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うつ病の回復期とは?焦らない過ごし方とやってはいけないことを解説

うつ病のつらく長いトンネルを抜け、少しずつ光が見えてくる「回復期」。何もできなかった急性期を乗り越え、意欲が戻り始め、「何かしたい」「早く元の生活に戻りたい」という気持ちが芽生える、希望に満ちた時期です。しかし、この回復期は、実は症状がぶり返しやすい、非常にデリケートな時期でもあります。まるで薄氷の上を歩くように、心と体のバランスがまだ不安定なこの時期に、焦って活動量を増やしてしまうと、せっかく蓄え始めたエネルギーをあっという間に使い果たし、再発につながりかねません。

この記事では、まずうつ病が回復していく全体的な流れを理解した上で、回復期に特有の心身の状態、再発を防ぐために「やってはいけないこと」、そして穏やかに、しかし着実に回復を進めるための具体的な過ごし方のポイントを詳しく解説します。回復期をどう過ごすかが、その後の安定した生活の鍵を握っています。焦らず、自分のペースで、確実な一歩を踏み出すためのヒントを、ぜひこの記事から見つけてください。

うつ病の回復過程|3つのステップを理解する

うつ病の回復は、一直線に右肩上がりに進むわけではありません。一般的に、「急性期」「回復期」「再発予防期」という3つのステップを、波のように揺れ動きながら、ゆっくりと回復していきます。まずは、ご自身が今どの段階にいるのかを客観的に理解することが、適切な過ごし方を知るための第一歩です。

ステップ1 急性期:休養に専念する時期

うつ病の症状が最もつらく、心身のエネルギーが完全に枯渇している時期です。激しい抑うつ気分、不眠、食欲不振、思考力の低下といった症状が強く現れ、仕事や家事はもちろん、日常生活を送ること自体が困難になります。この時期の治療目標は、明確です。それは「何よりも休養に専念すること」。薬物療法で症状の緩和を図りつつ、あらゆるストレス源から離れ、心と体をゆっくりと休ませることに集中します。「何もしない」ことに罪悪感や焦りを覚えるかもしれませんが、「休むことが治療であり、最も重要な仕事だ」と割り切ることが、次へのステップに進むために不可欠です。

ステップ2 回復期:意欲が戻り始める不安定な時期

十分な休養と治療により、枯渇していた心身のエネルギーが少しずつ回復してくる時期です。これが本記事のテーマである「回復期」にあたります。急性期のつらい症状は和らぎ、「テレビを見てみようかな」「散歩に行ってみようかな」といった、これまで失われていた意欲や関心が徐々に湧いてきます。しかし、この時期の心と体は、まだ非常に不安定です。天気が変わりやすい春先のように、気分が晴れて調が良い日もあれば、急に雲が広がり気分が落ち込む日もあり、一進一退を繰り返すのが大きな特徴です。ここで焦って活動しすぎると、簡単にエネルギー切れを起こして症状がぶり返してしまうため、慎重なペース配分が何よりも求められます。

ステップ3 再発予防期:安定した状態を維持する時期

回復期を乗り越え、心身の状態がかなり安定してくる時期です。気分の波は小さくなり、病気になる前の自分に近い状態まで回復し、社会復帰(復職・再就職など)も具体的になってきます。ただし、うつ病は再発しやすい病気であるため、ここで治療を自己判断でやめてしまうわけではありません。この時期の目標は、回復した良い状態を維持し、ストレスとの上手な付き合い方を身につけ、再発のサインに早めに気づけるようになることです。医師の指示に従い、薬物療法や精神療法(カウンセリングなど)を続けながら、安定した生活を自分のものにしていく大切な期間です。

うつ病の回復期によく見られる心身の特徴

回復期は、心と体のエネルギーが少しずつ充電され、様々な変化が生まれ始める時期です。しかし、その変化は一直線ではないため、戸惑うことも多いでしょう。ここでは、回復期によく見られる特徴について、その意味と向き合い方を解説します。

