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パニック障害(パニック症)とは?主な症状や原因・発作時の対処法を解説

電車に乗っている時、会議中、あるいは何でもない道を歩いている時。何のきっかけもなく、突然、心臓が激しく鳴り出し、息ができなくなるほどの恐怖に襲われた経験はありませんか。その強烈な発作は、「パニック障害(パニック症)」の症状かもしれません。パニック障害は、突然の激しい不安発作(パニック発作)を繰り返し、その結果、「また発作が起きたらどうしよう」という強い恐怖から、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。

この記事では、パニック障害の3つの主な症状やその原因、そして専門的な治療法について詳しく解説します。さらに、実際にパニック発作が起きてしまった時の、ご自身でできる対処法と、周りの人ができるサポートについても、具体的にお伝えします。パニック障害は、正しい知識を身につけ、適切に対処することで、必ず乗り越えることができる病気です。一人で抱え込まず、まずは病気について知ることから始めましょう。

パニック障害(パニック症)とは|突然の強い不安に襲われる病気

パニック障害(パニック症)とは、予期しないパニック発作が繰り返し起こり、その発作がまた起きることへの強い不安(予期不安)や、発作が起きそうな場所を避ける行動(広場恐怖)によって、日常生活に支障が生じる、不安障害の一つです。心臓や呼吸器の検査をしても身体的な異常は見つからず、発作自体は数分から長くても1時間以内には治まります。しかし、死んでしまうのではないかと思うほどの強烈な恐怖体験であるため、「またあの発作が襲ってきたらどうしよう」という強い不安が、常に頭から離れなくなってしまいます。

この「予期不安」こそが、パニック障害の本体とも言える症状です。予期不安が強まることで、さらにパニック発作が起きやすくなり、行動範囲が狭まっていくという悪循環に陥ってしまうのです。

パニック障害は誤解されやすい病気

パニック障害の症状は、目に見えないため、周りの人から理解されにくいという側面があります。「気の持ちようだ」「心が弱いからだ」といった誤解や偏見に、深く傷ついている方も少なくありません。しかし、パニック障害は、本人の性格や意志の弱さが原因ではなく、脳内の神経伝達物質のバランスの乱れなどによって起こる、脳機能の不調による病気です。誰にでも起こりうる病気であり、決して特別なことではありません。適切な治療を受ければ、症状をコントロールし、元の生活を取り戻すことが十分に可能です。まずは、病気について正しく理解し、自分を責めないことが大切です。

パニック障害の3つの主な症状

パニック障害は、単にパニック発作を繰り返すだけではありません。「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」という3つの症状が、互いに影響し合い、悪循環を生み出しているのが特徴です。

1. パニック発作|突然の動悸や息苦しさ

パニック障害の出発点となる症状です。明らかな理由もなく、突然、以下のリストにあるような症状が複数、同時に現れ、通常は10分以内にピークに達します。その恐怖は、「このまま死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」と感じるほど強烈なものです。

<パニック発作の主な症状(DSM-5による)>

    • 動悸、心臓がドキドキする、または心拍数が増加する
    • 汗をかく
    • 体が震える
    • 息切れ感、または息苦しさ
    • 窒息感
    • 胸の痛み、または不快感
    • 吐き気、またはお腹の不快感
    • めまい、ふらつく感じ、気が遠くなる感じ
    • 寒気、または熱っぽさを感じる
    • 感覚の異常(しびれ感、うずき感)
    • 現実でない感じ(非現実感)、または自分が自分ではない感じ(離人感)
    • コントロールを失うことへの恐怖、または気が狂うことへの恐怖
    • 死ぬことへの恐怖

 

2. 予期不安|「また発作が起きるのでは」という恐怖

一度でも強烈なパニック発作を経験すると、「また、あの恐ろしい発作が起きたらどうしよう」という、発作そのものに対する強い恐怖や不安が生まれます。これを「予期不安」と呼びます。この予期不安があると、常に自分の体のささいな変化(少しの動悸や息苦しさなど)に過敏になり、「発作の前兆ではないか」と捉えて、さらに不安が増大します。この絶え間ない不安が、日常生活における大きな苦痛の原因となります。

