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心の病気にはどんな種類がある?主な症状や診断方法・治療法を解説

「最近、気分が落ち込んで何もやる気が起きない」「理由もなく、急に強い不安に襲われる」

このような心の不調を感じていても、「気の持ちよう」「自分の弱さのせいだ」と一人で抱え込み、誰にも相談できずに苦しんでいる方はいらっしゃいませんか。

心の病気は、決して特別なものではなく、誰もがかかる可能性のある身近な病気です。しかし、目に見えないために周囲から理解されにくかったり、ご自身でもどう対処すれば良いか分からなかったりすることが少なくありません。

この記事では、心の病気の主な種類とその症状、どこでどのように診断されるのか、そして回復に向けた治療法や、仕事との付き合い方までを、網羅的に、そして分かりやすく解説します。正しい知識を身につけることは、あなた自身や、あなたの大切な人を守るための第一歩です。

心の病気とは|誰でもかかる可能性のある身近な病気

心の病気(精神疾患)とは、脳の機能的な問題や、強いストレスなどが原因で、考え方や気分、感情、行動などに影響が現れる状態のことです。その影響で、日常生活や社会生活に様々な困難が生じます。

「精神的に弱い人がなるもの」といった誤解や偏見が根強く残っていますが、これは大きな間違いです。心の病気は、意志の力や性格の問題ではなく、脳という臓器の不調が関係している病気です。風邪をひいたり、骨折をしたりするのと同じように、誰にでも起こりうるものです。

厚生労働省の調査では、生涯を通じて5人に1人が心の病気にかかるとも言われており、決して特別なものではありません。まずは、「誰でもかかる可能性のある身近な病気」であるという認識を持つことが、ご本人にとっても、周囲の方にとっても非常に重要です。

心の病気の主な種類一覧

心の病気には様々な種類があり、それぞれ症状や特徴が異なります。ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。

気分障害(うつ病や双極性障害など)

気分や感情のコントロールがうまくいかなくなる病気の総称です。

うつ病:
気分が一日中ひどく落ち込み、何事にも興味や喜びを感じられなくなる状態が長く続きます。不眠や食欲不振、強い疲労感、自分を責める気持ち(自責感)なども特徴的な症状です。

 

双極性障害(双極症):
気分が非常に高揚し、活動的になる「躁(そう)状態」と、気分がひどく落ち込む「うつ状態」を繰り返す病気です。躁状態の時には、ほとんど眠らなくても平気になったり、次々とアイデアが浮かんで多弁になったり、大きな買い物をしたりすることがあります。

 

統合失調症

考えや気持ちがまとまりにくくなる病気です。その影響で、様々な症状が現れます。

陽性症状:
現実にはないものをあるように感じる「幻覚(特に、悪口などが聞こえる幻聴)」や、明らかに間違った内容を信じ込んでしまう「妄想」などが現れます。

 

陰性症状:
感情の起伏が乏しくなる、意欲が低下して自分の殻に閉じこもる、といった症状が現れます。

 

認知機能障害:
集中力や記憶力、物事を計画して実行する能力などが低下し、生活に支障が出ます。

 

不安障害(不安症)・強迫性障害(強迫症)

過剰な不安や恐怖によって、日常生活に支障が出る病気の総称です。

パニック障害:
突然、理由もなく激しい動悸や息苦しさ、めまいといった発作(パニック発作)に襲われます。「また発作が起きたらどうしよう」という強い不安(予期不安)から、発作が起きた場所を避けるようになります。

 

社交不安障害:
人前で注目を浴びる状況に強い恐怖を感じ、そのような場面を避けようとします。会議での発言や、人前での食事などが極度の苦痛になります。

 

強迫性障害(強迫症):
自分でも「ばかげている」と分かっている不合理な考え(強迫観念)が頭から離れず、その不安を打ち消すために同じ行動(強迫行為)を繰り返してしまいます。例えば、「手が汚れた」という考えから、何時間も手を洗い続けるなどです。

 

