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うつ病で退職する前に確認すべきこととは?退職後の手当や相談先も解説

うつ病のつらい症状のなかで、「もう仕事を辞めるしかない」「この職場から一刻も早く逃げ出したい」と、退職という選択肢が頭をよぎることは決して珍しいことではありません。しかし、心身が弱っているときの大きな決断は、後悔につながってしまう可能性もあります。退職は、あなたの心と体を守るための大切な選択肢の一つですが、それが唯一の道ではありません。退職という大きな決断を下す前に、一度立ち止まって、ご自身の状況や利用できる制度を冷静に確認することが重要です。

この記事では、うつ病で退職を考えている方が後悔しないために、退職を判断する前に確認すべきポイント、円満に退職するための手続きの流れ、そして退職後の生活を支える公的な手当や、再就職に向けた相談先について詳しく解説します。正しい情報を知ることで、経済的な不安が和らぎ、気持ちに少し余裕が生まれるはずです。あなたにとって最善の選択をするために、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

うつ病で退職を考える前に確認したい6つのポイント

「もう辞めたい」という気持ちが強くなると、視野が狭くなりがちです。しかし、うつ病の治療には経済的な安定と安心できる環境が不可欠です。勢いで退職届を出してしまう前に、以下の6つのポイントを冷静に確認してみましょう。

ポイント1:重大な判断は、症状が落ち着いてから

うつ病の症状の一つに、「思考力や判断力の低下」「極端な悲観思考」があります。物事を必要以上に悪く考えたり、「自分がすべて悪い」と責めてしまったり、正常な判断がしにくい状態に陥ることが少なくありません。このような心身ともにエネルギーが枯渇している状態での「退職」という重大な決断は、後々後悔する可能性があるため、避けるべきです。症状が少し落ち着き、冷静に物事を考えられるようになってから判断しても、決して遅くはありません。「今すぐ辞めなければ、もっと自分がダメになる」という焦りを感じるかもしれませんが、それは病気の症状が見せている幻かもしれません。まずは治療に専念し、心と体を休ませることを最優先に考えましょう。

ポイント2:主治医に相談し、客観的な意見を聞く

ご自身の状態を客観的に判断し、医学的なアドバイスをくれるのが主治医です。退職を考えるほど仕事がつらいのであれば、その状況を正直に主治医に相談しましょう。医師はあなたの状態を医学的に判断し、休養が必要であれば「診断書」を作成してくれます。この診断書は、後述する「休職」の申請や、退職後の公的な手当を受け取る際に、あなたの状態を公的に証明するための非常に重要な書類となります。退職という選択が本当に今のあなたにとって最善なのか、あるいは休職して治療に専念すべきなのか、専門家である主治医の意見を聞くことは、後悔しない選択をする上で極めて重要です。

ポイント3:「休職」して治療に専念する選択肢を検討する

「辞める」か「働き続ける」かの二択で考える必要はありません。その中間にある「休職」という選択肢を検討しましょう。休職とは、会社に在籍したまま、一定期間仕事を休んで療養に専念できる制度です。多くの会社では就業規則に休職制度が定められています。

<休職の主なメリット>

メリット 説明
籍を置いたまま休める 会社に籍があるという安心感の中で、治療に専念できます。退職した場合に生じる再就職活動の負担がありません。
経済的な支援 休職中は給与が支払われない場合でも、後述する「傷病手当金」を受給できる可能性があります。社会保険料の支払いは続きますが、会社が手続きをサポートしてくれる場合が多いです。
回復後の職場復帰 症状が回復すれば、原則として元の職場に復帰できます。会社によっては、スムーズな復帰を支援する「リワークプログラム」などの制度がある場合もあります。

まずはご自身の会社の就業規則を確認するか、人事部に問い合わせて休職制度の有無や内容(期間、給与の有無など)を調べてみましょう。退職というカードを切る前に、心と体を回復させるための時間を確保できないか、検討することが大切です。

ポイント4:社内の相談窓口や産業医を活用する

会社によっては、従業員の心身の健康をサポートする仕組みが用意されています。直属の上司に相談しにくい場合でも、以下のような窓口を活用できる可能性があります。

産業医・保健師:
企業に所属し、従業員の健康管理を行う専門家です。医学的な観点から、あなたの働き方について会社に助言してくれます。面談内容は、本人の同意なく会社に伝わることはありません。

 

社内カウンセリングルーム・EAP(従業員支援プログラム):
専門のカウンセラーに仕事やプライベートの悩みを相談できる制度です。こちらも相談内容の秘密は守られます。

 

人事・労務部:
休職や働き方の調整について、制度面から相談に乗ってくれます。

 

