
障害のある方が安定した生活を送り、自分らしいキャリアを築いていくためには、利用できる制度やサービスを最大限に活用することが重要です。しかし、多くの支援制度が存在する一方で、「どんなサービスがあるか知らない」「手続きが複雑そうで利用していない」という声も少なくありません。
この記事では、障害のある方が利用できる公的サービスや民間のサポートを「経済的な支援」「生活・就労の支援」「多様な支援」の3つのカテゴリーに分け、知っておきたいポイントを網羅的に解説します。この記事を読めば、ご自身の状況に合った支援を見つけ、経済的な不安を軽減し、より豊かな生活を送るための一歩を踏み出すきっかけになるはずです。
なぜ使える制度が知られていないのか
障害のある方向けの支援制度は数多く整備されていますが、必要としている方に情報が届いていないケースが少なくありません。その背景には、いくつかの構造的な要因が存在します。これらの理由を知ることで、情報収集のコツや相談先を見つけるヒントが得られます。
制度の複雑さと情報収集の難しさ
支援制度は、国の法律に基づくものから、お住まいの市区町村が独自に行っているものまで多岐にわたります。また、担当する窓口も、年金は年金事務所、福祉サービスは市区町村の障害福祉課、医療費の助成は保健センターなど、内容によって異なります。
このように制度が複雑で窓口が分散しているため、自分に必要な情報を一度にまとめて入手することが難しくなっています。インターネットで検索しても、情報が古かったり、専門用語が多くて理解が難しかったりすることも、情報収集を困難にさせる一因と言えるでしょう。
「自分は対象外」という思い込み
「障害者手帳の等級が低いから、サービスは使えないだろう」「所得が一定以上あるから、対象外に違いない」といった思い込みから、利用を諦めてしまうケースも多く見られます。しかし、制度によっては、手帳の等級や所得の要件が細かく設定されていたり、特定の疾患名だけで対象になったりするものもあります。
例えば、精神科への通院医療費が原則1割負担になる「自立支援医療制度」は、多くの人が利用できる可能性があります。また、税金の控除のように、働くご本人だけでなく、生計を同じくする家族が対象となる制度もあります。「自分は対象外」と決めつけず、まずはどのような制度があるかを知り、対象となる可能性を探ることが大切です。
申請に対する心理的なハードル
利用したい制度が見つかっても、申請手続きの煩雑さが心理的なハードルになることがあります。多くの書類を準備したり、何度も窓口に足を運んだりする必要がある場合、体調や障害特性によっては大きな負担となります。
また、「支援を受けることに抵抗がある」「他人に頼るのが申し訳ない」と感じてしまう方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これらの制度は誰もが持つ権利として保障されているものです。ためらう必要は全くありません。近年では、手続きをサポートしてくれる相談支援事業所のような専門機関も増えていますので、一人で抱え込まずに相談することが重要です。
【経済的な支援】生活の基盤を支える公的サービス
日々の生活を送る上で、経済的な安定は非常に重要です。ここでは、生活の基盤を支えるための代表的な公적サービスをご紹介します。これらの制度を活用することで、経済的な不安を軽減し、治療に専念したり、就労に向けた準備を進めたりすることができます。
障害年金
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などが制限されるようになった場合に受け取ることができる年金です。障害のある方の所得保障の基本となる制度で、以下の2種類があります。
- 障害基礎年金
- 国民年金に加入している間に初診日(障害の原因となった病気やけがで初めて医師の診療を受けた日)がある場合に支給されます。
- 障害厚生年金
- 厚生年金に加入している間に初診日がある場合に支給されます。障害基礎年金に上乗せして支給されるため、より手厚い保障となります。
障害者手帳の有無や等級とは異なる独自の基準で審査が行われるため、手帳を持っていない方でも対象となる場合があります。申請手続きが複雑なため、社会保険労務士などの専門家や、年金事務所に相談しながら進めることをお勧めします。
自立支援医療制度
自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する公的な制度です。特に、精神疾患(てんかんを含む)で継続的な通院が必要な方が利用する「精神通院医療」は、多くの方に関係する重要な制度です。
通常、医療保険による医療費の自己負担は3割ですが、この制度を利用すると原則1割に軽減されます。さらに、世帯の所得に応じて1ヶ月あたりの自己負担額に上限が設けられるため、長期的な通院が必要な場合でも経済的な負担を大きく減らすことができます。お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で申請が可能です。
