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職場の「配慮」と「遠慮」の違いとは?障害のある人もない人も働きやすいコミュニケーション術

障害のある人と一緒に働くとき、「どのように接すれば良いのだろう?」と悩んだ経験はありませんか?良かれと思ってしたことが、かえって相手を傷つけたり、互いの間に距離ができてしまったりすることもあります。その原因は、「配慮」と「遠慮」の混同にあるのかもしれません。

このコラムでは、「配慮」と「遠慮」の決定的な違いを明確にし、障害の有無にかかわらず、誰もが気持ちよく働けるコミュニケーションの具体的な方法を、それぞれの立場から提案します。

「配慮」とは、相手の能力を最大限に引き出すための建設的な工夫です。一方で「遠慮」は、相手を無意識に遠ざけ、その人の可能性を狭めてしまうことにも繋がりかねません。この記事を通じて、明日からすぐに実践できる、本当の意味で相手を思いやるコミュニケーションのヒントを見つけてください。

「配慮」と「遠慮」その決定的な違い

積極的な「配慮」と消極的な「遠慮」

職場において障害のある人と関わる際、「配慮」と「遠慮」は似ているようで、その意味合いと結果は大きく異なります。誰もが働きやすい環境を築くためには、この二つの違いを正しく理解することが不可欠です。

端的に言えば、「配慮」は相手の活躍を後押しする積極的な関わりであり、「遠慮」は相手との間に壁を作ってしまう消極的な関わりと言えます。両者の本質的な違いを以下の表で確認してみましょう。

項目 配慮 遠慮
目的 相手が能力を発揮し、安全に働けるように環境を調整すること 相手を「傷つけないように」「波風を立てないように」と距離を置くこと
姿勢 対等なパートナーとして、共に働く仲間として向き合う 「保護の対象」「特別な人」として、一線を引いて接する
行動 具体的な対話を通じて、必要なサポートを確認し、実行する 憶測で判断し、仕事を任せなかったり、関わりを避けたりする
結果 本人の成長、チームの生産性向上、信頼関係の構築 本人の孤立、成長機会の損失、コミュニケーションの断絶

成長を促す「配慮」

「配慮」とは、相手が持つ能力を最大限に発揮できるよう、積極的に環境を整え、サポートすることです。これは、相手を一人の対等な仕事仲間として認め、その成長を信じているからこそ生まれる行動です。

例えば、聴覚に障害のある人との会議で、発言内容をリアルタイムで文字化するアプリを用意したり、視覚に障害のある人に、口頭だけでなくテキストデータでも情報を提供したりすることが挙げられます。これらは、障害そのものではなく、業務上の障壁(バリア)を取り除くための具体的な工夫であり、本人が仕事に参加し、貢献するための土台作りと言えます。

合理的配慮に基づき働きやすさを支援する

「配慮」の根幹には、「合理的配慮」という考え方が存在します。2024年4月1日から改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供は、努力義務から法的な義務となりました

合理的配慮とは、障害のある人から何らかの支援を求める意思の表明があった場合に、事業者が過重な負担にならない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要な便宜を図ることを指します。重要なのは、これが企業側の一方的な思い込みで行われるのではなく、本人との「建設的対話」を通じて、個々の状況に合わせて行われるという点です。何に困っていて、どうすれば働きやすくなるのかを共に話し合い、解決策を探すプロセスそのものが、相互理解を深め、働きやすい職場環境を創り出すのです。

職場で実践できる合理的配慮の具体例

合理的配慮は、特別な設備投資が必要なものばかりではありません。少しの工夫や情報共有で実現できることも数多くあります。ここでは、障害の特性別に職場で実践しやすい配慮の例を紹介します。

