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統合失調症の方への接し方とは?家族や職場で心がけたい基本と相談先

ご家族や職場の同僚など、身近な人が統合失調症と診断された時、「どう接すれば良いのだろう」「どんな言葉をかければ本人のためになるのだろう」と深く悩んでしまう方は少なくありません。良かれと思ってかけた言葉が、かえって本人を傷つけてしまうこともあり、その関わり方の難しさに戸惑うのは当然のことです。

この記事では、まず統合失調症という病気の基本的な知識を解説し、その上で、ご家族や職場の人が当事者と接する際の基本姿勢から、関係性別の具体的なサポート方法までを網羅的にご紹介します。また、接し方に悩んだ時に頼れる専門の相談先についても詳しく解説します。正しい知識を身につけ、適切な関わり方を学ぶことが、ご本人の安心と回復、そしてあなた自身の心の負担を軽減することにも繋がります。

まず知りたい統合失調症の基礎知識

適切な接し方を考える上で、まずは統合失調症という病気について正しく理解することが不可欠です。誤解や偏見を持たず、客観的な知識を身につけましょう。

統合失調症とはどのような病気か

統合失調症は、考えや気持ちがまとまりにくくなる精神疾患の一つです。決して珍しい病気ではなく、約100人に1人がかかると言われており、誰にでも起こりうる身近な病気です。発症の原因はまだ完全には解明されていませんが、脳の機能的な障害が関係していると考えられています。遺伝的要因、心理的・社会的なストレスなど、複数の要因が複雑に絡み合って発症するとされています。

重要なのは、統合失調症は「こころが弱い」からなるのではなく、「脳の機能的な病気」であるということです。そのため、本人の気力や根性で治るものではなく、適切な治療と周囲のサポートが回復のために不可欠となります。症状は大きく「陽性症状」「陰性症状」、そして「認知機能障害」に分けられます。

幻覚や妄想などの「陽性症状」

陽性症状とは、健康な時にはなかったものが、新たに出現する症状のことです。非常に目立ちやすく、周囲が病気に気づくきっかけになることが多いですが、本人にとっては現実そのものであり、強い苦痛や恐怖を感じています。

幻覚:
現実にはないものをあるように感じる症状です。中でも、自分を批判したり命令したりする声が聞こえる「幻聴」が最も多く見られます。他にも、ありえないものが見える「幻視」や、変な匂いがする「幻嗅」などがあります。

 

妄想:
明らかに事実とは異なることを、強い確信をもって信じ込んでしまう症状です。誰かに監視されている、悪口を言われていると感じる「被害妄想」や、常に周りから見張られていると感じる「注察妄想」などが代表的です。周囲がどんなに説得しても、その考えを修正することは困難です。

 

思考の混乱:
考えがまとまらず、話が支離滅裂になったり、会話が途切れたりします。本人も自分の考えをうまく表現できず、混乱している状態です。

 

意欲が低下するなどの「陰性症状」

陰性症状は、健康な時にあったものが失われ、活動性が低下する症状です。陽性症状に比べて目立ちにくいため、周囲からは「怠けている」「やる気がない」と誤解されがちですが、これも病気の症状の一つです。

感情の平板化(感情の鈍麻):
喜怒哀楽といった感情の表現が乏しくなり、表情が硬くなったり、声のトーンが単調になったりします。周りの出来事に関心を示さなくなることもあります。

 

意欲の低下(無為):
何かをする意欲や気力がなくなり、身の回りのこと(入浴や着替えなど)にも無頓着になります。部屋に閉じこもりがちになり、一日中ぼーっと過ごすこともあります。

 

思考の貧困化:
会話の数が少なくなったり、質問に対する返答が短く、内容が乏しくなったりします。

 

社会的引きこもり:
他人との関わりを避け、自室や家に閉じこもるようになります。

 

これらに加え、近年では「認知機能障害」も重要な症状として注目されています。これは、記憶力、注意力、集中力、計画を立てて実行する能力(遂行機能)などが低下する症状です。物忘れが多くなったり、仕事や家事の段取りが悪くなったりするため、日常生活や社会生活を送る上で大きな困難となります。

