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医者・専門家との上手な付き合い方|診察でしっかり伝え質問するための準備とコツ

「診察室に入ると頭が真っ白になって、言いたいことが言えなかった…」

「先生が忙しそうで、質問をためらってしまった」

「専門用語ばかりで、結局よくわからないまま帰ってきてしまった」

障害や病気と向き合う上で、医師やカウンセラー、支援員といった専門家との関わりは欠かせません。しかし、限られた時間の中で自分の状態を正確に伝え、疑問を解消することは、簡単なことではないと感じている方も多いのではないでしょうか。

より良い治療や支援を受けるための鍵は、専門家との間に「信頼関係」を築き、受け身の姿勢から脱却して、あなた自身が治療や支援の「主体」となることです。そのためには、少しの準備とコミュニケーションのコツを知っておくことが非常に役立ちます。

この記事では、診察や相談の前にできる具体的な準備から、当日すぐに使えるコミュニケーションのコツ、そして「何か違う」と感じた時の対処法まで、網羅的に解説します。専門家をあなたの人生の良きパートナーとし、二人三脚でより良い未来を築いていくための一歩を、ここから踏み出してみましょう。

なぜ専門家との「上手な付き合い方」が重要なのか

専門家との関係性を「お任se」にしてしまうと、本当に自分に合った治療や支援から遠ざかってしまう可能性があります。なぜ、自分から積極的に関わっていくことが大切なのでしょうか。その理由は、大きく分けて二つあります。

受け身の「患者」から主体的な「当事者」へ

かつては、医療の現場では医師が絶対的な存在で、患者はそれに従うという関係性が一般的でした。しかし、現在では「インフォームド・コンセント(説明と同意)」の考え方が浸透し、患者自身が治療の選択に関わることが重要視されています。

これは、福祉の分野でも同様です。支援員から言われたことをただこなすのではなく、あなたが「どうなりたいか」「どんな生活を送りたいか」という意思が最も尊重されるべきです。

治療や支援の主役は、他の誰でもない「あなた自身」です。専門家は、あなたの目標達成をサポートするための専門知識や技術を持ったパートナーです。受け身の「患者」から、自分の人生の決定権を持つ主体的な「当事者」へと意識を変えることが、上手な付き合い方の第一歩となります。この意識を持つことで、専門家の言葉を鵜呑みにせず、自分にとって本当に必要な情報を見極める力が養われます。

より良い治療や支援に繋がる「信頼関係」の構築

良い治療や支援は、専門家と当事者との間の信頼関係なしには成り立ちません。あなたが安心して自分の悩みや症状を話すことができ、専門家もあなたの言葉に真摯に耳を傾ける。この双方向のコミュニケーションが、的確な診断や最適な支援計画につながります。

例えば、薬の副作用で辛いと感じていることを正直に伝えられれば、医師は薬の変更や調整を検討できます。仕事で困っていることを具体的に話せれば、支援員は職場への働きかけや、あなたに合った作業内容を考えてくれるでしょう。

逆に、遠慮や不信感から情報を伝えきれずにいると、専門家はあなたの本当の状況を把握できず、的外れな治療や支援になってしまう可能性があります。信頼関係を築き、質の高い情報を共有することは、治療や支援の効果を最大化するために不可欠なのです。この関係性は、一朝一夕に築けるものではありませんが、これからご紹介する準備やコツを実践することで、着実に育んでいくことができます。

診察や相談の前にやっておきたい!万全の準備リスト

診察や相談の時間は限られています。その短い時間で的確なやり取りをするためには、事前の準備が9割と言っても過言ではありません。準備をすることで、気持ちに余裕が生まれ、当日慌てずに落ち着いて話せるようになります。

伝えたい症状や悩みをメモに書き出す

診察室の独特の雰囲気や、専門家を前にした緊張で、話そうと思っていたことを忘れてしまうのはよくあることです。それを防ぐ最も効果的な方法が、事前に伝えたいことをメモに書き出しておくことです。

