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睡眠障害とは?主な種類や症状・原因や治療法について解説

「夜、なかなか寝付けない」「ぐっすり眠ったはずなのに、日中も眠くて仕方がない」そんな睡眠に関する悩みを抱えていませんか。日本では、成人の約5人に1人が何らかの睡眠の問題で悩んでいると言われ、睡眠に関する悩みは決して珍しいことではありません。一時的な寝不足であれば心配いりませんが、睡眠の問題が長期間続き、日中の活動に支障が出ている場合、それは「睡眠障害」という専門的な治療が必要な病気かもしれません。睡眠障害は、心身の健康や仕事、日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。この記事では、睡眠障害の主な種類と症状、考えられる原因、そして具体的な治療法や利用できる支援制度について、詳しく解説していきます。ご自身の睡眠について理解を深め、より良い毎日を送るための第一歩として、ぜひ最後までお読みください。

睡眠障害とは|睡眠の量や質に問題がある状態の総称

睡眠障害とは、睡眠の「量」や「質」に何らかの問題が生じ、その結果として日中の倦怠感や意欲低下、集中困難といった不調が出現し、日常生活に支障をきたしている状態全般を指します。単に「眠れない」という不眠症だけでなく、日中に過剰な眠気を感じる「過眠症」や、望ましい時間に眠れない「概日リズム睡眠・覚醒障害」なども含まれます。健康な睡眠は、心と体の疲労を回復させ、記憶を整理・定着させるなど、私たちが健康に生きていく上で不可欠な役割を担っています。しかし、睡眠障害によってこのバランスが崩れると、集中力や作業能率の低下、気分の落ち込み、さらには生活習慣病(高血圧、糖尿病など)やうつ病などのリスクを高めることも知られています。そのため、睡眠の問題を「ただの寝不足」「年のせい」と軽視せず、必要であれば専門家に相談し、適切な対処を行うことが非常に重要です。

睡眠障害の主な種類と症状

「睡眠障害」と一言でいっても、その種類は多岐にわたります。ここでは、代表的な睡眠障害の種類とそれぞれの特徴的な症状について解説します。

分類 主な障害名 主な症状
不眠症 不眠障害 寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝早く目が覚める、ぐっすり眠れない
過眠症 ナルコレプシー、特発性過眠症など 日中に耐えがたい強い眠気が繰り返し起こる
概日リズム睡眠・覚醒障害群 睡眠・覚醒相後退障害、交代勤務障害など 体内時計が乱れ、望ましい時間に眠ったり起きたりできない
睡眠時呼吸障害群 睡眠時無呼吸症候群(SAS) 睡眠中にいびきをかき、呼吸が止まることを繰り返す
睡眠時随伴症 睡眠時遊行症(夢遊病)、悪夢障害など 睡眠中に望ましくない行動や体験(夢など)が起こる
睡眠関連運動障害群 むずむず脚症候群など じっとしていると脚に不快な感覚が生じ、眠りを妨げる

 

不眠症|寝付けない・眠りが浅い・早く目が覚める

不眠症は、睡眠障害の中で最も多くの人が悩んでいる症状です。十分な睡眠時間を確保しようとしても、量や質が低下し、日中の倦怠感や集中力低下、気分の落ち込みなどを引き起こします。不眠症は、主に以下の4つのタイプに分けられます。

【不眠症の4つのタイプ】

入眠障害:
床についてもなかなか寝付けず、眠りに入るまでに30分~1時間以上かかる状態です。不安や考えごとがあると、さらに寝つきにくくなります。

 

中途覚醒:
眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めてしまう状態です。一度目が覚めると、その後なかなか寝付けなくなることもあります。

 

早朝覚醒:
自分が起きようと思っている時刻より2時間以上も早く目が覚めてしまい、その後再び眠れない状態です。高齢者に多く見られる傾向があります。

 

熟眠障害:
睡眠時間は足りているはずなのに、眠りが浅く、ぐっすり眠れたという満足感(休養感)が得られない状態です。

 