治療の基本は薬物療法と心理社会的療法

統合失調症の治療は、主に「薬物療法」と「心理社会的療法」の2つの柱で行われます。

薬物療法の中心となるのは、脳の神経伝達物質(特にドーパミン)の働きを調整する「抗精神病薬」です。この薬には、幻覚や妄想といった陽性症状を抑える効果や、不安定な精神状態を安定させる効果があります。また、症状が改善した後も、再発を予防するために少量の薬を飲み続けることが非常に重要です。薬の効果や副作用には個人差があるため、主治医とよく相談しながら、自分に合った薬と量を見つけていくことが大切です。

心理社会的療法は、薬物療法と並行して行われるリハビリテーションです。これには、病気についての知識を学び、対処法を身につける「心理教育」、対人関係のスキルを訓練する「SST(社会生活技能訓練)」、軽作業などを通じて集中力や体力を回復させる「作業療法」などがあります。これらのリハビリテーションを通じて、認知機能の改善や社会生活能力の向上を図り、その人らしい生活を取り戻すことを目指します。

統合失調症の方と接するときの5つの基本姿勢

病気の知識を踏まえた上で、当事者と接する際にはどのような姿勢を心がければ良いのでしょうか。ここでは、関係性を問わず共通する5つの基本姿勢をご紹介します。

まずは本人の話をじっくり聴く

統合失調症の方は、幻覚や妄想による恐怖、周囲に理解されない孤独感や不安など、様々なつらさを抱えています。まずは、批判や評価をせず、本人の話にじっくりと耳を傾ける「傾聴」の姿勢が何よりも大切です。

「うん、うん」「そうなんだね」と相槌を打ったり、「それはつらかったね」「不安なんだね」と本人の感情を言葉にして返したりすることで、本人は「自分の気持ちを分かってくれた」と安心感を得ることができます。無理に聞き出そうとしたり、アドバイスをしたりする必要はありません。ただ、ありのままの話を受け止め、味方であることを伝えるだけで、本人の孤立感は大きく和らぎます。この信頼関係が、後の治療への協力にも繋がっていきます。

幻聴や妄想の内容を否定も肯定もしない

本人から幻聴や妄想の話を打ち明けられた時、どう応えれば良いか戸惑うかもしれません。ここで最も重要なのは、「否定も肯定もしない」という中立的な態度です。

頭ごなしに「そんなことはない」「気のせいだ」と否定すると、本人は「誰も信じてくれない」と心を閉ざし、かえって妄想を強固にしてしまいます。かといって、「そうだね、みんなが悪口を言っているね」と安易に肯定してしまうと、妄想の世界を助長することになりかねません。

正解は、本人が感じているつらさや恐怖に寄り添いつつ、妄想の内容そのものには同意しない、という姿勢です。例えば、「悪口が聞こえてきてつらいんだね」「誰かに狙われていると感じていて怖いんだね」というように、本人の「体験」や「感情」は受け止めるけれど、それが事実かどうかには触れない、という対応を心がけましょう。「私には聞こえない(見えない)けれど、あなたにはそう感じられるんだね」と伝えるのも一つの方法です。

安心できる環境づくりを心がける

統合失調症の方は、脳が過敏な状態にあり、些細な刺激でも大きなストレスに感じてしまうことがあります。ストレスは症状の悪化や再発の大きな引き金となるため、本人が安心して過ごせる、刺激の少ない穏やかな環境を整えることが重要です。

具体的には、以下のような配慮が挙げられます。

大声で話したり、感情的に怒鳴ったりしない。
一度にたくさんの情報を伝えたり、早口で話したりするのを避ける。

 

急に予定を変更したり、本人を驚かせたりしない。
テレビの音量を下げる、静かな部屋で休めるようにするなど、物理的な刺激を減らす。

 

穏やかで予測可能な環境は、本人の不安を軽減し、エネルギーの消耗を防ぎます。回復のためには、まず「安全基地」となる環境が必要なのです。

本人のペースを尊重し焦らせない

陰性症状や認知機能障害の影響により、統合失調症の方は、考えたり、決断したり、行動に移したりするのに時間がかかることがあります。周りから見るとじれったく感じられるかもしれませんが、「早くして」「まだ終わらないの?」といった言葉で急かしたり、責めたりするのは絶対にやめましょう。

焦らされることは本人にとって大きなプレッシャーとなり、かえって混乱して何もできなくなってしまいます。本人が自分のペースで物事に取り組めるように、根気強く見守る姿勢が大切です。本人が何かを決めかねている時は、選択肢を2つか3つに絞って提示するなど、決断しやすいように手助けするのも良い方法です。本人が自分で考え、自分で決めるというプロセスを尊重することが、自信の回復につながります。

