お役立ち情報 相談先 精神疾患

メンタルヘルスとは?意味やセルフケアの方法をわかりやすく解説

「メンタルヘルス」という言葉を、最近よく耳にするようになったけれど、具体的にどういう意味なのか、よく分からない。そんな風に感じていませんか。私たちは、体の健康(フィジカルヘルス)のためには運動をしたり、バランスの取れた食事を心がけたりしますが、「心の健康」については、つい後回しにしてしまいがちです。しかし、メンタルヘルスは、精神的に特別な問題を抱えた人だけに関わる言葉ではありません。 誰もが持つ「心の健康状態」のことであり、日々の生活の質そのものを左右する、非常に大切な要素です。

この記事では、メンタルヘルスとは何かという基本的な意味から、そのバランスが崩れるとどのような心の病気につながる可能性があるのか、そして、今日からご自身でできるメンタルヘルスのセルフケア方法まで、一つひとつ分かりやすく解説します。自分の心の状態に目を向け、大切にケアすること。それが、あなたらしい、生き生きとした毎日を送るための重要な第一歩です。

メンタルヘルスとは「心の健康状態」そのもの

「メンタルヘルス(mental health)」という言葉を直訳すると、「精神的健康」となります。まずは、その正確な定義と、関連する言葉の意味について理解を深めましょう。

メンタルヘルスの定義

世界保健機関(WHO)は、メンタルヘルスを単に「精神疾患がない」という状態だけではない、より積極的で良好な状態として定義しています。その定義によれば、メンタルヘルスが良好な状態とは、「すべての個人が自らの可能性を認識し、生命の通常のストレスに対処でき、生産的かつ実りある仕事ができ、そして地域社会に貢献できる幸福な状態」を指します。つまり、メンタルヘルスとは、ただ病気ではない、問題がないという消極的な状態を指すのではありません。自分の能力を活かして前向きに社会生活を送り、満足感や幸福感を感じられている、よりポジティブな心の状態を意味するのです。

「メンタルヘルスケア」とは心の健康を保つための取り組み

メンタルヘルスケアとは、すべての人が、より良い心の健康状態(メンタルヘルス)を保ち、維持・改善するための、あらゆる取り組み全般を指します。具体的には、以下のような非常に幅広い活動が含まれます。

個人が行うストレスとの上手な付き合い方やセルフケア
職場における労働環境の改善や相談体制の整備

 

心の不調を感じたときに気軽に相談できる公的な窓口の設置
うつ病などの精神疾患に対する専門的な医療やリハビリテーション

 

近年では、特に働く人のメンタルヘルスケアが重要視されており、企業には従業員の心の健康を守るための配慮や、ストレスチェック制度の実施などが法律で求められています。

メンタルヘルスと心の病気の関係

私たちの心の状態は、「健康」か「病気」かの二つに、はっきりと分けられるものではありません。健康な状態と病気の状態の間には明確な境界線はなく、両者は連続体(スペクトラム)としてつながっていると捉えるのが適切です。誰でも、仕事で大きなプレッシャーがかかったり、人間関係で悩んだりすれば、一時的に気分が落ち込んだり、不安になったりして、心のバランスが健康な状態から少し不調な方向へ傾くことがあります。この「メンタルヘルスの不調」が長く続いたり、日常生活に大きな支障をきたしたりするようになると、「心の病気(精神疾患)」と診断される段階へと移行していきます。

大切なのは、この「少し不調な方向へ傾いた」段階、つまり病気と診断される前の段階で、自身の不調のサインに早めに気づき、悪化する前に適切にセルフケアを行ったり、必要であれば専門家へ相談したりすることです。

メンタルヘルスの不調に関わる主な心の病気

メンタルヘルスの不調が長く続き、適切に対処されないままでいると、様々な心の病気につながる可能性があります。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。

うつ病

気分が強く落ち込み、憂うつな気分や、何事にも興味が持てない・楽しめないといった精神症状が長期間続く病気です。不眠や食欲不振、疲労感などの身体症状を伴うことも多く、仕事や家事、学業といった日常生活に大きな支障をきたします。これは「気合い」や「根性」で治るものではなく、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなどが関係していると考えられています。

双極性障害(躁うつ病)

気分が異常に高揚して活動的になる「躁(そう)状態」と、気分がひどく落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。気分が両極端に揺れ動くため、周りの人が本人の言動に振り回されたり、対人関係や社会的な信用を損なってしまったりすることが少なくありません。うつ病とは治療法(特に薬物療法)が異なるため、専門医による正確な診断が非常に重要です。