これらのタイプは、一つだけが現れることもあれば、複数が同時に現れることもあります。

過眠症|日中に強い眠気がある

過眠症は、夜に十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中に場所や状況を選ばずに、自分ではコントロールできないほどの強い眠気に襲われる状態です。代表的なものに「ナルコレプシー」があります。

ナルコレプシーの主な症状は、日中の耐えがたい眠気に加え、笑ったり驚いたりしたときに体の力が抜けてしまう「情動脱力発作」や、寝入りばなに金縛りにあう「睡眠麻痺」、現実と区別がつかない鮮明な夢を見る「入眠時幻覚」などがあります。これらの症状により、学業や仕事、車の運転などに深刻な影響を及ぼす危険性があるため、早期の診断と治療が重要です。

概日リズム睡眠・覚醒障害群|睡眠のリズムがずれる

私たちの体には、約24時間周期で心身の状態を変化させる「体内時計(概日リズム)」が備わっています。この体内時計のリズムと、実際の生活リズムとの間にズレが生じることで起こるのが「概日リズム睡眠・覚醒障害群」です。代表的な例として、夜型の生活が続き、深夜にならないと眠れず朝も起きられない「睡眠・覚醒相後退障害」や、交代制勤務によって睡眠リズムが乱れる「交代勤務障害」などがあります。本人は眠ろうと努力しても、体内時計が覚醒の時間帯にあるため眠ることができず、社会生活に支障をきたします。

睡眠時呼吸障害群|いびきや無呼吸

睡眠中に呼吸が止まったり、浅くなったりすることを繰り返す病気です。代表的なものに「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」があります。大きないびきが特徴で、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が何度も起こります。呼吸が止まることで体は低酸素状態になり、それを補うために心臓や血管に大きな負担がかかります。また、無呼吸のたびに脳が覚醒するため、深い睡眠がとれず、日中に強い眠気や倦怠感を引き起こします。高血圧や心臓病、脳卒中などの生活習慣病を合併するリスクも高まります。

睡眠時随伴症|寝ぼけや悪夢

睡眠中に起こる、異常な行動や体験の総称です。子どもの頃に多く見られる、寝ている間に起き上がって歩き回る「睡眠時遊行症(いわゆる夢遊病)」や、突然叫び声をあげて起きる「夜驚症」などがこれに含まれます。大人に多いものとしては、悪夢を頻繁に見てうなされる「悪夢障害」や、夢の中での行動がそのまま現実の行動として現れてしまう「レム睡眠行動障害」などがあります。レム睡眠行動障害では、夢を見て大声で寝言を言ったり、手足を激しく動かしたりするため、隣で寝ている人に怪我をさせてしまうこともあります。

睡眠関連運動障害群|睡眠中に足がむずむずする

睡眠中に、体の動きに関連した異常が生じる病気です。代表的なものに「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」があります。この病気は、夕方から夜にかけて、じっと座っていたり横になったりしているときに、脚(時には腕などにも)に「むずむずする」「虫が這うような」「ピリピリする」といった、言葉で表現しがたい不快な感覚が現れるのが特徴です。この不快感は、脚を動かすと一時的に和らぎますが、じっとしていると再び現れるため、なかなか寝付けずに深刻な不眠の原因となります。

睡眠障害の主な原因|生活習慣・ストレス・病気など

睡眠障害は、単一の原因で起こることは少なく、様々な要因が複雑に絡み合って発症します。原因は大きく、生活習慣やストレスなどの「環境要因」と、心身の病気などの「身体・精神的要因」に分けられます。

【睡眠障害を引き起こす主な要因】

心理的なストレス:
仕事や家庭内の悩み、人間関係のトラブルなど、精神的なストレスは交感神経を活発にし、脳を覚醒させるため、不眠の大きな原因となります。

 

生活習慣の乱れ:
不規則な睡眠時間、運動不足、就寝前のスマートフォンやPCの使用、カフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙などは、睡眠の質を著しく低下させます。

 

