お役立ち情報 不安障害(社会不安障害、パニック障害、強迫性障害、PTSD) 働き方の知識
社会不安障害の方に向いてる仕事とは?特徴や探し方、長く続けるコツを解説

社会不安障害(SAD)とは?症状と仕事での悩み
社会不安障害の主な症状と原因
社会不安障害(Social Anxiety Disorder, SAD)は「社交不安症」とも呼ばれ、他人から注目されたり評価されたりする特定の社会的状況に、強い恐怖や不安を感じる精神疾患の一種です。単なる人見知りやあがり症とは異なり、その恐怖や不安から日常生活や社会生活に大きな支障をきたす場合に診断されます。症状は、身体に現れるものと、考え方や行動に現れるものに大別されます。
【社会不安障害の主な症状】
種類 | 具体的な症状の例 |
---|---|
身体症状 | 赤面、発汗、動悸、手足や声の震え、吐き気、腹痛、息苦しさ、めまい、口の渇き |
認知・行動の変化 | 「失敗したらどうしよう」といった否定的な考え(予期不安)が頭から離れない、他人が自分を否定的に評価していると思い込む、不安な状況を避けようとする(回避行動)、不安を隠すために黙り込む、視線を合わせない |
これらの症状は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンなどのバランスの乱れが関係していると指摘されています。また、過去の失敗体験などが発症の引き金となることもありますが、原因は一つではなく、遺伝的要因や環境など複数の要素が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
仕事で直面しやすい具体的な場面
社会不安障害の方が仕事上で特に強い苦痛を感じやすいのは、他者からの評価や注目を浴びる場面です。本人は業務に真摯に取り組もうとしていても、症状によって実力が発揮できず、「仕事ができない」と誤解されることも少なくありません。
<仕事で不安を感じやすい場面の例>
- 電話応対
- 相手の表情が見えず、周りに会話を聞かれていると感じて緊張する。
- 会議やミーティング
- 意見や報告を求められることへの恐怖で、資料をめくる手や声が震える。
- プレゼンテーション
- 大勢の視線が自分に集まる状況が耐え難い。
- 来客対応
- お茶を出す手が震えたり、言葉がうまく出なかったりする。
- 上司への報告・連絡・相談
- 「否定されたらどうしよう」と考えすぎてしまい、タイミングを逃す。
- 職場での雑談や昼食
- 会話の輪に入れず孤立感を感じ、他人が自分をどう思っているか気になってしまう。
これらの悩みは、本人の特性に起因する切実な問題です。
社会不安障害の方に向いてる仕事の4つの特徴
社会不安障害の方が安心して能力を発揮するには、仕事内容や職場環境選びが重要です。ここでは、向いている仕事の4つの特徴を解説します。
特徴1:対人業務が少ないまたは限定的
社会不安障害の症状は、他者とのコミュニケーション場面で強く現れる傾向があります。そのため、不特定多数と接する仕事より、一人で黙々と取り組める、または関わる相手が限定的な仕事が向いています。チャットやメールなど、文字でのコミュニケーションが中心の業務も心理的負担が少ないためおすすめです。
<対人業務が少ない仕事の例>
- データ入力
- Webライター
- 文字起こし
- プログラマー
- Webデザイナー
- 工場のライン作業
- 倉庫でのピッキング・梱包
- 清掃員
- 校正・校閲
特徴2:自分のペースで進められる裁量がある
「常に誰かに見られている」といったプレッシャーを感じやすいため、他人の進捗に合わせる必要がある仕事より、自分の裁量でペース配分を決められる仕事が向いています。納期さえ守れば、体調に合わせて作業時間を調整できる環境が理想的です。自分のコンディションを管理しながら業務を進めることで、心身の消耗を防ぎ、安定就労につながります。
<自分のペースで進めやすい仕事の例>
- 在宅で行うWeb系の仕事(ライター、デザイナーなど)
- 研究職・開発職
- CADオペレーター
- ハンドメイド作家
- 農業
特徴3:マニュアルや手順が決まっている定型業務
予測不能な事態や、臨機応変な対応を求められる状況に強いストレスを感じることがあります。作業手順やルールが明確な定型業務は、安心して取り組みやすい仕事です。マニュアルに沿って作業をこなすことで、「間違えたらどうしよう」という不安が軽減され、業務に集中しやすくなります。
<定型業務が多い仕事の例>
- 事務職(データ入力、書類作成など)
- 工場のライン作業
- 倉庫内軽作業
- ビルメンテナンス
- ポスティング
特徴4:在宅勤務やリモートワークが可能