3. 広場恐怖|逃げられない場所への不安

予期不安が強くなると、「もし発作が起きたら、すぐに逃げられない場所や、助けを求められない状況」を、意識的・無意識的に避けるようになります。これを「広場恐怖(アゴラフォビア)」と呼びます。「広場」という言葉から広い場所を想像しがちですが、実際には以下のような「逃げ場のない、助けが得られない」と感じる場所や状況が対象となります。

【典型的な広場恐怖の対象】

    • 電車、バス、飛行機などの公共交通機関
    • 高速道路やトンネル、橋の上での運転
    • 映画館、美容院、歯医者など、すぐにその場を離れられない場所
    • スーパーのレジの行列や、混雑した場所
    • 一人で家にいること、または一人で外出すること

 

こうした回避行動がエスカレートすると、一人で外出できなくなったり、家に引きこもりがちになったりと、社会生活が著しく制限されてしまいます。

パニック障害の原因は脳機能の不調などが関係

パニック障害が起こる明確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、現在の研究では、危険を察知して不安や恐怖といった感情を生み出す、脳の「警報システム」の誤作動が関係していると考えられています。私たちの脳には、危険を察知すると、心拍数を上げたり呼吸を速くしたりして、体を「闘うか、逃げるか(Fight or Flight)」の状態にする扁桃体(へんとうたい)という部分があります。

パニック障害は、この扁桃体が、実際には危険がない状況で過敏に反応し、誤った警報を発してしまうことで、パニック発作が引き起こされるのではないか、と言われています。また、こうした脳機能の不調に加え、過労や睡眠不足、心理的なストレスなどが、発症の引き金となることも指摘されています。

パニック障害の主な治療方法

パニック障害は、治療によって症状を大幅に改善できる病気です。治療は主に、「薬物療法」と「精神療法」を組み合わせて行われます。

症状をコントロールするための薬物療法

薬物療法は、パニック発作や予期不安を抑え、つらい症状をコントロールするために有効です。主に、以下の2種類の薬が用いられます。

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):
抗うつ薬の一種で、脳内の神経伝達物質であるセロトニンのバランスを整えることで、不安や恐怖感を和らげます。効果が現れるまでに数週間かかりますが、パニック障害の治療の中心となる薬です。

 

抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など):
即効性があり、強い不安やパニック発作を一時的に抑える効果があります。しかし、依存性の問題もあるため、SSRIの効果が出るまでの補助としてや、頓服(発作が起きそうな時だけ服用する)として、医師の指導のもとで慎重に用いられます。

 

薬物療法で重要なのは、症状が良くなったからといって、自己判断で薬をやめないことです。必ず主治医と相談しながら、治療を進めていきましょう。

不安と向き合うための精神療法(認知行動療法など)

薬物療法で症状をある程度コントロールできるようになったら、不安と向き合い、乗り越えていくための精神療法を並行して行うことが、根本的な回復と再発予防につながります。特に有効とされているのが「認知行動療法(CBT)」です。

認知行動療法では、まずパニック障害についての正しい知識を学び、病気への誤解を解いていきます。その上で、パニック発作が起きても「死ぬことはない」「数分で治まる」という認知(物事の捉え方)の修正を行います。さらに、これまで避けていた場所や状況に、専門家のサポートのもとで、少しずつ段階的に挑戦していく「曝露(ばくろ)療法(エクスポージャー法)」を行います。「発作が起きても大丈夫だった」という成功体験を積み重ねることで、「苦手な場所=危険」という思い込みを解消し、行動範囲を広げていくことを目指します。

