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双極性障害(双極症/躁うつ病)とは?症状や原因・治療方法を解説

気分の浮き沈みが激しく、「ハイテンションでどこまでも活動できそうなとき」と、「何もできなくなるほどひどく落ち込むとき」を繰り返していませんか。周りから「気分屋」「感情の起伏が激しい人だ」と言われ、自分でもコントロールできない気分の波に、「自分の性格が悪いのだろうか」と一人で悩んでいる方もいるかもしれません。

その激しい気分の波は、あなたの性格や気合の問題ではなく、「双極性障害(双極症)」という脳の病気が原因かもしれません。かつて「躁うつ病」と呼ばれていたこの病気は、適切な治療を受けることで、気分の波をコントロールし、安定した生活を送ることが十分に可能です。この記事では、双極性障害の基本的な知識から、うつ病との違い、具体的な症状、原因、そして中心となる治療法までを、専門的な内容もかみ砕いて分かりやすく解説します。また、悩みを相談できる支援機関についてもご紹介します。この記事を通して、双極性障害への正しい理解を深め、あなたやあなたの大切な人が、前向きに治療に取り組むための一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。

双極性障害(双極症/躁うつ病)とは|躁状態とうつ状態を繰り返す病気

双極性障害(双極症)とは、気分が異常に高揚してエネルギッシュになる「躁(そう)状態」と、気分が著しく落ち込んで無気力になる「うつ状態」という、両極端な状態を繰り返す脳の病気です。この気分の波は、本人の意思でコントロールできるものではなく、脳内の気分を調整する機能がうまくいかなくなることで生じると考えられています。決して珍しい病気ではなく、生涯のうちに双極性障害にかかる人の割合(生涯有病率)は、0.4%〜1%程度と報告されており、100人に1人弱がかかる可能性がある、身近な病気の一つです。

双極性障害の症状のサイクル

双極性障害の最も大きな特徴は、躁状態とうつ状態という正反対の症状が、繰り返し現れることです。躁状態のときは、人が変わったように活動的になり、大きな買い物をしたり、次々と壮大な計画を立てたりしますが、うつ状態になると一転して、ベッドから起き上がれなくなり、深刻な気分の落ち込みに苛まれます。この気分の波と波の間には、症状が落ち着いて安定している「寛解期(かんかいき)」と呼ばれる期間があるのも特徴です。治療の目的は、この安定した期間をできるだけ長く保ち、気分の波の振り幅を小さくして、コントロールできるようにすることにあります。

うつ病との大きな違いは「躁状態」の有無

双極性障害は、うつ状態の症状がうつ病とよく似ているため、しばしばうつ病と誤診されることがあります。しかし、この二つは全く異なる病気であり、治療法も大きく異なります。最大の違いは、その名の通り「躁状態があるかどうか」です。うつ病は、うつ状態だけが続く病気ですが、双極性障害はうつ状態に加えて、必ず躁状態(または程度の軽い軽躁状態)が現れます。

うつ病の治療に用いられる抗うつ薬を双極性障害の方が単独で使用すると、効果がないばかりか、かえって躁状態を引き起こしたり(躁転)、気分の波のサイクルを早めて症状を不安定にしたりする危険性があります。そのため、気分の落ち込みで医療機関を受診する際には、過去に「調子が良すぎて、普段の自分とは違うほど活動的になった時期」がなかったかどうかを医師に伝えることが、正確な診断と適切な治療のために非常に重要です。

双極性障害の主な種類|双極Ⅰ型と双極Ⅱ型

双極性障害は、躁状態の程度の違いによって、主に「双極Ⅰ型」と「双極Ⅱ型」の2つのタイプに分けられます。どちらのタイプかによって、現れる症状や周囲への影響、治療方針が異なることがあります。

社会生活に大きな影響を及ぼす「双極Ⅰ型」

双極Ⅰ型は、激しい「躁状態」と「うつ状態」を繰り返すタイプです。このタイプの躁状態は非常にエネルギーが高く、明らかに普段とは違う異常な状態であることが本人も周囲も認識しやすいのが特徴です。睡眠をとらなくても平気で活動し続けたり、途方もない事業計画を立てて多額の借金をしたり、見境なく怒りっぽくなって人間関係のトラブルを起こしたりするなど、社会生活や家庭生活に深刻な支障をきたすことが少なくありません。症状が激しい場合は、本人の安全や周囲とのトラブルを防ぐために入院治療が必要になることもあります。