環境の変化:
時差のある場所への旅行(時差ぼけ)、交代制勤務、騒音や光など、睡眠環境の変化や不適切な環境も睡眠リズムを乱す原因です。

 

加齢:
年齢を重ねると、体内時計の変化やホルモンバランスの乱れにより、睡眠が浅くなったり、早朝に目が覚めやすくなったりします。

 

精神疾患や身体疾患との関連

これらの要因に加え、他の病気が睡眠障害を引き起こしているケースも少なくありません。睡眠障害は、他の病気の症状の一つとして現れることが非常に多いのが特徴です。うつ病や不安障害、統合失調症といった精神疾患では、脳内の神経伝達物質のバランスが乱れることなどから、高確率で不眠や過眠といった睡眠の問題を伴います。特に、うつ病と不眠症は密接に関連しており、互いに症状を悪化させ合う悪循環に陥りやすいことが知られています。また、身体の病気も睡眠を妨げる原因となります。

    • アトピー性皮膚炎などによる「かゆみ」
    • 関節リウマチなどによる「痛み」
    • 喘息発作による「咳や息苦しさ」
    • 前立腺肥大や過活動膀胱による「頻尿」
    • 高血圧や心臓病の治療薬などの「薬剤の副作用」

 

このように、背景に何らかの病気が隠れている可能性があるため、睡眠の問題が続く場合は、自己判断せずに医療機関を受診することが大切です。

睡眠障害の主な治療方法と相談できる科

睡眠障害の治療は、原因となっている要因や障害の種類によって異なりますが、基本的には「非薬物療法」が中心となり、必要に応じて「薬物療法」が組み合わされます。

睡眠習慣の見直しと改善(睡眠衛生指導)

治療の第一歩は、睡眠に関する正しい知識を学び、生活習慣を改善する「睡眠衛生指導」です。薬に頼る前に、まずは以下のようなセルフケアを実践することが、質の良い睡眠を取り戻すための基本となります。

【質の良い睡眠のための生活習慣】

    • 毎日、同じ時刻に起床・就寝する習慣をつけ、体内時計のリズムを整える。
    • 朝起きたら太陽の光を浴び、体内時計をリセットする。
    • 日中は適度な運動を行う。ただし、就寝直前の激しい運動は避ける。
    • 寝室は、静かで暗く、快適な温度・湿度に保つ。
    • 就寝前のスマートフォンやPC、テレビの使用は控える。ブルーライトは脳を覚醒させます。
    • 就寝前のカフェイン摂取(コーヒー、紅茶、緑茶など)や喫煙は避ける。
    • 寝酒は眠りを浅くするため、控える。
    • 眠くなってから床につくようにし、寝床で長く過ごしすぎない。

 

これらの習慣を心がけるだけでも、睡眠の問題が改善される場合があります。

不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)

生活習慣の改善だけでは効果が見られない不眠症に対しては、「不眠症のための認知行動療法(CBT-I)」が非常に有効な治療法として推奨されています。これは、睡眠に対する誤った考え方や思い込み(認知)を修正し、睡眠を妨げる行動を改めることで、不眠の悪循環を断ち切ることを目指す心理療法です。例えば、「8時間は眠らなければいけない」「眠れないと大変なことになる」といった過度な思い込みを、「日中に眠気で困らなければ大丈夫」といった、より現実的な考え方に修正していきます。また、あえて就寝時刻を遅らせて寝床にいる時間を短縮し、睡眠の効率を高める「睡眠時間制限法」などの行動療法も行います。専門家の指導のもとで数週間から数ヶ月かけて行われる、根本的な解決を目指す治療法です。

医師の指示で行う薬物療法

非薬物療法で十分な効果が得られない場合や、症状が重く日常生活に大きな支障が出ている場合には、補助的に睡眠薬などの薬物療法が行われます。睡眠薬には、作用時間の長さによって様々な種類があり、医師は患者さんの不眠のタイプ(寝つきが悪い、途中で目が覚めるなど)に合わせて薬を選択します。最近では、副作用や依存性が少なく、より自然な眠りを促す新しいタイプの薬も開発されています。ただし、自己判断で服用したり、急に中断したりすると、かえって症状が悪化することもあります。薬物療法は、必ず医師の指示に従って、用法・用量を守って行うことが鉄則です。