これらの社内リソースを活用することで、配置転換や業務量の調整など、退職以外の解決策が見つかるかもしれません。

ポイント5:退職後の生活を支える公的な手当について知る

退職をためらう大きな理由の一つが、「収入がなくなることへの経済的な不安」でしょう。しかし、日本には、病気や失業によって生活が困難にならないよう、セーフティネットとなる公的な制度が用意されています。

    • 傷病手当金:健康保険の制度で、病気やケガで働けない場合に、給与のおおよそ3分の2が最長1年6ヶ月にわたり支給されます。一定の条件を満たせば、退職後も継続して受け取れる場合があります。
    • 雇用保険(失業給付):離職後に次の仕事が見つかるまでの間の生活を支える給付金です。うつ病が理由での退職は、給付日数が延長されるなど手厚い支援を受けられる可能性があります。

 

これらの制度について事前に知っておくだけで、「辞めたら路頭に迷ってしまう」という極端な不安が和らぎ、冷静に今後のことを考える余裕が生まれます。各制度の詳細は後ほど詳しく解説します。

ポイント6:ひとりで抱えず、信頼できる人に相談する

うつ病のつらさは、経験したことのない人にはなかなか理解されにくいものです。そのため、一人で悩みを抱え込み、社会的に孤立してしまう方も少なくありません。しかし、一人で考え続けていると、堂々巡りになり、ますます悲観的な考えに囚われてしまいます。退職という大きな決断をする前に、あなたのことを理解してくれるご家族やパートナー、親しい友人に、今のつらい気持ちを打ち明けてみましょう。

客観的な意見を聞くことで冷静さを取り戻せたり、自分では思いつかなかった視点からのアドバイスがもらえたりすることがあります。もし身近に相談できる人がいない場合は、後述する公的な相談窓口を利用することもできます。決して一人で決断しないでください。

うつ病での退職手続きの流れと円満な伝え方

様々なことを検討した上で、やはり退職することが最善の選択だと判断した場合、円満に退職するための手続きを進めます。ここでは、具体的な手続きの流れと、会社への伝え方のポイントを解説します。

① 退職の意思を伝える(1~3ヶ月前)

    • 伝える相手:まずは直属の上司に伝えます。同僚や先輩に先に話すのは、情報が不正確に伝わるなどトラブルの原因になるため避けましょう。
    • 伝えるタイミング:法律上は退職の2週間前までの申し出で可能ですが、円満な退職のためには、業務の引き継ぎ期間を考慮し、会社の就業規則で定められた時期(通常は1ヶ月~3ヶ月前)に伝えるのが望ましいです。
    • 伝え方:まずは「ご相談したいことがあります」と上司にアポイントを取り、口頭で伝えます。退職理由は「一身上の都合」でも法的には問題ありませんが、うつ病の診断を受けている場合は、「病気の治療に専念するため」と正直に伝えた方が、会社側の理解や配慮を得やすくなります。主治医の診断書を提示すると、よりスムーズに話が進むでしょう。

 

② 退職届の提出と退職日の決定

退職の意思を伝えたら、会社の規定に従って「退職届(または退職願)」を提出します。退職日は、業務の引き継ぎ期間や有給休暇の残り日数などを考慮して、上司と相談しながら決定します。

③ 業務の引き継ぎ

体調が優れない中での作業は負担が大きいかもしれませんが、後任者や同僚が困らないよう、責任をもって引き継ぎを行いましょう。

    • 業務内容をリストアップし、マニュアルを作成する
    • 口頭だけでなく、文書で残す
    • 無理はせず、できないことは正直に伝える

 

計画的に進めることで、心残りなく退職日を迎えられます。

④ 退職日までに受け取るもの・返却するもの

退職日には、会社から受け取る書類と、会社に返却するものがあります。手続き漏れがないよう、リストで確認しておきましょう。

    • 受け取るもの:離職票(失業給付の申請に必要)、雇用保険被保険者証、年金手帳、源泉徴収票など。
    • 返却するもの:健康保険被保険者証、社員証、名刺、制服、会社から貸与されたPCや携帯電話など。

 

⑤ 健康保険や年金の手続き

退職後は、これまで会社が行っていた健康保険や厚生年金の手続きを自分で行う必要があります。

健康保険の選択肢:

    • 任意継続:今の会社の健康保険に最長2年間継続加入する。
    • 国民健康保険:お住まいの市区町村の国保に加入する。
    • 家族の扶養に入る:収入等の条件を満たせば、家族の健康保険の被扶養者になる。

 

年金の手続き:

    • 厚生年金から国民年金への切り替え手続きを、お住まいの市区町村役場で行います。経済的に保険料の支払いが困難な場合は、免除・猶予制度について相談しましょう。

 

うつ病で退職後に利用できる公的な手当【詳細解説】

退職後の生活と治療に専念するため、公的な手当について詳しく理解しておきましょう。

傷病手当金:退職後も受給できる可能性あり

傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガのために働けず、給与が支払われない場合に、生活を保障するために支給される制度です。

    • 支給額の目安:給与(標準報酬月額)のおおよそ3分の2
    • 支給期間:支給開始日から通算して最長1年6ヶ月

 

在職中に利用する制度というイメージが強いですが、以下の2つの条件を満たせば、退職後も継続して受給できます。

    • 退職日までに継続して1年以上の被保険者期間があること
    • 退職日に傷病手当金を受給しているか、受給できる状態であること

 

特に重要なのが2点目です。療養のために休んでおり、退職日当日も出勤していないことが条件となります。退職日に挨拶等で出勤してしまうと、この条件を満たせなくなるため、注意が必要です。

雇用保険の基本手当(失業給付):手厚い支援が受けられる

雇用保険の基本手当は、失業中の生活を心配せずに、再就職活動に専念できるように支援する制度です。

うつ病などの正当な理由で自己都合退職した場合、待期期間(7日間)の後に給付制限(通常2ヶ月)なく手当を受けられる可能性があります。

さらに、ハローワークで求職の申し込みをする際に、主治医の意見書や障害者手帳などを提出し「就職困難者」と判定されると、給付を受けられる日数(所定給付日数)が、一般の離職者に比べて大幅に長くなるという大きなメリットがあります。

<所定給付日数の比較(45歳未満の場合)>

被保険者だった期間 一般の離職者 就職困難者
1年未満 150日
1年以上5年未満 90日 300日
5年以上10年未満 120日 300日
10年以上20年未満 120日 360日

【最重要】傷病手当金と失業給付の同時受給はできません
ここで非常に重要な注意点があります。傷病手当金は「病気で働けない人」を、失業給付は「働ける状態だが仕事がない人」を対象とするため、同時に受け取ることはできません。一般的には、まず傷病手当金で療養に専念し、回復して働ける状態になったら、失業給付の申請に切り替えるという流れになります。

うつ病からの再就職、どこに相談すればいい?

十分に療養し、そろそろ次のステップを考え始めたとき、一人で再就職活動を進めるのは大きな不安を伴います。うつ病など障害のある方の就職をサポートしてくれる専門機関を活用しましょう。

ハローワーク(公共職業安定所)

最も身近な相談先です。ハローワークには一般窓口とは別に、障害のある方のための専門窓口(専門援助部門)があり、障害への理解がある専門の職員が担当してくれます。障害者求人の紹介、応募書類の添削、面接練習や面接への同行、就職後の定着支援など、きめ細やかなサポートを受けられます。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

仕事(就業)の悩みと、日常生活(生活)の悩みを一体的に相談できるのが大きな特徴です。就職に関する支援はもちろん、金銭管理や体調管理といった生活面での課題についても、専門の支援員がサポートしてくれます。地域の医療機関や福祉サービスと連携しており、あなたに必要な支援につないでくれるハブのような役割を担っています。

就労移行支援・就労継続支援事業所

障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、一般企業への就職や、福祉的なサポートのある環境で働くことを支援する事業所です。

就労移行支援事業所:
一般企業への就職を目指す方が対象です。最長2年間、ビジネスマナーやPCスキルなどの職業訓練、職場探し、就職後の定着支援といったサービスを受けられます。

 

就労継続支援事業所(A型・B型):
すぐに一般企業で働くのが難しい方が対象です。支援を受けながら実際に働き、工賃(給料)を得ることができます。A型は雇用契約を結び、B型は雇用契約を結ばずに、よりご自身の体調に合わせた柔軟な働き方が可能です。

 

うつ病からの社会復帰を、焦らず自分のペースで考えたいあなたへ

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オリーブは、関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良)で、うつ病をはじめ様々な障害のある方の「働きたい」という気持ちを応援しています。データ入力や軽作業、ホームページ制作の補助など、あなたの興味や適性に合わせた仕事を通じて、働くことの喜びや自信を少しずつ取り戻すお手伝いをします。

経験豊かな支援員が、仕事のことだけでなく、生活上の悩みにも親身に寄り添います。安心して話せる仲間がいる、温かい居場所がここにあります。社会復帰への道は一つではありません。あなたらしい一歩を、オリーブから始めてみませんか。見学や相談はいつでも歓迎しています。お気軽にお問い合わせください。

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