周囲に気づかれにくい軽躁状態がある「双極Ⅱ型」

双極Ⅱ型は、比較的程度の軽い「軽躁状態」と「うつ状態」を繰り返すタイプです。双極Ⅰ型の「躁状態」と比べて、「軽躁状態」はそこまで激しいものではありません。いつもより気分が良く、饒舌になり、アイデアが次々と浮かんで仕事がはかどるなど、一見すると「調子が良い」状態に見えます。

そのため、本人も周囲も病的な状態であるとは気づきにくく、むしろポジティブな状態と捉えてしまいがちです。しかし、軽躁状態の後は必ずうつ状態がやってきます。本人はうつ状態の辛さから医療機関を受診することが多く、この軽躁状態の経験を医師に話さないと、うつ病と診断されてしまう可能性が高いのがこのタイプの特徴です。ご自身やご家族が「そういえば、あの時期は少しおかしかったかも」と振り返り、その情報を医師に伝えることが、正しい診断への鍵となります。

双極性障害の症状|躁状態とうつ状態

ここでは、躁状態とうつ状態のそれぞれで、具体的にどのような症状が見られるのかを詳しく解説します。これらの症状は、気分の波を知るための大切なサインにもなります。

躁状態のときに見られる主な症状

躁状態では、気分が高揚し、心身ともにエネルギーに満ちあふれた状態になります。本人は最高の気分ですが、周囲は振り回されて疲弊してしまうことが少なくありません。

症状のカテゴリー 具体的な症状の例
気分・感情 ・気分が異常に高揚し、爽快になる
・根拠のない自信に満ちあふれ、自分が偉大な存在だと感じる(誇大的になる)
・非常に怒りっぽく、ささいなことで激怒する、攻撃的になる
思考 ・次から次へとアイデアが浮かび、話が止まらない(観念奔逸)
・自分が特別な力を持つ、重要な人物だと思い込む(誇大妄想)
・会話がまとまらず、話が飛躍し、相手の話を聞かない
行動 ・ほとんど眠らなくても平気で、一日中動き回る
・一日中しゃべり続ける(多弁)
・高額な買い物やギャンブルにのめり込む(浪費)
・初対面の人に馴れ馴れしくするなど、社会的に無謀な行動をとる
身体 ・性的な欲求が異常に高まる
・食欲が増進または減退する

※軽躁状態では、これらの症状が比較的軽いレベルで現れます。社会的な問題を起こすほどではなく、むしろ「仕事がはかどる」など、本人にとっては心地よい状態であることが多いです。

うつ状態のときに見られる主な症状

うつ状態では、躁状態とは対照的に、心身のエネルギーが枯渇し、強い気分の落ち込みが続きます。その症状はうつ病と非常によく似ています。

症状のカテゴリー 具体的な症状の例
気分・感情 ・何をしても楽しめず、興味や喜びを全く感じない
・憂うつな気分や深い悲しみが一日中続く
・自分を責め、自分には価値がないと感じる(無価値感・罪悪感)
・イライラして落ち着かない、焦燥感が強い
思考 ・思考力や集中力が低下し、簡単な決断もできない
・物事をすべて悲観的に考えてしまう
・「死んでしまいたい」と考える(希死念慮)
行動 ・人と会うのが億劫になり、引きこもりがちになる
・これまで好きだった活動にも全く関心がなくなる
・お風呂に入れないなど、身だしなみを構わなくなる
身体 ・眠れない(不眠)または眠りすぎる(過眠)
・食欲がない(食欲不振)または食べすぎる(過食)
・体が鉛のように重く、常に疲れている(倦怠感)
・原因不明の頭痛や腹痛などの身体的な不調

 

双極性障害の原因は?遺伝的要因やストレスが関係

双極性障害がなぜ発症するのか、その原因はまだ完全には解明されていません。しかし、近年の研究により、決して本人の性格や育て方のせいではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

脳内の神経伝達物質の不調
脳内で気分や感情をコントロールする神経伝達物質(セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンなど)の量のバランスが崩れ、情報伝達がうまくいかなくなることが、主な原因の一つと考えられています。

 

遺伝的要因
双極性障害は、家族内に同じ病気の方がいる場合に発症しやすいことが分かっており、何らかの遺伝的な要因が関わっていると考えられています。ただし、親が双極性障害だからといって、子どもが必ず発症するわけではありません。遺伝的要因だけですべてが決まるわけではないのです。

 

環境的要因(ストレスなど)
もともと双極性障害になりやすい素因を持っている人が、人生における大きな出来事(就職、結婚、身近な人との死別など)や、過労、人間関係のトラブルといった強いストレスを経験することが、発症の引き金になることがあると言われています。

 

双極性障害の主な治療方法

双極性障害は、適切な治療を継続することで、気分の波をコントロールし、症状を安定させることができる病気です。治療は「薬物療法」と「心理社会的治療」を両輪として進めていくのが基本です。

