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神経性やせ症とは?主な症状や原因・治療方法について解説

「痩せたい」という気持ちから始めたダイエットが、いつの間にか「太るのが怖い」という強烈な恐怖に変わり、食べる量を極端に減らしてしまう…。もしあなたが、体重や体型のことばかりを考え、著しく痩せているにもかかわらず、まだ太っていると感じてしまうとしたら、それは「神経性やせ症」という専門的な治療が必要な病気かもしれません。神経性やせ症は、一般的に「拒食症」として知られる、摂食障害の一つです。これは、単なる「食欲がない」状態や「意志が強い」ことの表れではなく、心と体に深刻な影響を及ぼし、時には命にも関わる、こころの病気です。この記事では、神経性やせ症とはどのような病気か、その具体的な症状や原因、そして回復に向けた治療法までを、分かりやすく解説していきます。一人で抱え込まず、病気について正しく理解し、適切なサポートにつながるための一歩としてください。

神経性やせ症とは|極端な食事制限とやせ願望が特徴の摂食障害

神経性やせ症(Anorexia Nervosa)は、著しい低体重を維持するための持続的な行動(カロリー摂取の制限など)、体重増加や肥満に対する強い恐怖、そして体重や体型に関する認知の歪みを特徴とする精神疾患です。この病気の根底には、単に「痩せたい」という願望だけでなく、「太ることへの病的な恐怖」や、「痩せている自分でなければ価値がない」という、自己評価と体型が密接に結びついた、歪んだ考え方が存在します。そのため、本人はしばしば強い空腹を感じていながらも、恐怖心から食べることを拒否してしまうのです。

神経性やせ症の2つのタイプ

神経性やせ症は、過去3ヶ月間の症状によって、主に2つのタイプに分けられます。

摂食制限型:
このタイプでは、体重減少は、主にダイエットや断食、過剰な運動によってもたらされます。むちゃ食い(過食)や、自分で吐く、下剤を使うといった排出行動は見られません。

 

過食・排出型:
このタイプでは、食べる量を極端に制限する一方で、むちゃ食い(制御できない感覚で大量に食べてしまうこと)と、その後の排出行動(自己誘発性嘔吐や、下剤・利尿剤・浣腸などの乱用)を繰り返し行います。

 

どちらのタイプも、著しい低体重と、体重増加への強い恐怖という中核的な症状は共通しています。

神経性やせ症の主な症状

神経性やせ症は、心と体の両方に、様々なサインとなって現れます。その多くは、深刻な低栄養状態によって引き起こされる、身体からの悲鳴です。

心理的症状|太ることへの強い恐怖と体重へのこだわり

心の面では、食や体型に対する異常なこだわりが生活全体を支配します。

体重増加への極端な恐怖:
少しでも体重が増えることに、耐えがたいほどの恐怖や不安を感じます。

 

ボディイメージの歪み:
明らかに痩せているにもかかわらず、自分の体を「太っている」と感じたり、特定の部分(お腹、太ももなど)が太いと思い込んだりします。

 

体重や食事へのとらわれ:
一日中、食べ物のカロリーや体重計の数値のことばかりを考えてしまいます。食事に関する独自の厳格なルール(マイルール)を作り、それを守れないと強い罪悪感に苛まれます。

 

病識の否認:
自分が病気であることや、低体重が健康に及ぼす危険性を認めようとしないことが多いです。

 

社会的孤立:
人と一緒に食事をすることを避けようになり、友人や家族との関わりが減り、孤立しがちになります。

 

抑うつや不安:
気分の落ち込みやイライラ、不安感が強くなり、他の精神疾患を合併することも少なくありません。

 

身体症状|低体重によるさまざまな健康問題

極端な食事制限による栄養失調は、全身に深刻な、時には命に関わる影響を及ぼします。

やせ:
標準体重を大幅に下回り、見た目にも骨と皮ばかりのように痩せが明らかになります。

 

無月経:
女性の場合、体が生命の危機を感じて、生殖機能に関わるホルモンの分泌を止め、月経が3ヶ月以上停止します。これは体が発する深刻な危険信号です。

 

徐脈・低血圧・低体温:
心拍数が遅くなったり(徐脈)、血圧や体温が低下したりして、強い疲労感や冷えを感じます。

 

皮膚・毛髪の変化:
皮膚がカサカサに乾燥し、髪の毛が抜けやすくなります。また、体を守ろうとして、胎児のように全身に産毛(うぶげ)が濃くなることもあります。

 

消化器系の問題:
食べ物を受け付けなくなり、胃もたれや便秘、腹痛に悩まされます。

 

骨粗しょう症:
カルシウム不足や女性ホルモンの低下により、骨がもろくなり、若くても骨折しやすくなります。

 

電解質異常:
排出行動(特に嘔吐や下剤乱用)を伴う場合、血液中のカリウムなどの電解質バランスが崩れ、不整脈や腎機能障害、突然死など、命に直接関わる重篤な状態を引き起こすことがあります。

 

