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うつ病の主な特徴や原因とは?治療の流れや仕事のサポートについても解説

「最近、何だか気分が晴れない日が続く」「今まで楽しめていたことが楽しめない」そんな風に感じていませんか。もしかしたら、それは心のエネルギーが少しだけ不足しているサインかもしれません。
うつ病は、決して特別な人がなる病気ではなく、ストレス社会といわれる現代において、誰もがかかる可能性のある病気です。しかし、その症状や原因については誤解されていることも少なくありません。「気合が足りない」「甘えだ」などと言われ、一人で苦しんでいる方もいらっしゃいます。
この記事では、うつ病の心と体にあらわれる具体的な症状、発症に関係するとされる主な原因、そして回復に向けた治療のステップについて、分かりやすく解説します。さらに、うつ病と向き合いながら仕事を続けるための公的なサポート体制についてもご紹介します。
うつ病を正しく理解することは、あなた自身や、あなたの周りの大切な人を守ることにつながります。この記事が、あなたの不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すためのきっかけとなれば幸いです。
うつ病の主な特徴|心と体にあらわれる症状
うつ病は、単に「気分が落ち込む」だけではありません。心(精神)と体(身体)の両方に、様々なつらい症状があらわれます。これらの症状が2週間以上にわたって、ほとんど毎日続く場合、うつ病の可能性があります。ここでは、代表的な症状を具体的に見ていきましょう。
精神症状:抑うつ気分や意欲・興味の低下
心の症状は、うつ病の中核となるものです。感情や思考、意欲といった面に変化があらわれ、日常生活に大きな支障をきたします。
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- 抑うつ気分:理由もなく悲しい気持ちになる、気分がひどく落ち込む、沈んだ気持ちが続く。
- 興味・関心の喪失:これまで好きだった趣味やテレビ番組などを、まったく楽しめなくなる(アンヘドニア)。
- 意欲の低下:何をするのも億劫で、やる気が出ない。身だしなみを整えることすら面倒に感じる。
- 思考力・集中力の低下:頭が働かず、考えがまとまらない。本を読んでも内容が頭に入ってこない。仕事や家事でミスが増える。簡単な決断ができなくなる。
- 自己評価の低下・罪悪感:「自分はダメな人間だ」「周りに迷惑をかけている」と、自分を過度に責めてしまう。
- 将来への悲観:「この先、良いことなんて何もない」と将来に絶望してしまう。
- 希死念慮:「消えてしまいたい」「死んだ方が楽だ」といった考えが浮かんでくる。
これらの症状は、本人の「気の持ちよう」でどうにかなるものではありません。脳のエネルギーが不足し、正常な感情や思考が難しくなっている状態なのです。
身体症状:睡眠障害や疲労感・食欲の変化
うつ病のサインは、心の不調だけでなく、体の不調としてもあらわれます。原因不明の体調不良が続く場合は、その背景にうつ病が隠れている可能性も考えられます。
症状の種類 | 具体的な内容 |
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睡眠障害 | ・なかなか寝付けない(入眠障害) ・夜中に何度も目が覚める(中途覚醒) ・朝早くに目が覚めてしまい、二度寝できない(早朝覚醒) ・眠りすぎてしまう(過眠) |
疲労感・倦怠感 | ・十分な睡眠をとっても、疲れがまったく取れない ・体が鉛のように重く、だるい |
食欲の変化 | ・食欲がなく、食べ物の味がしない(食欲不振) ・逆に、甘いものや特定のものを無性に食べ過ぎてしまう(過食) |
その他の身体症状 | ・頭痛、頭重感 ・肩こり、腰痛 ・動悸、息苦しさ ・胃の不快感、便秘、下痢 ・めまい、耳鳴り |
これらの身体症状があるために、内科などを受診しても異常が見つからず、精神科や心療内科の受診を勧められて、初めてうつ病だと分かるケースも少なくありません。
うつ病の主な原因|様々な要因が複雑に絡み合う
「なぜ、うつ病になってしまったのだろう?」と、原因を探してご自身を責めてしまう方もいるかもしれません。しかし、うつ病のはっきりとした原因はまだ解明されておらず、単一の原因で発症するのではなく、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
原因1:人間関係や環境の変化などの「ストレス」
