お役立ち情報 働き方・キャリア

40代で「発達障害グレーゾーン」と診断されたら?ミドル世代のキャリアと生き方の再構築

40代というキャリアの重要な時期に、予期せず「発達障害のグレーゾーン」と診断され、これからの仕事や生き方に深く悩んでいませんか?その困難は、決してあなたの努力不足が原因ではありません。昇進や職場環境の変化によって、これまで無意識にカバーしてきた特性が顕在化した結果かもしれません。

この記事では、なぜミドル世代で発達障害に気づくのか、その社会的背景や個人の環境変化を多角的に解き明かします。そして、診断をキャリアの終わりではなく、自分自身を深く理解し、より自分らしく輝ける働き方や生き方を再構築するための「新たなスタート」と捉えるための具体的なヒントを解説します。

マネジメント業務の壁、家庭でのすれ違い、そして過去の自分への後悔。それら一つひとつと向き合い、時には立ち止まって福祉サービスのような新しい選択肢に目を向けることで、これからの人生をより豊かにする道筋が見えてくるはずです。

なぜ40代で?ミドル世代で発達障害に気づく背景

近年、40代や50代といったミドル世代になってから、初めて自身の発達障害の特性に気づき、医療機関を受診する人が増えています。長年、社会人としてキャリアを積んできたこの時期に、なぜ自身の特性と向き合うことになるのでしょうか。それには、個人の環境変化と、社会全体の意識の変化という二つの側面が大きく関わっています。

昇進や役割の変化で顕在化する困難

若い頃は、個人のスキルや高い集中力を活かせる専門業務で評価を得てきた人も少なくありません。しかし40代になると、プレイヤーからマネージャーへと役割が変わることが多くなります。昇進に伴い、部下の育成、チーム全体の進捗管理、他部署との交渉といった、より複雑で曖昧さを含むコミュニケーション能力や、複数の業務を同時にさばくマルチタスク処理能力が求められるようになります。

このような役割の変化は、発達障害の特性を持つ人にとって、新たな困難として現れやすいのです。例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の傾向がある人は、相手の意図や感情を言葉以外から読み取ることが苦手な場合があり、部下の「言外のサイン」に気づけず、関係性が悪化することがあります。また、ADHD(注意欠如・多動症)の傾向がある人は、複数のタスクを同時に管理することに困難を感じ、ケアレスミスや納期遅延を招いてしまうことがあります。これまで強みだった特性が、役割の変化によって逆に「苦手」として表面化し、急に仕事がうまくいかなくなったと感じるのです。

これまで無意識に行ってきた「無理」の限界

発達障害の特性を持つ人の多くは、幼少期から「周りに合わせなければ」「普通でいなければ」と、無意識のうちに本来の自分とは違う自分を演じ、社会に適応しようと多大なエネルギーを費やしています。これは「カモフラージュ」や「マスキング」と呼ばれています。

20代や30代の頃は、十分な気力や体力でこの「カモフラージュ」を維持できたかもしれません。しかしミドル世代になると、仕事の責任は格段に重くなり、プライベートでは子育てや親の介護といった問題も生じ、心身にかかる負荷は増大します。自身のキャパシティが限界に近づく中で、これまでのように「無理をして周りに合わせる」ことが難しくなり、うつ病や適応障害といった二次障害として、心身の不調が表面化することも少なくないのです。

社会の認知度向上と、診断を受けて初めて腑に落ちる過去の経験

近年、メディアなどを通じて「大人の発達障害」に関する情報が増え、社会全体の認知度が向上したことも、ミドル世代の気づきを後押ししています。特に、自分の子どもの発達に関する悩みをきっかけに、「この特性は、自分にも当てはまるのではないか」と気づくケースは非常に多いと言われています。

診断を受けることは、ネガティブな「レッテル貼り」ではなく、長年の謎が解けるような「腑に落ちる」経験となります。「なぜ、いつも人間関係でつまずくのだろう」「自分は怠け者でダメな人間だ」。そう長年抱えてきた自己否定の感情や失敗体験が、「性格」や「努力不足」のせいではなく「脳の特性」によるものだったと客観的に理解できることで、自分を責める気持ちから解放され、大きな安堵感を得られるのです。診断は、過去の自分と和解し、未来へ向けて新たな一歩を踏み出すための重要な羅針盤となり得ます。