適応障害

特定の出来事や状況が、本人にとって非常につらく、耐えがたいストレスとなり、その結果、気分が落ち込んだり、不安が強くなったり、行動に問題が出たりする病気です。仕事上の問題(異動、昇進、人間関係など)や、家庭の問題(転居、離別など)がきっかけとなることが多く、ストレスの原因から離れると症状が改善する傾向があります。

摂食障害

食事のとり方や、体重に対する考え方などに、著しい問題が現れる病気です。

神経性やせ症(拒食症):
太ることへの極端な恐怖から、食事の量を極端に減らしたり、全く食べなくなったりします。標準体重を大きく下回る低体重となっても、自分では「太っている」と感じています。

 

神経性過食症(過食症):
自分ではコントロールできないほどの強い衝動にかられて、大量に食べてしまう「過食」と、その後に体重増加を防ぐために、自分で吐いたり、下剤を乱用したりする「代償行動」を繰り返します。

 

依存症

特定の物質や行為へのコントロールを失い、「やめたくても、やめられない」状態になる病気です。

物質依存:
アルコールや薬物、ニコチンなど、特定の精神に作用する物質の摂取がやめられなくなります。

 

プロセス依存(行動嗜癖):
ギャンブルや買い物、インターネット、ゲームといった特定の「行為」にのめり込み、やめられなくなります。

 

発達障害

生まれつきの脳機能の発達の偏りによって、幼少期から行動面や情緒面に特徴が現れる状態です。これは後天的な「病気」とは異なりますが、その特性から社会生活で困難を抱えたり、うつ病などの二次障害を引き起こしたりすることがあり、障害福祉サービスの対象となります。

自閉スペクトラム症(ASD):
対人関係の構築や、コミュニケーションの困難、限定された興味やこだわりといった特性があります。

 

注意欠如・多動症(ADHD):
年齢に見合わない不注意さ(忘れ物が多い、集中が続かないなど)や、多動性・衝動性(じっとしていられない、思いつきで行動するなど)が特徴です。

 

心の病気の診断方法|どこでどのように診断されるのか

「もしかしたら、自分は心の病気かもしれない」と感じた時、どこに相談し、どのように診断されるのか、その流れを知っておくことで、受診への不安が和らぎます。

相談や診断ができる場所は精神科・心療内科

心の不調について相談や診断ができる専門の医療機関は、主に「精神科」と「心療内科」です。

精神科:
うつ病や統合失調症、不安障害など、心の病気全般を専門に扱います。気分の落ち込み、幻覚、妄想、強い不安など、精神的な症状が中心の場合に適しています。

 

心療内科:
主に、ストレスなどの心理的な要因によって、体に症状(頭痛、腹痛、動悸、めまいなど)が現れる「心身症」を扱います。体の不調がメインで、その背景にストレスがあると感じる場合に適しています。

 

どちらを受診すれば良いか迷う場合は、まずは通いやすいクリニックのウェブサイトで、どのような疾患を主に扱っているかを確認したり、電話で問い合わせてみたりすると良いでしょう。

問診や心理検査など診断までの流れ

心の病気の診断は、血液検査のように数値で明確に判断するものではなく、主に医師による丁寧な問診を通じて、国際的な診断基準(DSM-5など)に沿って総合的に行われます。

問診(診察):
医師が、現在のつらい症状、いつからその症状があるか、生活や仕事にどのような影響が出ているか、これまでの病歴、家族関係などについて、詳しく話を聞きます。ここで自分の状態を正直に、ありのままに話すことが、正確な診断のために最も重要です。

 

心理検査:
必要に応じて、質問紙に答えたり、簡単な作業を行ったりする心理検査を実施し、診断の客観的な参考データとすることがあります。

 

身体検査:
心の病気と似た症状を引き起こす、甲状腺の病気など、他の身体疾患が隠れていないかを確認するため、血液検査や画像検査などを行う場合もあります。

 

診断:
これらの情報を総合的に判断し、医師が診断を下します。

 

受診に不安やためらいがある方へ

精神科や心療内科の受診には、「怖い場所なのでは」「薬漬けにされるのでは」「記録が残って将来に影響するのでは」といった、様々な不安やためらいを感じる方も少なくありません。