うつ病の最も大きな引き金の一つが、心理的・社会的なストレスです。私たちの周りには、様々なストレス要因が存在します。
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- 人間関係のストレス:職場や家庭での対人関係のトラブル、孤立など。
- 環境の変化:引っ越し、転職、昇進、結婚、出産、身近な人との死別など。良い出来事であっても、大きな環境の変化はストレスとなり得ます。
- 過労:長時間労働や過度なプレッシャーなど、心身への大きな負担。
- 経済的な問題:失業、借金、生活苦など。
こうしたストレスが長く続いたり、複数のストレスが重なったりすることで、心のバランスが崩れやすくなります。
原因2:真面目で責任感の強い「性格傾向」
うつ病になりやすい特定の性格があるわけではありませんが、いくつかの性格傾向が発症に関係していると言われています。これらは長所でもあるのですが、過度になるとご自身を追い詰めてしまうことがあります。
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- 真面目で責任感が強い:何事も完璧にこなそうとし、手を抜くことができない。
- 他者からの評価を気にする:周囲の期待に応えようと、常に気を張っている。
- 頼まれると断れない:自分のキャパシティを超えて仕事を引き受けてしまう。
- 物事を悲観的に考えがち:失敗をいつまでも引きずってしまう。
上記のような性格傾向を持つ方は、ストレスを上手に発散できず、一人で抱え込みがちです。その結果、心に大きな負担がかかり、うつ病の引き金となることがあります。
原因3:脳の機能的な問題(脳のエネルギー不足)
近年の研究では、うつ病は「心の風邪」といった単なる気分の問題ではなく、脳の機能的な問題が深く関わっていることが分かってきています。私たちの脳内では、「セロトニン」や「ノルアドレナリン」といった「神経伝達物質」が、感情や意欲、思考などの働きをコントロールしています。
強いストレスが長く続くと、これらの神経伝達物質の働きが乱れ、情報の伝達がスムーズに行かなくなります。これが「脳のエネルギーが不足した状態」であり、その結果として抑うつ気分や意欲の低下といった、うつ病の様々な症状が引き起こされると考えられています。うつ病の治療で使われる「抗うつ薬」は、この乱れた神経伝達物質のバランスを整える働きをするものです。
うつ病の治療の流れ|3つの期間
うつ病の治療は、焦らず、段階的に進めていくことが大切です。一般的に、治療は「急性期」「回復期」「再発予防期」という3つの期間に分けられます。それぞれの期間で、治療の目標や過ごし方が異なります。
急性期:まずは休養を第一に考える(1~3ヶ月程度)
急性期は、うつ病の症状が最もつらく、心身のエネルギーが枯渇している時期です。この期間の最優先事項は「休養」です。
治療の目標:症状を和らげ、安心して休める環境を整えること。
主な治療法:
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- 休養:仕事や家事など、ストレスの原因となっているものから離れ、心と体をゆっくり休ませます。「何もしない」ことに罪悪感を覚える必要はありません。「休むこと」が一番の治療です。必要であれば、休職などの手続きを取ります。
- 薬物療法:医師の判断に基づき、抗うつ薬や睡眠導入剤などが処方されます。薬の効果が出るまでには2〜4週間程度かかることが多く、医師の指示通りに服用を続けることが大切です。
この時期に「早く治さなければ」と焦って活動しようとすると、かえって症状が悪化し、回復が遅れる原因となります。まずはエネルギーを充電することに専念しましょう。
回復期:徐々に活動を再開していく(3~6ヶ月以上)
十分な休養と薬物療法によって症状が少しずつ和らいでくると、「何かしてみようかな」という意欲が少しずつ戻ってきます。この時期が、社会復帰に向けたリハビリを行う「回復期」です。
治療の目標:生活リズムを整え、体力や集中力を回復させ、再発しにくい状態を目指すこと。
主な過ごし方・治療法:
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- 活動の再開:散歩などの軽い運動から始め、図書館に行く、買い物に行くなど、少しずつ行動範囲を広げていきます。ただし、体調には波があるため、無理は禁物です。
- 生活リズムの安定:決まった時間に起き、決まった時間に寝ることを心がけ、乱れた体内時計を整えます。