身体障害(視覚・聴覚・肢体不自由)のある方への配慮例

視覚障害
スクリーンリーダー(画面読み上げソフト)に対応したデータ形式で資料を配布する。オフィスのレイアウトを変更した際は、必ず口頭で説明し、可能であれば一緒に歩いて確認する。書類の拡大コピーや、読みやすいフォント・配色への変更を申し出に応じて行う。
聴覚障害
会議の内容をリアルタイムで文字化するアプリやサービスを利用する。筆談やチャットツールを積極的に活用し、視覚的な情報伝達を心がける。指示を出す際は、明確で簡潔な言葉を選び、理解度を確認しながら進める。
肢体不自由(車いすユーザーなど)
机の高さを調整したり、通路の幅を確保したりして、移動しやすい動線を確保する。手の届きやすい場所に書類や備品を配置する。在宅勤務や時差出勤など、通勤負担を軽減する働き方を導入する。

精神障害(うつ病・統合失調症など)のある方への配慮例

業務内容や量の調整
一度に多くの業務を任せるのではなく、優先順位を明確にし、一つずつ着実に進められるように業務を分解して依頼する。定期的に進捗を確認し、負担が過重になっていないかヒアリングする。
指示の明確化
曖昧な表現を避け、「いつまでに」「何を」「どのように」を具体的に伝える。口頭だけでなく、チャットやメールで指示内容をテキスト化して残す。
安心できる環境
パーテーションで区切るなど、周囲の視線や物音が気になりにくい座席を用意する。体調が優れない時に短時間休息できるスペースを確保する。定期的な面談の機会を設け、業務上の不安や困りごとを相談しやすい関係性を築く。

発達障害(ASD・ADHDなど)のある方への配慮例

ASD(自閉スペクトラム症)
暗黙のルールや場の空気を読むことが苦手な場合があるため、業務マニュアルや手順書を整備し、やるべきことを明確にリスト化する。急な変更を避け、スケジュールの見通しを立てやすいように情報共有を行う。感覚過敏に配慮し、イヤーマフの使用を許可したり、照明の明るさを調整したりする。
ADHD(注意欠如・多動症)
マルチタスクが苦手な場合があるため、業務の優先順位を一緒に確認する。集中が途切れやすい特性に配慮し、時間を区切って作業に取り組むことを提案したり、定期的に進捗を確認する声かけをしたりする。本人が集中できるのであれば、静かな別室での作業を許可する。

孤立を生む「遠慮」

一方、「遠慮」は、一見すると相手を思いやっているように見えますが、その実態は大きく異なります。「どう接したら良いかわからない」「もし傷つけたらどうしよう」という不安から、相手を腫れ物に触るように扱い、関わりそのものを避けてしまう態度のことです。

これは、相手を対等なパートナーではなく、「守るべき弱い存在」あるいは「特別な人」として無意識に見てしまっていることの表れかもしれません。「この仕事は大変そうだから、頼まないでおこう」「意見を求めて、困らせてはいけない」といった行動は、本人の能力や意欲を信じていないことの裏返しとも言えます。

腫れ物に触るように接し、かえって当事者を遠ざける

遠慮からくる行動は、たとえ善意からであっても、当事者を職場の中で孤立させてしまう危険性をはらんでいます。仕事を任せてもらえないことで、スキルアップの機会やチームに貢献する喜びを奪ってしまいます。また、意見を求められないことで、「自分はチームの一員として認められていないのではないか」という疎外感を抱かせてしまうかもしれません。

このように、過剰な「遠慮」は、当事者との間に見えない壁を作り、コミュニケーションを断絶させます。結果として、働きづらさを生むだけでなく、その人の成長の可能性さえも摘んでしまうことになりかねないのです。

【障害のない方向け】「遠慮」を「配慮」に変えるコミュニケーション

では、良かれと思ってしていた「遠慮」を、相手の力を引き出す「配慮」に変えていくには、どのようなコミュニケーションを心がければ良いのでしょうか。特別なスキルは不要です。少し意識を変えるだけで、関係性は大きく変わります。

特別扱いではなく「個人」として向き合う

最も大切なのは、「障害のある人」という大きな括りで見るのではなく、目の前にいる「一人の個人」として向き合うことです。障害の特性は人それぞれですし、同じ障害名でも、得意なことや苦手なこと、性格は全く違います。

