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障害のある方のための防災ガイド「インクルーシブ防災」の考え方と本当に役立つ備え

日本は地震や台風、豪雨など、自然災害が多い国です。災害はいつ、どこで起こるかわかりません。そして、災害が発生したとき、障害のある方やそのご家族は、特有の困難に直面することがあります。だからこそ、「誰一人取り残さない」というインクルーシブ防災の考え方が今、とても重要になっています。

この記事では、障害のある方が災害時に直面する具体的な困難を解説するとともに、今日から始められる個人での備え(自助)と、地域社会での支え合い(共助)について、本当に役立つ具体的な方法を分かりやすくガイドします。

災害への備えは、特別なことではありません。日々の暮らしの中に少しずつ取り入れることで、「もしも」の時の安心に繋がります。この記事を読んで、あなたやあなたの大切な人を守るための第一歩を踏み出してみませんか。

災害時に障害のある方が直面する困難と「要配慮者」とは

災害時、障害のない人には想像しにくいような、さまざまな困難に直面する可能性がある人々を「災害時要配慮者」と呼びます。これには、障害のある方のほか、高齢者、妊婦、乳幼児、日本語を母語としない外国人などが含まれます。障害のある方が直面する困難は、その特性によって多種多様です。

情報入手・避難・避難所生活における障壁

災害時には、命を守るための情報が次々と発信されますが、その情報を受け取る段階から困難が始まります。

障害特性 直面しうる困難の例
視覚障害 防災無線や緊急速報メールの文字情報が読めない。停電でテレビの音声解説が利用できない。避難経路の障害物が見えず、単独での避難が難しい。
聴覚障害 サイレンや防災無線の音声が聞こえない。避難所でのアナウンスや支援者からの口頭での説明が分からない。
身体障害 車いすや杖を使っていると、がれきが散乱した道や階段、段差のある場所を避難できない。エレベーターが停止すると高層階から移動できない。
内部障害 人工透析や在宅酸素療法など、生命維持に電力が必要な医療機器が停電で使えなくなる。避難所生活での体調管理や感染症のリスクが高い。
知的障害・発達障害 災害の状況や避難指示の意味を理解することが難しい。避難所の騒音や人混み、慣れない環境が大きなストレス(感覚過敏)となり、パニックを起こしてしまうことがある。

「インクルーシブ防災」の重要性 誰一人取り残さないために

こうした課題を解決するために生まれたのが、「インクルーシブ防災」という考え方です。これは、障害の有無にかかわらず、誰もが安全に避難し、安心して生活できる社会を目指す防災のあり方を指します。

重要なのは、防災計画を立てる段階から、障害のある当事者の意見を取り入れることです。当事者でなければ気づけない課題や、本当に必要な支援はたくさんあります。2022年には国連から、日本の障害者の分離された教育システムに対してインクルーシブ教育への転換を求める勧告が出されるなど、障害のある人々の権利を尊重し、社会のあらゆる場面で共に生きる環境を整えることは国際的な潮流となっています。

防災においても、障害のある方を「支援されるだけの弱い存在」と捉えるのではなく、共に地域社会を構成する一員として、計画段階から参加し、経験や知識を活かしてもらうことが、実効性のある防災計画に繋がるのです。

【自助】今日からできる個人での備え

「インクルーシブ防災」の基本は、まず自分自身でできる備え、「自助」から始まります。公的な支援(公助)が届くまでには時間がかかることを想定し、最低でも3日分、できれば1週間分の備えをしておきましょう。

障害特性に合わせた防災グッズの準備

一般的な防災グッズに加えて、ご自身の障害特性に合わせた「必需品」を準備しておくことが命を守る鍵になります。

常備薬や医療機器の予備バッテリー

お薬手帳のコピーと常備薬
普段服用している薬は、最低でも1週間分以上をすぐに持ち出せる袋に入れておきましょう。お薬手帳のコピーや、薬の名前をメモしたものも一緒に入れておくと、もし薬がなくなっても支援者に正確な情報を伝えられます。
医療機器の予備電源
人工呼吸器や痰の吸引器、在宅酸素療法機器など、電源が必要な医療機器を使っている方は、ポータブル電源や予備のバッテリーの確保が不可欠です。車のシガーソケットから充電できる機器を用意しておくのも有効です。

