という力強いメッセージとなり、後に続く人々の道を切り拓いています。
eスポーツが生み出す新たな障害者雇用の形
eスポーツの可能性は、個人の活躍の場にとどまりません。企業における新しい障害者雇用の形や、福祉事業所での新たな仕事として、具体的な動きが始まっています。
企業の「eスポーツ実業団」という選択肢
近年、企業のDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進の一環として、障害のある選手が所属する「eスポーツ実業団」を設立する動きが活発化しています。例えば、NTT東日本は、eスポーツを活用した新たな障害者雇用の支援を開始し、障害のある選手をアスリートとして雇用しています。
選手たちは、企業のバックアップのもとで練習に打ち込み、大会に出場します。これは、企業にとっては社会貢献やイメージ向上につながるだけでなく、障害のある選手にとっては「好き」を仕事にし、安定した収入を得ながら夢を追うことができる、画期的な働き方と言えるでしょう。
プロ選手だけではない多様な職種
eスポーツの世界で求められる役割は、プレイヤーだけではありません。むしろ、その周辺には多岐にわたる仕事が存在し、多様なスキルや特性を活かすチャンスが広がっています。
イベント運営や動画配信
eスポーツ大会の企画・運営、当日の会場設営やオンライン配信の技術サポート、実況・解説など、イベントを裏で支える仕事は数多くあります。動画編集やデザインのスキルがある人、企画を考えるのが好きな人などが活躍できる分野です。
チームマネジメントと広報活動
プロチームの運営には、選手のスケジュール管理や練習環境の整備を行うマネージャー、チームの魅力をSNSなどで発信する広報担当、スポンサーを獲得するための営業担当など、ビジネスサイドの役割も不可欠です。コミュニケーション能力や管理能力が活かせます。
このように、プレイヤー以外の多様な関わり方ができる点も、eスポーツが就労の選択肢として大きな可能性を秘めている理由です。
就労継続支援B型事業所での取り組み
eスポーツを活動として取り入れ、利用者の工賃向上や新たなやりがいにつなげようとする就労継続支援事業所も増えています。事業所内でチームを組み、大会に出場したり、動画配信で収益を得たりと、その活動は様々です。
ゲームを通じて、チームで協力する大切さや、目標に向かって努力する楽しさを学ぶことができます。また、パソコンの操作スキルやコミュニケーション能力が自然と身につくため、将来の一般就労に向けたステップアップにも繋がります。「ゲームが仕事になる」という新しい価値観は、福祉の現場にも着実に広がりつつあります。
eスポーツ就労の課題と未来
多くの可能性を秘めるeスポーツ就労ですが、誰もが活躍できる環境を実現するためには、まだいくつかの課題も残されています。
アクセシビリティと専用デバイスの開発
eスポーツのバリアフリー性は高いものの、すべての人が既存のコントローラーやデバイスでプレイできるわけではありません。例えば、視覚に障害がある人や、四肢の動きに重い制約がある人にとっては、まだ参加へのハードルが存在します。
現在、こうした課題を解決するため、音声を頼りにプレイできるゲームや、視線入力、あるいは手や足の一部だけで操作できる特殊なコントローラーの開発が進められています。テクノロジーの進化が、eスポーツのインクルーシブな環境をさらに押し広げていくことが期待されます。
社会的な認知と理解の促進
日本社会においては、まだ「ゲームは遊びであり、仕事ではない」という固定観念が根強く残っているのも事実です。eスポーツが、障害のある人々の社会参加や経済的自立を支える重要な選択肢の一つとして広く認知されるためには、企業や社会全体のさらなる理解促進が不可欠です。
障害のある選手たちの活躍や、eスポーツがもたらすポジティブな影響を継続的に発信していくことで、社会の意識を変えていく必要があります。外務省の公式サイトで日本の取り組みが世界に発信されるなど、公的な認知も高まりつつあります。
あなたの「好き」を仕事に オリーブで活躍の舞台を見つけよう
eスポーツの世界が示すように、「好き」という気持ちや、一見すると仕事とは無関係に思える得意なことが、新しい働き方やあなたの可能性を切り拓くことがあります。就労継続支援B型事業所オリーブは、まさにそうした一人ひとりの「個性」が輝く場所です。
一人ひとりの興味や個性を尊重した作業提供
オリーブでは、eスポーツのように夢中になれることを見つけてほしいという想いから、多種多様な作業をご用意しています。パソコンを使ったデータ入力やデザイン作業、集中して取り組める軽作業、自分のペースで進められる創作活動など、あなたの興味や関心、得意なことに合わせて仕事を選ぶことができます。
PCスキルやコミュニケーション能力の向上
eスポーツチームが連携して勝利を目指すように、オリーブでの仕事も仲間と協力しながら進める場面が多くあります。日々の作業やスタッフとのコミュニケーションを通じて、PCスキルはもちろん、チームで働く上で必要なコミュニケーション能力や協調性を自然と身につけることができます。これは、あなたの将来の可能性を大きく広げる力になります。
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