しかし、現在の精神科医療は、プライバシーが厳重に守られた空間で、ご本人の意思を最大限に尊重しながら、対話を通じて治療を進めていくのが基本です。治療方針は、医師が一方的に決めるのではなく、あなたと相談しながら一緒に決めていきます。

一人で受診するのが不安な場合は、ご家族や信頼できる友人に付き添ってもらうことも可能です。勇気を出して受診することが、回復への大きな一歩となります。

心の病気の主な治療方法

心の病気の治療は、一つの方法だけでなく、いくつかの方法を組み合わせて、その人の状態に合わせて行われるのが一般的です。

症状を和らげるための「薬物療法」

薬物療法は、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ドーパミンなど)のバランスを整えることで、つらい症状を和らげることを目的とします。気分の落ち込みや強い不安、幻覚・妄想などを軽減させ、心身の状態を安定させる効果が期待できます。抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬、気分安定薬など、症状に合わせて様々な薬が用いられます。

専門家との対話を通じて行う「精神療法」

精神療法(心理療法)は、医師やカウンセラーなどの専門家との対話を通じて、ご自身の考え方や感情のパターンに気づき、問題解決のスキルを身につけていく治療法です。

特に「認知行動療法(CBT)」は、多くの心の病気に効果が実証されている代表的な精神療法です。これは、物事の受け止め方や考え方の癖(認知のゆがみ)を、より柔軟でバランスの取れたものに変えていくことで、つらい気分や問題行動を改善していくことを目指します。

回復に不可欠な「休養」

心の病気の治療において、薬物療法や精神療法と同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「休養」です。

心のエネルギーが枯渇している状態で、無理に頑張ろうとすると、かえって回復が遅れてしまいます。仕事や家事など、ストレスの原因となっているものから一時的に離れ、脳と体をゆっくりと休ませる時間を作ることが、回復のための最も重要な土台となります。

心の病気と仕事|無理なく続けるためのポイント

心の病気を抱えながら、仕事を続けることに難しさを感じる方は少なくありません。無理なく働き続けるためには、いくつかのポイントがあります。

ひとりで抱え込まず周囲に相談する

仕事上の困難を、決して一人で抱え込まないでください。可能であれば、職場の信頼できる上司や同僚、人事担当者、産業医などに相談し、自分の状況を伝えることが大切です。業務量の調整や、休憩の取り方への配慮、コミュニケーション方法の工夫(合理的配慮)など、働きやすい環境を整えるための協力を得られるかもしれません。

休職や退職を考えるときに大切なこと

どうしても仕事を続けるのが困難な場合、休職や退職も、自分を守るための大切な選択肢です。

休職する際は、健康保険の「傷病手当金」などの経済的な支援制度を利用できる場合があります。また、復職に向けては、「リワーク支援」などのリハビリテーションプログラムを活用することもできます。

退職という大きな決断をする前に、まずは主治医や家族、後述する支援機関などとよく相談し、利用できる制度を最大限に活用しながら、ご自身の回復を最優先に考えましょう。

心の病気を抱えながら働くことへの不安は「就労継続支援B型事業所オリーブ」へ

「一般企業で、周りに気を遣いながら働くのはもう疲れた」

「体調に波があって、決まった日時に働くことに自信がない」

「まずは、安心して自分のペースを取り戻せる場所がほしい」

心の病気を抱えながら働くことへの不安は、尽きないかもしれません。もしあなたが、そのような働きづらさを感じているなら、「就労継続支援B型事業所オリーブ」という選択肢があります。

オリーブは、雇用契約を結ばず、あなたの体調や気持ちを最優先に、週に1日、1日2時間といった、ごく短い時間からでも利用できる福祉サービス事業所です。心の病気への深い理解を持つスタッフが、あなたが安心して過ごせるよう、きめ細やかにサポートします。

軽作業やPC作業など、自分のペースで集中できる仕事を通じて、まずは生活リズムを整え、「自分にもできる」という自信を少しずつ取り戻すことから始めてみませんか。

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