神経性やせ症の原因|心理的・社会的・生物学的要因が関係

神経性やせ症は、単一の原因で発症するわけではありません。ご本人の心理的な要因、育ってきた環境や社会・文化的な要因、そして生物学的な要因が、複雑に絡み合って発症すると考えられています。

心理的要因:
もともとの性格として、真面目で、完璧主義、負けず嫌い、自分に厳しいといった傾向がある方に多いと言われています。また、自己評価が低く、「ありのままの自分」に自信が持てないという、心の不安定さが根底にあることも少なくありません。

 

社会的・文化的要因:
「痩せていることが美しい」「痩せていることは自己管理能力の高さの証」といった社会全体の価値観や、メディアから流されるモデルやアイドルの体型情報などが、特に思春期の若者にとって、過度なダイエットへのプレッシャーとなることがあります。また、家庭や学校でのストレス、つらい出来事などが、唯一自分でコントロールできると感じられる「体重」への執着に向かわせる引き金となることもあります。

 

生物学的要因:
なりやすさには、遺伝的な要因も関与している可能性が指摘されています。また、脳内の食欲や気分を調整する神経伝達物質(セロトニンなど)の機能不全も関係していると考えられています。

 

神経性やせ症の診断基準と相談できる病院

「もしかして、自分や家族が神経性やせ症かもしれない」と感じたら、自己判断はせず、専門家へ相談することが重要です。

専門医による診断基準

神経性やせ症の診断は、専門の医師によって、国際的な診断基準(アメリカ精神医学会のDSM-5など)に基づいて行われます。その主なポイントは以下の3つです。

カロリー摂取の制限:
必要量に対し、カロリー摂取を意図的に制限し、年齢や性別、身体的健康状態から見て、著しい低体重であること。

 

体重増加への強い恐怖:
体重が著しく低いにもかかわらず、体重が増えることや、太ることに対して、強い恐怖を感じていること。

 

体重や体型に関する認知の歪み:
自分の体重や体型を、客観的な事実とは異なる、歪んだ形で認識していること。または、現在の低体重が健康に及ぼす深刻さを認められないこと。

 

これらの基準を満たすかどうかを、丁寧な問診や診察を通じて、医師が総合的に判断します。

受診すべき病院は精神科や心療内科

神経性やせ症を含む摂食障害の診断と治療は、主に精神科心療内科が専門となります。可能であれば、その中でもウェブサイトなどで「摂食障害専門外来」を設けている病院やクリニックを受診するのが最も望ましいです。また、著しい低体重による身体的な合併症が見られる場合は、内科や婦人科などと連携して治療を進めていく必要があります。どこに相談すれば良いか分からない場合は、まずはお住まいの地域の保健所や精神保健福祉センターに問い合わせてみるのも良いでしょう。

神経性やせ症の主な治療方法

神経性やせ症の治療は、命の安全を守るための身体的治療と、病気の根本にある心理的な問題へのアプローチを、同時に行っていく必要があります。治療には、医師、看護師、公認心理師、管理栄養士、精神保健福祉士など、多職種の専門家がチームとなって関わります。

最優先される体重の回復と栄養療法

治療において、まず何よりも優先されるのは、低栄養状態からの脱却と、生命の安全の確保です。極度のやせは、心臓の機能不全など、命に直接関わるリスクがあるため、安全な体重まで回復させることが最初の目標となります。外来での治療が難しい場合や、身体的な危険性が高い場合は、入院治療が必要となります。医師や管理栄養士の管理のもと、点滴や経管栄養なども用いながら、ご本人の不安に配慮しつつ、段階的に栄養状態を改善していきます。

食事指導や生活指導

体重がある程度回復し、安定してきたら、食事や生活に関する指導が行われます。管理栄養士などから、栄養バランスの取れた食事のとり方や、適切な食事量について学びます。また、体重を毎日測るのをやめる、食事の時間を決めるなど、食行動に関する具体的な目標を設定し、生活リズムを整えていきます。

考え方の偏りを修正する認知行動療法

身体的な治療と並行して、病気の根本にある、考え方の偏りを修正するための精神療法(カウンセリング)が行われます。特に、認知行動療法(CBT)は、神経性やせ症の治療に有効とされています。これは、カウンセラーとの対話を通じて、「痩せていないと価値がない」「少しでも食べたら太ってしまう」といった、ご本人を苦しめている極端な考え方(認知の歪み)に気づき、それが本当に事実なのかを客観的に検証し、より柔軟で現実的な考え方ができるようにサポートしていく治療法です。

合併症に対して行われる薬物療法

現在のところ、神経性やせ症そのものに特効薬として承認されている薬はありません。薬物療法は、あくまで補助的な役割として用いられます。神経性やせ症には、うつ病や不安障害、強迫性障害といった他の精神疾患が合併していることが少なくありません。そのような場合に、それらの合併症の症状(気分の落ち込み、強い不安やこだわりなど)を和らげる目的で、抗うつ薬や抗不安薬などが処方されることがあります。

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