「〇〇さん」という一人の同僚として、その人の個性や仕事ぶりに興味を持ち、関わろうとすることが、配慮の第一歩です。「障害者だから」を主語にするのではなく、「〇〇さんだから」を主語にして考えてみましょう。そうすることで、特別扱いではない、その人に合った自然な関わり方が見えてくるはずです。

自分の「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」に気づく

「遠慮」が生まれる背景には、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み)」が隠れていることがあります。これは、自分自身が気づかないうちに持っている「〇〇であるべきだ」「〇〇な人はこうだ」といった偏った見方のことです。

例えば、「障害のある人は単純な作業しかできないだろう」「きっと助けが必要なはずだ」といった思い込みが、仕事を任せることを躊躇させたり、過剰な手助けに繋がったりします。大切なのは、自分の中にそうした思い込みがある可能性を認め、一度立ち止まってみることです。「本当にそうだろうか?」「本人はどう思っているだろうか?」と自問することで、憶測ではなく、目の前の「個人」と向き合う姿勢が生まれます。

わからないことは本人に直接確認する

「こんなことを聞いたら失礼かもしれない」と、憶測で判断してしまうのは遠慮の典型です。しかし、本当に相手のためを思うなら、わからないことは本人に直接確認するのが最も確実で誠実な方法です。もちろん、プライベートに踏み込みすぎる質問は避けるべきですが、仕事を進める上で必要なことであれば、遠慮なく尋ねてみましょう。

声かけの例

  • 「何かサポートできることはありますか?」
  • 「この資料の形式(文字の大きさや色など)で見にくい点はないですか?」
  • 「口頭での説明と、チャットでの説明、どちらが分かりやすいですか?」
  • 「もしよければ、〇〇の業務でやりやすい方法や、苦手なことがあれば教えてもらえると助かります」

このように、相手に選択肢を提示したり、判断を委ねたりする形で尋ねることで、本人も自分の状況を伝えやすくなります。

対等な仲間として仕事への期待やフィードバックを伝える

「遠慮」から仕事を任せなかったり、ミスをしても指摘しなかったりするのは、相手の成長機会を奪うことになります。同じチームで働く対等な仲間だからこそ、仕事への期待を伝え、成果を正当に評価し、改善すべき点はしっかりとフィードバックすることが大切です。

もちろん、伝え方には工夫が必要です。高圧的になったり、抽象的な言い方をしたりするのではなく、具体的で建設的な言葉を選びましょう。「なぜできなかったのか」を責めるのではなく、「どうすれば次はうまくいくか」を一緒に考える姿勢が、信頼関係を築き、本人の成長を促します。

【障害のある方向け】「遠慮」されず適切な「配慮」を得るコミュニケーション

働きやすい環境は、どちらか一方が作るものではありません。障害のある側からも少し働きかけることで、周囲の「遠慮」の壁を取り払い、必要な「配慮」を得やすくなります。

アサーションを用いて必要な配慮を具体的に伝える

ただ「できません」と伝えるだけでは、相手もどうすれば良いか分からず、戸惑ってしまいます。そこで有効なのが、「アサーション(Assertion)」というコミュニケーションスキルです。これは、自分の気持ちや意見を、相手のことも尊重しながら誠実に、率直に、対等に伝えようとする考え方です。

アサーションを用いた伝え方の例

ただ断るのではなく代替案を出す
「申し訳ありません。急な口頭での指示は、内容を記憶するのが苦手です。大変お手数ですが、チャットで要点をテキストでいただけますでしょうか?」
できないことと、できることをセットで伝える
「大人数の会議での発言は緊張してしまうので苦手ですが、事前に資料を読み込み、意見をまとめておくことは得意です。会議の前に、〇〇さんにご意見をお伝えしてもよろしいでしょうか?」

このように、具体的かつ肯定的な表現で伝えることで、相手も協力しやすくなり、「わがまま」ではなく「業務上の必要な工夫」として受け止められやすくなります。

「できること」「得意なこと」も積極的にアピールする

周囲の人は、あなたが何に困っているかだけでなく、「何ができるのか」「何が得意なのか」も知りたいと思っています。苦手なことへの配慮を求めるだけでなく、自分の強みや貢献できることを積極的に伝えることで、仕事の幅が広がり、周囲からの信頼も得やすくなります。