コミュニケーション支援ボードやヘルプカード

コミュニケーション支援ボード
聴覚障害や発話に困難がある方にとって、避難所で自分の意思を伝えるための重要なツールです。「水がほしい」「トイレに行きたい」「気分が悪い」などのイラストや文字を指さすだけで意思疎通ができます。自治体のウェブサイトなどで配布されている場合もあります。
ヘルプカード
外見からは分かりにくい障害や病気のある方が、周囲に配慮や手助けを求めるためのカードです。緊急連絡先や、パニックになった時の対処法、アレルギー情報などを記載しておき、普段から身につけておきましょう。災害時には、あなたを守る「お守り」になります。

自分だけの避難計画「マイ・タイムライン」の作成

台風や豪雨など、ある程度接近が予測できる災害に対しては、「マイ・タイムライン」を作成しておくことが非常に有効です。これは、災害の危険度に応じて、「いつ」「誰が」「何をするか」を時系列で整理した、自分だけの避難計画です。

例えば、

  • 「警戒レベル3(高齢者等避難)が発令されたら、親戚の家に電話して、車での迎えを依頼する」
  • 「警戒レベル4(避難指示)が出たら、〇〇(避難場所)へ避難を開始する」

このように具体的な行動を決めておくことで、いざという時に慌てずに行動できます。特に、一人での避難が難しい方は、誰に、どのタイミングで助けを求めるかを事前に相談しておくことが重要です。

「福祉避難所」の確認と役割の理解

「福祉避難所」とは、高齢者や障害のある方など、一般の避難所では生活が困難な要配慮者を受け入れるために、特別な配慮がされた避難所のことです。

しかし、注意点もあります。

  1. まず地域の「指定避難所」へ避難することが原則です。
  2. 福祉避難所は、災害発生後に必要に応じて開設され、受け入れ態勢が整ってから移動することになります。
  3. 受け入れ対象は、指定避難所での生活が困難であると判断された方とその家族などに限られます。

つまり、災害が起きたら誰もが直接行ける場所ではない、ということを理解しておく必要があります。お住まいの自治体のウェブサイトなどで、どこに福祉避難所が設置される可能性があるのかを事前に確認しておきましょう。

【共助】命を守るための「地域の繋がり」

自分での備えと同じくらい大切なのが、地域での支え合い、「共助」です。災害時には、公的な支援よりも早く、隣近所の助け合いが命を救うケースが多く報告されています。

普段からのご近所付き合いが「いざ」という時に役立つ

「隣にどんな人が住んでいるか知らない」という方も多いかもしれませんが、普段から挨拶を交わしたり、少し立ち話をしたりする関係性が、いざという時の助け合いに繋がります。

障害があることを無理に伝える必要はありませんが、「何かあった時はお互い様ですね」と声をかけておくだけでも、災害時に「あの人は大丈夫だろうか」と気にかけてもらえる可能性が高まります。地域の繋がりは、最高の防災対策の一つなのです。

民生委員や支援専門職との連携

地域には、民生委員や児童委員、社会福祉協議会の職員など、福祉の専門家がいます。こうした専門職と普段から繋がっておくことも大切です。

特に、一人暮らしの障害のある方や高齢者などを対象に、市町村が「個別避難計画」の作成を進めています。これは、本人の同意のもと、誰が支援し、どこへ避難するかといった情報を、平常時から地域の支援者(民生委員、自主防災組織、消防団など)と共有しておく仕組みです。ご自身の自治体での取り組みを確認し、積極的に活用しましょう。