特別障害者手当・障害児福祉手当
特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害があるため、日常生活において常時特別の介護を必要とする20歳以上の方に支給される手当です。障害年金と合わせて受給することも可能です。
同様に、20歳未満で重度の障害がある場合には、障害児福祉手当という制度があります。これらの手当は、在宅で生活する重度の障害のある方の負担を軽減することを目的としており、所得制限などの要件があります。詳しい条件については、お住まいの市区町村の窓口にご確認ください。
各種税金の控除・減免制度
障害のある方や、その方を扶養している家族は、税金の負担が軽減される様々な制度を利用できます。これらは自動的に適用されるのではなく、年末調整や確定申告での自己申告が必要です。
| 制度の種類 | 内容 |
|---|---|
| 所得税・住民税の障害者控除 | 本人または扶養親族が障害者の場合、所得から一定額が控除され、税負担が軽くなります。障害の程度により「障害者」「特別障害者」の区分があります。 |
| 相続税の障害者控除 | 障害のある方が財産を相続した場合、相続税額から一定額が控除されます。 |
| 贈与税の非課税 | 特別障害者の方が信託銀行などに金銭などを信託した場合、一定額までの贈与税が非課税になります。 |
| 自動車税・軽自動車税の減免 | 障害の程度や用途などの条件を満たす場合、自動車税などが減免される場合があります。 |
| 個人事業税の減免 | 障害のある方が個人事業を営んでいる場合、所得に応じて個人事業税が減免されることがあります。 |
これらの制度は、知らずに損をしてしまうことが多いポイントです。ご自身やご家族の状況と照らし合わせ、積極的に活用しましょう。
【生活・就労の支援】暮らしを豊かにする公的サービス
経済的な支援だけでなく、日常生活や社会参加をサポートするサービスも充実しています。ここでは、暮らしをより豊かにし、就労へのステップにも繋がる公的サービスをご紹介します。
ホームヘルプや移動支援などの障害福祉サービス
障害者総合支援法に基づき、障害のある方が地域で自立した生活を送るための様々なサービスが提供されています。これらのサービスを利用するには、市区町村の窓口で申請し、障害支援区分の認定を受ける必要があります。
- 居宅介護(ホームヘルプ)
- ホームヘルパーが自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの介助や、調理、洗濯、掃除などの家事援助を行います。
- 重度訪問介護
- 重度の肢体不自由などがあり常に介護が必要な方に、自宅での介護から外出時の移動支援までを総合的に行います。
- 同行援護・行動援護
- 視覚障害のある方の外出を支援する「同行援護」や、知的障害・精神障害のある方の外出を支援する「行動援護」があります。
- 移動支援事業
- 市区町村が主体となって行う事業で、社会生活上不可欠な外出や余暇活動のための外出をサポートします。
これらのサービスは、ご本人の生活の質を高めるだけでなく、ご家族の介護負担を軽減する上でも重要な役割を果たします。
公共料金や交通機関の割引
日常生活に直結する公共料金や、外出時に利用する交通機関の割引制度も多く存在します。
- NHK放送受信料の免除
- 障害者手帳の種類や等級、世帯の課税状況に応じて、受信料が全額または半額免除になります。
- 公共交通機関の運賃割引
- JR、私鉄、バス、タクシーなどの運賃が割引になります。割引率は各社や障害の等級によって異なります。
- 高速道路料金の割引
- 事前に登録することで、高速道路の通行料金が半額になります。
- 携帯電話料金の割引
- 大手携帯電話会社では、障害者手帳を持っている方向けの割引プランが用意されています。
これらの割引は、申請が必要なものと、手帳を提示するだけで利用できるものがあります。お使いのサービスや交通機関のウェブサイトなどで詳細をご確認ください。
就労継続支援B型事業所などの福祉的就労
「すぐに一般企業で働くのは不安」「自分のペースで社会との繋がりを持ちたい」と考える方には、福祉的な就労の場が用意されています。その代表的なものが「就労継続支援B型事業所」です。
就労継続支援B型事業所は、障害や体調への配慮がある環境で、軽作業やPC作業など、一人ひとりの特性や希望に合わせた仕事に取り組める福祉サービスです。雇用契約を結ばずに利用できるため、週1日や短時間からでも無理なく始めることができます。作業を通じて得た収入は「工賃」として受け取ることができます。
安定して通所することで生活リズムが整い、働くことへの自信を取り戻すことができます。一般就労を目指す前のステップとして、あるいは、安心して長く働き続けられる居場所として、多くの方が利用しています。
【多様な支援】民間団体や企業のサポート
支援の輪は、公的な制度だけでなく、民間団体や企業にも広がっています。公的サービスではカバーしきれない、きめ細やかなサポートやユニークなサービスが見つかることもあります。
