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5年後の働き方とAIの未来図 障害のある方に生まれる仕事と求められるスキル

近年、ChatGPTをはじめとする生成AI(人工知能)の急速な進化が、私たちの働き方に大きな変化をもたらそうとしています。「AIに仕事が奪われるかもしれない」といった不安の声も聞かれますが、障害のある方にとっては、むしろ大きなチャンスの到来と捉えることができます。

AIは、これまで苦手とされてきた作業を補う強力なアシスタントになり、身体的な制約やコミュニケーションの壁を乗り越えるための心強いパートナーにもなり得ます。さらに、AIの登場によって「プロンプトエンジニア」や「AIプロダクトテスター」といった新しい仕事が生まれ、これまで以上に個々の特性や感性が活かせる時代が訪れようとしています。

この記事では、AIの進化がもたらす仕事の未来図を、障害のある方の視点から分かりやすく解説します。5年後を見据え、これからの時代に求められるスキルや、今から準備できること、そして私たち就労継続支援B型事業所オリーブでどのように未来への一歩を踏み出せるのかを一緒に考えていきましょう。

AIの台頭で変化する仕事の未来

AI技術、特に生成AIの進化は、産業革命やインターネットの登場に匹敵するほどのインパクトを社会に与えつつあります。総務省の「令和5年版 情報通信白書」でも、生成AIが経済社会に与える影響について詳細な分析が行われており、私たちの「働く」という概念が根本から変わっていく可能性が示されています。

この変化の波を乗りこなすためには、まずAIが何を得意とし、何を苦手とするのかを正しく理解することが重要です。

AIが得意なこと・苦手なこと

AIは決して万能ではありません。人間と同じように、得意な作業と苦手な作業があります。その特性を理解することで、AIと人間がどのように協力し合えるのか(共生できるのか)が見えてきます。

具体例
AIが得意なこと ・大量のデータ処理・分析

・ルールに基づいた定型作業の自動化

・文章の要約、翻訳、生成

・画像や音声のパターン認識と生成

・24時間365日の稼働

AIが苦手なこと ・0から1を生み出す創造的な発想

・相手の感情を汲み取った共感的なコミュニケーション

・倫理観や道徳観が求められる複雑な意思決定

・想定外の事態への柔軟な対応

・身体を使った細やかな作業や対面でのホスピタリティ

このように、AIは正確性やスピードが求められる作業を得意とする一方、人間の持つ温かみや創造性、柔軟性が求められる分野は依然として苦手です。

AIに代替される可能性のある仕事

AIの得意分野を考えると、今後、一部の仕事はAIに代替されていくと考えられます。実際に、野村総合研究所が2015年に行った研究では、日本の労働人口の約49%が技術的にはAIやロボットで代替可能になると推計されています。

  • 一般事務職(データ入力、書類作成など)
  • 工場のライン作業員
  • 銀行の窓口係
  • 定型的な問い合わせに対応するコールセンター業務
  • Webライター(単純な情報収集と構成による記事作成)

ただし、これは「仕事が完全になくなる」という意味ではありません。例えば、事務職でもAIを使いこなしてより高度なデータ分析を行ったり、コールセンターでもAIでは対応できない複雑な相談に人間が対応したりと、仕事の中身が変化していくと考えるのが適切です。

AI時代に価値が高まる人間のスキル

AIが普及すればするほど、AIには真似のできない人間ならではのスキルの価値が相対的に高まっていきます。PwC Japanグループの調査でも、AI時代には「分析知능」や「直感知能」を要する仕事は代替されにくいと分析されています。

これからの時代は、知識を記憶することよりも、知識をどう活用して新しい価値を生み出すかが重要になります。

クリエイティビティ(創造性)
新しいアイデアや独自の表現を生み出す力。
コミュニケーション能力
相手の意図や感情を深く理解し、信頼関係を築く力。
課題発見・解決能力
AIが出した分析結果から本質的な課題を見つけ出し、解決策を考える力。
ホスピタリティ
相手を思いやり、温かいサービスを提供する力。
デジタルリテラシー
AIをはじめとする新しい技術を理解し、適切に使いこなす力。

これらのスキルは、障害の有無にかかわらず、これからの社会で働くすべての人にとって重要な道しるべとなるでしょう。

障害のある方にとってAIは脅威かチャンスか

AIの登場は、障害のある方の働き方を大きく変える「チャンス」です。これまで障害特性によって生じていた困難や障壁が、AIというテクノロジーによって解消され、一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できる社会が実現する可能性を秘めています。

