
「適応障害と診断され、明日から休職することになったけど、一体何をすればいいんだろう…」「何もしないでいると、社会から取り残されるようで焦ってしまう…」
医師から休職を勧められ、心と体を休めるための時間を得たにもかかわらず、その過ごし方が分からずに、かえって不安や罪悪感に苛まれてしまう方は少なくありません。しかし、休職期間は単なる休暇ではなく、回復と再出発に向けた大切な「治療期間」です。そして、この治療期間をどう過ごすかが、その後の回復の質とスピードを大きく左右します。
この記事では、適応障害で休職を考えている方や、すでに休職中の方のために、休職までの具体的な流れから、休職期間の目安、経済的なサポート、そして最も重要な「休職中の過ごし方」を3つのステップに分けて詳しく解説します。この記事を読めば、休職期間中の漠然とした不安が解消され、回復に向けた具体的な道筋が見えてくるはずです。焦らず、ご自身のペースで、次の一歩を踏み出すための準備を始めましょう。
適応障害で休職するまでの流れと準備
まず、実際に休職に入るまでの手続きや、事前に確認しておくべきことについて、順番に解説します。スムーズに手続きを進めることが、安心して休養に入るための第一歩です。
ステップ1:まずは主治医に相談し「診断書」をもらう
休職するためには、会社に対して「就労が困難な状態であり、休養が必要である」ことを医学的に証明する必要があります。そのため、まずは精神科や心療内科を受診し、主治医に相談することが不可欠です。相談の上、医師が休職が必要だと判断すれば、「〇ヶ月間の休養を要する」といった内容が記載された「診断書」が発行されます。この診断書が、会社で休職手続きを行うための公的な証明書となります。ご自身の判断だけで会社に「辞めます」と伝えてしまう前に、必ず専門家である医師の客観的な判断を仰ぎましょう。
ステップ2:会社の休職制度を確認し、手続きを行う
診断書を受け取ったら、会社の就業規則を確認し、休職に関する規定を把握しましょう。不明な点があれば、人事部や労務担当者に問い合わせます。
<確認すべき主な項目>
- 休職制度の有無:
- 法律上、休職制度は義務ではないため、まずは自社に制度があるかを確認します。
- 休職可能な期間:
- 勤続年数などによって、取得できる休職期間の上限が定められています。
- 休職中の給与の有無:
- 多くの会社では、休職中は給与が支払われない「無給」となります。
- 社会保険料の支払い:
- 休職中も、健康保険料や厚生年金保険料の支払いは継続して必要になります。給与から天引きされないため、会社への振り込みなど、支払い方法を確認しておく必要があります。
- 連絡方法や頻度:
- 休職中の会社との連絡方法(誰に、どのくらいの頻度で報告するか)を確認しておくと、余計なストレスを減らせます。
就業規則を確認した後、直属の上司に診断書を提出し、休職の意向を伝えます。その後、人事部の指示に従って、必要な書類の提出など、正式な手続きを進めていきます。
適応障害での休職期間と経済的なサポート
休職するにあたり、多くの方が不安に感じるのが「休職期間」と「経済的な問題」です。ここでは、その目安と、生活を支える公的な制度について解説します。
休職期間の目安は1ヶ月から3ヶ月程度
適応障害での休職期間は、症状の重さや回復のペース、ストレスの原因などによって個人差が大きいため、一概には言えません。一般的には、まず1ヶ月から3ヶ月程度の休養が必要とされることが多いです。この期間で心身を十分に休ませ、その後の回復状況を見ながら、主治医と相談の上で期間を延長するか、復職の準備に入るかを判断していきます。大切なのは、「早く復帰しなければ」と焦らないことです。焦りは回復を遅らせるだけでなく、再発のリスクを高めてしまいます。
休職中の生活を支える「傷病手当金」
休職中は無給となる会社がほとんどですが、その間の生活を支えるための強力な制度が、健康保険の「傷病手当金」です。
- 対象者:
- 会社の健康保険に加入している本人。
- 支給条件:
- 業務外の病気やケガ(適応障害も含む)で療養中であり、働くことができない状態で、連続する3日間を含み4日以上仕事を休み、その期間に給与の支払いがないことなど。
