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うつ病からの復職・再就職が不安な方へ|仕事復帰の流れと怖さを和らげるコツ

うつ病の治療を経て、少しずつ心身のエネルギーが回復してくると、次に考えるのは「仕事への復帰」ではないでしょうか。しかし、長い間仕事から離れていたことで、「また以前のように働けるだろうか」「職場の人間関係になじめるだろうか」「再び症状が悪化してしまったらどうしよう」といった、大きな不安や恐怖を感じるのは、決してあなただけではありません。うつ病からの仕事復帰は、焦らず、正しいステップを踏んでいくことが何よりも大切です。この記事では、うつ病から仕事復帰するまでの具体的な流れと、復職や再就職に対する不安や怖さを和らげるための3つの重要なポイント、そして再発を防ぐための過ごし方について、分かりやすく解説します。この記事が、あなたの社会復帰への道のりを照らし、安心して次の一歩を踏み出すための、心強い味方となれば幸いです。

うつ病からの仕事復帰までの流れ 4つのステップ

うつ病からの仕事復帰は、リハビリテーションの一環です。車の運転に例えるなら、いきなり高速道路を走るのではなく、まずは教習所のコースでゆっくりと練習を始めるようなもの。焦らず、段階的に進めていくことが、再発を防ぎ、長く働き続けるための鍵となります。

ステップ1:まずは休職して治療に専念する

仕事が原因でうつ病になった場合、あるいは仕事によって症状が悪化している場合、まずはそのストレス環境から離れることが最も重要です。勇気を出して休職を決断し、心と体を休ませ、治療に専念しましょう。この時期に大切なのは、「早く治さなければ」「会社に迷惑をかけている」と焦らないことです。うつ病は脳のエネルギーが枯渇した状態であり、回復には十分な休養が不可欠です。医師の指示に従って薬をきちんと服用し、カウンセリングを受けるなど、専門的な治療に集中してください。仕事のことは一旦忘れ、「何もしない」「しっかり休む」ことが、回復への一番の近道だと考えましょう。

ステップ2:主治医と相談し、復帰の準備を始める

十分な休養と治療によって、意欲や集中力が少しずつ戻ってきたら、主治医と仕事復帰について相談を始めます。ここで重要なのは、自己判断で「もう大丈夫だ」と決めつけないことです。自分では回復したように感じても、ストレスがかかる職場環境に戻るには、まだエネルギーが不十分な場合が少なくありません。主治医は、あなたの症状の回復度合いを客観的に評価し、復職が可能かどうかを専門的な視点から判断してくれます。主治医から復職の許可が出たら、「復職可能」という内容の診断書(意見書)を作成してもらいましょう。この診断書は、会社に復職の意思を伝える上で不可欠な書類です。その上で、会社の人事担当者や上司に連絡を取り、復職に向けた話し合いを開始します。この時、復職後の働き方(短時間勤務や業務内容の調整など)についても、診断書の内容を基に相談を始めていきましょう。

ステップ3:リワークなどを活用し、徐々に心身を慣らす

主治医から復職の許可が出ても、すぐに元の職場にフルタイムで戻るのは、心身にとって非常に大きな負担となります。休職期間中に低下した体力や集中力、コミュニケーション能力などを、少しずつ取り戻していく「リハビリ期間」が必要です。そのための有効な選択肢が、「リワークプログラム」の活用です。リワークは、復職を目指す方が、オフィスに近い環境で、軽作業やグループワークなどを行いながら、生活リズムを整え、仕事に必要なスキルを回復させていくための専門的なプログラムです。毎日決まった時間に通うことで、通勤の練習にもなり、スムーズな職場復帰への橋渡しとなります。

ステップ4:復職または再就職へ

心身の準備が整い、会社との調整もついたら、いよいよ復職です。元の職場に戻る場合は、会社と「復職プラン(リハビリ出勤計画)」を作成し、それに沿って進めるのが一般的です。