キャリアの再構築:診断を働き方を見直すきっかけに

ミドル世代、特に管理職にとって、発達障害の特性と業務内容のミスマッチは深刻な問題です。しかし、診断を機に自身の特性を客観的に理解することで、キャリアを悲観するのではなく、自分に合った働き方へと再構築していくことが可能です。

自分の「得意」と「苦手」を棚卸しする

まずは、現在の業務を「得意なこと(苦なくできること、集中できること)」と「苦手なこと(著しくエネルギーを消耗すること、ミスが多いこと)」に客観的に分類してみましょう。そして、上司や人事部に相談し、業務内容を調整できないか検討することが第一歩です。

例えば、データ分析や資料作成といった論理的思考を活かせる業務は得意だが、部下との雑談や曖昧な指示の伝達は苦手かもしれません。その場合、チーム内の他のメンバーに一部のマネジメント業務を補ってもらう代わりに、自分は専門性を活かした業務でチームに貢献するという「適材適所」の配置転換も考えられます。これはチーム全体の生産性向上にも繋がる合理的な判断です。

「合理的配慮」という選択肢を理解する

自身の障害について職場で開示(カミングアウト)するかは慎重な判断が必要ですが、開示することで「合理的配慮」を求めることが可能になります。2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による合理的配慮の提供は「努力義務」から「義務」へと変わりました。これは、障害のある人が、障害のない人と同等の機会を得るために、企業側が個々の状況に応じた必要な変更や調整を行う責任があることを意味します。

合理的配慮の具体例

指示の明確化
口頭だけでなく、チャットやメール、文書で指示を出してもらう。タスクの優先順位を明確に示してもらう。
環境の調整
聴覚過敏がある場合、電話が少なく人の往来が少ない席へ移動させてもらう。パーテーションの設置やノイズキャンセリングイヤホンの使用を許可してもらう。
業務の調整
マルチタスクを減らし、シングルタスクに集中できるような業務分担にしてもらう。業務マニュアルを整備してもらう。
ツールの活用
タスク管理アプリやスケジュール管理ツール、音声入力ソフトなどの使用を認めてもらう。

自分の特性を無理に変えようとするのではなく、環境を調整することで働きやすさを確保するという発想の転換が、キャリアを長く続けていく上で非常に重要になります。

家庭と自己の再構築:自分自身との和解

診断は仕事だけでなく、家庭生活や自分自身の内面にも大きな影響をもたらします。これまで抱えてきた生きづらさの正体を知り、自分や家族と改めて向き合うことは、これからの人生を再設計するための大切なプロセスです。

家族との関係性を見つめ直す

パートナーや家族に診断結果を伝えることは勇気がいるかもしれませんが、これまで説明できなかったすれ違いの理由が明らかになり、関係改善に繋がることも少なくありません。例えば、「なぜ話を聞いてくれないの?」というパートナーの不満が、愛情の問題ではなく、聴覚情報処理の特性によるものだったと理解できれば、無用な対立を避け、具体的なコミュニケーションの工夫(要点を書いて見せるなど)を共に考えることができます。

一方で、発達障害の特性を持つパートナーとの情緒的な相互関係が築きにくいことから、もう一方が不安や抑うつなど心身の不調に陥る「カサンドラ症候群」という状態も知られています。診断を一方的な理由付けにするのではなく、パートナーが抱えてきた苦悩にも耳を傾け、必要であれば夫婦でカウンセリングを受けるなど、共に理解を深めていく姿勢が大切です。

過去の自分を受け入れる「セルフコンパッション」

「あの時の失敗も、特性のせいだったのか…」と過去の出来事が腑に落ちると同時に、後悔の念に苛まれてしまう人もいます。ここで大切なのは、過去の自分を責めるのではなく、「よく今まで一人で頑張ってきたね」と受け入れ、労ってあげることです。

この考え方は「セルフコンパッション(自分への思いやり)」と呼ばれます。親しい友人が困難に直面していれば優しい言葉をかけるように、自分自身の不完全さや失敗も、それも自分の一部として優しく受け入れること。それが自己肯定感を育み、前へ進むためのエネルギーになります。

一人で抱え込まず専門機関に相談する

診断は、自分探しの旅の終わりではなく始まりです。しかし、一人でキャリアや生き方を再構築するのは簡単なことではありません。各都道府県や指定都市に設置されている「発達障害者支援センター」は、本人だけでなく家族からの相談も受け付けている公的な専門機関です。臨床心理士や社会福祉士などの専門家が、生活や仕事に関する様々な相談に応じ、必要な情報提供や助言を行ってくれます。まずはこうした専門機関に繋がり、客観的なアドバイスを得ることが重要です。

