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パーソナリティ障害(パーソナリティー症)とは?種類ごとの特徴や原因・接し方を解説

「あの人は、どうしていつも極端な考え方をするのだろう」「人間関係がいつも長続きせず、同じようなトラブルを繰り返してしまう」あなた自身や、あなたの周りの大切な人に対して、そんな風に感じたことはありませんか。その根深い困難さは、単なる「性格の問題」ではなく、「パーソナリティ障害(パーソナリティー症)」という障害が背景にあるのかもしれません。

パーソナリティ障害は、その人の認知、感情、対人関係、行動のパターンが、属する文化の期待から著しく偏っており、そのために本人や周りの人が長期間にわたって苦しんでいる状態を指します。この記事では、誤解されやすいパーソナリティ障害とは何か、その主な種類と特徴、そして原因や治療法について、分かりやすく解説します。また、ご家族や周りの人が、当事者とどのように接すればよいかについても、具体的なポイントをご紹介します。障害の特性を正しく理解することは、ご本人と周りの人々の苦しみを和らげるための第一歩です。

パーソナリティ障害とは?考え方や行動の著しい偏り

パーソナリティ障害とは、物事の捉え方(認知)や感情のコントロール、対人関係の持ち方といった、その人の中で深く根付いた内的体験および行動のパターンが、文化的な期待から著しく偏っており、そのために社会生活において深刻な苦痛や機能の障害を引き起こしている状態を指します。単に「個性的」「変わっている」というレベルではなく、その偏りが、青年期または成人期早期から長期間にわたって一貫して見られ、本人の生活やキャリア、人間関係など、人生の様々な側面に悪影響を及ぼすのが特徴です。多くの場合、ご本人は自分の考え方や行動が当たり前だと思っており、困難の原因が自分自身の特性にあるとは気づきにくい傾向があります。そのため、問題が起きると、原因を他者や環境のせいにしがちで、対人関係のトラブルを繰り返しやすくなります。

原因は「気質」と「環境」の相互作用

パーソナリティ障害の明確な原因は一つに特定できるものではなく、持って生まれた遺伝的な要因(気質)と、幼少期の家庭環境などの環境要因が、複雑に絡み合って形成されると考えられています。

遺伝的要因:
生まれつき持っている、不安を感じやすい、衝動的になりやすい、刺激を求めやすいといった「気質」が、特定のパーソナリティ障害の土台となることがあります。

 

環境要因:
幼少期の親との関係が不安定であったり、虐待や育児放棄(ネグレクト)といったトラウマ体験があったり、過保護または過干渉な環境で育ったりすることが、パーソナリティの偏りの形成に影響を与えると言われています。

 

決して、本人の「わがまま」や「努力不足」が原因ではありません。生き抜くために身につけた考え方や行動のパターンが、大人になった現在の社会ではうまく機能しなくなっている状態、と捉えることが理解の第一歩です。

パーソナリティ障害の10のタイプと3つのクラスター

パーソナリティ障害は、その特徴の類似性から、国際的な診断基準である「DSM-5」において、大きく3つのグループ(クラスター)に分類され、合計10種類のタイプが定義されています。

<パーソナリティ障害の3つのクラスター>

 

クラスター 特徴 主なパーソナリティ障害
A群 奇妙で風変わりなタイプ
(他者への不信感、非社交性、風変わりな思考などが特徴)
・妄想性パーソナリティ障害
・シゾイドパーソナリティ障害
・統合失調型パーソナリティ障害
B群 感情的で移り気なタイプ
(感情の不安定さ、衝動性、演技的な行動などが特徴)
・境界性パーソナリティ障害
・反社会性パーソナリティ障害
・自己愛性パーソナリティ障害
・演技性パーソナリティ障害
C群 不安や恐怖心が強いタイプ
(社会的な不安、依存性、完璧主義などが特徴)
・回避性パーソナリティ障害
・依存性パーソナリティ障害
・強迫性パーソナリティ障害

ここでは、各群の代表的な障害を解説します。

A群(奇妙で風変わりなタイプ)

このグループは、他者との関わりを避け、孤立しがちな傾向があります。

妄想性パーソナリティ障害:
他者に対する根深い不信感と猜疑心が特徴です。十分な根拠なく「他人は自分を利用・搾取しようとしている」と解釈し、常に警戒しています。人の親切心ですら疑い、自分の考えが正しいと確信しているため、親密な関係を築くことが困難です。

 

シゾイドパーソナリティ障害:
他者との情緒的な交流に関心がなく、親密な関係を求めようとしません。一人でいることを好み、感情表現が乏しく、賞賛や批判に対しても無関心に見えます。

 

統合失調型パーソナリティ障害:
親密な関係への強い不快感に加え、思考や知覚の歪み、風変わりな行動が特徴です。魔術的思考や奇妙な信念を持つことがあります。

 

B群(感情的で移り気なタイプ)

このグループは、感情のコントロールが苦手で、衝動的、演技的な行動が目立ちます。対人関係が激しく、不安定になりがちです。

境界性パーソナリティ障害:
感情、対人関係、自己イメージの激しい不安定さが中核です。見捨てられることへの極端な恐怖を抱え、相手を「理想化」と「こき下ろし」の間で揺れ動きます。慢性的な空虚感や、自傷行為などを繰り返すことも少なくありません。

