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朝起きられないのは起立性調節障害かも?大人の症状や原因・治療法を解説

「夜、早く寝ても、朝どうしても起き上がれない」「立ち上がると、目の前が真っ暗になるような立ちくらみがする」このような症状に悩まされ、「自分はなんて怠け者なんだろう」「気合が足りないだけだ」と、ご自身を責めてしまっていませんか。

もし、特に午前中に体調不良が集中し、午後になると少し楽になるという傾向があれば、それは単なる「怠け」や「疲れ」ではなく、「起立性調節障害」という身体の病気が原因かもしれません。

この記事では、思春期の子どもに多いと思われがちな起立性調節障害が、大人にも起こりうること、そしてその主な症状や原因、日常生活でできる対処法や治療法まで、分かりやすく解説していきます。一人で悩まず、まずは病気について正しく知ることから始めましょう。

起立性調節障害(OD)とは?自律神経の不調で起こる身体の病気

起立性調節障害(きりつせいちょうせつしょうがい、Orthostatic Dysregulation: OD)とは、自律神経の働きが悪くなることで、立ち上がった時に血圧の低下や心拍数の過度な増加が起こり、脳への血流が不安定になるために、様々な身体の不調が生じる病気です。

私たちの体は、横になった状態から立ち上がると、重力によって血液が下半身に下がろうとします。通常は、自律神経(交感神経)が瞬時に働き、下半身の血管を収縮させて血圧を維持し、脳への血流を保つように調整しています。

しかし、起立性調節障害ではこの調整機能がうまく働かず、「立ちくらみ」や「めまい」「朝起きられない」といった症状が現れるのです。決して「気の持ちよう」や「なまけ癖」といった精神的な問題ではなく、自律神経系の調節不全という、明確なメカニズムに基づいた身体の病気であるという認識が、ご本人にとっても、周囲の方にとっても非常に重要です。

大人でも発症・持続する起立性調節障害

起立性調節障害は、体の成長が著しい思春期(小学生高学年から高校生)に最も多く見られるため、「子どもの病気」というイメージが強いかもしれません。しかし、大人になってから発症するケースや、思春期に発症した症状が改善しないまま、大人になっても持ち越してしまうケースも少なくありません。

大人の場合、過労や強いストレス、不規則な生活などが引き金となって、自律神経のバランスが崩れ、発症につながることがあります。子どもの頃とは異なり、仕事や家庭での責任がある中で発症するため、周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解され、つらい思いをされている方が多くいらっしゃいます。

起立性調節障害の4つのサブタイプ

起立性調節障害は、起立時の血圧や心拍数の変化のパターンによって、主に4つのサブタイプに分類されます。タイプによって症状の現れ方や対処法が異なるため、専門医による正確な診断が重要です。

    • 起立直後性低血圧(INOH):立ち上がった直後に血圧が大幅に低下し、回復が遅れるタイプ。強い立ちくらみや失神を起こしやすいのが特徴です。
    • 体位性頻脈症候群(POTS):立ち上がった後に、血圧は低下しないものの、心拍数だけが異常に増加するタイプ。動悸や息切れ、倦怠感が主な症状です。
    • 血管迷走神経性失神(VVS):長時間立ち続けたり、強いストレスを感じたりした時に、急に血圧が低下して失神してしまうタイプ。いわゆる「脳貧血」もこれに含まれます。
    • 遷延性起立性低血圧(DOH):立ち上がってから数分~10分以上経ってから、徐々に血圧が低下してくるタイプ。立ち続けていると気分が悪くなります。

 

起立性調節障害の主な原因

なぜ、自律神経の調整機能がうまく働かなくなってしまうのでしょうか。その原因は一つではなく、様々な要因が複雑に関係していると考えられています。

① 自律神経の働きの乱れ

起立性調節障害の根本的な原因は、体を活動的にする「交感神経(アクセル)」と、リラックスさせる「副交感神経(ブレーキ)」から成る、自律神経のバランスの乱れです。健康な人は、朝になると交感神経が優位になり、血圧や心拍数を上げて活動モードに切り替わります。しかし、起立性調節障害の方は、この交感神経と副交感神経の切り替えがスムーズに行えません。特に朝は交感神経の働きが鈍く、なかなか活動モードになれないため、血圧が上がらず、脳への血流が不足し、様々な不調が起こるのです。

