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「見えない障害」とは?職場で理解されない困難と上手な伝え方・求められる配慮

「仕事で疲れやすいのは、自分の努力が足りないからだ」「周りの人と同じようにできないのは、甘えているだけかもしれない」

このように、ご自身のことを責めてしまっていませんか? もしかしたら、その困難はあなたの性格や努力の問題ではなく、「見えない障害」が原因かもしれません。

「見えない障害」とは、外見からは分かりにくいため、周囲から理解されにくく、職場で「怠けている」「やる気がない」といった誤解を受けてしまうことがあります。その結果、一人で悩みを抱え込み、無理をして働き続けてしまう方も少なくありません。

この記事では、「見えない障害」とは具体的にどのようなものかを解説し、当事者が職場で直面しやすい困難や、周囲に上手に伝えて必要な配慮を得るための工夫について詳しくご紹介します。

もしあなたが今、職場で働きづらさを感じているなら、この記事がきっと解決のヒントになるはずです。安心して働ける環境を見つけるための一つの選択肢として、就労継続支援B型事業所の役割についても触れていきますので、ぜひ最後までご覧ください。

「見えない障害」とは 外見からは分かりにくい困難のこと

「見えない障害」とは、その名の通り、外見からでは分かりにくい障害や疾患の総称です。車いすの利用や白杖の使用のように、一目で分かる身体的な特徴がないため、本人が困難を抱えていることが周囲に伝わりにくいという特徴があります。

体力がない、疲れやすい、集中力が続かない、特定の音や光がひどく苦痛に感じるなど、抱える困難は人それぞれです。しかし、その辛さが見た目に現れないため、周囲からは「普通に見える」のに、なぜできないのかと理解されず、苦しんでいる方が多くいらっしゃいます。

見えない障害の具体例

見えない障害には、さまざまな種類があります。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。これらは単独で存在する場合もあれば、複数が併存している場合もあります。

精神障害や発達障害

精神障害
うつ病、双極性障害、統合失調症、不安障害、パニック障害などが含まれます。気分の浮き沈み、意欲の低下、集中力の散漫、強い不安感などの症状により、継続して働くことが困難になる場合があります。症状には波があり、調子の良い日と悪い日の差が激しいことも特徴です。
発達障害
自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などが挙げられます。対人関係の構築、コミュニケーション、タスク管理、読み書き計算など、特定の分野に困難を抱えることがあります。得意なことと苦手なことの差が非常に大きいことも特徴の一つです。

内部障害や難病

内部障害
心臓、腎臓、呼吸器、膀胱・直腸、小腸、肝臓などの内部器官の機能に障害がある状態です。例えば、心臓機能障害による息切れや疲れやすさ、腎臓機能障害による定期的な透析治療の必要性などが挙げられます。外見上は健康に見えても、長時間の勤務や体力的に負担の大きい作業が難しい場合があります。
難病
原因が不明で治療法が確立されていない疾患のことです。例えば、全身に痛みが生じる線維筋痛症、炎症性腸疾患であるクローン病、筋力が低下していく筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、多岐にわたります。症状の現れ方や進行度合いは人それぞれで、日によって体調が大きく変動することも少なくありません。

高次脳機能障害や感覚過敏

高次脳機能障害
病気や事故で脳に損傷を受けた後遺症として、記憶力、注意力、遂行機能(計画を立てて実行する能力)などに障害が生じる状態です。「新しいことを覚えられない」「同時に二つのことに注意を向けられない」「感情のコントロールが難しい」といった症状が見られます。
感覚過敏
特定の感覚情報(音、光、匂い、触覚など)を過剰に強く感じてしまい、心身に大きな負担がかかる状態です。例えば、オフィスの蛍光灯が眩しすぎて集中できない、キーボードのタイピング音が気になって仕事にならない、特定の衣服の素材が肌に触れると痛みを感じる、といった困難が生じます。

「怠けている」「わがまま」と誤解されやすい現実

見えない障害を持つ人が職場で最も苦しむことの一つが、周囲からの誤解です。外見からは困難が分からないため、体調不良による休憩や、苦手な業務を避ける様子が、単なる「怠け」や「わがまま」と捉えられてしまうのです。

例えば、

  • うつ病で朝起き上がれず遅刻してしまうと、「自己管理ができていない」
  • ADHDの特性でうっかりミスが多いと、「仕事へのやる気がない」
  • 感覚過敏でイヤーマフをしていると、「協調性がない」
  • 内部障害で疲れやすく、頻繁に休憩を取っていると、「すぐにサボろうとする」

といったように、本人の努力や意思の問題にすり替えられてしまうケースが後を絶ちません。こうした誤解は、当事者を精神的に追い詰め、症状の悪化や二次障害(うつ病や不安障害など)を引き起こす原因にもなりかねません。

働く上で直面する「見えない障害」ならではの困難

見えない障害を持つ人は、その特性ゆえに、一般の職場環境で働く上で特有の困難に直面することがあります。ここでは、代表的な4つの困難について解説します。

体調の波や症状の変動を説明しにくい

見えない障害の多くは、日や時間帯によって症状が変動する「波」があります。昨日まで元気に仕事ができていたのに、今日はベッドから起き上がれないほど体調が悪い、ということも珍しくありません。