復職プランの例:

    • 最初の1ヶ月:週3日、1日4時間の短時間勤務から開始。業務は軽作業のみ。
    • 2ヶ月目:週5日、1日6時間勤務に移行。徐々に元の業務に近い内容へ。
    • 3ヶ月目:フルタイム勤務へ。

 

一方で、休職期間中に自分と向き合う中で、「元の職場に戻るのではなく、新しい環境で再出発したい」と考える方もいるでしょう。その場合は、転職エージェントやハローワークなどを利用して、再就職活動を始めることになります。うつ病の経験があることをオープンにして、障害への配慮がある「障害者雇用枠」で就職するのも、有力な選択肢の一つです。

復職・再就職の不安や怖さを和らげる3つのポイント

仕事復帰を目前にすると、「本当に大丈夫だろうか」という不安や恐怖が強くなるのは、ごく自然なことです。ここでは、その気持ちを少しでも和らげるための、3つの重要な心構えをご紹介します。

ポイント1:完璧を目指さず、ハードルを思い切り下げる

うつ病になる方は、もともと真面目で責任感が強く、完璧主義の傾向がある方が多いと言われています。そのため、復職後も「休んだ分を取り戻さなければ」「周りに迷惑をかけてはいけない」と、つい頑張りすぎてしまいがちです。しかし、復職直後は、体力も集中力も、病気になる前の6割か7割程度に戻っていれば十分です。決して100%の完璧な状態を目指さないでください。「今日は時間通りに出社できた」「午前中だけ集中できた」というように、ごく小さな目標を立て、それをクリアできた自分を褒めてあげましょう。ハードルを思い切り下げることが、結果的に長続きするコツです。

ポイント2:自分の「取扱説明書」を作成し、周囲に伝える準備をする

復職後に、どのような状況でストレスを感じやすいか、どんな配慮があれば安心して働けるかを、自分自身で理解しておくことが重要です。そして、それを職場の信頼できる上司や同僚に、具体的に伝える準備をしておきましょう。

<自分の取扱説明書 作成例>

  • 私の得意なこと:集中して行うデータ入力、丁寧な資料作成
  • 私が苦手なこと・ストレスを感じること:一度に複数の指示を受ける、急な電話応対、騒がしい環境、顧客との直接的なやりとり
  • 不調のサイン:寝つきが悪くなる、食欲がなくなる、口数が減る
  • 希望する配慮:
      • 指示は一つずつ、できればメモでお願いします。
      • 疲れが溜まると集中力が落ちるため、1時間に5分ほど短い休憩を取らせてください。
      • 定期的な通院のため、月に1〜2回、休暇をいただくことがあります。

     

これを「わがまま」と感じる必要はありません。あなたが安定して働き続けるために必要な、正当な「情報共有」であり「交渉」です。

ポイント3:一人で抱え込まず、専門の支援機関を頼る

復職や再就職のプロセスは、多くの不安や決断を伴い、一人で乗り越えるのは簡単なことではありません。主治医や家族だけでなく、客観的な第三者である専門の支援機関を積極的に頼りましょう。リワークプログラムのスタッフや、ハローワークの専門相談員、就労移行支援事業所の支援員など、あなたの状況を理解し、専門的な視点からアドバイスをくれる存在はたくさんいます。「誰かに相談できる」という安心感は、復職への不安を大きく和らげてくれます。一人で抱え込まず、ためらわずに専門家の力を借りてください。

うつ病の再発を防ぐための体調管理と過ごし方

うつ病は再発しやすい病気とも言われています。仕事に復帰した後も、再発を防ぐためのセルフケアを継続していくことが非常に大切です。

自己判断で治療を中断しない

復職して症状が安定してくると、「もう薬を飲まなくても大丈夫だろう」と自己判断で服薬をやめてしまう方がいますが、これは再発の最も大きな原因の一つです。症状がなくなったように感じても、脳の状態が完全に安定するには、さらに時間が必要です。薬を減らしたり、やめたりするタイミングは、必ず主治医と相談の上、慎重に決定してください。