AIは、仕事を奪う存在ではなく、一人ひとりの困難に寄り添い、能力を拡張してくれる「最高のパートナー」になり得るのです。

AIが個人の困難を補うアシスタントになる未来

障害のある方が仕事で直面する困難の中には、AIの力を借りることで大幅に軽減できるものが数多くあります。まるで自分専用のアシスタントがいるかのように、AIが日々の業務をサポートしてくれる未来は、もうすぐそこまで来ています。

コミュニケーションや情報整理を助けるツールとして

発達障害のある方の中には、会議の議事録をリアルタイムでまとめることや、長文のメールから要点を掴むことに苦手意識を持つ方がいます。AIはこうした困難を補う強力なツールになります。

音声認識と自動要約
会話の内容をAIがリアルタイムで文字起こしし、さらに要約までしてくれれば、聞き逃しの不安なく会議に集中できます。
文章作成支援
相手に失礼のない丁寧なメールの文章をAIが提案してくれたり、自分が書いた文章をより分かりやすく校正してくれたりします。
情報収集・整理
膨大な情報の中から、必要な情報だけをAIに探してもらい、分かりやすく整理してもらうことで、リサーチ業務の負担を大幅に減らせます。

これにより、コミュニケーションや情報処理の負担が減り、本来の業務である企画立案や専門的な作業に、より多くの時間とエネルギーを注ぐことができるようになります。

身体的な制約を乗り越えるパートナーとして

肢体不自由など身体に障害のある方にとって、PCのキーボード入力やマウス操作が大きな負担となることがあります。AIアシスタントや音声入力技術の進化は、こうした物理的な障壁を取り払います。

音声によるPC操作
「メールを開いて」「〇〇さんに返信して」と話しかけるだけで、PCのほとんどの操作が可能になります。
スマートデバイス連携
AIスピーカーと連携して、職場の照明やエアコンを声で操作するなど、物理的な移動の負担を軽減できます。
文字読み上げ機能
視覚に障害のある方にとって、紙の書類やWebサイトの内容をAIが自然な音声で読み上げてくれる機能は、情報へのアクセスを格段に向上させます。

AI技術は、身体的な制約を補い、誰もが同じように情報にアクセスし、業務を遂行できる環境を実現します。

AIの活用で障害者雇用はさらに進む可能性

AIによるサポートが当たり前になれば、企業側の障害者雇用に対するハードルも大きく下がることが期待されます。

これまで「この業務は難しいかもしれない」「特別な配慮が必要でコストがかかる」と考えられていた仕事も、「AIツールを使えば問題なく遂行できる」という認識に変わっていくでしょう。

企業は、障害のある方を「支援の対象」として見るのではなく、AIというツールを共に使いこなす「有能な人材」として捉えるようになります。個々の特性に合わせてAIツールを導入することで、その人の持つポテンシャルを最大限に引き出すことができ、結果として企業全体の生産性向上にも繋がります。これは、障害者雇用が特別なことではなく、当たり前の選択肢となる社会への大きな一歩です。

AIと共生する未来に生まれる新しい仕事

AIは既存の仕事を変化させるだけでなく、これまで存在しなかった全く新しい仕事を生み出しています。これらの新しい仕事の中には、障害のある方が持つ特定の強みや特性を活かせるものが少なくありません。

プロンプトエンジニアやAIプロダクトテスター

AI、特に生成AIをうまく活用するには、的確な「指示(プロンプト)」を出す能力が不可欠です。

プロンプトエンジニア
AIから最適な答えを引き出すための、効果的な質問や指示(プロンプト)を設計・開発する専門家です。論理的思考力や、言葉の細かなニュアンスを捉える能力が求められます。物事を深く探求することが得意な方に適性があるかもしれません。
AIプロダクトテスター
開発されたAIが、不自然な回答や差別的な表現をしないか、ユーザーにとって使いやすいものになっているかをテストする仕事です。細かな違いに気づく注意力や、粘り強く作業を続ける集中力が活かせます。

AI倫理アドバイザーやデータラベラー

AIが社会に浸透する上で、その公平性や倫理観が非常に重要になります。

AI倫理アドバイザー
AIが人種や性別、障害の有無などによって不公平な判断をしないように、開発段階から倫理的な観点で助言を行う仕事です。強い正義感や、多様な視点から物事を考える力が求められます。
データラベラー(アノテーター)
AIが学習するための元データを作成する仕事です。例えば、画像データに「これは猫です」「これは犬です」といった正しい情報をタグ付けしていく、地道で正確性が求められる作業です。コツコツと丁寧な作業を続けることが得意な方に向いています。