気分の波を安定させる「薬物療法」が基本

双極性障害の治療において、薬物療法は不可欠な中心的存在です。主な目的は、躁状態とうつ状態の波を鎮め、安定した状態(寛解期)をできるだけ長く維持し、再発を予防することにあります。主に、以下の種類の薬が使われます。

気分安定薬:
その名の通り、気分の波を安定させる効果のある薬です。リチウム(リーマス)、バルプロ酸(デパケン)、カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)などがあり、双極性障害治療の第一選択薬として使われます。

 

非定型抗精神病薬:
気分の高ぶりを鎮める作用や、うつ症状を改善する作用があります。オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)などがあり、躁状態、うつ状態のどちらの治療にも用いられます。

 

自己判断で薬をやめてしまうと、高い確率で再発するため、医師の指示通りに服薬を続けることが何よりも重要です。

病気と向き合うための「心理社会的治療(精神療法)」

薬物療法と並行して、心理社会的治療(精神療法)を行うことで、治療効果を高め、再発予防につながることが分かっています。

心理教育:
患者さん本人やその家族が、双極性障害という病気について、その原因、症状、治療法、再発のサインなどを正しく理解するためのプログラムです。病気への理解を深めることで、主体的に治療に取り組めるようになります。

 

認知行動療法(CBT):
うつ状態のときに陥りがちな、極端に悲観的な考え方(認知のゆがみ)に気づき、それをより現実的でバランスの取れた考え方に修正していくことで、気分の落ち込みを和らげることを目指す治療法です。

 

対人関係・社会リズム療法(IPSRT):
対人関係のストレスや、生活リズムの乱れが気分の波の引き金になることに着目した治療法です。対人関係のスキルを向上させるとともに、起床・就寝時間、食事、活動時間などを毎日一定に保つことで、気分の安定を図ります。

 

双極性障害の悩みや生活の困りごとを相談できる支援機関

双極性障害と診断されたとき、またはその疑いがあるとき、一人や家族だけで悩みを抱える必要はありません。専門的なサポートを受けられる支援機関がたくさんあります。

精神科・心療内科などの専門医療機関

まずは、精神科や心療内科といった専門の医療機関を受診し、専門家である医師に相談することが第一歩です。正確な診断と適切な治療を受けることができます。また、医師だけでなく、病院に在籍する精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)や臨床心理士に、治療費や利用できる福祉サービス、生活上の困りごとなどを相談することも可能です。

地域の保健所や精神保健福祉センター

各市町村に設置されている保健所や、各都道府県・指定都市に設置されている精神保健福祉センターは、地域住民の心の健康に関する相談窓口です。本人だけでなく、家族からの相談にも無料で応じてくれます。どこに相談してよいか分からない場合、まずはこちらに連絡してみると、適切な医療機関や支援機関を紹介してもらえます。

仕事に関するサポートを行う就労支援機関

双極性障害の症状によって、働くことに困難を感じている場合、専門の就労支援機関に相談することができます。

ハローワーク:
障害のある方向けの専門窓口があり、特性に配慮した求人を紹介してもらえたり、就職に関する相談に乗ってもらえたりします。

 

地域障害者職業センター:
専門的な職業評価や、就職に向けた準備支援、職場に適応するためのジョブコーチ支援などを行っています。

 

就労移行支援事業所・就労継続支援事業所:
障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。一般企業への就職を目指す訓練(就労移行支援)や、自分のペースで働く場(就労継続支援)を提供しています。

 

双極性障害と付き合いながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブ

双極性障害と診断され、治療を続けながらも、「社会とのつながりを持ちたい」「自分のペースで働きたい」と考える方は多くいらっしゃいます。しかし、気分の波がある中で、毎日決まった時間にフルタイムで働くのは難しいと感じるかもしれません。そんなあなたに、「就労継続支援B型事業所」という働き方の選択肢があります。

私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、関西(大阪、兵庫、京都、奈良)に拠点を置き、双極性障害などの障害のある方が、安心して自分のペースで働ける環境を提供しています。体調が良い日には少し長めに、辛い日には無理せず休むなど、あなたの気分の波に合わせた柔軟な働き方が可能です。

簡単な軽作業からデータ入力、Webライティングまで、多彩な仕事の中から、あなたの興味やコンディションに合わせて取り組むことができます。障害への深い理解を持つスタッフが、あなたの「働きたい」という気持ちを温かくサポートします。まずは見学から、オリーブの穏やかな雰囲気を体験しに来ませんか。ご連絡を心よりお待ちしています。

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