例えば、

  • 「細かいデータ入力やチェック作業は、集中して正確に行うのが得意です。」
  • 「一度覚えた手順は、マニュアル通りにきっちりこなせます。」

といったように、自分の特性をポジティブな言葉でアピールしてみましょう。自分の「取扱説明書」を周囲に開示するイメージを持つと、何を伝えれば良いか整理しやすくなります。

感謝の言葉で良好な関係を築く

何か配慮をしてもらったり、手伝ってもらったりしたときには、意識して「ありがとう」という感謝の言葉を伝えるようにしましょう。小さなことでも、言葉にして伝えることで、相手は「役に立ててよかった」「また協力しよう」という気持ちになります。

感謝の言葉は、あなたと周囲の人々との関係を円滑にする潤滑油のようなものです。「やってもらって当たり前」という態度ではなく、常に感謝の気持ちを持つことが、継続的にサポートを得られる良好な人間関係を築く上で非常に大切です。

「配慮」の文化が根付いた就労継続支援B型事業所

ここまで、職場におけるコミュニケーションのポイントをお伝えしてきましたが、いきなり一般企業でこれら全てを実践するのは、ハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。そのような方にとって、就労継続支援B型事業所は、安心して対人関係や業務の練習ができる貴重な場所となります。

支援員が適切な配慮のモデルを示す

就労継続支援B型事業所には、障害に関する専門的な知識を持った支援員が常駐しています。支援員は、利用者一人ひとりの特性を深く理解し、どのような「配慮」があればその人らしく能力を発揮できるかを常に考えています。

支援員が他の利用者と関わる様子を間近で見ること自体が、適切なコミュニケーションの生きた手本となります。また、利用者と職場のスタッフとの間でコミュニケーションがうまくいかない時には、支援員が間に入って双方の意見を調整し、建設的な対話ができるようサポートしてくれます。

利用者同士が対等な立場で関わる

B型事業所には、様々な障害や背景を持つ仲間がいます。自分と似た悩みを持つ人もいれば、全く違う特性を持つ人もいるでしょう。そうした多様な仲間と、同じ利用者の立場で日々関わり、協力して作業を進める経験は、他者への理解を深め、自然な「配慮」の仕方を学ぶ絶好の機会となります。

お互いに助け合ったり、得意なことを教え合ったりする中で、「遠慮」ではなく「配慮」に基づいた対等な人間関係を築く練習を、失敗を恐れずに実践できる環境がここにはあります。

気持ちよく働くためのコミュニケーションをオリーブで学ぼう

関西(大阪、兵庫、京都、奈良)で複数の事業所を運営する「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、まさに「配慮」の文化を大切にし、一人ひとりが安心して働ける環境づくりに力を入れています。

安心して「伝える」練習ができる場所

オリーブでは、自分の苦手なことや、必要な配慮を「伝える」練習を、支援員のサポートのもとで行うことができます。すぐにうまく伝えられなくても大丈夫です。支援員があなたの気持ちを丁寧にヒアリングし、どうすれば相手に伝わりやすいかを一緒に考え、代弁することも可能です。ここで自信をつけて、次のステップに進んだ利用者さんもたくさんいます。

あなたの「働きやすさ」を一緒に考えます

私たちは、あなたを「障害者」という枠で見ることはありません。あなたという「個人」と向き合い、何が得意で、どんな働き方をしたいのか、どうすればもっと能力を発揮できるのかを、一緒に考えさせていただきます。あなたの「働きたい」という気持ちを、私たちは全力でサポートします。

見学・相談で事業所の雰囲気を感じてください

もし、あなたが職場の人間関係に悩んでいたり、自分に合った働き方を見つけたいと思っていたりするなら、ぜひ一度、お近くのオリーブに見学・相談に来てみませんか?

実際に事業所の雰囲気を感じていただき、支援員や利用者の様子を見ていただくのが一番です。もちろん、見学したからといって利用を強制することは一切ありません。まずはお話を聞かせていただくだけでも大歓迎です。あなたからのご連絡を、心よりお待ちしております。

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