職場環境そのものがストレスの原因になることがあります。同僚の視線や会話、電話の音など、常に周囲の刺激にさらされるためです。在宅勤務やリモートワークは、こうした外部からの刺激を大幅に減らせます。自宅という安心できる空間で仕事ができるため、過度な緊張から解放され、業務に集中しやすくなるでしょう。
<在宅勤務・リモートワークしやすい仕事の例>
- プログラマー、SE
- Webデザイナー、Webライター
- 動画編集者
- オンラインアシスタント
- カスタマーサポート(メール・チャット対応)
社会不安障害の方が避けたほうが良い仕事の特徴
向いている仕事と同時に、避けたほうが良い仕事の理解も重要です。ここでは、特性上、強いストレスを感じやすい仕事の特徴を3つ紹介します。
人前での発表やプレゼンテーションが多い仕事
大勢の前で注目を浴びる状況は、社会不安障害の方が最も苦手とする場面です。会議での発表、セミナー講師、商品説明などが頻繁な仕事は、強いプレッシャーから本来の能力を発揮できない可能性があります。こうした経験が重なると、自己肯定感の低下につながる恐れがあります。
<具体例>
- 営業職
- セミナー講師、インストラクター
- コンサルタント
- 企業の広報・PR担当
個人ノルマや成果へのプレッシャーが強い仕事
厳しい個人ノルマが課せられる仕事も大きな負担となります。「達成できなかったらどうしよう」という予期不安を増大させ、特に成果が給与に直結する歩合制の仕事は、精神的な安定を保つのが難しい場合があります。自分のペースで着実に業務をこなし、そのプロセスを評価してもらえる環境が適しています。
<具体例>
- 営業職(特に新規開拓やテレアポ)
- 販売職(ノルマのある店舗)
- コールセンター(発信業務)
予測不能なトラブルや急な対応が求められる仕事
予期せぬ出来事への冷静な対処が苦手な場合があります。クレーム対応や緊急対応など、マニュアル通りに進まない業務が多い仕事は、強いストレスを感じやすいでしょう。いつ何が起こるか分からない緊張感は心身を疲弊させるため、あらかじめ決められた手順に沿って落ち着いて取り組める仕事が向いています。
<具体例>
- 接客業(特にクレーム対応が多い業種)
- コールセンター(受信業務、テクニカルサポートなど)
- 秘書
- 報道関係の仕事
- 飲食店のホールスタッフ
自分に合った仕事を見つけるための具体的な探し方
向いている仕事の探し方を順序立てて解説します。ミスマッチを防ぎ、自分に合った職場を見つけるための鍵となります。
自己分析で得意と苦手な環境を把握する
まず、自分自身を深く理解することから始めましょう。社会不安障害という特性に加え、自身の「得意・苦手」「好き・嫌いな作業」「安心できる環境・ストレスを感じる環境」などを具体的に書き出すことが有効です。
<自己分析のヒント>
- 過去の経験を振り返る:楽しかった作業、苦痛だった作業は何か。どんな場面で褒められ、どんな環境で集中できたか。
- 日常生活から考える:一人で没頭するのは好きか。調べ物や細かい作業は得意か。
- 支援者や家族に聞いてみる:客観的に見て、自分はどんなことに向いていそうか。
自己分析で自分の「取扱説明書」を作るイメージで特性を整理することが、仕事選びの羅針盤になります。
無理のない働き方を検討する
いきなり正社員のフルタイム勤務だけが選択肢ではありません。特にブランクがある方や症状が不安定な方は、心身への負担が少ない働き方から始める「スモールステップ」が重要です。
短時間勤務やアルバイトから試す
1日数時間、週に数日といった短時間勤務から始め、働くこと自体に慣れる方法があります。「働く」という生活リズムを取り戻し、「自分にもできる」という成功体験を積むことが自信につながります。もし合わなくても、比較的シフト変更や退職がしやすい点もメリットです。
障害者雇用枠の活用も視野に入れる
社会不安障害で医師の診断を受けている場合、「精神障害者保健福祉手帳」を取得すると「障害者雇用枠」での就職も選択できます。障害者雇用とは、企業が障害のある方を対象に設けた採用枠で、障害への理解や配慮を得やすい大きなメリットがあります。
【障害者雇用の主なメリット】
メリット | 具体的な内容 |
---|---|
合理的配慮を受けやすい | 電話応対の免除、会議での発表形式の変更、静かな座席への配置、体調不良時の休憩など |
定着率が高い傾向 | 障害特性への理解があるため、ミスマッチが起こりにくく、長く働きやすい環境が多い |
通院への配慮 | 定期的な通院のための休暇取得などに配慮を得やすい |
相談しやすい環境 | 産業医や専門の相談員が配置されている場合があり、悩みを相談しやすい |
自分の障害を開示して働く「オープン就労(障害者雇用)」は、安心して長く働くための有力な選択肢です。
専門の就労支援機関に相談してみる
