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うつ病の初期症状とは?自分で気づくサインと仕事での対処法を解説

「最近、なんだか調子が悪い日が続いている」「疲れがとれないし、やる気も出ない…」

そんな風に感じていませんか。忙しい毎日の中で、つい「疲れているだけ」「気のせいだ」と見過ごしてしまいがちなその不調は、もしかしたら心が助けを求めているサイン、うつ病の初期症状かもしれません。うつ病は、早期に気づき、適切に対処することが、その後の回復への何よりの近道です。特に、一日の多くの時間を過ごす職場での変化は、ご自身でも気づきやすい重要なサインとなります。

この記事では、ご自身が気づけるうつ病の初期症状を「精神」「身体」「行動」の3つの側面から具体的に解説します。さらに、仕事で現れやすいサインや、不調に気づいたときにすぐに実践できる対処法、そして相談できる窓口や制度についても詳しくご紹介します。自分の心と体の声に耳を傾け、大切にするための第一歩。この記事が、あなたの不安を和らげ、適切な行動をとるためのきっかけとなれば幸いです。

うつ病の初期症状とは?自分で気づける「以前との違い」

うつ病の始まりは、何か大きな出来事がきっかけとなることもあれば、いつの間にか忍び寄ってくることもあります。大切なのは「以前の自分と比べて、何が変わったか」という視点でご自身の変化に気づくことです。ここでは、自分で気づけるうつ病の初期サインを3つの側面に分けて見ていきましょう。

① 精神的な症状:憂うつな気分や興味・関心の喪失

心の変化は、うつ病の中核となる症状です。自分ではコントロールできない感情の変化に戸惑い、苦しむことがあります。

    • 憂うつな気分、気分の落ち込み:理由もなく悲しい、虚しい、沈んだ気持ちが一日中、ほとんど毎日続く。「朝、目が覚めた瞬間から気分が重く、絶望的な気持ちになる」と感じることもあります。
    • 興味や喜びの喪失:これまで楽しんで打ち込めていた趣味やテレビ番組、友人との会話などを「面白い」と感じられなくなる。「何をしても楽しくない」という感覚は、うつ病の非常に重要なサインです。
    • 思考力・集中力の低下:頭にもやがかかったように、考えがまとまらない(思考制止)。本を読んでも同じ行を何度も読んでしまったり、人の話が頭に入ってこなかったりします。
    • 過剰な罪悪感・自責感:物事を常に悪い方向に考え、「自分はダメな人間だ」「周りに迷惑をかけている」と過度に自分を責めてしまいます。
    • 不安や焦り:漠然とした強い不安を感じ、落ち着かない。理由もなく焦る気持ちに駆られ、じっとしていられなくなることもあります。

 

② 身体的な症状:睡眠・食欲の変化と原因不明の不調

心の不調は、自律神経のバランスを乱し、体に直結します。内科で検査しても異常がないのに体調不良が続くときは、心の状態にも目を向けてみましょう。

    • 睡眠の異常:「寝つきが悪い(入眠障害)」「夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)」「朝、予定より異常に早く目が覚めてしまう(早朝覚醒)」といった不眠症状は、うつ病の代表的な身体症状です。逆に、「いくら寝ても眠い」「一日中寝て過ごしてしまう」という過眠の症状が出ることもあります。
    • 疲労感・倦怠感:十分に休んだはずなのに、全く疲れが取れない。体が鉛のように重く、強いだるさが続く。特に朝、ベッドから起き上がるのが非常につらいと感じることが多くなります。
    • 食欲の変化:「何を食べても味がしない」「砂を噛んでいるようだ」と感じる食欲不振や、逆に甘いものや炭水化物などを過剰に食べてしまう過食。これに伴い、急激な体重の増減が見られることもあります。
    • その他の身体症状:頭痛や頭重感、頑固な肩こり、動悸、息苦しさ、めまい、耳鳴り、胃の不快感、便秘や下痢など、人によって様々な身体の不調が現れます。

 

③ 行動面の変化:人付き合いや身だしなみへの無関心

ご自身では気づきにくいかもしれませんが、周りから見ると「以前と違う」と思われるような行動の変化も重要なサインです。

    • 涙もろくなる:テレビのニュースやドラマ、音楽など、以前は何とも思わなかったような些細なことで、感情が揺さぶられ、急に涙が出てくる。
    • 身だしなみに構わなくなる:毎日していたお化粧やヘアセットが面倒になる。服を選ぶのが億劫で、同じような服ばかり着ている。お風呂に入ることさえ、大きなエネルギーが必要な作業に感じられる。
    • イライラと焦燥感:じっとしていられず、部屋の中をうろうろと歩き回る。ささいなことでイライラして、物に当たったり、家族にきつく当たってしまったりする。
    • 対人関係の変化:人と話すのが億劫になり、無意識に会話を避けるようになる。友人からの誘いや会社の飲み会などを断ることが増え、孤立しがちになる。