頭の中だけで整理しようとせず、箇条書きで構わないので、紙やスマートフォンのメモ機能に書き出してみましょう。その際、ただ「調子が悪いです」と書くのではなく、いくつかのポイントを押さえることで、より具体的に、客観的に情報を伝えることができます。

「いつから・どんな時に・どの程度か」を具体的に

症状や悩みを伝える際は、できるだけ具体的に表現することが、専門家があなたの状態を正確に把握するための大きな助けとなります。以下のフレームワークを参考に、情報を整理してみましょう。

いつから?(When)
例:2週間前の月曜日から、朝起きるのが辛くなった。
どんな時に?(Where/What situation)
例:満員電車に乗っている時や、職場の会議中に特に不安が強くなる。
どんな症状が?(What)
例:動悸、めまい、吐き気、頭痛、気分の落ち込み、イライラなど。
どのくらいの強さ・頻度で?(How much/How often)
例:週に2〜3回、30分ほど続く強い不安発作がある。気分の落ち込みは10段階中7くらいで、一日中続いている。
どうすると楽になるか・悪化するか?(How)
例:静かな場所で休むと少し楽になる。忙しくなると悪化する気がする。

このように具体的に書き出すことで、自分自身の状態を客観的に振り返るきっかけにもなります。

仕事や日常生活への影響も忘れずに

心や体の症状が、実際の生活にどのような影響を及ぼしているかを伝えることも非常に重要です。専門家は、あなたの生活全体の質を向上させることを目指しているため、この情報は治療や支援の方針を決める上で欠かせません。

仕事・学業への影響
集中力が続かず、仕事でミスが増えてしまった。
朝起きられず、遅刻や欠勤が増えている。
人と話すのが億劫で、同僚とのコミュニケーションを避けてしまう。
家事・身の回りのことへの影響
お風呂に入る気力がわかない。
部屋の片付けが全く手につかない。
食事の準備ができず、簡単なもので済ませることが増えた。
人間関係への影響
ささいなことで家族に当たってしまう。
友人からの誘いを断ることが増え、孤立感を感じる。

これらの情報を伝えることで、「症状を改善した結果、できるようになりたいこと」が明確になり、より具体的な目標設定につながります。

質問したいことをリストアップしておく

診察や相談の場で疑問点を解消することは、不安を和らげ、治療や支援に主体的に取り組むために不可欠です。診察の最後に「何か質問はありますか?」と聞かれても、その場では思いつかないことも多いでしょう。

伝えたいことリストと同様に、「質問したいことリスト」も事前に作成しておきましょう。どんな些細なことでも構いません。

病気や症状について
今の私の状態は、どういう病名で、どのような原因が考えられますか?
この症状は、今後どうなっていく可能性がありますか?
薬について
この薬には、どのような効果と副作用がありますか?
副作用が出た場合は、どうすれば良いですか?
いつまで飲み続ける必要がありますか?
治療・支援の方針について
今後の治療や支援の目標は何ですか?
他に考えられる治療法や支援方法はありますか?
次回の診察までに、自分で気をつけることはありますか?
生活・仕事について
食事や運動で気をつけることはありますか?
仕事は続けたままでも大丈夫でしょうか?休職する場合の目安はありますか?