民間助成団体による助成金
社会福祉法人や民間の財団などが、障害のある方の生活や活動を支援するための助成金事業を行っている場合があります。例えば、福祉車両の購入、住宅の改修、文化・芸術活動、スポーツへの参加など、目的は様々です。
これらの助成金は公募期間が限られていることが多く、情報を見つけるのが難しい側面もあります。お住まいの地域の社会福祉協議会などが情報を持っている場合があるため、関心のある方は問い合わせてみると良いでしょう。
NPOや当事者団体による相談支援・交流の場
同じ障害や病気を持つ当事者同士が集まる「患者会」や「セルフヘルプグループ」は、悩みを分かち合い、情報を交換するための貴重な場です。専門家には話しにくいことでも、同じ経験を持つ仲間だからこそ理解し合えることがあります。
また、特定の障害に特化した支援を行うNPO法人なども全国に多数存在します。これらの団体は、専門的な相談支援を行ったり、当事者の権利を守るための社会的な活動を行ったりしています。オンラインで交流会や勉強会を開催している団体も多く、地域を問わず参加しやすくなっています。
各企業が提供する障害者割引サービス
近年、障害のある方が利用しやすいサービスを積極的に提供する民間企業が増えています。
- デジタル障害者手帳「ミライロID」
- スマートフォンアプリで障害者手帳を管理できるサービスです。多くの鉄道会社、バス会社、映画館、美術館などが導入しており、手帳本体を取り出すことなく割引を受けられます。
- 映画館・レジャー施設の割引
- 多くの映画館やテーマパーク、動物園、水族館などで、障害者手帳を提示すると本人と介助者1名の料金が割引になります。
- 通信販売や宅配サービスの割引
- 企業によっては、障害者手帳を持っている方向けの割引や特典を用意している場合があります。
これらのサービスは、企業のウェブサイトなどで告知されています。「ミライロID」のアプリで対応施設を検索するのも便利です。社会参加や余暇活動を楽しむ際に、ぜひ活用してみてください。
自分に合った支援を見つけるための相談窓口
ここまで様々なサービスを紹介してきましたが、「自分には何が必要で、どこに相談すればいいのか分からない」と感じる方も多いでしょう。そんな時に頼りになるのが、公的な相談窓口です。一人で悩まず、専門家の力を借りましょう。
市区町村の障害福祉窓口
最も身近で基本的な相談窓口は、お住まいの市区町村役場にある障害福祉課(名称は自治体により異なります)です。ここでは、障害者手帳の申請から、この記事で紹介したような各種障害福祉サービスの利用申請まで、幅広い相談を受け付けています。
「どんなサービスが使えるか知りたい」という最初の段階での相談にも対応してくれます。まずはこの窓口に連絡し、ご自身の状況を伝えることから始めてみましょう。
相談支援事業所
相談支援事業所は、障害のある方が様々な福祉サービスを適切に利用できるよう、専門の相談員(相談支援専門員)がサポートしてくれる機関です。具体的には、以下のような役割を担っています。
- 利用できるサービスの情報提供やアドバイス
- サービスを利用するための「サービス等利用計画」の作成
- サービス事業者との連絡・調整
- サービス利用後のモニタリング(計画の見直し)
市区町村の窓口で紹介してもらえるほか、独立行政法人福祉医療機構が運営する「WAM NET」で地域の事業所を検索することもできます。複雑な制度を理解し、ご自身に最適なサービスの組み合わせを考える上で、心強いパートナーとなってくれます。
生活の安定から「働く」を考えませんか オリーブにご相談ください
様々な制度やサポートを活用して生活基盤が安定してくると、「少し働いてみようかな」という気持ちが芽生えてくるかもしれません。就労継続支援B型事業所オリーブは、そんなあなたの「働きたい」という思いを、一人ひとりのペースに合わせてサポートします。
利用できる制度やサービスの情報提供もサポート
オリーブでは、就労に関する相談だけでなく、生活全般の困りごとについても経験豊富な相談員が親身に寄り添います。この記事でご紹介したような各種制度の活用について、情報提供やアドバイスを行うことも可能です。安心して就労に取り組めるよう、生活面から一緒に基盤を整えていきましょう。
安定した暮らしが仕事への意欲に繋がります
関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良)に複数の事業所を展開するオリーブは、あなたの家の近くで、安心して通える場所を提供します。週1日・短時間から利用を開始し、少しずつ働くことに慣れていくことができます。安定した日々を送ることが、仕事への自信と意欲に繋がっていきます。
まずはお気軽にお問い合わせください
「すぐに利用するかは分からないけど、話だけ聞いてみたい」「自分に合う仕事があるか不安」という方も大歓迎です。見学や相談はいつでも受け付けています。まずはお気軽にご連絡いただき、あなたの思いや不安をお聞かせください。