 

もしかして?と思ったら|自分でできるうつ病のセルフチェック

ここまで読んできて、ご自身の状態に当てはまる項目が多いと感じた方もいるかもしれません。以下は、ご自身の心の状態を客観的に見るためのセルフチェックリストです。ここ2週間のご自身の状態に最も近いものを選んでみてください。

【うつ病セルフチェックリスト(PHQ-9簡易版より)】

    • 物事に対してほとんど興味がない、または楽しめない
    • 気分が落ち込む、憂うつになる、または絶望的な気持ちになる
    • 寝つきが悪い、途中で目が覚める、または逆に眠りすぎる
    • 疲れた感じがする、または気力がない
    • あまり食欲がない、または食べすぎる
    • 自分はダメな人間だ、または家族に申し訳ないなどと自分を責める
    • 新聞を読んだり、テレビを見たりすることに集中できない
    • 人の話すことが普段より遅い、またはそわそわして落ち着かない
    • 死んだ方がましだ、または自分を傷つけたいと考える

 

<結果の見方>
上記の質問のうち、1番か2番のどちらかを含む、5つ以上が当てはまる場合、うつ病の可能性があります。

【重要】

このチェックリストは、あくまでご自身の状態に気づくための目安です。うつ病の診断は、医師による詳しい問診を通して行われます。結果がどうであれ、「つらい」と感じている場合は、自己判断せずに必ず専門の医療機関に相談してください。

仕事でみられるうつ病の初期症状の具体例

一日の大半を過ごす職場は、うつ病の初期症状が顕著に現れやすい場所です。もし、以下のような変化に心当たりがあれば、それは単なる「仕事の不調」や「スランプ」ではないかもしれません。

① 集中力・判断力の低下によるミスや効率の悪化

うつ病になると、脳のエネルギーが不足し、情報処理能力が低下します。その結果、これまでなら考えられなかったようなミスを連発するようになります。

    • 簡単な計算やデータ入力で間違う。
    • 電話の相手の名前や用件をすぐに忘れてしまう。
    • 会議の内容が理解できず、議事録が書けない。
    • 複数の指示を受けると頭が混乱し、何から手をつけていいか分からなくなる。

 

また、一つの作業に異常に時間がかかるようになり、仕事の効率が著しく低下します。その結果、残業が増え、さらに心身が疲弊するという悪循環に陥りがちです。

② 遅刻や欠勤の増加、出社への強い抵抗感

「朝、どうしても起き上がれない」「会社に行こうとすると、吐き気や腹痛、めまいがする」といった症状から、遅刻や欠勤が増えるのも重要なサインです。特に、休日明けの月曜日の朝に症状が強く出ることがよくあります。

これは「怠けたい」「サボりたい」という気持ちからではなく、心と体が会社に行くことを拒否している状態(出社拒否)です。ご自身を「社会人失格だ」「根性がない」などと責める必要は全くありません。

③ 周囲とのコミュニケーションを避けるようになる

人と話すこと自体が、大きなエネルギーを消耗するように感じられます。そのため、無意識のうちに周囲とのコミュニケーションを避けるようになります。

    • 同僚との雑談の輪に加わらず、イヤホンで耳を塞ぐことが増えた。
    • 昼食を一人で食べるようになった。
    • 報告・連絡・相談といった業務上のコミュニケーションも滞りがちになる。
    • 表情が乏しくなり、周りから「暗い」「元気がない」「話しかけづらい」と言われることが増える。

 

こうした行動は、周囲との間に壁を作り、職場での孤立感を深めてしまう原因にもなります。

うつ病の初期症状に気づいたときの対処法

「もしかして、自分はうつ病かもしれない…」そう感じたら、見て見ぬふりをせず、できるだけ早く対処することが大切です。ここでは、すぐに取り組める具体的な対処法をご紹介します。