リストに優先順位をつけておくと、時間が限られていても、特に聞きたいことから質問できます。

お薬手帳や関連資料をまとめておく

言葉で伝える情報に加えて、客観的な資料を提示することも、スムーズなコミュニケーションに役立ちます。診察や相談に行く際は、以下のものをまとめて持っていく習慣をつけましょう。

お薬手帳
現在服用している薬だけでなく、過去に合わなかった薬の情報も重要な手がかりになります。
他の医療機関での検査結果
血液検査の結果や、他の科で受けた診断書など。
セルフモニタリングの記録
日々の気分や体調、睡眠時間などを記録しているノートやアプリの画面。
会社の資料
もし休職を考えている場合は、会社の就業規則や診断書のフォーマットなど。
紹介状
他の機関からの紹介で受診する場合は必須です。

これらの資料は、あなたの状態を多角的に理解してもらうための重要な情報源となります。

診察・相談当日にできる!コミュニケーションの3つのコツ

入念な準備をしたら、あとは当日に自信を持って臨むだけです。ここでは、診察室や相談室で使える、簡単なコミュニケーションのコツを3つご紹介します。

結論から先に。「一番困っていること」から話す

限られた時間の中で最も重要な情報を伝えるには、「結論から先に話す」ことが有効です。時系列で最初から全てを話そうとすると、本当に伝えたいことにたどり着く前に時間切れになってしまう可能性があります。

まずは、準備したメモを見ながら、「今日は〇〇のことで相談に来ました」「今、一番困っているのは〇〇です」と、話の要点を最初に伝えましょう。

専門家は、その結論を聞いた上で、「それはいつからですか?」「具体的にはどういう状況ですか?」と、必要な情報を引き出すための質問をしてくれます。最初に話の全体像を示すことで、その後の対話がスムーズに進み、的を射たアドバイスをもらいやすくなります。

専門用語が分からない時は、遠慮なく質問する

医師や専門家は、無意識のうちに専門用語を使ってしまうことがあります。もし、相手の言っている言葉の意味が分からなければ、その場で遠慮なく質問しましょう

「すみません、今おっしゃった〇〇という言葉がよく分からなかったので、もう少し分かりやすい言葉で説明していただけますか?」

「それは、つまり〇〇という理解で合っていますか?」

このように聞き返すことは、全く恥ずかしいことではありません。むしろ、あなたの真剣さや理解しようとする姿勢が伝わり、専門家もより丁寧に説明しようとしてくれるはずです。分からないことをそのままにしてしまうと、誤解や不安が生まれ、治療や支援へのモチベーションが低下する原因にもなります。対話のキャッチボールを意識し、理解できるまで確認することが大切です。

今後の治療方針や生活上の注意点を復唱して確認する

診察や相談の最後には、話した内容を自分の言葉で要約し、お互いの認識が合っているかを確認する作業が非常に重要です。これにより、聞き間違いや勘違いを防ぐことができます。

「今日の話をまとめると、次の診察までの2週間は、この新しい薬を試してみて、日常生活では〇〇に気をつけて過ごす、という方針でよろしかったでしょうか?」

「次回までに、〇〇について記録してくる、という宿題で合っていますか?」

このように復唱して確認することで、専門家側もあなたの理解度を把握できますし、もし認識がずれていればその場で修正することができます。「分かったつもり」で帰るのではなく、具体的な次のアクションを明確にして終えることで、安心して日常生活に戻ることができます。

「何か違う…」専門家との間に違和感を覚えた時の対処法

信頼関係が重要だと分かっていても、どうしても専門家との間に「壁」を感じたり、提案された方針に納得できなかったりすることもあります。そんな時は、どうすれば良いのでしょうか。自分の気持ちに蓋をせず、適切に対処することが大切です。

まずは感じた違和感を正直に伝えてみる

「この先生は高圧的で話しづらい」「私の話をちゃんと聞いてくれていない気がする」

もし、そうした違和感を覚えたら、まずはその気持ちを正直に、かつ冷静に伝えてみることを試みましょう。感情的に相手を非難するのではなく、「私はこう感じている」という主語(アイメッセージ)で伝えるのがポイントです。

(話を遮られたと感じた時)
「先生、すみません。まだお伝えしたいことがあるので、もう少しだけお時間をいただけますか?」
(説明に納得できない時)
「先生のご説明は理解できましたが、その治療法には少し不安を感じています。他に選択肢はないでしょうか?」