地域の防災訓練への参加

地域の防災訓練に参加することは、多くのメリットがあります。

顔の見える関係づくり
訓練で顔を合わせることで、近所の人や支援者と顔見知りになれます。「訓練に参加していた車いすの方だ」と覚えてもらうだけでも、実際の災害時に声をかけてもらいやすくなります。
地域の危険個所の確認
実際に避難経路を歩いてみることで、「この道は狭くて車いすでは通れない」「このブロック塀は地震で倒れるかもしれない」といった、地図上では分からない危険に気づくことができます。
配慮の必要性を伝える機会
訓練の場で、「聴覚障害があるので、避難の合図は光で知らせてほしい」「パニックになることがあるので、静かな場所を確保してほしい」など、必要な配慮を具体的に伝える良い機会になります。

日中の居場所がもたらす防災上のメリット

自宅や地域での備えに加え、日中に安心して過ごせる「居場所」の確保も、防災の観点から非常に重要です。特に一人で家にいる時間が長い方にとって、日中の多くの時間を過ごす場所が安全であることは、大きな安心材料になります。

就労継続支援B型事業所というコミュニティ

私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」のような場所は、単に仕事をするだけの場所ではありません。毎日顔を合わせる仲間や、いつでも相談に乗ってくれる支援員がいる、大切なコミュニティです。

障害への理解がある環境で、同じような悩みや経験を持つ仲間と過ごす時間は、社会的な孤立を防ぎ、日々の生活に安心感をもたらします。この「安心できる居場所」と「人との繋がり」が、災害時にも大きな力となります。

安否確認や情報共有の拠点としての役割

もし災害が発生した場合、事業所は利用者やそのご家族の安否確認を行う拠点となります。電話が繋がりにくい状況でも、事業所を通じて仲間の状況を確認したり、支援員から正確な情報を得たりすることができます。

また、災害に関するデマや不確かな情報が飛び交う中でも、支援員が公的機関からの信頼できる情報を選別して伝えてくれるため、混乱せずに落ち着いて行動することに繋がります。日中活動の場は、いざという時の「情報ステーション」としての役割も担うのです。

日々の安定した暮らしが「もしも」の備えに繋がります

災害への備えというと、防災グッズを揃えたり、避難計画を立てたりすることに目が行きがちですが、最も大切な土台は「日々の安定した暮らし」です。心と体の健康、そして社会との繋がりが、いざという時に自分を助ける力になります。

オリーブは利用者の安全と安心を第一に考えています

就労継続支援B型事業所オリーブでは、利用者の皆さんが安心して過ごせるよう、防災対策にも力を入れています。定期的な避難訓練の実施はもちろん、災害時の連絡体制や備蓄品の管理など、日頃から「もしも」の事態に備えています。

私たちは、仕事のスキルを身につける場であると同時に、皆さんの生活の基盤となる「安全な居場所」でありたいと考えています。

生活の中での不安や悩みもご相談ください

「災害の準備をしたいけれど、何から手をつけていいか分からない」「一人暮らしで、災害が起きたらどうしようかと不安になる」。そんな悩みも、ぜひ私たちにご相談ください。

オリーブの経験豊富な相談員が、あなたの状況を丁寧にお伺いし、防災の専門家ではありませんが、福祉のプロとして、あなたが安心して暮らすために何が必要かを一緒に考え、必要な情報を提供したり、地域の相談機関に繋いだりするお手伝いをします。

見学・体験利用で事業所の雰囲気をお確かめください

「自分に合う場所だろうか」「どんな人たちがいるんだろう」と感じたら、ぜひ一度、見学・体験利用にお越しください。事業所の雰囲気や作業内容、スタッフや他の利用者さんの様子を実際に見ていただくのが一番です。

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の各地で事業所を運営しています。あなたのお越しを心よりお待ちしております。日々の安心できる居場所を、私たちと一緒に見つけてみませんか。

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