パニック発作が起きたときの対処法

もし、パニック発作が起きてしまったら。その場でできる対処法を知っておくだけで、恐怖は大きく和らぎます。

自分でできる対処法

発作の渦中にいるときは、冷静になるのは難しいかもしれません。しかし、「これはいつか必ず治まる」と信じて、以下のことを試してみてください。

    • 安全な場所へ移動する:まずは、その場で座れる場所や、静かで落ち着ける場所に移動しましょう。車の運転中であれば、安全な場所に停車させます。
    • 「これはパニック発作だ」と認識する:「心臓発作ではない、死ぬことはない、これはパニック発作で、数分で治まる」と、心の中で自分に言い聞かせます。病気について正しく理解していることが、恐怖を和らげる力になります。
    • ゆっくりとした呼吸を心がける:パニック発作中は、呼吸が速くなりがちです(過呼吸)。息を吸うことよりも、「ゆっくりと長く息を吐くこと」を意識しましょう。「1、2、3、4」と数えながら鼻から息を吸い、「1から8」くらいまで数えながら口からゆっくり吐き出す、といった腹式呼吸が効果的です。ビニール袋を口に当てるペーパーバッグ法は、血中の二酸化炭素濃度が上がりすぎる危険があるため、現在では推奨されていません。
    • 他の感覚に意識を向ける:冷たいペットボトルを握ってみる、ポケットの中の鍵の感触を確かめる、周りの景色をじっと観察するなど、恐怖や体の感覚から、意識をそらす工夫も有効です。

 

周囲の人ができるサポート

もし、あなたの隣で誰かがパニック発作を起こしていたら。周りの人の冷静な対応が、本人の大きな助けになります。

    • 冷静に、落ち着いた態度で接する:あなたが慌ててしまうと、本人の不安はさらに増大します。「大丈夫ですよ」と、穏やかな声で話しかけてあげてください。
    • 安全な場所へ誘導する:人混みを避け、静かで落ち着ける場所に一緒に移動してあげましょう。
    • 背中をさするなど、安心感を与える:本人の許可を得た上で、背中をゆっくりさすってあげると、安心感につながることがあります。
    • 本人の言葉に耳を傾ける:「どうしましたか?」と聞き、本人が話せる状態であれば、その言葉に耳を傾けましょう。
    • 言ってはいけない言葉を避ける:「しっかりして!」「気にしすぎだよ」「頑張って」といった言葉は、本人を追い詰めるだけなので、絶対に避けましょう。
    • 発作が治まるまで、そばにいる:「一人じゃない」と感じられることが、何よりの支えになります。「落ち着くまで、そばにいますね」と伝え、静かに見守ってあげてください。

 

パニック障害と向き合いながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブ

パニック障害、特に広場恐怖の症状があると、毎日の通勤や、オフィスという閉鎖された空間で働くことに、大きな困難を感じるかもしれません。「また電車で発作が起きたらどうしよう」「会議中に具合が悪くなったら、すぐに抜け出せない」といった不安から、働くこと自体を諦めてしまっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そんなあなたに、社会復帰への最初の一歩を踏み出すための、安心できる場所として、私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」があります。オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、パニック障害をはじめ様々な障害のある方の「働きたい」という気持ちをサポートしています。雇用契約を結ばずに利用できるB型事業所なので、あなたの不安や体調を最優先した働き方が可能です。

    • 自分のペースで通所できる:週1日・1日1時間からでもスタートできます。通勤ラッシュを避けて、空いている時間に通うことも可能です。
    • 途中で休憩や退席がしやすい:体調が優れない時は、気兼ねなく休憩できます。発作への不安が強い場合でも、安心して過ごせる環境です。
    • 在宅での作業も相談可能:事業所に通うこと自体が難しい場合、在宅での作業から始めることもできます。

 

まずは「家から出て、決まった場所へ行く」という練習から、あなたのペースで始めてみませんか。オリーブは、あなたが安心して社会とのつながりを取り戻すための、安全な基地でありたいと願っています。ご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。

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