 

気分の波があり良くなったり悪くなったりする

回復期の最も大きな特徴が、予測のつかない気分の波です。「昨日は調子が良くて久しぶりに外出できたのに、今日は朝から鉛のように体が重く、気分も沈んで動けない…」といったように、良い日と悪い日をジェットコースターのように繰り返すことがあります。これは、回復過程ではごく自然なことであり、決して後戻りしているわけではありません。大切なのは、調子が悪くなったからといって、「また悪化してしまった」「自分はダメだ」と悲観的にならないことです。「3歩進んで2歩下がる、でも確実に1歩は進んでいる」「こういう波を繰り返しながら、少しずつ良くなっていくんだ」と、気分の波があることを前提に、ゆったりと構える姿勢が重要です。

少しずつ興味や関心が戻ってくる

急性期には全く楽しめなかったテレビ番組を見て笑ったり、好きな音楽を聴いて心が動かされたり、趣味の活動に「またやってみようかな」という気持ちが戻ってきたりします。食欲が回復し、「美味しい」という味覚が戻ってくるのもこの時期です。これは、うつ病によって機能が低下していた脳のエネルギーが回復し、感情や感覚、意欲を司る部分が正常に働き始めたポジティブな証拠です。ただし、興味が湧いたからといって、すぐに以前のように長時間集中できるわけではありません。まずは「5分だけ本を読む」「1曲だけ音楽を聴く」など、ごく短い時間から試してみて、「もう少しできそう」と思っても、少し物足りないくらいでやめておくのが、エネルギーを使いすぎないコツです。

焦りや不安を感じやすくなる

意欲が戻ってくると同時に、「休んでいた分を取り戻さなければ」「早く社会復帰しないと、家族に迷惑をかけてしまう」といった焦りの気持ちが強くなるのも、回復期によく見られる特徴です。周囲の人が元気に働き、活躍している姿が目に入り、自分だけが社会から取り残されているような強い不安や劣等感に駆られることもあります。しかし、この「焦り」こそが、回復期における最大の敵であり、再発への落とし穴です。他人と自分を比べることをやめ、「人は人、自分は自分」と意識的に切り離すことが大切です。比べるのであれば、他人ではなく「昨日の自分」と比べ、「今日は昨日より5分長く散歩できた」というように、自分の小さな進歩を認め、褒めてあげることが、この時期を乗り切るための重要な鍵となります。

再発を防ぐために回復期にやってはいけない3つのこと

「早く良くなりたい」という真面目な気持ちが、皮肉にも回復を遠ざけてしまうことがあります。回復期には、再発の引き金となりうる、避けるべき「やってはいけないこと」がいくつかあります。

 

自己判断で薬の服用をやめる

症状が軽くなってくると、「もう薬は必要ないだろう」「副作用が気になるから」といった理由で、自己判断で服用をやめてしまう方がいますが、これは非常に危険な行為です。症状が改善してきたのは、他ならぬ薬が脳内で効果を発揮し、神経伝達物質のバランスを整えてくれているからです。まだ脳の機能が完全に安定していない、いわば「薬に支えられている」状態で服用をやめてしまうと、高い確率で症状がぶり返してしまいます。また、急な中断は、めまいや吐き気などの離脱症状を引き起こす可能性もあります。薬を減らしたり、最終的にやめたりするタイミングは、症状の安定度やストレスへの対処能力などを考慮し、医師が慎重に判断します。必ず主治医の指示に従い、根気強く服用を続けることが、確実な回復への最も安全な道です。

