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双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の違いを解説|それぞれの原因と仕事のポイント

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の概要

「衝動的に高額な買い物をしてしまう」「会議中に集中力が途切れて、話が頭に入ってこない」「気分がコロコロ変わって、自分でもついていけない」。こうした経験から、「自分は双極性障害なのだろうか、それともADHDなのだろうか」と悩んでいる方はいませんか。双極性障害とADHDは、衝動性や注意散漫といった似た症状が見られるため、しばしば混同されがちです。 しかし、この二つは原因も治療法も異なる、全く別のものです。 正しい診断を受け、自分の特性に合った対策をとることが、生きづらさを解消する上で非常に重要になります。

この記事では、双極性障害とADHDの根本的な違いから、それぞれの種類やタイプ、原因、治療法、そして仕事で困らないための具体的なポイントまで、専門的な知見を交えながら分かりやすく解説します。この記事を読めば、二つの違いが明確になり、あなたが自分らしく働き、生活するためのヒントが見つかるはずです。

双極性障害(双極症)とは:気分の波が特徴の気分障害

双極性障害は、気分が高揚して活動的になる「躁状態」と、気分が落ち込んで無気力になる「うつ状態」を繰り返す気分の病気です。 この気分の波は、本人の性格や気の持ちようではなく、脳の機能的な問題によって引き起こされます。 症状が落ち着いている「寛解期」と呼ばれる安定した期間があるのも特徴です。

双極I型とII型の違い

双極性障害は、躁状態の程度によって、主に「I型」と「II型」に分けられます。

双極I型
社会生活に大きな支障をきたすほどの激しい「躁状態」が見られます。極端に活動的になったり、多額の浪費をしたり、誇大的になったりして、周囲とのトラブルや入院が必要になることもあります。本人は病気であるという自覚(病識)がないことが多いのが特徴です。

 

双極II型
I型よりも程度の軽い「軽躁状態」と「うつ状態」を繰り返します。軽躁状態の時は、本人にとっては「いつもより調子が良く、活動的」と感じられ、周囲からも「明るい人」と見られるため、病気だと気づかれにくい傾向があります。しかし、その後に訪れるうつ状態は深刻で、本人の苦しみは大きいため、「うつ病」と誤診されやすいという問題があります。

 

ADHD(注意欠如多動症)とは:生まれつきの脳の特性による発達障害

ADHD(注意欠如多動症)は、生まれつきの脳機能の発達の偏りによる発達障害の一つです。 主な特性として、「不注意」「多動性」「衝動性」が挙げられます。 これらの特性は幼少期から一貫して見られ、成長とともに現れ方は変化するものの、特性そのものがなくなるわけではありません。

ADHDの3つのタイプ

ADHDは、特性の現れ方によって、主に3つのタイプに分けられます。

不注意優勢型
「不注意」の特性が強く現れるタイプです。集中力が続かない、忘れ物や紛失物が多い、約束を忘れる、話を聞いていないように見える、といった困難さが目立ちます。動きの激しさは少ないため、子どもの頃には見過ごされやすい傾向があります。

 

多動・衝動性優勢型
「多動性」と「衝動性」の特性が強く現れるタイプです。じっとしているのが苦手でそわそわする、おしゃべりが止まらない、順番を待てない、思いついたらすぐに行動してしまう、といった困難さが目立ちます。

 

混合表現型
「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性を併せ持つタイプです。

 

根本的な違いと診断の重要性

この二つの障害の最大の違いは、双極性障害が「気分(感情)の障害」であり、症状が波のように現れる(エピソード的)のに対し、ADHDは「発達障害」であり、症状が持続的・慢性的であるという点です。

なぜ似ている?躁状態と多動・衝動性の類似点

この二つが混同されやすいのは、特に双極性障害の「躁状態(軽躁状態)」と、ADHDの「多動性・衝動性」の特性が非常によく似ているためです。 具体的には、多弁、注意散漫、衝動性、落ち着きのなさといった行動が共通して見られることがあります。

原因と治療法の違い

双極性障害とADHDは、原因も治療法も大きく異なります。

原因
双極性障害は気分をコントロールする神経伝達物質のバランスの乱れ、ADHDは注意や行動をコントロールする前頭前野の働きの偏りが主な原因と考えられています。

 

治療法
双極性障害は「気分安定薬」による薬物療法が治療の土台です。 一方、ADHDは環境調整心理社会的治療が基本で、補助的に中枢神経刺激薬などが用いられます。

 

併存の可能性と専門医受診の必要性

双極性障害とADHDは、併存(合併)するケースも少なくないことが分かっています。 併存している場合、症状が複雑に絡み合うため、診断や治療はさらに難しくなります。だからこそ、自己判断は絶対にせず、必ず専門の医療機関(精神科・心療内科)を受診してください。 受診の際は、気分の波の記録(いつからいつまで調子が良かったか/悪かったか)や、子どもの頃の様子(学校の通知表など)、具体的な困りごとなどをメモして持参すると、より正確な診断につながります。

ご家族や周囲の方ができるサポート

ご本人だけでなく、ご家族や職場の同僚など、周囲の方の理解と適切なサポートも、症状の安定や生きづらさの軽減に不可欠です。

双極性障害の方への関わり方

病気への理解を深める
まず、双極性障害が本人の性格や気まぐれではなく、「脳の病気」であることを理解することが第一歩です。気分の波に一喜一憂せず、冷静に見守る姿勢が求められます。

 