 

反社会性パーソナリティ障害:
他者の権利を無視・侵害することに罪悪感を抱きません。法律や社会のルールを軽視し、衝動的で攻撃的な行動を繰り返します。

 

自己愛性パーソナリティ障害:
自分は特別で重要な存在だという誇大な感覚を持ち、他者からの賞賛を絶えず求めます。共感性に乏しく、自分の目的のために他人を利用することがあります。

 

演技性パーソナリティ障害:
過度に情緒的で、常に注目の的であろうとします。自分の外見を過度に気にし、人の気を引くために芝居がかった行動をとります。

 

C群(不安や恐怖心が強いタイプ)

このグループは、不安や内気さ、恐怖心が強く、それらに対処するために、回避や依存、完璧主義といった行動パターンをとります。

回避性パーソナリティ障害:
自分は社会的に不適切で、人より劣っているという強い劣等感を持ち、他者からの拒絶や批判を極度に恐れます。そのため、批判される可能性のある新しい対人関係や社会活動を避ける傾向があります。

 

依存性パーソナリティ障害:
世話をされたいという欲求が強く、些細なことでも自分で決断できず、他人に判断を委ねます。一人でいることに強い不安を感じ、見捨てられることを恐れるため、相手に過度に従います。

 

強迫性パーソナリティ障害:
秩序、完璧さ、精神的・対人関係的なコントロールにとらわれ、柔軟性や効率性が犠牲になります。規則、手順、リストなどにこだわり、融通が利かないため、本人も周囲も消耗します。

 

パーソナリティ障害の診断と治療方法

専門医による慎重な診断が必要

パーソナリティ障害の診断は、精神科や心療内科の医師によって行われます。一度の診察だけで下されることはほとんどなく、長期間にわたる本人の行動パターンや対人関係のあり方、生育歴などを、本人や家族から詳しく聞き取り、DSM-5などの国際的な診断基準に照らし合わせて、総合的に判断されます。うつ病や不安障害など、他の精神疾患を併発していることも多いため、それらとの鑑別も重要となります。

治療は精神療法(カウンセリング)が中心

パーソナリティ障害の治療の基本は、精神療法(心理療法、カウンセリング)です。薬物療法のように、症状を直接的に改善する特効薬はありません。精神療法を通じて、ご自身の考え方や感情のパターンの偏りに気づき、より現実的で、社会に適応しやすい対人関係のスキルや、ストレスへの対処法を、時間をかけて学んでいきます。

代表的な精神療法には、認知行動療法(CBT)や、境界性パーソナリティ障害に特に有効とされる弁証法的行動療法(DBT)などがあります。薬物療法は、併発しているうつ病や不安障害の症状を和らげたり、衝動性をコントロールしたりするために、補助的に用いられることがあります。

パーソナリティ障害のある方への周囲の接し方

パーソナリティ障害のある方と関わるご家族や周りの人は、しばしば混乱し、疲れ果ててしまいます。ご自身の心を守りながら、相手と関わるための基本的なポイントをご紹介します。

① 病気として理解し、本人を責めない

まず大切なのは、相手の極端な言動は、「本人の性格が悪いから」ではなく、「障害の特性によるものだ」と理解することです。本人は、自分でもコントロールできない思考や感情のパターンに苦しんでいます。「なぜそんなことを言うんだ」「普通はこうだろう」と本人を責めても、状況は改善しません。病気への理解が、冷静な対応への第一歩です。

② 感情に巻き込まれず、冷静に「境界線」を引く

特にB群の方は、周りの人を自分の感情の渦に巻き込もうとすることがあります。相手の激しい怒りや悲しみに引きずられ、感情的に言い返してしまうと、事態はさらに悪化します。相手が感情的になったときは、一歩引いて、冷静に話を聞く姿勢が重要です。そして、「あなたの気持ちは分かった。でも、その要求には応えられない」というように、できないことは、一貫した態度で、しかし穏やかに断ることが大切です。これを「バウンダリー(境界線)を引く」と言い、本人と周りの人の双方を守るために不可欠なスキルです。

パーソナリティ障害と仕事、利用できる公的支援

パーソナリティ障害のある方は、その特性から、職場での対人関係に大きな困難を抱え、仕事が長続きしないケースが少なくありません。しかし、適切な支援を受けることで、安定して働き続けることは可能です。

    • 合理的配慮を相談する:障害者雇用などで働く場合、会社に対して、障害の特性に応じた働きやすい環境への配慮(合理的配慮)を求めることができます。例えば、「指示は口頭だけでなく文書でもらう」「対人ストレスの少ない業務内容にする」などです。
    • 自立支援医療(精神通院医療):精神科への通院にかかる医療費の自己負担額を、通常3割のところを1割に軽減できる制度です。
    • 精神障害者保健福祉手帳:症状の程度によっては交付対象となり、税金の控除や公共料金の割引、障害者雇用枠での就職活動が可能になります。
    • 就労支援サービス:就労移行支援事業所や就労継続支援事業所など、社会復帰や働き続けるための専門的なサポートを受けられる福祉サービスです。

 

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