無理に活動量を増やしたり焦って復職したりする

意欲が出てきたからといって、急に活動量を増やすのは禁物です。これは、骨折が治りかけたばかりの足で、いきなりマラソンを走るようなものです。あなたの心と体のエネルギーは、まだスマートフォンのバッテリー残量が10%~20%程度の状態だということを忘れてはいけません。調子が良い日に頑張りすぎると、翌日以降にエネルギーが枯渇し、何日も寝込んでしまうということになりかねません。焦って復職することも同様です。毎日の通勤や、仕事のプレッシャー、人間関係は、ご自身が想像している以上に心身に大きな負担をかけます。まずは、規則正しい生活リズムを確立し、日中に図書館やカフェで数時間過ごせる程度の体力をつけることから始めましょう。復職は、主治医や家族、職場と十分に相談し、リワーク支援の利用も検討するなど、慎重に進める必要があります。

転職や結婚など重大な決断をする

回復期は、一見すると判断力が戻ってきたように感じられます。しかし、まだ思考力や集中力、物事を多角的に見たり、長期的な視点で結果を予測したりする認知機能は完全には回復していません。思考がまだ柔軟性を欠いており、白黒をつけたがる、極端な結論に飛びつきやすい傾向があります。このような時期に、転職、退職、結婚、離婚、引っ越し、大きな買い物といった、人生を左右するような重大な決断を下すのは避けるべきです。判断を誤り、後で「なぜあんな決断をしてしまったのだろう」と後悔してしまう可能性が非常に高くなります。大きな決断は、心身の状態が完全に安定し、正常な判断力が戻る「再発予防期」以降に持ち越すのが賢明です。

うつ病の回復期を穏やかに過ごすためのポイント

では、不安定な回復期を、具体的にどのように過ごせばよいのでしょうか。ここでは、焦らず、穏やかに、しかし着実に回復のステップを上るための4つのポイントをご紹介します。

 

安定した生活リズムを保つ

回復期において、すべての基本となるのが生活リズムを整えることです。不規則な生活は、自律神経やホルモンバランスを乱し、心身の状態を不安定にさせる大きな原因となります。決まった時間に起き、決まった時間に寝る。まずはこれを目標にしましょう。朝起きたら、カーテンを開けて太陽の光を浴びる。これにより、体内時計がリセットされ、夜の自然な眠りにつながります。1日3食、できるだけ決まった時間に食事をとる。栄養バランスの良い食事は、心の安定にも不可欠です。まずはこの3つを意識するだけでも、心身の状態は安定しやすくなります。どうしても日中に眠気が強い場合は、15分~20分程度の短い昼寝にとどめ、午後3時以降は避けるなど、夜の睡眠に影響が出ないように工夫しましょう。

散歩など軽い活動から始める

「何かしたい」という意欲が湧いてきたら、心身への負荷が少ない軽い活動から始めてみましょう。ここでのコツは、目標を高く設定せず、「できなくても大丈夫」「できたらラッキー」くらいの気持ちで、ゆるやかに取り組むことです。

ベランダに出て外の空気を吸う。
近所のコンビニやポストまで歩いてみる。
天気の良い日に、家の周りを5分だけ散歩する。
図書館に行って、好きな雑誌や写真集を眺めてみる。
簡単なストレッチやラジオ体操をする。
好きな音楽を1曲だけ聴いてみる。

大切なのは、活動した後に「心地よい疲れ」を感じる程度にとどめることです。少しでも「つらい」「しんどい」と感じたら、それは「休むべき」という体からのサインです。すぐに中止して休む勇気を持ちましょう。

自分の体調や気分の変化を記録する

回復期は気分の波が激しいため、自分の状態を客観的に把握することが難しくなりがちです。そこでおすすめなのが、簡単な日記や活動記録(行動記録表)をつけることです。手帳やノート、スマートフォンのアプリなどを活用してみましょう。

起床・就寝時間
その日の気分(10点満点や、天気などで表現)
3食の食事内容
その日に行った活動(散歩10分、読書15分など)
服薬状況
体調の変化や感じたこと、不安に思ったこと