躁状態の時
本人は爽快な気分で、自身の言動が問題だと思っていないことが多いため、言動を正面から否定したり、厳しく咎めたりするのは逆効果です。危険な浪費や投資などをしようとしていないか見守り、高額な出費につながるクレジットカードなどを一時的に預かるなどの対応も必要になる場合があります。

 

うつ状態の時
「頑張れ」といった励ましの言葉は、本人を追い詰めてしまうことがあります。「怠けている」と責めるのも禁物です。ゆっくり休める環境を整え、家事の負担を減らすなど、具体的なサポートを心がけましょう。

 

家族自身のケア
ご家族だけで抱え込まず、保健所や精神保健福祉センター、家族会などに相談し、サポートを受けることも大切です。

 

ADHDの方への関わり方

特性を理解し、責めない
「なぜできないんだ」と能力や努力不足を責めるのではなく、「そういう特性なのだ」と理解することが大切です。忘れ物やケアレスミスは、本人が一番困っています。

 

具体的な対策を一緒に考える
「どうすれば忘れ物を防げるか」「どんな指示の出し方が分かりやすいか」など、本人と一緒に具体的な対策を考え、試行錯誤する姿勢が助けになります。 例えば、口頭での指示と合わせて、チャットやメモで要点を伝えるなどの工夫が有効です。

 

環境を調整する
集中して作業に取り組めるよう、パーテーションを設置したり、不要な物を視界からなくしたりするなど、物理的な環境調整に協力することも効果的です。

 

得意なことを評価する
苦手なことだけでなく、得意なこと(発想力、行動力、集中力など)に目を向け、評価し、感謝を伝えることで、本人の自己肯定感を高めることができます。

 

仕事や生活を支える公的支援制度

治療や就労と並行して、生活を支えるための公的な支援制度を活用することも重要です。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害により、長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方が対象となる手帳です。双極性障害やADHDも対象となり、医師の診断書を基に申請します。 取得すると、税金の控除・減免、公共料金の割引、障害者雇用枠での就職など、様々な福祉サービスや支援を受けられるようになります。

自立支援医療(精神通院医療)

精神疾患の治療のために、継続的に通院が必要な方の医療費の自己負担を軽減する制度です。通常3割負担の医療費が、原則として1割に軽減されます。また、世帯の所得に応じて月々の自己負担上限額が設定されるため、経済的な負担を心配することなく治療に専念できます。

障害年金

病気やケガによって生活や仕事などが制限される場合に受け取れる公的年金です。双極性障害やADHDも、症状の程度や日常生活への支障の度合いによっては支給対象となります。障害の程度に応じて1級から3級(障害厚生年金の場合)まであり、生活の経済的な基盤として非常に重要な制度です。申請には初診日の証明や、複雑な書類作成が必要なため、年金事務所や社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。

双極性障害・ADHDと付き合いながら仕事を続けるコツ

双極性障害やADHDの特性があっても、工夫次第で能力を発揮し、仕事を長く続けることが可能です。

具体的なセルフケアの工夫

双極性障害の場合
気分の波を客観的に把握するため、「ライフチャート」をつけるのが有効です。日々の気分を点数化して記録することで、再発の予兆を早期に察知し、主治医と正確な情報を共有できます。また、毎日同じ時間に起床・就寝し、食事を摂るなど、生活リズムを徹底的に整えることが、気分の安定に直結します。

 

ADHDの場合
集中力を持続させる工夫として、「ポモドーロ・テクニック」(25分作業して5分休憩、を繰り返す)が有効です。また、忘れ物やタスクの抜け漏れを防ぐため、スマートフォンのリマインダー機能やタスク管理アプリを徹底的に活用しましょう。

 

職場に求める合理的配慮の伝え方

障害や特性を開示して働く「オープン就労」の場合、会社に合理的配慮を求めることができます。その際は、「〇〇ができません」と伝えるだけでなく、「〇〇という配慮をいただければ、△△の業務で貢献できます」というように、前向きな姿勢で伝えることが大切です。

双極性障害の配慮例
「気分の波を安定させるため、生活リズムを崩さないよう、残業時間の制限や、夜勤の免除をお願いしたいです」

 

ADHDの配慮例
「口頭での指示は聞き漏らすことがあるため、チャットやメールなど、文字で指示をいただけると助かります」

 

専門の支援機関を積極的に活用しよう

自分一人で仕事の悩みを解決したり、就職活動を進めたりするのは簡単なことではありません。 そんなときは、専門の支援機関を頼ることを積極的に検討しましょう。 ハローワークの専門援助窓口、障害者就業・生活支援センター、そして就労移行支援や就労継続支援といった福祉サービスなど、あなたの状況に合わせて相談できる場所がたくさんあります。

双極性障害(双極症)やADHD(注意欠如多動症)の就労は就労継続支援B型事業所オリーブへ

双極性障害の気分の波や、ADHDの特性と付き合いながら、「一般企業で毎日働くのはまだ不安」「まずは無理のないペースで社会との接点を取り戻したい」と考えている方もいらっしゃるでしょう。 そのような方にこそ、就労継続支援B型事業所という選択肢を知っていただきたいです。

私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良)で、障害のある方が安心して自分らしく働ける場を提供しています。 オリーブでは、体調や気分に合わせて、週1日・数時間といった短時間からでも働くことが可能です。 雇用契約を結ばないので、ノルマやプレッシャーもなく、ご自身のペースを最優先にできます。

データ入力、Webライティング、軽作業など、あなたの興味やその日のコンディションに合わせて仕事を選べます。 障害への深い理解を持つスタッフが、あなたが安定して働き続けられるよう、一人ひとりに寄り添ったサポートを行います。 まずは見学から、お気軽にお問い合わせください。

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