- 支給額:
- 1日あたり、おおむね給与の3分の2。
- 支給期間:
- 支給が開始された日から、通算して最長1年6ヶ月間。
申請には、医師と会社に記入してもらう申請書が必要です。手続きについては、会社の担当部署や、加入している健康保険組合に確認しましょう。
医療費の負担を軽減する「自立支援医療」
適応障害の治療で、継続的に通院が必要な場合に利用できる制度です。精神科や心療内科での診察代、薬代、カウンセリング費用など、医療費の自己負担が通常3割のところ、原則1割に軽減されます。申請は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。
適応障害での休職中の過ごし方|3つのステップ
ここからは、このコラムの最も重要なテーマである「休職中の具体的な過ごし方」について、回復の段階に合わせた3つのステップで解説します。
ステップ1:休養期(休職開始~1ヶ月程度)- とにかく心と体を休める
休職に入ったばかりのこの時期は、心身ともにエネルギーが枯渇しきった状態です。回復のために最も大切なのは、「何もしないこと」そして「罪悪感を持たないこと」です。
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- 睡眠を優先する:眠れる時に、眠れるだけ眠りましょう。昼夜逆転しても構いません。まずは睡眠時間を確保し、脳と体を休ませることを最優先します。
- 何もしないことを許可する:「何か有意義なことをしなければ」と焦る必要は全くありません。一日中ベッドで過ごしたり、ただぼーっとしたりすることも、この時期のあなたにとっては大切な「治療」です。
- 自分を責めない:「休んでしまって申し訳ない」という罪悪感は、回復を妨げます。「今は休むことが自分の仕事だ」と割り切り、意識的にご自身を労ってあげましょう。
- ストレス因から完全に離れる:仕事のメールやチャットは見ない、会社の人のSNSも見ないなど、ストレスの原因となっていた情報を完全に遮断しましょう。
ステップ2:リハビリ期(1ヶ月~2ヶ月目頃)- 生活リズムを整え、活動量を増やす
十分な休養によって、少しずつ心身のエネルギーが回復してくる時期です。このステップでは、社会復帰に向けた土台作りのために、生活リズムを整え、徐々に活動量を増やしていきます。
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- 生活リズムの再構築:まずは、毎日決まった時間に起き、決まった時間に寝ることを目標にします。朝起きたらカーテンを開けて太陽の光を浴びると、体内時計がリセットされやすくなります。
- バランスの取れた食事:3食をなるべく決まった時間に摂るように心がけ、心と体のエネルギー源となる栄養をしっかりと補給しましょう。
- 軽い運動から始める:天気の良い日に、家の周りを5分~10分程度散歩することから始めてみましょう。無理のない範囲で体を動かすことは、気分の改善にもつながります。
- 好きなことをする時間を作る:読書、音楽鑑賞、映画、簡単な料理など、ご自身が「楽しい」「心地よい」と感じることに時間を使ってみましょう。気力や興味を取り戻すための大切なリハビリです。
- ストレスの振り返り:少し気持ちに余裕が出てきたら、なぜご自身が適応障害になったのか、何がストレスだったのかを、ノートなどに書き出して客観的に振り返ってみるのも良いでしょう。ただし、つらくなったらすぐに中断してください。
この時期の目標は、「安定して過ごせる日を増やす」ことです。日によって気分の波があるのは当然なので、調子が悪い日は無理せず休みましょう。
ステップ3:復帰準備期(2ヶ月~3ヶ月目以降)- 社会復帰の準備を始める
生活リズムが安定し、体力や気力もかなり回復してきたら、いよいよ社会復帰に向けた具体的な準備を始める段階です。
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- 外出の練習:平日の日中に、図書館やカフェなど、人がいる場所で過ごす練習をします。最初は短時間から始め、徐々に時間を延ばしていきましょう。