② 不規則な生活やストレス

自律神経のバランスは、日々の生活習慣や精神的なストレスによって、大きな影響を受けます。

    • 不規則な生活:夜更かしや、昼夜逆転の生活、不規則な食事時間などは、体内時計を狂わせ、自律神経の乱れに直結します。
    • 精神的・身体的ストレス:仕事上のプレッシャーや人間関係の悩みといった精神的なストレスや、過労、睡眠不足などの身体的なストレスが長期間続くと、自律神経が正常に機能しにくくなります。

 

③ 遺伝的要因や環境の変化

もともとの体質や、外部の環境も、症状に影響を与えることがあります。

    • 遺伝的要因・体質:遺伝的に、自律神経の調節が苦手な体質の方や、もともと血圧が低い(低血圧)方は、起立性調節障害になりやすい傾向があると言われています。
    • 天候の変化:台風が近づいている時など、気圧が大きく変動するタイミングで、自律神経が影響を受けて症状が悪化することがあります。

 

起立性調節障害の主な症状(午前中に悪化するのが特徴)

起立性調節障害の症状には、「午前中に最も強く現れ、午後になると少しずつ改善していく」という日内変動のパターンが見られるのが大きな特徴です。

代表的な症状:朝起きられない・立ちくらみ・めまい

    • 朝、起き上がれない:目は覚めていても、強い倦怠感やめまいで、体を起こすことができない状態です。「起きよう」という強い意志はあるのに、体が言うことを聞かない、非常につらい症状です。
    • 立ちくらみ・めまい(起立性低血圧):寝ている状態や座っている状態から立ち上がった瞬間に、血圧が急激に下がり、脳への血流が一時的に不足することで、目の前が暗くなったり、クラッとしたりします。ひどい場合は、意識を失って倒れてしまう(失神)こともあります。

 

全身に現れる様々な症状

脳への血流不足や自律神経の乱れから、上記以外にも全身に様々な症状が現れます。

    • 全身倦怠感:「鉛のように体が重い」と表現されるような、強いだるさが続きます。
    • 頭痛:特に午前中に、締め付けられるような頭痛や、ズキズキとした拍動性の頭痛が起こりやすいです。
    • 動悸・息切れ:少し動いただけでも、心臓がドキドキしたり、息が切れたりします。
    • その他:食欲不振、吐き気、腹痛、乗り物酔いしやすい、集中力や思考力の低下、夜になかなか寝付けない(入眠困難)など、その症状は多岐にわたります。

 

似ているけど違う病気との鑑別

起立性調節障害の症状は、うつ病や慢性疲労症候群、甲状腺機能低下症など、他の病気の症状と似ていることがあります。自己判断はせず、医療機関で鑑別診断を受けることが重要です。特に、精神的な落ち込みが強い場合はうつ病を併発している可能性もあります。適切な治療を受けるためにも、専門医による正確な診断が不可欠です。

起立性調節障害の治療と日常生活でのセルフケア

起立性調節障害の治療は、まず薬に頼るのではなく、日常生活の中で自律神経の働きを整えていく「非薬物療法」が基本となります。根気強く続けることが、症状改善への一番の近道です。