適応障害

ある特定の状況や出来事(例:職場の異動、仕事のプレッシャー、人間関係のトラブル、転居など)が、本人にとって非常につらく、耐えがたいストレスとなり、その結果として気分の落ち込みや不安感、不眠、あるいは遅刻や無断欠勤といった行動の変化などが現れる病気です。ストレスの原因がはっきりしているのが特徴で、その原因から離れると、症状が比較的速やかに改善する傾向があります。

不安障害(不安症)

過剰な不安によって、日常生活に支障をきたす様々な病気の総称です。何の前触れもなく突然の動悸や息苦しさに襲われる「パニック障害」、人前でのスピーチや会食といった社交場面を極度に恐れる「社交不安障害」、仕事や家庭、健康など、生活の様々なことに対して常に過剰な心配をしてしまう「全般性不安障害」など、様々なタイプがあります。

自分でできるメンタルヘルスのセルフケア3つのポイント

心の健康を保つためには、日頃から「自分の心は今どんな状態だろう?」と気を配り、ケアしてあげることが大切です。ここでは、今日から誰でも実践できるセルフケアの3つのポイントをご紹介します。

ポイント1. ストレスに気づくためのセルフチェック

忙しい毎日の中では、自分がどれだけストレスを溜め込んでいるかに気づかないことも多いものです。まずは、自分の心と体のサインに耳を傾け、「ストレスのサイン」を見逃さないようにしましょう。

【こころのサイン】

    • 理由もなくイライラしやすくなった
    • 漠然とした不安や焦りを感じることが増えた
    • 気分が落ち込みやすく、物事を悲観的に考えがち
    • 以前は好きだったことへの興味や関心が薄れた
    • 仕事や読書に集中できない、ケアレスミスが増えた

 

【からだのサイン】

    • 寝つきが悪い、夜中や早朝に目が覚める
    • 十分休んでも疲れがとれない、朝起きるのがつらい
    • 食欲がない、または逆に食べ過ぎてしまう
    • 原因不明の頭痛や肩こり、腹痛などが続いている
    • 急な動悸やめまいがすることがある

 

【行動のサイン】

    • お酒やタバコの量が以前より増えた
    • 友人からの誘いを断るなど、人付き合いを避けるようになった
    • 仕事での遅刻や欠勤が増えた
    • 服装や髪形など、身だしなみに構わなくなった

 

これらのサインに複数当てはまる場合は、ストレスが溜まっている証拠です。早めに次のセルフケアを実践しましょう。

ポイント2. ストレスを上手にケアする「3つのR」

ストレスケアの基本として、「3つのR」が知られています。Rest(レスト:休息)、Recreation(レクリエーション:気晴らし)、Relaxation(リラクセーション:リラックス)の3つを、意識してバランスよく生活に取り入れることが、心の健康を保つ鍵となります。

Rest(休息)で心身を休ませる

心身が疲弊しているときは、何よりもまず活動を停止し、エネルギーを再充電することが大切です。

    • 十分な睡眠をとる: 質の良い睡眠は、心と体の疲労を回復させる最も効果的な方法の一つです。寝る前のスマートフォン操作を控えるなど、睡眠環境を整えましょう。
    • 何もしない時間を作る: ソファでぼーっとしたり、ただ静かに横になったりするだけでも、立派な休息です。常に「何かをしなければ」という思考から、意識的に自分を解放してあげましょう。
    • デジタルデトックス: スマートフォンやパソコン、テレビから一定時間離れ、大量の情報が流れ込んでくる状態から脳を休ませてあげましょう。

 

Recreation(気晴らし)で気分転換する

つらいことやストレスの原因となっている問題から一時的に意識をそらし、心をリフレッシュさせるための活動です。大切なのは、義務感ではなく、自分が「楽しい」「好きだ」と感じることを行うことです。

    • 趣味に没頭する: 読書、映画鑑賞、音楽、ゲーム、ガーデニング、料理など、時間を忘れて楽しめることに没頭しましょう。
    • 軽い運動をする: ウォーキングやジョギング、サイクリング、ダンスなど、心地よいと感じる程度の運動は、気分転換に非常に効果的です。
    • 友人と話す: 気の置けない友人とのおしゃべりは、悩みを共有したり、笑い合ったりすることで、良い気晴らしになります。
    • 自然に触れる: 近所の公園を散歩したり、少し遠出して森林浴や海を見に行ったりするのもおすすめです。

