お役立ち情報 不安障害(社会不安障害、パニック障害、強迫性障害、PTSD) 就労支援サービス 治療法・リハビリ
不安障害(不安症)とは?種類・症状・診断・治療・対処法を解説

「これから起こるかもしれない悪いこと」を考えて胸がザワザワしたり、緊張したりする「不安」という感情。これは、危険を察知し、それに備えるために誰もが持っている大切な心の働きです。しかし、その不安が過剰になりすぎて、理由がないのにドキドキしたり、特定の状況を極端に怖がったりして、学校や仕事、日常生活にまで支障が出てしまうことがあります。もし、あなたがコントロールできないほどの強い不安に悩まされているとしたら、それは単なる「心配性」や「気のせい」ではなく、「不安障害(不安症)」という治療可能な病気かもしれません。
この記事では、不安障害の様々な種類や症状、原因、そして具体的な治療法や自分でできる対処法、利用できるサポートまで、幅広く解説していきます。まずは不安障害について正しく知り、回復への一歩を踏み出しましょう。
不安障害(不安症)とは?
不安障害(不安症)について理解するために、まずは「不安」という感情の本来の役割から見ていきましょう。
そもそも「不安」とは、危険を知らせるアラーム機能
「不安」は、未来に起こるかもしれない危険や脅威を予測し、それに備えるための正常な心の反応です。例えば、大事な試験の前に不安を感じるからこそ、勉強して備えようとします。暗い夜道を歩くときに不安を感じるからこそ、周囲に気を配り、危険を避けようとします。このように、不安は私たちを危険から守るための「警報装置(アラーム)」のような役割を果たしており、生きていく上で不可欠な感情です。決して、なくすべき悪い感情というわけではありません。
不安が過剰になり、アラームが誤作動している状態
問題となるのは、この警報装置が誤作動を起こし、危険がない状況でも頻繁に、あるいは過剰に強く鳴り響いてしまう状態です。これが「不安障害(不安症)」です。不安障害になると、不安を感じる必要のない場面で強い恐怖に襲われたり、常に最悪の事態を考えて心配が頭から離れなくなったりします。その不安は非常に苦痛で、自分でコントロールすることが困難です。そして、その不安を避けるために、特定の場所や活動を避けるようになり(回避行動)、学業や仕事、人付き合いなど、日常生活の様々な側面に深刻な影響が及んでしまいます。
不安障害の主な種類と症状
「不安障害」は、単一の病気ではなく、様々なタイプの病気の総称です。ここでは、代表的な不安障害の種類とその特徴的な症状を紹介します。
障害の名称 | 主な症状 |
---|---|
パニック症(パニック障害) | 突然、理由なく激しい動悸や息苦しさ、めまいなどの発作(パニック発作)が起こる。「また発作が起きたらどうしよう」という強い不安(予期不安)や、逃げられない場所を避ける行動が特徴。 |
全般不安症(GAD) | 仕事、家庭、健康、経済状況など、日常生活の様々な事柄に対して、過剰でコントロールできない心配や不安が長期間(6ヶ月以上)続く。絶えず緊張し、落ち着かず、疲労感や不眠などの身体症状を伴う。 |
社交不安症(SAD) | 人前で注目される状況(スピーチ、会議、会食など)で、他者から否定的に評価されることへの極端な恐怖を感じる。赤面、発汗、震えなどの身体症状が現れ、そうした状況を避けようとする。 |
限局性恐怖症 | 特定の対象や状況(高所、閉所、暗所、雷、特定の動物、注射、血など)に対して、現実の危険とは不釣り合いなほどの強い恐怖を感じ、それを避けようとする。 |
パニック症(パニック障害)
何のきっかけもなく、突然、激しい動悸、息苦しさ、めまい、吐き気、発汗、手足の震えといった身体症状と、「このまま死んでしまうのではないか」「気が狂ってしまうのではないか」という強い恐怖に襲われます。これを「パニック発作」と呼びます。一度この発作を経験すると、「またあの発作が起きたらどうしよう」という強い不安(予期不安)に常に悩まされるようになります。そして、発作が起きたときに逃げられない、あるいは助けを求められない場所(例:電車、バス、トンネル、人混みなど)を避けるようになる「広場恐怖」を伴うことも多く、外出が困難になるケースも少なくありません。
全般不安症(GAD)