感情的な批判や過度な干渉は避ける

家族など身近な人の感情的な接し方が、本人の症状に大きく影響することが研究で分かっています。これを「EE(Expressed Emotion:感情表出)」と呼びます。家族が本人に対して批判的・敵対的であったり、過度に干渉したりする「高EE」の家庭では、そうでない家庭に比べて再発率が著しく高くなることが知られています。

「なぜもっと頑張れないんだ」「怠けているだけだろう」といった批判的な言葉や、「あれもダメ、これもダメ」と本人の行動を過度に管理・制限するような干渉は、本人を追い詰め、病状を悪化させてしまいます。良かれと思っての発言や行動が、逆効果になってしまうのです。

大切なのは、本人を一人の人間として尊重し、適度な距離感を保つことです。「~すべきだ」という命令的な言い方ではなく、「~してみるのはどうかな?」という提案の形にするなど、冷静で穏やかなコミュニケーションを心がけましょう。

【関係性別】統合失調症の方への具体的な接し方

基本姿勢を踏まえた上で、ここでは「家族」と「職場」という関係性別に、より具体的な接し方のポイントを解説します。

家族やパートナーができるサポート

最も身近な存在である家族のサポートは、本人の回復にとって非常に重要です。しかし、家族だけですべてを抱え込む必要はありません。無理のない範囲で、できることから始めましょう。

服薬管理や通院をさりげなく支える

統合失調症の治療において、処方された薬をきちんと飲み続けることは再発防止のために極めて重要です。しかし、本人は病気の影響で薬の重要性を理解できなかったり、意欲がわかずに管理ができなかったり、あるいは副作用がつらくて飲みたくないと感じていたりすることがあります。

「薬を飲んだ?」と毎日問い詰めると、本人も監視されているようで息苦しく感じてしまいます。お薬カレンダーやピルケースを活用したり、「食事が終わったから、お薬の時間だね」とさりげなく声をかけたりするなど、本人が自然に服薬できるような工夫をしましょう。また、通院に付き添うことも大きな支えになります。本人の安心につながるだけでなく、診察の場で家族から見た本人の普段の様子を医師に伝えることで、より適切な治療に繋がります。

安定した生活リズムづくりを手伝う

不規則な生活は心身のバランスを崩し、症状を不安定にさせる原因となります。特に、昼夜逆転や不眠は再発のサインであることも多いため、できるだけ安定した生活リズムを保てるようにサポートすることが大切です。

無理強いは禁物ですが、「天気が良いから一緒に少し散歩しない?」「決まった時間に食事にしよう」などと誘いかけ、本人が日中に活動し、夜に眠れるようなきっかけ作りを手伝いましょう。家事などの役割を何か一つでも持ってもらうことも、生活にメリハリをつけ、自信を取り戻すきっかけになることがあります。本人の状態を見ながら、簡単なことからお願いしてみましょう。

家族自身も休息をとり無理をしない

当事者を支える家族は、先の見えない不安や日々の緊張から、心身ともに疲れ果ててしまいがちです。しかし、サポートする側が倒れてしまっては元も子もありません。家族が安定した精神状態でいることが、結果的に本人の安心感にも繋がります。

意識的に自分のための時間を持ち、趣味や好きなことをしてリフレッシュすることが大切です。「本人を置いて自分だけ楽しむなんて…」と罪悪感を感じる必要は全くありません。後述する相談機関を利用したり、ショートステイなどの福祉サービスを利用したりして、一時的に介護から離れる時間を作ることも検討しましょう。家族が笑顔でいることが、何よりの薬になるのです。

職場の同僚や部下への接し方

職場は、本人にとって社会との繋がりを保つ重要な場所です。安心して働き続けられるよう、適切な配慮と理解ある対応が求められます。

合理的配慮について本人と話し合う

障害者雇用促進法では、事業主に対して、障害のある従業員が働く上での障壁を取り除くための「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。どのような配慮が必要かは人によって異なるため、まずは本人と上司、必要であれば産業医や人事担当者を交えて、具体的な内容を話し合うことが重要です。

【合理的配慮の具体例】

業務指示:
口頭だけでなく、メモやメールなど文字で指示を出す。一度に多くの指示をせず、一つずつ伝える。

 