- 通勤の練習:会社の近くまで行ってみる、実際に通勤時間帯の電車に乗ってみるなど、復職を想定したリハーサルを行います。
- 知的作業に慣れる:簡単な資格の勉強をしたり、PCで文章を作成したりするなど、集中力や思考力を必要とする作業に少しずつ取り組んでみましょう。
- 主治医や会社との相談:復職の意思が固まったら、主治医と相談して復職の可否やタイミングを判断してもらいます。その上で、会社の上司や人事部と面談し、復職後の働き方(時短勤務や業務内容の調整など)について、具体的なすり合わせを行います。
この段階で焦りは禁物です。「もう大丈夫」と自己判断せず、必ず主治医や専門家と相談しながら、慎重にステップを進めていきましょう。
休職後の選択肢と活用できる支援機関
休職期間を経て、必ずしも元の職場に復帰することだけがゴールではありません。ご自身にとってより良い働き方を見つけるために、転職や退職という選択肢もあります。
復職を目指す場合に活用できる「リワーク支援」
休職から職場復帰への移行をスムーズにするためのリハビリテーションプログラムです。医療機関や地域障害者職業センターなどで実施されています。リワーク施設に通い、オフィスに近い環境で模擬的な業務を行ったり、ストレスマネジメントを学んだりすることで、再発のリスクを減らし、安定した復職を目指すことができます。
転職や退職を考えたときの相談先
休職中にご自身の働き方を見つめ直した結果、「今の会社に戻るのではなく、新しい環境で再出発したい」と考えることもあるでしょう。そんな時は、一人で抱え込まず、以下の支援機関に相談してみましょう。
- ハローワーク:
- 障害のある方の就職を専門にサポートする窓口が設置されています。専門の相談員が、あなたの病状や希望を丁寧にヒアリングし、あなたに合った求人を探してくれます。
- 就労移行支援事業所:
- 一般企業への就職を目指す方が、職業訓練やビジネスマナーを学ぶ場所です。
- 就労継続支援事業所:
- すぐに一般企業で働くのが難しい方が、福祉的なサポートのある環境で、ご自身のペースで働くことができる場所です。(雇用契約を結ぶA型と、結ばないB型があります)。
ご家族や周囲の方ができること
ご本人が休職しているとき、ご家族や職場の同僚など、周囲のサポートも非常に重要です。
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- そっと見守る:特に休養期には、本人の「何もしない時間」を尊重し、過度に干渉せず、安心して休める環境を整えることが大切です。
- 本人のペースを尊重する:「いつ復帰するの?」などと尋ねたり、焦らせたりする言動は避けましょう。回復のペースは人それぞれです。
- 話を聴く姿勢:本人が話したいときには、アドバイスや意見を言う前に、まずは気持ちを否定せずに耳を傾けましょう。
- 情報提供の手伝い:本人は心身のエネルギーが低下し、必要な情報を調べることも困難な場合があります。傷病手当金の手続きなどについて、代わりに調べて教えてあげることも大きな助けになります。
適応障害での休職後、焦らず社会復帰を目指すなら|就労継続支援B型事業所オリーブへ
休職期間が終わり、心身ともに回復してきたけれど、「いきなりフルタイムで働くのは不安…」「また同じことの繰り返しにならないか怖い…」と感じて、次の一歩を踏み出せずにいませんか。その不安は、決して特別なものではありません。
社会復帰を焦らず、ご自身のペースで、ゆっくりと働くことに慣れていく。そんな「ならし運転」の期間を持つことが、再発を防ぎ、長く働き続けるためには非常に重要です。私たち就労継続支援B型事業所オリーブは、まさにそのような「ならし運転」に最適な場所です。
オリーブは、障害や心身の不調のある方が、雇用契約を結ばず、体調を最優先しながら、軽作業などの生産活動に取り組める福祉事業所です。
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- リハビリ期・復帰準備期に最適:「週に1日、1時間だけ」といった、ごく短い時間から利用できます。休職中のリハビリ期や復帰準備期に、生活リズムを整え、社会とのつながりを取り戻す場として活用できます。