この「波」は、天候や気圧の変化、ストレス、疲労の蓄積など、様々な要因で起こります。しかし、常に一定のパフォーマンスを求められる職場において、「今日は調子が悪いのでできません」と説明することは非常に困難です。

周囲からは「昨日できていたのになぜ?」「気分の問題では?」と理解されにくく、自分自身でも体調をコントロールできないことへの罪悪感や焦りを感じてしまいます。この状況が、安定して働き続ける上での大きな障壁となります。

周囲の理解を得られず孤立しやすい

自分の障害や症状について勇気を出して伝えても、十分に理解してもらえないケースも少なくありません。「誰でも疲れることはあるよ」「考えすぎじゃない?」といった言葉に傷つき、次第に自分の困難を話すことを諦めてしまう人もいます。

また、必要な配慮を求めた結果、他の同僚から「あの人だけ特別扱いされている」と嫉妬や不満の対象にされてしまうこともあります。

誰にも相談できず、理解も得られない状況は、職場での孤立感を深めます。コミュニケーションが取りづらくなると、業務上の連携にも支障をきたし、さらに働きづらい環境に陥ってしまうという悪循環が生まれます。

障害を隠して無理に働いてしまう「セルフクローゼット」

「セルフクローゼット」とは、障害があることを職場に開示せず(クローズ)、障害がないかのように振る舞って働く状態を指します。障害者手帳を持たずに一般枠で就職した場合や、手帳は持っていても職場には伝えていない場合などがこれにあたります。

なぜセルフクローゼットを選ぶのか。その背景には、「障害があることを知られたら、採用されないかもしれない」「仕事で不利な扱いを受けるのではないか」「偏見の目で見られたくない」といった切実な不安があります。

しかし、障害を隠して働くことは、常に自分の特性を抑制し、無理をし続けることを意味します。苦手な業務も一人で抱え込み、体調が悪くても我慢して出勤する。このような状態は心身に極度の緊張と疲労を強いるため、いずれ限界が来てしまい、休職や離職につながるリスクが非常に高くなります。

合理的配慮を求めることへのためらい

2024年4月から、事業者による障害者への「合理的配慮」の提供が義務化されました。合理的配慮とは、障害のある人が他の人と同じように働けるよう、職場環境や業務内容を調整することです。

しかし、制度として義務化されても、当事者が配慮を求めることには依然として高いハードルが存在します。

  • 「そもそも、何をどうお願いすれば良いのか分からない」
  • 「こんなことをお願いしたら、わがままだと思われるのではないか」
  • 「会社に迷惑をかけてしまうのではないか」

といったためらいや不安から、声を上げられない人が多くいます。本来は、事業者と障害のある人が話し合い(建設的対話)を通じて、お互いにとって過重な負担にならない範囲で配慮内容を決めていくものですが、その第一歩を踏み出すことに大きな勇気が必要なのが現状です。

見えない障害と共に働くための工夫と伝え方

職場で働きづらさを感じている場合でも、いくつかの工夫によって状況を改善できる可能性があります。重要なのは、一人で抱え込まず、適切な方法で周囲に助けを求めることです。

診断名より「必要な配慮」を具体的に伝える

上司や同僚に自分の状況を伝える際、ただ「〇〇障害です」と診断名だけを伝えても、相手はどう対応して良いか分からず、戸惑わせてしまうことがあります。大切なのは、「診断名」よりも「特性によって何が苦手か」そして「そのために、どうしてほしいか」を具体的に伝えることです。

【伝え方の具体例】

苦手なこと(事実) してほしい配慮(希望)
一度に多くの指示を覚えるのが苦手です。 指示は一つずつ、メモを取る時間をいただけますか?
周囲の雑音が気になって集中できません。 可能であれば、パーテーションのある席や、電話から離れた席に移動させていただけますか?
急な予定変更があると混乱してしまいます。 変更がある場合は、できるだけ早めにチャットなどで知らせていただけますか?
疲れが溜まりやすく、午後に集中力が切れがちです。 1時間に5分程度の短い休憩を取らせていただけますか?
人の多い場所に行くと、気分が悪くなることがあります。 時差出勤や、一部テレワークを認めていただくことは可能でしょうか?