 

Relaxation(リラックス)で緊張をほぐす

ストレスによって無意識にこわばった心と体の緊張を、意識的に緩めてあげるための活動です。副交感神経を優位にし、心身を落ち着かせる効果があります。

    • 入浴: ぬるめのお湯にゆっくりと浸かることで血行が促進され、心身ともにリラックスできます。
    • 深呼吸・腹式呼吸: ゆっくりと息を吸い、それ以上に時間をかけて息を吐くことを意識すると、興奮した神経が鎮まり、気持ちが落ち着きます。
    • ストレッチ・ヨガ: デスクワークなどで固まった体の筋肉をゆっくりと伸ばすことで、心の緊張も和らぎます。
    • アロマテラピー: ラベンダーやカモミールなど、自分が「良い香り」と感じるものは、脳に直接働きかけ、高いリラックス効果をもたらします。
    • マインドフルネス: 「今、ここ」の自分の身体感覚や呼吸に意識を集中させる瞑想法も、雑念を払い、心を落ち着けるのに有効です。

 

ポイント3. ひとりで抱えずに周りに相談する

悩みやストレスを一人で抱え込んでいると、問題が実際よりもさらに大きく感じられ、思考が堂々巡りになり、視野が狭くなってしまいます。信頼できる家族やパートナー、友人、同僚などに、勇気を出して自分の気持ちを話してみましょう。誰かに話を聞いてもらうだけでも、自分の気持ちが整理されたり、客観的なアドバイスがもらえたりして、心がふっと軽くなることがあります。「相談すること」は、決して弱いことではなく、自分を大切にし、問題を解決するための賢明なセルフケアの一つです。

メンタルヘルスの不調を感じたときの相談先

セルフケアを試みても不調が改善しない場合や、「自分一人ではどうしようもない」と感じるほどつらい状態が続く場合は、決して無理をせず、専門家の助けを借りましょう。

医療機関(精神科・心療内科)

心の専門家である医師に相談するのが、最も確実な方法です。丁寧な問診を通じて、現在の状態が治療の必要な病気なのかどうかを診断してくれます。もしうつ病などの病気が背景にある場合は、薬物療法などの専門的な治療を受けることができます。

公的な相談窓口

お住まいの地域の保健所や精神保健福祉センターなどでは、保健師や精神保健福祉士といった専門の相談員が、無料で相談に応じてくれます。どこに相談すればよいか分からない時の、最初の窓口として非常に頼りになります。

カウンセリングサービス

臨床心理士や公認心理師といった、カウンセリングの専門家によるサポートを受けるのも有効です。対話を通じて、自分の悩みを深く見つめ直し、問題解決の糸口やストレスとの付き合い方を探すお手伝いをしてくれます。企業や大学に設置されている相談室や、民間のカウンセリングルームなどがあります。

心のケアをしながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブのご案内

メンタルヘルスの不調を抱えながら、一般の職場で働き続けることに、難しさや限界を感じていませんか。「ストレスの多い環境がつらい」「体調の波があって、毎日決まった時間働くのが難しい」そんな悩みをお持ちかもしれません。

心の健康を第一に考え、自分自身をケアしながら、社会とのつながりを持ち続けたい。そんなあなたに、「就労継続支援B型事業所オリーブ」という選択肢があります。

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、うつ病や不安障害など、心の不調を抱える方が、安心して自分のペースで働くための場所を提供しています。雇用契約を結ばずに利用できるため、あなたのメンタルヘルスを最優先した働き方が可能です。

    • 体調に合わせて、週1日・数時間からスタートできる
    • 対人関係のストレスが少ない、落ち着いた環境で作業に取り組める
    • 経験豊富な支援員が常に近くにいるので、不安なことをすぐに相談できる
    • 規則的な通所を通じて、乱れがちな生活リズムを整えることができる

 

オリーブは、単に作業をする場所ではありません。あなたのセルフケアを応援し、心の健康を取り戻しながら、社会参加への自信を育んでいくための、安心できる「居場所」です。心のケアをしながら、働く一歩を踏み出したい方は、ぜひ一度、オリーブにご相談ください。

お問い合わせ

就労に関する疑問やお悩み、
お気軽にご相談ください。

お問い合わせ