立ち止まり、新しい「働き方」を考える選択肢

これまでのキャリアや働き方を見つめ直した結果、「今の会社で働き続けるのは難しいかもしれない」と感じることもあるでしょう。心身が燃え尽きてしまう前に一度立ち止まり、これまでとは全く違う新しい働き方を模索することも、勇気ある選択です。

多様な働き方を知る

一般企業でフルタイムで働くことだけが全てではありません。ミドル世代までに培った豊富な経験や専門スキルは、形を変えれば様々な場所で活かせます。

専門性を活かした働き方
フリーランスや業務委託として、得意な分野の仕事に特化する。
時短勤務や契約社員
働く時間や業務範囲を限定し、心身の負荷をコントロールする。
就労移行支援の活用
障害のある方向けの職業訓練校である「就労移行支援事業所」で、特性に合ったスキル(Webデザイン、プログラミングなど)を学び、再就職を目指す。

大切なのは、世間体や収入といった外的要因だけでなく、自分自身の心身の健康や「どう生きたいか」という内なる声に耳を傾けることです。

就労継続支援B型を「心とキャリアのリハビリの場」に

もし長年の社会人生活で心身ともに疲れ果て、すぐに次のステップへ進む気力がないと感じるなら、「就労継続支援B型事業所」を一時的な「リハビリの場」として活用する方法があります。

就労継続支援B型とは、障害や病気のある方が、自分の体調やペースに合わせて軽作業などを行いながら、工賃(生産活動に対する対価)を得られる福祉サービスです。一般的な就労と違い雇用契約を結ばないため、週1日や1日数時間といったごく短い時間から利用を開始できます。

ミドル世代の方がB型事業所を利用するメリットは、単に作業をするということだけではありません。

心身の休息
「働かなければ」というプレッシャーから解放され、安心して過ごせる居場所を確保できます。
生活リズムの再構築
定期的な通所で、乱れがちな生活リズムを整えるきっかけになります。
自己理解の深化
様々な作業を試す中で、自分の新たな「得意」や「心地よさ」を発見できます。
キャリアの棚卸し
支援員と相談しながら、これまでの経験を整理し、今後の方向性をゆっくり考えられます。

B型事業所は社会から離れる場所ではなく、 自分らしい働き方を再発見し、次のステップへ進むためのエネルギーを充電する場所として、積極的に活用することができるのです。

キャリアの岐路に立つあなたへ オリーブという選択肢

もしあなたが今、40代という人生の転換点でこれからの働き方に悩み、立ち止まっているのなら。私たち就労継続支援B型事業所オリーブが、あなたの人生の再設計をサポートできるかもしれません。

一度立ち止まって働き方をリセットできる場所

オリーブは、関西(大阪、兵庫、京都、奈良)で複数の事業所を運営しています。私たちは、これまで仕事や人間関係で懸命に頑張ってこられたミドル世代の方が、一度すべてをリセットし、安心して羽を休められる場所でありたいと考えています。週1日から、ご自身のペースで通いながら、焦らずにこれからのこと、ご自身のことをスタッフと一緒に考えていきませんか。

あなたの経験と強みを活かせる作業がここにあります

「福祉作業所は、単純作業ばかりでは?」というイメージがあるかもしれません。しかし、オリーブではPCを使ったデータ入力やWebサイトの制作補助、アクセサリー作り、企業から請け負う軽作業など、多種多様な作業を用意しています。あなたがこれまでのキャリアで培ってきた経験や知識、そしてご自身の「好き」や「得意」を活かせる仕事が、きっと見つかります。

ミドル世代の人生の再設計をご相談ください

40代からのキャリアの再構築は、決して簡単なことではありません。だからこそ、一人で抱え込まずに、専門の支援員に相談してみませんか?オリーブには、障害福祉の知識と経験が豊富なスタッフが在籍しています。あなたのこれまでのご経験や特性、そしてこれからの希望についてじっくりお話を伺い、あなたが自分らしい一歩を踏み出すためのお手伝いをさせていただきます。見学や相談は随時受け付けておりますので、まずはお気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ

就労に関する疑問やお悩み、
お気軽にご相談ください。

お問い合わせ