- 安心できる環境で自信を回復:ノルマやプレッシャーのない穏やかな環境で、「できた」という小さな成功体験を積み重ねることで、働くことへの自信を少しずつ取り戻せます。
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休職という大切な時間で得た回復を、決して無駄にしないでください。オリーブで焦らず、着実に、社会復帰への準備を始めませんか。まずは見学から、お気軽にお問い合わせください。
うつ病の主な種類と症状|タイプ別の特徴と治療法をわかりやすく解説
「うつ病」と一言で言っても、実はいくつかの種類(タイプ)があることをご存知でしょうか。「気分の落ち込み」という共通の症状はあっても、そのあらわれ方や原因、効果的な治療法はタイプによって異なります。
「自分の症状は他の人と少し違う気がする」「なかなか良くならないのは、タイプに合った治療ができていないから?」といった疑問や不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、うつ病の代表的な種類である「メランコリー型」「非定型」「季節性」「周産期」の4つのタイプについて、それぞれの症状や特徴、治療法を詳しく、そして分かりやすく解説します。また、うつ病と間違われやすい双極性障害との違いについても触れていきます。
ご自身の状態を正しく理解することは、適切な治療への第一歩であり、回復への近道です。この記事を通して、あなたの心の状態を客観的に見つめ直し、専門家と共に自分に合った対処法を見つけるためのヒントを得ていただければ幸いです。
うつ病の代表的な4つの種類
うつ病は、その症状のあらわれ方や原因となる背景から、いくつかのタイプに分類されます。ここでは、臨床現場でよく見られる代表的な4つの種類について、まずはその概要をご紹介します。ご自身の状態がどれに近いかを考えるきっかけにしてみてください。
メランコリー型うつ病
従来から「うつ病」としてよく知られている典型的なタイプです。「メランコリー」とは「憂うつ」を意味します。真面目で責任感が強く、几帳面な性格傾向の人に多いとされています。過労や人間関係のストレスなどをきっかけに発症することが多く、心と体の両方に、いわゆる「うつ病らしい」典型的な症状があらわれます。
非定型うつ病
「新型うつ病」とも呼ばれることがありますが、これは俗称です。メランコリー型とは対照的な症状(非典型的な症状)が多いため「非定型」と呼ばれます。特に10代から30代の若い世代、中でも女性に多く見られます。好きなことをしている時や楽しいイベントの前には一時的に気分が良くなるなど、状況によって気分の浮き沈みが激しいのが大きな特徴です。
季節性うつ病
特定の季節にだけうつ症状があらわれ、その季節が終わると自然に回復するというサイクルを、毎年繰り返すタイプです。特に、日照時間が短くなる秋から冬にかけて発症し、春になると症状が軽快するケースが多いため、「冬季うつ病」とも呼ばれています。
周産期うつ病(産後うつ病)
妊娠中から出産後1年以内の女性に発症するうつ病の総称です。一般的には「産後うつ」として広く知られています。ホルモンバランスの急激な変化や、慣れない育児によるストレス、睡眠不足、社会からの孤立感などが複雑に絡み合って発症すると考えられています。一過性の気分の落ち込みである「マタニティブルーズ」とは区別される、専門的な治療が必要な病気です。
【種類別】うつ病の症状と特徴の違い
それでは、4つのうつ病のタイプについて、それぞれの症状や特徴をより詳しく見ていきましょう。タイプによって、気分の変化や身体症状、好発年齢や性別などが異なります。
<うつ病のタイプ別特徴比較表>
タイプ | 主な特徴 | 症状の傾向 | 好発年齢・性別 |
---|---|---|---|
メランコリー型 | ・真面目、責任感が強い人に多い ・環境ストレスが引き金になりやすい |
・自責感が強い ・気分の落ち込みは朝が最もひどい(日内変動) ・食欲不振、体重減少 ・早朝に目が覚める ・何に対しても興味が湧かない |
中高年に多い 男女差はあまりない |
非定型 | ・好きなことに対しては気分が良くなる ・他者からの拒絶に敏感 ・気分の浮き沈みが激しい |