業務環境:
幻聴などの影響を受けにくいよう、静かな席に配置する。休憩をこまめに取れるようにする。

 

勤務時間:
通院のための休暇や、ラッシュを避けるための時差出勤、体調に合わせた短時間勤務などを認める。

 

業務内容:
得意な作業を中心に任せる。プレッシャーの大きい業務や、急な変更が多い業務を避ける。

 

これらの配慮は、本人が能力を発揮し、安定して働き続けるために不可欠です。

不調のサインと対応を事前に決めておく

統合失調症は、症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。再発の兆候(不調のサイン)を早期に察知し、悪化する前に対処することが大切です。

「最近、眠れていないようだ」「独り言が増えた」「些細なことでイライラしている」といった不調のサインが見られた時に、どのように対応するかを、あらかじめ本人と職場で話し合っておきましょう。これを「リカバリープラン」や「サポートプラン」と呼びます。例えば、「サインが見られたら、まず直属の上司に報告する」「業務を一時的に軽減する」「早退を促す」といったルールを決めておくことで、いざという時に本人も周囲も慌てず、冷静に対応することができます。

プライバシーに配慮し過度な特別扱いをしない

本人の病気に関する情報は、非常にデリケートな個人情報です。本人の同意なく、他の従業員に病名や症状を伝えることは絶対に避けてください。必要な配慮を行う上で、情報を共有する必要がある場合も、その範囲は最小限に留めるべきです。

また、良かれと思って過度に特別扱いをすることも、かえって本人を孤立させ、居心地の悪さを感じさせてしまうことがあります。「必要な配慮」は行うべきですが、それ以外の場面では、一人の同僚として対等に接することが大切です。仕事の成果を正当に評価し、時には意見を求め、チームの一員として尊重する姿勢が、本人の働く意欲と自己肯定感を高めます。

統合失調症の方への接し方で悩んだ時の相談先

家族や職場だけで悩みを抱え込むのは非常につらいものです。幸い、日本には様々な専門機関やサポートグループがあります。一人で悩まず、積極的に外部の力を借りましょう。

かかりつけの医療機関

主治医や看護師、精神保健福祉士(PSW)、臨床心理士などの専門家は、治療や薬のことはもちろん、日常生活での接し方や家族の悩みについても相談に乗ってくれます。最も身近で、本人の状態を一番よく理解している専門家チームです。定期的な通院の際に、ぜひ時間を取ってもらって相談してみましょう。

地域の保健所・保健センター

市区町村に設置されている、最も身近な公的な相談窓口です。保健師や精神保健福祉士などの専門職が配置されており、電話や面接での相談に応じてくれます。必要に応じて家庭訪問を行ったり、他の適切な支援機関を紹介してくれたりもします。無料で利用できるので、どこに相談して良いか分からない時の最初の窓口として最適です。

精神保健福祉センター

各都道府県・政令指定都市に設置されている、精神保健福祉に関する専門機関です。保健所よりも、さらに複雑で専門的な相談に対応しています。本人や家族への相談支援のほか、デイケア(日中のリハビリ施設)を運営している場合もあります。地域の精神保健福祉の拠点として、幅広いサービスを提供しています。

家族会などの自助グループ

同じ病気の家族を持つ人々が集まり、悩みを分かち合ったり、情報交換をしたりする場が「家族会」です。全国各地に「みんなねっと(全国精神保健福祉会連合会)」の加盟団体があります。同じ立場の仲間と話すことで、「悩んでいるのは自分だけじゃない」と孤独感が和らぎ、他の家族の経験から具体的な対応のヒントを得られることも少なくありません。当事者本人が集まる「当事者会」もあります。

ご本人の社会参加や就労も大切な回復のステップ

急性期の激しい症状が落ち着き、心身の状態が安定してくると、ご本人の回復のステップは次の段階へと進みます。それは、社会とのつながりを取り戻し、自分らしい生活を再構築していくことです。その中で、「働きたい」という意欲が芽生えることは、回復における非常にポジティブなサインです。

働くことは、経済的な自立はもちろんのこと、規則正しい生活リズムの維持、日中の活動場所の確保、社会的な役割を持つことによる自信の回復など、多くのメリットをもたらします。しかし、統合失調症の特性上、すぐに一般企業でフルタイム勤務を始めるのはハードルが高いと感じる方が多いのも事実です。そんな時、焦らず、ご自身のペースで社会復帰を目指せる場所があります。

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