仕事や家族のこと、自分の健康、将来のことなど、日常生活における様々な出来事や活動について、過剰な心配がコントロールできずに長期間(6ヶ月以上)続く状態です。心配事が次から次へと浮かび、常に緊張してリラックスすることができません。その結果、落ち着きのなさ、疲労感、集中力の低下、筋肉の緊張、不眠といった心身の不調が慢性的に現れます。本人は、自分の心配が過剰であると気づいていることもありますが、心配することをやめられずに苦しんでいます。
社交不安症(SAD)
人前で注目を浴びる場面で、「恥ずかしい思いをするのではないか」「おかしな奴だと思われるのではないか」という強い恐怖を感じ、そうした状況を避けようとする病気です。単なる「あがり症」や「恥ずかしがり屋」とは異なり、その恐怖によって社会生活に大きな支障が出ているのが特徴です。人前で話す、電話をかける、食事をする、文字を書くといった特定の行動に強い不安を感じ、赤面、動悸、発汗、声の震えといった身体症状が現れます。失敗を恐れるあまり、会議での発言を避けたり、飲み会を断ったりと、社会参加の機会を自ら手放してしまいがちです。
限局性恐怖症
特定ののものや状況に対して、不合理なほど強い恐怖を感じる病気です。恐怖の対象は人によって様々です。
-
- 動物型:クモ、ヘビ、犬、虫など
- 自然環境型:高い所、雷、水など
- 血液・注射・外傷型:注射、採血、血を見ること、ケガなど
- 状況型:閉所(エレベーターなど)、飛行機、暗い場所など
本人は恐怖が過剰であることを理解していますが、対象に直面すると強い不安やパニック発作を引き起こすため、それを必死に避けようとします。
不安障害の原因
不安障害が発症する明確な原因は一つではありません。脳の機能を含む「生物学的要因」と、本人の経験や考え方などの「心理的要因」、そしてストレスなどの「環境要因」が複雑に絡み合って発症すると考えられています。決して「本人の気持ちが弱いから」ではありません。
- 生物学的要因:
- 不安や恐怖の感情に関わる脳の部位(扁桃体など)の過剰な活動や、精神の安定に関わる神経伝達物質(セロトニンなど)のバランスの乱れが関係していると考えられています。また、遺伝的な要因も一定程度関与すると言われています。
- 心理的・環境的要因:
- 過去のつらい体験(トラウマ)や、大きなストレス、物事を悲観的に捉えやすい考え方の癖(認知の歪み)などが、発症の引き金になったり、症状を維持させたりする要因となります。
不安障害の診断とセルフチェックの注意点
「もしかして自分は不安障害かもしれない」と感じたとき、どうすればよいのでしょうか。
専門医による診断が不可欠
不安障害の診断は、精神科や心療内科の医師が、問診や国際的な診断基準(DSM-5など)に基づいて慎重に行います。甲状腺機能の異常など、身体の病気が不安症状を引き起こしている可能性もあるため、血液検査などを行うこともあります。インターネット上にはセルフチェックリストなどがありますが、これらはあくまで「受診の目安」とするためのものであり、自己診断のツールではありません。チェックリストの結果だけで一喜一憂せず、気になる症状が続く場合は、必ず専門医に相談してください。
不安障害の主な治療法
不安障害は、適切な治療によって改善が見込める病気です。治療は主に、「薬物療法」と「精神療法(心理療法)」を組み合わせて行われます。
薬物療法
薬物療法は、つらい不安症状を和らげ、精神療法に取り組みやすくするために行われます。
- SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬):
- 治療の中心となることが多い薬です。脳内のセロトニンの働きを調整し、不安や恐怖感を根本から改善する効果が期待できます。効果が出るまでに数週間かかりますが、依存性が少なく、長期的な治療に適しています。
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬:
- 不安や緊張を速やかに和らげる効果があります。即効性があるため、パニック発作時や、強い不安を感じる場面の前に頓服薬として使われます。ただし、依存性のリスクがあるため、医師の指示のもとで短期間の使用が原則です。
精神療法(心理療法)