非薬物療法:生活習慣の改善と工夫

    • 水分と塩分を多めに摂取する:体内の血液量を増やすことで、血圧の低下を防ぎます。水分は1日に1.5~2リットル、塩分は1日に10g~12g程度(通常より少し多め)を目安に、こまめに摂取しましょう。
    • 起き上がる・立ち上がる動作はゆっくりと:急な血圧低下を防ぐため、①目が覚めたら布団の中で手足を動かす、②数分間ベッドの上で座った状態を保つ、③ゆっくり立ち上がる、という段階を踏みましょう。
    • 規則正しい生活リズム:休日でも平日と同じ時間に起きるようにし、体内時計を整えましょう。夜更かしや、日中の長時間の昼寝は避けます。
    • 適度な運動:ウォーキングなど、下半身の筋肉を使う運動は、血液を心臓に戻すポンプ機能を高めるのに効果的です。無理のない範囲で続けましょう。
    • 弾性ストッキングの着用:足に圧力をかけることで、下半身への血液のうっ滞を防ぎ、血圧低下を和らげる効果が期待できます。
    • ストレス管理:完璧を目指さず、物事の捉え方を変えてみたり、自分がリラックスできる趣味の時間を持ったりして、ストレスを上手に発散させましょう。

 

薬物療法:症状が重い場合

非薬物療法だけでは症状が改善しない、日常生活に大きな支障が出ているといった重症の場合には、薬物療法が行われることもあります。血圧を上げる薬(昇圧剤)や、自律神経の働きを調整する薬などが、ご本人の症状やサブタイプに合わせて処方されます。

起立性調節障害の診断と早期治療の重要性

「自分は起立性調節障害かもしれない」と感じたら、まずは専門の医療機関を受診し、正確な診断を受けることが大切です。

診断はどこで?何をする?

起立性調節障害の診断や治療は、主に内科、循環器内科、小児科(思春期から症状が続いている場合)、精神科、心療内科などで受けることができます。

診断の際には、詳しい問診や血圧測定に加え、「新起立試験」が行われます。これは、10分ほど安静に横になった後、立ち上がって10分間、血圧と脈拍がどのように変化するかを連続して調べる検査です。この検査により、起立性調節障害の有無やサブタイプの判定が行われます。

早期診断が、本人と周囲の助けになる

起立性調節障害のつらさは、症状そのものだけでなく、「怠け」「さぼり」といった周囲からの誤解によって、さらに増幅されてしまいます。早期に診断を受け、「これは病気なのだ」と確定することは、ご本人が自分を責める気持ちから解放されるだけでなく、ご家族や職場といった周囲の人々に、病気について正しく理解してもらい、必要なサポートを得るための、非常に重要な一歩となります。

大人の起立性調節障害と仕事|受けられる配慮と支援

起立性調節障害のある方にとって、仕事をする上で最も大きな壁となるのが、「朝、決まった時間に出勤すること」かもしれません。職場で理解を得られず、困難を感じている場合は、以下のような選択肢を検討できます。

    • 会社への相談と配慮の依頼:診断書をもとに、上司や人事部に相談し、時差出勤やフレックスタイム制、在宅勤務の活用など、働き方の調整が可能か相談してみましょう。
    • 就労支援サービスの活用:すぐに一般企業で働くのが難しい場合は、「就労移行支援」や「就労継続支援」といった福祉サービスを利用する道もあります。障害者手帳がなくても、医師の意見書などで利用できる場合があります。

 

起立性調節障害と向き合いながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブ

午前中の強い体調不良と戦いながら、毎日決まった時間に出勤することに、大きな困難やプレッシャーを感じていませんか。もしあなたが、ご自身の体調の波に合わせて、無理なく働ける場所を探しているなら、就労継続支援B型事業所オリーブという選択肢があります。

オリーブは、雇用契約を結ばず、あなたの体調やペースを最優先に考えながら働ける場所です。

    • 柔軟な勤務時間:午前中の体調が悪い日は、午後からゆっくり出勤するなど、あなたのリズムに合わせた働き方が可能です。
    • 理解のある環境:スタッフは起立性調節障害のつらさに深い理解があります。「朝起きられない」ことを、誰も責めたりしません。
    • 自分のペースで:体力的な負担が少ない軽作業などを、休憩をこまめに取りながら、ご自身のペースで進めることができます。

 

まずはオリーブという安心できる環境で、働くことへの自信と、安定した生活リズムを少しずつ取り戻すことから始めてみませんか。関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良)で、あなたらしい働き方を探しているなら、ぜひ一度、オリーブにご相談ください。

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