仕事探しを一人で抱え込むと、不安や焦りが募りがちです。障害のある方の就労を専門にサポートする「就労支援機関」の活用をおすすめします。専門の支援員が、自己分析から求人探し、面接対策、就職後の定着支援まで一貫してサポートしてくれます。
仕事を長く続けるために大切な4つのポイント
自分に合った仕事を見つけることと同じくらい、その仕事を長く続けることも重要です。安定して働き続けるための4つのポイントを紹介します。
専門医による治療を継続する
仕事のパフォーマンスを安定させるには、心身の状態を整えることが不可欠です。自己判断で通院や服薬を中断すると、症状が悪化し、就労継続が困難になる場合があります。医師に仕事の悩みを相談することも有効です。定期的な通院を続け、専門家のアバイスのもと仕事と治療を両立させましょう。
生活リズムを安定させる
規則正しい生活習慣は心と体の健康を支えます。特に、睡眠、食事、運動はメンタルヘルスを保つ上で非常に重要です。
- 睡眠
- 決まった時間に起床・就寝を心がけ、質の良い睡眠でストレスへの抵抗力を高めます。
- 食事
- 1日3食、栄養バランスの取れた食事を摂ることが基本です。
- 運動
- ウォーキングなどの軽い有酸素運動は、気分をリフレッシュさせ、不安を和らげる効果が期待できます。
生活リズムが安定すると、体調の波が少なくなり、仕事にも集中しやすくなります。
自分に合ったリフレッシュ方法を持つ
仕事でストレスを感じた時に、上手に気分転換する方法を見つけておきましょう。ストレスを溜め込まず、こまめに発散することが心の健康を保つ秘訣です。好きな音楽を聴く、入浴、散歩など、自分が心から「心地よい」と感じられる方法がポイントです。
完璧を目指さず職場に理解を求める
真面目で責任感が強い傾向から、完璧主義になりがちですが、「すべて完璧に」という思いは自分を追い詰めます。「6〜7割できれば上出来」くらいの気持ちで仕事に臨みましょう。一つできないことがあっても自分を責める必要はありません。また、上司や同僚に可能な範囲で苦手なことを伝えておくと、必要な配慮を得やすくなり、誤解を防ぐことにもつながります。
社会不安障害の方が利用できる就労支援機関
障害のある方の仕事探しをサポートする専門機関は全国に設置されています。多くは無料で相談できるので、一人で悩まず活用を検討しましょう。
ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)には、障害のある方を専門に支援する「専門援助部門」窓口があります。専門知識を持つ職員が、職業相談や障害者雇用枠の求人紹介、応募書類の添削、面接練習などを行います。障害者雇用の求人を探す際の基本的な相談先です。
障害者就業・生活支援センター
「なかぽつ」とも呼ばれ、仕事(就業)と日常生活(生活)の支援を一体的に行う機関です。就職活動や就職後の職場定着支援に力を入れているのが特徴で、金銭管理や健康管理など生活面の困りごとについても相談でき、総合的なサポートが受けられます。
就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害のある方が、必要な知識やスキルを訓練する通所型の福祉サービスです(原則2年以内)。ビジネスマナーやPCスキル、ストレスコントロールなど個々の課題に合わせたプログラムが提供され、職場探しから就職後の定着まで支援します。
就労継続支援B型事業所
「すぐに一般企業で働くのは不安」「自分のペースで働くことに慣れたい」という方向けの福祉サービスです。雇用契約を結ばず、比較的簡単な作業などを自分の体調やペースに合わせて行い、作業対価として「工賃」が支払われます。利用期間の定めがなく、心身の状態を整えながら社会とのつながりを持てる場所です。
関西で自分のペースで働ける場所を探すならオリーブへご相談を
ここまで、社会不安障害の方が自分に合った仕事を見つけ、長く働き続けるためのヒントをお伝えしてきました。
もしあなたが、「いきなり企業で働くのはハードルが高い」「まずは安心して通える場所で、働く練習から始めたい」と感じているなら、私たち就労継続支援B型事業所オリーブに相談してみませんか?
オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで事業所を運営し、一人ひとりのペースを大切にした支援を心がけています。対人関係のストレスが少ない軽作業を中心に、あなたの「やってみたい」を応援します。専門の支援員が常駐し、仕事のことはもちろん、生活面の悩みも気軽に相談できる、安心の居場所づくりを目指しています。
見学や体験利用も随時受け付けていますので、「どんな場所か見てみたい」というだけでも大歓迎です。まずはお気軽にお問い合わせください。あなたの次の一歩を、オリーブは全力でサポートします。