精神療法は、不安障害の根本的な原因となっている、物事の捉え方や行動パターンに働きかける治療法です。特に「認知行動療法(CBT)」は、多くの不安障害に対して高い効果が科学的に証明されています。認知行動療法では、不安を引き起こす考え方の癖(例:「きっと失敗するに違いない」)に気づき、それが本当に妥当なものかを検証します。そして、より現実的でバランスの取れた考え方ができるように練習します。
また、「エクスポージャー(暴露療法)」という手法も重要です。これは、不安だからと避けている状況に、あえて少しずつ挑戦していく治療法です。「避ければ避けるほど不安は強くなる」という悪循環を断ち切り、「やってみたら意外と大丈夫だった」という成功体験を積み重ねることで、不安を乗り越える力を育てます。
日常生活でできる不安への対処法
専門的な治療と並行して、日常生活の中で不安と上手に付き合うためのセルフケアを取り入れることも大切です。
生活習慣を見直す
心と体の健康は密接につながっています。
-
- バランスの取れた食事:規則正しく、栄養バランスの整った食事を心がけましょう。
- 質の良い睡眠:寝る前のスマホをやめる、毎日同じ時間に起きるなど、睡眠環境を整えましょう。
- 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動は、気分をリフレッシュさせ、不安を軽減する効果があります。
リラックス方法を見つけておく
不安が高まってきたときに、自分でできるリラクゼーション法を身につけておくと、大きな助けになります。
-
- 腹式呼吸(深呼吸):息を吸うときにお腹を膨らませ、吐くときにへこませる呼吸法です。ゆっくりとした呼吸は、心身をリラックスさせる副交感神経を優位にします。
- 漸進的筋弛緩法:体の各部位の筋肉に意識的に力を入れ、その後ストンと力を抜くことを繰り返します。緊張と弛緩の感覚を味わうことで、心身のリラックスを促します。
- マインドフルネス:「今、この瞬間」の自分の感覚や感情に、評価や判断をせずにただ注意を向ける瞑想法です。不安な考えにとらわれにくくなります。
不安障害の方が利用できる公的支援
不安障害の治療や、それによって生じる生活上の困難に対して、利用できる公的な支援制度があります。一人で抱え込まず、こうしたサポートを活用しましょう。
- 自立支援医療(精神通院医療):
- 不安障害の治療で継続的に精神科や心療内科に通院する場合、医療費(診察代・薬代)の自己負担が通常3割から原則1割に軽減されます。
- 精神障害者保健福祉手帳:
- 症状が重く、長期間にわたって日常生活や社会生活に支障があると診断された場合に申請できます。税金の優遇措置や、障害者雇用枠での就労などの支援が受けられます。
- 就労支援サービス:
- 不安障害によって働くことに困難を感じている方をサポートします。一般企業への就職を目指す訓練を行う「就労移行支援」や、体調に合わせて自分のペースで働ける「就労継続支援(A型・B型)」などがあります。
これらの制度の利用については、主治医や病院のソーシャルワーカー、お住まいの市町村の障害福祉窓口などに相談してみてください。
不安障害(不安症)でお悩みなら就労継続支援B型事業所オリーブへ
「満員電車に乗るのが怖くて、通勤が難しい」「職場で過剰に周りの目を気にしてしまい、疲弊してしまう」…不安障害を抱えながら働くことには、多くの困難が伴います。
もしあなたが、自分のペースで、安心して働ける場所を探しているなら、私たち就労継続支援B型事業所オリーブに相談してみませんか?オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、不安障害などの特性を持つ方が、無理なく社会参加を目指せるようサポートしています。雇用契約を結ばないB型事業所なので、体力や症状に合わせて「週1日から」「1日1時間から」といった短時間の利用が可能です。
データ入力や軽作業など、一人で集中して取り組める仕事が中心で、対人関係のストレスも少ない環境です。経験豊富なスタッフが、あなたの不安な気持ちに寄り添い、一人ひとりに合ったサポートを提供します。まずは見学から、あなたの新しい一歩を始めてみませんか。ご連絡を心よりお待ちしています。