特性を活かせるクリエイティブな仕事

画像生成AIや動画生成AIの登場により、専門的なスキルがなくても、誰もがクリエイターになれる時代が訪れています。

例えば、発達障害のある方が持つ独特のこだわりや、他の人とは違うユニークな感性は、AIと組み合わせることで、これまで誰も見たことのないようなアート作品やデザインを生み出す力になります。頭の中にあるイメージをAIに伝えることで、絵を描く技術がなくても、それを形にすることが可能です。

自分の「好き」や「得意」を突き詰めることが、そのまま新しい仕事に繋がるチャンスが大きく広がっているのです。

これからの時代に備えて今から準備できること

5年後の働き方の変化に備え、「自分には何ができるだろう」と不安に思うかもしれません。しかし、特別な準備が必要なわけではありません。日々の小さな一歩が、未来の可能性を大きく広げます。

AIツールに触れてみる・使ってみる

まずは、AIに対する「食わず嫌い」をなくすことが大切です。現在、ChatGPTやMicrosoft Copilot、Google Geminiなど、無料で利用できる優れたAIツールがたくさんあります。

「今日の夕飯の献立を考えて」「仕事の悩みを相談したい」といった簡単な会話からで構いません。AIと対話する中で、その便利さや面白さ、そして「こういう使い方もできるかも」というアイデアが自然と湧いてくるはずです。まずはスマートフォンアプリをダウンロードして、気軽に触れてみることから始めましょう。

自分の「好き」や「得意」を深掘りする

AI時代に価値が高まるのは、人間ならではの感性や興味関心です。「自分は何をしている時に楽しいと感じるか」「どんなことなら時間を忘れて没頭できるか」を改めて考えてみましょう。

  • 絵を描くのが好き
  • 黙々とデータ入力するのが得意
  • 人と話すのが好き
  • 間違い探しが好き

どんな些細なことでも構いません。その「好き」や「得意」が、AIという新しい道具と掛け合わされることで、未来の仕事に繋がる可能性があります。自分の特性を悲観的に捉えるのではなく、未来を切り拓くための「武器」として見つめ直すことが重要です。

支援機関で新しいスキルを学ぶ

「一人で新しいことを始めるのは不安」「PCの操作自体に自信がない」という方もいらっしゃるでしょう。そんな時は、私たちのような支援機関を頼ってください。

就労継続支援B型事業所は、自分のペースで無理なく通いながら、社会との接点を持つことができる場所です。多くの事業所では、PCの基本操作や軽作業など、様々なプログラムが用意されています。

仲間とコミュニケーションを取りながら、新しいスキルを学んだり、自分の得意なことを見つけたりする中で、AI時代への漠然とした不安は、未来への具体的な希望に変わっていくはずです。

未来の働き方に向けた一歩をオリーブで踏み出しませんか

私たち就労継続支援B型事業所オリーブは、関西(大阪、兵庫、京都、奈良)を中心に、障害のある方の「働きたい」という気持ちをサポートしています。AIがもたらす新しい時代の働き方に向けて、オリーブでは皆さんの挑戦を全力で応援します。

PC作業やITスキルを学べる環境

オリーブでは、データ入力や簡単な事務作業、Webサイトの更新作業など、PCを使ったお仕事に力を入れています。職員が一人ひとりのペースに合わせて丁寧にサポートしますので、PCに触るのが初めてという方でも安心してスキルを身につけることができます。これからの時代に不可欠なITスキルを、基礎からじっくり学んでみませんか。

あなたの特性を未来の仕事に繋げるサポート

私たちは、利用者さん一人ひとりの「好き」や「得意」を大切にしています。支援員との定期的な面談を通じて、あなたがどんなことに関心があり、どんな働き方をしたいのかを一緒に考えます。あなたの持つユニークな特性が、AI時代の新しい仕事でどのように活かせるのか、その可能性を一緒に探求し、必要なスキルアップをサポートします。

見学・相談であなたの可能性を一緒に探しましょう

「将来の仕事が不安」「自分に何ができるかわからない」そんな風に感じていたら、ぜひ一度オリーブに見学・相談に来てください。AI時代の働き方について、そしてあなたの未来について、私たちと一緒に話をしてみませんか。

オリーブは、あなたが安心して新しい一歩を踏み出すための温かい居場所です。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしています。

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