ストレスとの上手な付き合い方(ストレスコーピング)を見つける

ストレスを完全になくすことは困難ですが、ストレスへの対処法(ストレスコーピング)を身につけることで、再発のリスクを大きく減らすことができます。

    • ストレスサインに気づく:「寝つきが悪い」「食欲がない」「イライラしやすくなった」など、自分なりのストレスのサインを把握し、早めに気づけるようにしておきましょう。
    • コーピングのレパートリーを増やす:音楽を聴く、散歩をする、友人と話す、アロマを焚く、ゆっくりお風呂に入るなど、自分が「心地よい」と感じるストレス解消法を、たくさんリストアップしておき、ストレスを感じたら実践します。

 

無理せず、こまめに休息をとる

復職後は、知らず知らずのうちに緊張や疲れが溜まっています。意識的に休息をとることを、仕事のスケジュールと同じくらい重要視してください。

    • こまめな休憩:仕事中も、1時間に一度は席を立ってストレッチをするなど、短い休憩を挟みましょう。
    • 休日の過ごし方:「休日にあれもこれもやらなければ」と予定を詰め込まず、心身を休ませることを最優先に考えましょう。
    • 睡眠の確保:質の良い睡眠は、心の健康の基本です。寝る前のスマートフォン操作を控えるなど、リラックスできる就寝環境を整えましょう。

 

仕事復帰の不安をサポートする「リワークプログラム」とは

うつ病からの仕事復帰において、大きな助けとなるのが「リワークプログラム」です。これは、復職を目指す方が、仕事に必要な体力や集中力を取り戻すためのリハビリテーション施設・プログラムの総称です。

リワークプログラムの種類と特徴

リワークプログラムは、主に以下の3つの機関で提供されており、それぞれに特徴があります。

種類 実施機関 特徴
医療リワーク 病院・クリニック ・医師や看護師など医療専門職が関わる
・治療的な側面が強く、病状管理が手厚い
・健康保険や自立支援医療制度が適用される
職場リワーク 企業内・委託機関 ・自社の復職支援制度の一環
・実際の職場環境に近い形でリハビリできる
・人事担当者との連携がスムーズ
就労移行支援のリワーク 就労移行支援事業所 ・福祉サービスの一環
・元の職場への復帰だけでなく、転職・再就職のサポートも行う
・PCスキルなど実践的な職業訓練が充実

それぞれのプログラムには、オフィスワークのシミュレーション、ストレス対処法を学ぶ心理教育、対人関係スキルを学ぶSST(ソーシャルスキルトレーニング)などが含まれており、ご自身の状況や目的に合わせて選ぶことが大切です。

焦らず社会復帰を目指したいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブのご案内

リワークなどを活用しても、すぐに企業で働くことへの不安が拭えなかったり、休職を繰り返す中で、フルタイムで働く自信を失ってしまったりすることもあるでしょう。そのような場合は、決して焦る必要はありません。

復職や再就職だけが、社会復帰の道ではありません。もっと自分のペースを大切にしながら、社会とのつながりを持ち、働く喜びを感じられる場所があります。

就労継続支援B型事業所オリーブは、まさにそのような方のための福祉サービスです。雇用契約を結ばないため、ノルマや時間に追われるプレッシャーがありません。あなたの体調や目標に合わせて、週1日・短時間からでも利用を開始でき、データ入力や軽作業などの仕事を通じて、少しずつ働くことへの自信と安定した生活リズムを取り戻していくことができます。

うつ病からの回復の道のりは、人それぞれです。大切なのは、自分を責めず、自分に合ったペースで、着実に一歩ずつ進んでいくことです。オリーブでは、専門の支援員が、あなたの気持ちに寄り添いながら、これからの働き方を一緒に考えます。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

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