・過食(特に甘いもの)、体重増加 ・過眠(いくら寝ても眠い) ・体が鉛のように重い(鉛様麻痺感) |
10代〜30代の若年層 女性に多い |
季節性 | ・特定の季節(特に秋冬)に発症 ・日照時間が関係する |
・過眠、日中の強い眠気 ・過食(特に炭水化物を求める) ・意欲、気力の低下 ・春になると自然に軽快する |
若い世代に多い 女性に多い |
周産期 | ・妊娠中〜産後1年以内に発症 ・ホルモンバランスの変動が関与 |
・強い不安や焦り ・涙もろくなる、情緒不安定 ・母親としての自信喪失、罪悪感 ・子どもへの関心が薄れる、または過度に心配する |
妊娠・出産期の女性 |
メランコリー型うつ病の症状と特徴
自責の念が強く早朝覚醒や食欲不振が見られる
メランコリー型うつ病は、いわゆる「うつ病」の典型例とされています。几帳面で、仕事熱心、常に周りに気を配り、他人からの信頼も厚いような人が、過労や大きなライフイベント(異動、身近な人との別れなど)といった環境ストレスをきっかけに、エネルギーが燃え尽きるように発症することが多いとされています。
症状の大きな特徴は、強い自責の念です。「すべて自分のせいだ」「自分がダメな人間だから、周りに迷惑をかけている」と過剰に自分を責め続け、思考も行動も抑制的になります。気分は一日の中でも変動し、特に朝方に最も落ち込みがひどく、ベッドから起き上がることもできないほどつらいのに、夕方になると少し楽になるという「日内変動」が見られることがよくあります。
身体的には、食欲が全くなくなり、何を食べても味がしない、体重が著しく減少するといった症状や、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、特に朝早くに目が覚めてしまい、そこから眠れずに苦しむ「早朝覚醒」といった睡眠障害が顕著にあらわれます。以前は楽しめていた趣味やテレビ番組など、何事に対しても興味や喜びを感じられなくなる「アンヘドニア」という状態も、メランコリー型の典型的な症状です。
非定型うつ病の症状と特徴
気分の浮き沈みが激しく過食や過眠の傾向
非定型うつ病は、その名の通り、メランコリー型とは対照的な症状(非典型的な症状)が目立つタイプです。特に若い女性に多く見られ、その症状のあらわれ方から、周囲に「わがまま」「怠けている」「都合のいい時だけ元気になる」と誤解され、本人がさらに傷ついてしまうことも少なくありません。
最大の特徴は「気分の反応性」と呼ばれるものです。一日中ずっと落ち込んでいるわけではなく、友人との食事や好きなアーティストのライブ、趣味の活動など、何か良いことがあると一時的に気分が明るくなり、普段通りに楽しむことができます。しかし、恋人との喧嘩や仕事での叱責など、嫌なことがあると極端に落ち込むなど、気分の波が非常に激しいのが特徴です。
身体症状もメランコリー型とは逆の傾向が見られ、食欲が増し、特に甘いものや炭水化物を無性に食べたくなり体重が増加する「過食」や、1日に10時間以上眠ってしまう、いくら寝ても眠気がとれない「過眠」がしばしば認められます。また、体が鉛のように重く、起き上がれないほどだるく感じる「鉛様麻痺感」や、他人の些細な言動にひどく傷つき、人から拒絶されることを極端に恐れる「拒絶過敏性」も、非定型うつ病に特徴的な症状です。
季節性うつ病の症状と特徴
日照時間が短い季節に発症し意欲が低下する
季節性うつ病は、特定の季節になるとうつ症状があらわれ、季節が変わると自然に治まるというパターンを繰り返すうつ病です。発症する季節は人それぞれですが、多くの場合は日照時間が短くなる秋から冬にかけて発症し、春になると回復するケースが多いため、「冬季うつ病」としてよく知られています。
これは、太陽の光を浴びる時間が減ることで、脳内の気分を安定させる神経伝達物質であるセロトニンの働きが低下したり、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌リズムが乱れたりすることが原因と考えられています。高緯度地域など、冬の日照時間が極端に短い地方で有病率が高いことからも、この関連性がうかがえます。