記録を続けることで、自分の気分のパターンや、どういう時に調子を崩しやすいか(例えば、雨の日の前日など)といった傾向が見えてきます。これはセルフケアに役立つだけでなく、次の診察時に医師へ状態を正確に伝えるための、客観的で貴重な資料にもなります。

回復状況を正直に主治医へ伝える

診察の際、「元気だと思われたい」「これ以上家族に心配をかけたくない」「早く薬を減らしてほしい」といった気持ちから、つい「調子は良いです」と、実際よりも良く見せて報告してしまうことがあります。しかし、これは適切な治療の妨げになってしまいます。医師は、あなたの言葉を元に、治療方針や薬の量を判断します。調子が悪い日があったこと、気分の波に悩まされていること、将来への焦りや不安を感じていることなど、ありのままの状態を正直に伝えましょう。あなたの率直な言葉こそが、医師があなたにとって最善の治療方針を立てるための、最も重要な手がかりとなるのです。

仕事復帰を考え始めたときに利用できる支援機関

回復期を乗り越え、社会復帰を具体的に考え始めたとき、一人で抱え込む必要はありません。あなたの仕事復帰を、専門的な知識と経験でサポートしてくれる機関がたくさんあります。

 

職場復帰支援(リワーク)

主に、休職中の方が元の職場へのスムーズな復帰を目指すためのリハビリテーションプログラムです。地域障害者職業センターや医療機関、民間の支援機関などで実施されています。オフィスに近い環境で、通勤訓練や模擬的な業務、ストレス対処法などを学び、再発しにくい働き方を身につけます。

ハローワーク

全国に設置されている公的な職業紹介機関です。障害のある方のための専門窓口があり、専門の相談員が、一人ひとりの病状や希望を丁寧にヒアリングし、それに合った職業相談や求人紹介を行ってくれます。

障害者就業・生活支援センター

「なかぽつ」の愛称で知られ、就職に関する相談だけでなく、金銭管理や体調管理といった生活面での悩みにも一体的に乗ってくれる、身近な支援機関です。

就労移行支援事業所

一般企業への就職を目指す、障害や難病のある方が対象の福祉サービスです。事業所に通いながら、ビジネスマナーやPCスキルなどの職業訓練、職場探し、就職後の定着支援などを、最長2年間にわたり無料で受けられます。

就労継続支援B型事業所

現時点で、毎日コンスタントに働くことや、一般企業で働くことに不安がある方が対象の福祉サービスです。事業所と雇用契約を結ばずに、体調に合わせて自分のペースで働きながら、社会参加への準備を整えることができます。

大阪・兵庫・京都で自分のペースで社会復帰を目指すならオリーブへ

うつ病の回復期を乗り越え、次のステップに進みたい。でも、いきなりフルタイムで働くのは不安だ。——そんなふうに、焦る気持ちと、慎重になりたい気持ちの間で揺れ動いていませんか。

その「自分のペースを大切にしたい」という気持ちこそ、社会復帰を成功させ、再発を防ぐための最も重要な要素です。私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、そんなあなたの思いに寄り添い、最適なリハビリの場でありたいと願っています。

オリーブは、大阪、兵庫、京都の関西エリアで、うつ病をはじめ様々な障害や病気のある方の「働きたい」という気持ちを、その人らしいペースでサポートしています。雇用契約を結ばずに利用できる福祉サービスのため、

週1日・1日1時間といった、あなたの「今」の体調に合わせた無理のないスタート
が可能です。

 

データ入力や軽作業などを通じて、少しずつ働くことへの自信を取り戻しながら、乱れがちな生活リズムを整えることができます。経験豊富なスタッフが、仕事のことはもちろん、日々の悩みや体調の波にも親身に寄り添い、あなたが安心して過ごせる居場所を提供します。

焦らず、着実に。あなたらしい社会復帰への道を、オリーブから始めてみませんか。見学やご相談はいつでも歓迎しております。まずはお気軽にお問い合わせください。

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