このように、「事実」と「希望」をセットで伝えることで、相手は何をすれば良いのかが明確になり、配慮を受け入れやすくなります。

ヘルプマークやサポートカードの活用

言葉で説明するのが難しい場合や、緊急時に備えたい場合には、ヘルプマークやサポートカードを活用するのも有効な方法です。

ヘルプマーク
外見からは分かりにくい障害や疾患のある人が、周囲に配慮を必要としていることを知らせるためのマークです。自治体の障害福祉担当窓口や、一部の駅などで無料で配布されています。カバンなどにつけておくことで、いざという時に周囲の助けを得やすくなります。
サポートカード(援助要請カード)
自分の障害特性、緊急連絡先、してほしい配慮などを書き込んで携帯するカードです。体調が急に悪くなった時や、パニックになった時に、このカードを見せることで、自分の状況を的確に伝え、適切なサポートを求めることができます。

これらのツールは、言葉を発することが難しい状況でも、あなたの代わりに必要な情報を伝えてくれる心強い味方になります。

信頼できる上司や同僚に相談する

職場全体にカミングアウトすることに抵抗がある場合でも、まずは信頼できる上司や同僚、一人だけでも良いので相談してみましょう。「実は、こういうことで困っていて…」と打ち明けるだけで、気持ちが楽になることがあります。

相談された側も、あなたが困難を抱えていることを知れば、気にかけてくれたり、業務を手伝ってくれたりと、良き理解者になってくれる可能性があります。そこから少しずつサポートの輪が広がり、働きやすい環境につながっていくことも少なくありません。

また、企業によっては、産業医や保健師、専門の相談窓口(EAP)などが設置されている場合があります。プライバシーは守られますので、安心して専門家の視点からアドバイスをもらうことができます。

自分自身の特性を理解する自己分析の重要性

周囲に適切な配慮を求めるためには、まず自分自身が「何が得意で、何が苦手か」「どのような状況でストレスを感じ、どうすればパフォーマンスを発揮できるか」を深く理解している必要があります。これを「自己理解」または「自己分析」と呼びます。

これまでの経験を振り返り、

  • 成功したこと、楽しかった仕事は何か?
  • 失敗したこと、辛かった仕事は何か?
  • どのような環境だと集中できたか?
  • どんな時に疲れを感じやすかったか?

などを書き出してみると、自分の特性や傾向が見えてきます。

自分一人で客観的に分析するのが難しい場合は、発達障害者支援センターなどの公的な支援機関や、就労移行支援事業所、就労継続支援事業所などの専門スタッフに相談し、一緒に自己分析を進めていくことも非常に有効です。

安心して働ける環境としての就労継続支援B型事業所

ここまで、一般企業で働くことを前提とした工夫についてお伝えしてきましたが、どうしても環境が合わず、心身ともに疲弊してしまうこともあるでしょう。そんな時、「働くことを諦める」のではなく、「自分に合った環境で働く」という視点を持つことが大切です。その選択肢の一つが、「就労継続支援B型事業所」です。

就労継続支援B型事業所は、障害や難病のある方が、自分の体調やペースに合わせて、無理なく働くためのスキルや体力を身につけることができる福祉サービスです。

障害への理解があるスタッフと環境

B型事業所の最大のメリットは、スタッフ全員が障害への深い知識と理解を持っていることです。あなたの「見えない困難」を最初から理解しようと努めてくれるため、「怠けている」などと誤解される心配はありません。

体調の波があることも前提として受け入れてもらえるので、「今日は調子が悪いので休みます」「少し休憩させてください」といった相談がしやすい環境です。スタッフは、あなたが安心して働けるように、常に寄り添い、サポートしてくれます。

体調に合わせて自分のペースで働ける

B型事業所では、一般企業のように毎日決まった時間働く必要はありません。

「まずは週に1日、2時間だけ」といった短時間からスタートし、体調が安定してきたら少しずつ日数や時間を増やしていく、といった柔軟な働き方が可能です。

自分の体調を最優先に、無理のない範囲で社会とのつながりを持ち、働くことの喜びや自信を取り戻すことができる場所。それが就労継続支援B型事業所です。

見えない障害の悩みを一人で抱えずオリーブに相談しませんか

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。もしあなたが「見えない障害」による働きづらさを感じ、一人で悩みを抱えているなら、私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」に相談してみませんか?

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで複数の事業所を運営しており、これまで多くの「見えない障害」を持つ方々の就労をサポートしてきました。

あなたの「できること」を活かす仕事がここにあります

オリーブでは、データ入力や軽作業、アクセサリー制作、WEBサイトの作成など、多種多様な仕事をご用意しています。スタッフがあなたとじっくり面談し、自己分析をサポートしながら、あなたの興味や得意なこと、特性に合った仕事がきっと見つかります。苦手なことを無理に克服するのではなく、あなたの「できること」を伸ばし、活かせる場所がここにあります。

同じ悩みを持つ仲間との出会い

オリーブには、あなたと同じように「見えない障害」の困難を抱えながらも、前向きに仕事に取り組んでいる仲間がたくさんいます。一般の職場では分かり合えなかった悩みを共有したり、互いに励まし合ったりできる仲間との出会いは、何物にも代えがたい財産になるはずです。

まずは見学からお気軽にお越しください

「いきなり相談するのは少し勇気がいる…」という方は、ぜひ一度、事業所の見学にお越しください。実際の作業風景や、事業所の和やかな雰囲気を見ていただくだけでも、きっと安心していただけると思います。ご本人だけでなく、ご家族や支援者の方とご一緒の見学も大歓迎です。

見えない障害と共に働くことは、決して特別なことではありません。あなたに合った環境と適切なサポートがあれば、誰もが自分らしく輝けるはずです。その第一歩を、私たちオリーブと一緒に踏み出してみませんか?ご連絡を心よりお待ちしています。

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