症状としては、非定型うつ病と似ている点が多く、過眠(日中の眠気が非常に強い)や過食(特にパンやご飯、お菓子などの炭水化物をやたらと食べたくなる)、そして気力や意欲の低下、集中力の散漫などが見られます。毎年、秋から冬にかけて決まって体調を崩し、やる気がなくなるという方は、このタイプを疑ってみる必要があるかもしれません。
周産期うつ病の症状と特徴
妊娠中や産後に発症し不安や悲しみが続く
周産期うつ病は、妊娠中から産後1年以内に発症するうつ病の総称で、一般的には「産後うつ」として知られています。出産を経験した女性の10%〜15%が発症するといわれ、決して珍しい病気ではありません。
出産後数日以内に見られる一時的で軽い気分の落ち込みである「マタニティブルーズ」が自然に軽快するのとは異なり、強い抑うつ症状や不安感が2週間以上続く場合は、治療が必要な周産期うつ病の可能性があります。
原因は、出産による急激な女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の変動という生物学的な要因に加え、慣れない育児への強い不安やプレッシャー、慢性的な睡眠不足、パートナーからのサポート不足、社会からの孤立感などが複雑に絡み合っていると考えられています。
症状としては、理由もなく涙が出る、強い不安や焦燥感、自分は母親失格だという激しい罪悪感、育児への興味や関心の喪失、あるいは逆に子どもに何か悪いことが起きるのではないかという過度な心配などがあげられます。母親本人だけでなく、赤ちゃんの健やかな発育のためにも、早期に発見し、専門家による適切なサポートにつなげることが不可欠です。
うつ病の基本的な治療方法
うつ病の治療は、どのタイプであっても「休養」「薬物療法」「精神療法」の3つが基本の柱となります。ただし、原因や症状の特性に応じて、これらの治療法の重きの置き方や内容が少しずつ異なります。
十分な休養の確保
まず何よりも大切なのが、心と体をストレスから解放し、しっかりと休ませることです。特に、心身のエネルギーが枯渇している急性期には、ストレスの原因となっている仕事や家事などから物理的に離れ、安心して休める環境を整えることが治療の第一歩となります。何もしない時間を作ることに罪悪感を覚える必要はありません。「休むこと」が回復への最も重要な仕事だと理解することが大切です。
薬物療法
脳内で乱れた神経伝達物質のバランスを整えるために、抗うつ薬などが用いられます。メランコリー型にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)といった抗うつ薬が効果を発揮しやすいとされています。非定型うつ病や季節性うつ病にもこれらの薬が使われますが、症状に合わせて薬の種類や量が慎重に調整されます。また、季節性うつ病には、高照度の光を浴びる「光療法」が、体内時計のリズムを整える上で特に有効な治療法として知られています。
精神療法(カウンセリングなど)
専門家(臨床心理士や公認心理師など)との対話を通じて、物事の受け止め方や考え方の癖(認知の歪み)を見直し、ストレスにうまく対処できるスキルを身につけていく治療法です。特に、対人関係の問題に悩みがちな非定型うつ病や、否定的な思考パターンに陥りがちなメランコリー型うつ病において、再発予防のために重要な役割を果たします。代表的なものに、考え方と行動の両面からアプローチする「認知行動療法」などがあります。
うつ病と間違われやすい双極性障害(双極症)との違い
うつ病の症状で医療機関を受診した際に、医師が最も注意深く鑑別する病気の一つに「双極性障害(双極症)」があります。以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。
うつ状態に加え躁状態が見られるのが大きな特徴
双極性障害は、うつ病と同じような気分の落ち込み(うつ状態)と、それとは対照的に気分が異常に高揚する「躁(そう)状態」を繰り返すのが大きな特徴です。うつ状態の時の症状はうつ病と非常によく似ているため、本人が躁状態の時期を「単に調子が良かっただけ」と認識している場合など、躁状態のエピソードが見過ごされると、うつ病と誤診されてしまうことがあります。
<躁状態の主な症状>
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- ほとんど眠らなくても平気で、一日中動き回っている