このように伝えることで、相手も自分の態度や説明の仕方を振り返るきっかけになるかもしれません。まずは対話を試みることが、関係改善の第一歩です。

セカンドオピニオンを検討するタイミング

対話を試みても状況が改善しない場合や、診断や治療方針に大きな疑問が残る場合は、「セカンドオピニオン」を検討するのも一つの有効な手段です。

セカンドオピニオンとは、現在の主治医以外の専門家から、診断や治療方針について「第二の意見」を聞くことです。これは、主治医を変えること(転院)とは異なり、あくまで別の視点からの意見を参考に、最終的には自分で治療法を選択するために行います。

  • 手術や侵襲の大きい治療など、重大な決断を迫られている時
  • 治療が長期間にわたっているのに、効果が感じられない時
  • 提示された治療法が一つしかなく、他の選択肢も知りたい時
  • 診断名にどうしても納得がいかない時

セカンドオピニオンを求めることは、患者の正当な権利です。主治医に伝えにくいと感じるかもしれませんが、多くの医師はその必要性を理解しています。まずは主治医に「他の先生のご意見も伺ってみたいのですが、紹介状や検査データをお願いできますか?」と相談してみましょう。

専門家との「相性」も大切にする

医師やカウンセラー、支援員も一人の人間です。知識や技術はもちろん重要ですが、最終的には人と人との関わりであるため、「相性」が合う・合わないという側面も無視できません。

  • じっくり話を聞いてほしいタイプなのに、相手は結論を急ぐタイプ
  • 親身に寄り添ってほしいのに、相手は事務的で冷たい印象を受ける

どれだけ優れた専門家であっても、あなたが「この人になら安心して話せる」と信頼できなければ、良い関係を築くのは難しいでしょう。何度か関わってみて、どうしても相性が合わないと感じる場合は、担当者の変更を申し出たり、思い切って別の機関を探したりすることも、自分を守るための大切な選択です。あなたにとって、心から信頼できるパートナーを見つけることを諦めないでください。

あなたの「働きたい」に伴走する、オリーブというパートナー

これまで、医療機関などでの専門家との付き合い方について解説してきました。この「対話を通じて信頼関係を築き、主体的に関わる」という姿勢は、障害のある方が「働きたい」という目標に向かう時にも、全く同じように重要になります。

私たち就労継続支援B型事業所オリーブは、利用者さん一人ひとりにとって、安心して話せる「信頼の置けるパートナー」でありたいと考えています。

専門スタッフがあなたの話に、しっかり耳を傾けます

オリーブの支援員は、障害福祉の専門知識を持っています。しかし、私たちはその知識を一方的に当てはめることはしません。まず何よりも大切なのは、あなたの声に耳を傾けることです。「どんなことに困っているのか」「将来どうなりたいのか」「何が得意で、何が苦手なのか」。あなたの言葉を通じて、あなたという存在を理解することから、私たちの支援は始まります。

一人ひとりと向き合い「個別支援計画」を一緒に作成します

オリーブでは、利用者さん一人ひとりに合わせた「個別支援計画」を作成します。これは、私たちが一方的に作るものではありません。あなたとの対話を重ね、あなたの希望や目標を最大限に尊重しながら、「一緒に」作り上げていくものです。定期的に面談を行い、体調の変化や目標の達成度に合わせて計画を見直していくので、いつでも安心して自分のペースで進むことができます。

私たちと一緒に、あなたらしい働き方を見つけましょう

医師が病気の治療のパートナーであるように、私たちオリーブのスタッフは、あなたの「働く」を支えるパートナーです。私たちは、あなたと対等な立場で、あなたの人生に寄り添い、伴走します。

もし、あなたが「安心して話せる場所」や「信頼できる相談相手」を探しているなら、ぜひ一度オリーブに見学・相談にお越しください。私たちと一緒に、あなたらしい働き方への一歩を踏み出してみませんか。

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