対処法1:まずは十分な休養をとり、ストレスから離れる

心と体のエネルギーが枯渇しているサインに気づいたら、何よりもまず「休む」ことを最優先してください。これ以上、無理を続けるのは危険です。有給休暇を取得したり、週末は予定を入れずにゆっくり過ごしたりと、意識的に心と体を休ませる時間を作りましょう。

趣味や好きなことをする元気もなければ、無理にする必要はありません。ただ横になって、ぼーっとするだけでも立派な休養です。仕事やストレスの原因となっているものから、物理的にも心理的にも距離を置くことが重要です。

対処法2:早めに専門の医療機関を受診する

体の不調を感じたら内科に行くのと同じように、心の不調を感じたら、専門家である精神科や心療内科を受診することをためらわないでください。うつ病は、意志の力だけで治せる病気ではありません。専門医による適切な診断と治療を受けることが、回復への最も確実な道です。

「こんなことで病院に行っていいのだろうか」と迷う必要はありません。専門医は、あなたのつらさを理解し、客観的な視点から、あなたに今必要なアドバイス(休養の必要性や働き方の調整など)や治療法(薬物療法や精神療法)を提案してくれます。

対処法3:信頼できる上司や会社の相談窓口に相談する

仕事での不調が顕著な場合は、一人で抱え込まず、信頼できる上司や、人事部・総務部などの社内窓口に相談することも有効な手段です。勇気がいることかもしれませんが、相談することで、業務量の調整や一時的な配置転換など、無理なく働き続けるための配慮を得られる可能性があります。

自分の口から説明するのが難しい場合は、医師に「業務上の配慮事項」などを記載した簡単な診断書を書いてもらい、それをもとに相談するのも一つの方法です。

対処法4:休職や退職も回復のための大切な選択肢

どうしても仕事に行くのがつらく、十分な休養が必要な場合は、「休職」という選択肢があります。会社に在籍したまま、治療に専念できる制度です。休職中は、健康保険から「傷病手当金」が支給されるため、経済的な不安をある程度和らげることができます。

また、うつ病の原因が明らかに職場環境にある場合など、その場所から離れることが最善の治療となるケースもあります。その場合は、「退職」もご自身の心と体を守るための前向きな選択肢となり得ます。

うつ病の悩みを相談できる社内外の窓口・制度

「病院に行くのはまだ少し抵抗がある」「仕事の悩みを誰に相談すればいいかわからない」という方のために、社内や地域には様々な相談窓口や制度が用意されています。

会社の産業医やカウンセラー:
一定規模以上の企業には、従業員の心身の健康をサポートする産業医やカウンセラーがいます。彼らには守秘義務があり、相談内容が本人の許可なく会社に伝わることはありません。中立的な立場で、あなたの状況に合わせたアドバイスや、会社と連携して職場環境の改善を働きかけてくれることもあります。

 

ストレスチェック制度:
労働者が50人以上の事業場では、年に1回、ストレスチェックを実施することが義務付けられています。これは、自身のストレス状態に気づき、セルフケアを促すための制度です。高ストレス者と判定され、本人が希望すれば、医師による面接指導を無料で受けられます。

 

地域の保健所・精神保健福祉センター:
お住まいの地域にある保健所や精神保健福祉センターでも、こころの健康に関する相談を無料で行うことができます。本人だけでなく、家族からの相談も可能です。どこに相談すればよいか分からない場合の最初の窓口として活用できます。

 

うつ病からの回復と社会復帰をサポート|就労継続支援B型事業所オリーブ

うつ病の初期症状に気づき、治療を始めたけれど、「すぐに元の職場に戻るのは不安」「自分のペースで社会とのつながりをもう一度作りたい」と感じる方もいらっしゃるでしょう。社会復帰は、焦らず、スモールステップで進めることが何よりも大切です。

私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、うつ病をはじめ様々な障害や病気のある方が、安心して社会復帰への準備をするためのお手伝いをしています。

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに利用できる福祉サービスです。そのため、あなたの体調を最優先に、週1日・1日1時間といったごく短い時間から、無理なく通うことができます。

オリーブでは、データ入力や軽作業など、一人ひとりの状態に合わせて取り組める仕事を通じて、「働く」ことへの自信を少しずつ取り戻していきます。経験豊富なスタッフが、仕事のことだけでなく、日々の生活の不安についても親身に寄り添い、あなたらしい次の一歩を一緒に考えます。

まずは生活リズムを整える場所として、安心して過ごせる居場所として、オリーブを活用してみませんか。ご本人様はもちろん、ご家族様からの見学やご相談も、心よりお待ちしております。

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