- 次から次へとアイデアが浮かび、異常によく喋る(多弁)
- 根拠なく自分は偉大で、何でもできると感じる(誇大妄想)
- 注意が散漫になり、一つのことに集中できない
- クレジットカードを限度額まで使ったり、高額な商品を次々と買ってしまったりする(浪費)
- 初対面の人に馴れ馴れしくするなど、社会的に無謀な行動をとってしまう
治療法が異なるため正確な診断が重要
なぜ、うつ病と双極性障害を厳密に区別することが、それほど重要なのでしょうか。それは、治療法、特に薬物療法が大きく異なるからです。
うつ病の治療で中心的に使われる抗うつ薬を、双極性障害の方に単独で用いると、効果がないばかりか、かえって躁状態を誘発したり(躁転リスク)、うつと躁のサイクルを早めて症状を不安定にしたりする危険性があります。双極性障害の治療では、気分の波そのものを安定させる「気分安定薬」や、一部の抗精神病薬が治療の中心となります。
そのため、医師に相談する際は、現在の気分の落ち込みだけでなく、「そういえば、昔すごく調子が良すぎて、周りから少しおかしいと言われた時期があったかもしれない」といったような、過去の気分の高揚エピソードについても正直に伝えることが、ご自身にとって最適な治療を受けるための鍵となります。
自分に合った治療や働き方を見つけるには
まずは専門の医療機関に相談する
ここまで様々なうつ病のタイプについて解説してきましたが、最も大切なことは、決して自己判断しないことです。「自分は非定型うつ病に違いない」などと決めつけず、必ず精神科や心療内科といった専門の医療機関を受診し、専門医の診断を仰いでください。
専門医は、あなたの話をじっくりと聞き、症状や経過を丁寧に見ながら、国際的な診断基準に基づいて客観的な視点で診断を下します。そして、あなたのタイプや状態に最も合った治療方針を提案してくれます。正しい診断と、それに基づいた適切な治療こそが、回復への確実な一歩となります。
就労に関する支援機関の活用も視野に
治療によって症状が回復してきたら、次のステップとして「働き方」を考える時期が来ます。うつ病の再発を防ぐためには、以前と同じように無理をして働くのではなく、ご自身の特性やストレスに感じやすいポイントを理解し、それに合った働き方や職場環境を見つけることが非常に大切です。
ハローワークの専門援助部門や、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所など、障害のある方の就労をサポートしてくれる公的な機関は数多くあります。こうした機関に相談することで、専門家のアドバイスを受けながら、自分に合った仕事探しや働き方のトレーニングを行うことができます。
大阪・兵庫・京都で無理なく社会復帰を目指すならオリーブへ
うつ病と一言で言っても、メランコリー型、非定型、季節性など、その特性は様々です。回復への道のりや、その後の働きやすいと感じる環境も、当然ながら一人ひとり異なります。
もしあなたが、「すぐに一般企業で働くのは不安」「自分の病気の特性を理解してもらえる環境で、無理のないペースで社会復帰を目指したい」とお考えなら、私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」にご相談ください。
オリーブは、大阪、兵庫、京都の関西エリアで、うつ病をはじめ様々な障害のある方の「働きたい」という気持ちをサポートしています。就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに利用できる福祉サービスなので、ご自身の体調を最優先に、週1日・数時間といった短時間からスタートできます。
一人ひとりのタイプや特性に合わせたサポートを心がけており、PCスキルに自信がない方でも、データ入力や軽作業など、ご自身が安心して取り組めるお仕事があります。経験豊富な支援員が、仕事のことはもちろん、日々の悩みにも寄り添い、あなたの安定した社会参加を応援します。
あなたらしい働き方を見つけるための一歩を、オリーブから踏み出してみませんか。見学やご相談は随時受け付けておりますので、お気軽にご連絡ください。