何科を受診する?|精神科・心療内科・睡眠外来など

睡眠の問題で医療機関を受診したい場合、どの科にかかればよいか迷うかもしれません。症状に応じて、以下の診療科が相談先となります。

    • 精神科・心療内科: ストレスやうつ病、不安障害などが原因と考えられる不眠や過眠の場合。
    • 睡眠専門外来・睡眠センター: 睡眠障害全般を専門的に診断・治療する機関。原因がはっきりしない場合や、詳細な検査が必要な場合に適しています。
    • 呼吸器内科・耳鼻咽喉科: いびきや無呼吸が主な症状である睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合。
    • かかりつけの内科: まずは身近な医師に相談したい場合。必要に応じて専門医を紹介してもらえます。

 

睡眠障害の方が利用できる支援制度

睡眠障害が、うつ病などの精神疾患に起因する場合や、症状が重く長期にわたって日常生活や仕事に支障が出ている場合には、様々な福祉サービスを利用できる可能性があります。

障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)

睡眠障害そのもので手帳を取得することは難しいですが、その原因となっているうつ病や統合失調症、双極性障害などの精神疾患により、初めて診断を受けてから6ヶ月以上経過し、日常生活や社会生活に制約があると判断された場合、「精神障害者保健福祉手帳」の交付対象となることがあります。手帳を取得すると、税金の優遇措置や公共料金の割引、障害者雇用枠での就労など、様々な支援を受けることができます。

医療費の負担を軽減する自立支援医療

「自立支援医療(精神通院医療)」は、精神疾患の治療のために継続的に通院が必要な方の医療費の自己負担を軽減する制度です。通常3割負担の医療費が1割に軽減され、所得に応じて月ごとの自己負担上限額が設定されます。睡眠障害の原因となっている精神疾患の治療で通院している場合、この制度の対象となる可能性があります。申請はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。

働き方をサポートする就労移行支援・就労継続支援

睡眠障害によって生活リズムが乱れていたり、フルタイムで働くことに不安があったりする場合、「就労支援サービス」を利用することも有効な選択肢です。

就労移行支援:
一般企業への就職を目指す方が、ビジネスマナーやPCスキルなどの職業訓練を受けたり、職場実習を行ったりする場所です。生活リズムの安定も含めて、就職に向けた準備をサポートします。

 

就労継続支援:
現時点で一般企業で働くことが難しい方が、支援を受けながら働くことができるサービスです。特にB型は、雇用契約を結ばず、自分の体調やペースに合わせて短時間からでも働くことができるため、まずは生活リズムを整え、働くことに慣れていきたいという方に適しています。

 

睡眠の悩みを抱えながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブ

睡眠の悩みを抱えていると、「決まった時間に起きて、毎日会社に通う」という当たり前のことが、とても難しく感じられるかもしれません。周りの人に理解されず、一人で焦りや不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

もしあなたが、睡眠の問題と付き合いながら、自分のペースで社会とのつながりを持ち、働きたいと考えているなら、私たち就労継続支援B型事業所オリーブにご相談ください。

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、アクセスしやすい場所に複数の事業所を展開しています。私たちは、一人ひとりの体調や生活リズムを何よりも大切にしています。「午前中だけ」「週に2日から」など、あなたの状態に合わせて通所日数や時間を柔軟に設定することが可能です。

まずは朝、決まった時間に家を出て、オリーブに来ることから始めてみませんか。軽作業などを通じて少しずつ自信を取り戻し、安定した生活リズムを築いていく。そのプロセスを、経験豊富なスタッフが親身になってサポートします。見学や相談はいつでも受け付けています。あなたの「働きたい」気持ちを、私たちは全力で応援します。

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