- 精神療法(カウンセリング):臨床心理士などの専門家との対話を通じて、自分の考え方の癖に気づいたり、ストレスへの対処法(ストレスコーピング)を学んだりします。
- 薬物療法の継続:症状が良くなったと感じても、自己判断で薬をやめてはいけません。再発を防ぐため、医師の指示に従い、服薬を継続します。
再発予防期:安定した状態を維持し、再発を防ぐ(1年以上)
回復期を経て症状が安定し、病気になる前の状態にかなり近づいた時期です。社会復帰(復職など)も視野に入りますが、うつ病は再発しやすい病気であるため、油断は禁物です。
治療の目標:安定した状態を維持し、再発のサインに早めに気づけるようになること。
主な過ごし方・治療法:
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- 再発予防のための薬物療法:症状がなくなっても、脳の状態が完全に安定するまでには時間がかかります。医師の指示に従い、一定期間、薬の服用を続けます。
- ストレス管理:回復期に身につけたストレス対処法を、日常生活の中で実践していきます。
- 再発サインの確認:「眠れない日が続く」「食欲がない」など、再発の初期サインに気づいたら、早めに主治医に相談することが大切です。
ご家族や周囲の方ができること
ご家族や友人など、身近な人がうつ病になったとき、どのように関わればよいか戸惑う方も多いでしょう。周囲の理解とサポートは、ご本人の回復にとって大きな力となります。
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- 病気を正しく理解する:まずは、うつ病が「脳のエネルギー不足」という病気であり、「怠け」や「気の持ちよう」ではないことを理解しましょう。
- 話をじっくり聴く:アドバイスや意見を言う前に、まずは本人のつらい気持ちを否定せずに受け止め、共感的に耳を傾けましょう。
- 安易に励まさない:「頑張れ」という言葉は、本人をさらに追い詰めてしまうことがあります。「十分頑張っているね」「ゆっくり休んでいいんだよ」というメッセージが大切です。
- 専門家への相談を勧める:本人が一人で抱え込んでいる場合は、「一緒に病院に行ってみようか」「相談窓口に電話してみようか」と、具体的な行動を後押ししてあげましょう。
うつ病の方の仕事をサポートする支援機関
うつ病の治療と仕事の両立は、多くの方が悩む問題です。「今の仕事を続けられるだろうか」「再就職できるだろうか」といった不安に対し、一人で立ち向かう必要はありません。うつ病など障害のある方の就労をサポートする公的な機関が数多く存在します。
ハローワーク(専門援助部門)
失業手当の手続きや求人検索で知られていますが、障害のある方の就職支援に特化した専門の窓口(専門援助部門)が設置されています。障害の特性を理解した職員が、一人ひとりの状況に合わせて、職業相談、求人紹介、面接対策、就職後の定着支援まで、一貫したサポートを提供してくれます。
地域障害者職業センター
各都道府県に設置されており、ハローワークや医療機関と連携しながら、より専門的な就労支援を提供しています。特に、休職中の方のスムーズな職場復帰を支援する「リワーク支援(職場復帰支援)」は、このセンターの代表的なプログラムです。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
仕事(就業)の支援と、日常生活(生活)の支援を一体的に行ってくれるのが大きな特徴です。「就職したいけど、金銭管理や体調管理も不安」といった場合に、両方の側面から相談に乗り、必要な支援機関につないでくれる、地域における支援の拠点です。
就労移行支援・就労継続支援事業所
障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、全国に数多くの事業所があります。
- 就労移行支援:
- 一般企業への就職を目指す方が、最長2年間、職業訓練や職場探し、定着支援などのサポートを受けられるサービスです。
- 就労継続支援(A型・B型):
- すぐに一般企業で働くのが難しい方が、支援を受けながら働き、工賃(給料)を得られるサービスです。特にB型は、雇用契約を結ばないため、体調に合わせて週1日や数時間からといった、ごく短い時間から働くことができます。
うつ病と向き合いながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブ
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