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解離性障害のある方が仕事を続けるには?症状に合わせた工夫や支援制度を解説

「仕事中に記憶が途切れる」「常にぼーっとして業務に集中できない」など、解離性障害の症状を抱えながら仕事を続けることには多くの困難が伴います。周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解され、自分を責めてしまうこともあるかもしれません。しかし、それは本人の問題ではなく、つらい体験から心を守るための「解離」という脳の防御反応によるものです。

この記事では、解離性障害のある方が安心して仕事を続けるために、ご自身でできる工夫、職場に求められる配慮、利用可能な公的支援制度について具体的に解説します。一人で抱え込まず、利用できるサポートを知ることで、自分らしい働き方を見つける一歩を踏み出しましょう。

仕事に影響する解離性障害の主な種類と症状

解離性同一性障害(解離性同一症)

症状

一人の人間の中に、複数の独立した自我(交代人格)が存在する状態です。それぞれの人格は、固有の記憶や能力、行動パターンを持っています。

仕事で起こりうる困りごと

    • 記憶の断絶(健忘): ある人格が行った業務内容や約束事を、別の人格が全く覚えていないことがあります。これにより、業務の引き継ぎ漏れや重大なミスにつながる可能性があります。
    • 能力の変動: 人格によってPCスキルやコミュニケーション能力などが異なり、業務のパフォーマンスが安定しないため、周囲を混乱させることがあります。
    • 対人関係の混乱: 人格によって言動が大きく変わるため、「言うことがコロコロ変わる」と周囲から誤解され、信頼関係の構築が難しくなることがあります。

 

離人感・現実感消失障害

症状

自分が自分である感覚(離人感)や、周囲が現実である感覚(現実感消失)が失われる状態が、持続的または反復的に生じます。あたかも自分を外から眺めている、または夢の中にいるように感じられます。

仕事で起こりうる困りごと

    • 集中力・意欲の低下: 全てが他人事のように感じられ、仕事への当事者意識が持てず、モチベーションが著しく低下することがあります。
    • 感情の平板化: 喜びや怒りといった感情が湧きにくく、無気力に見えるため、周囲から意欲がないと誤解されがちです。
    • 状況判断の困難: 現実感が乏しいため、重要な会議の内容が頭に入らなかったり、緊急時の判断が難しくなったりします。

 

解離性健忘

症状

強いストレスやトラウマに関連した重要な記憶を、通常の物忘れでは説明できない範囲で思い出せなくなる状態です。

仕事で起こりうる困りごと

    • 業務指示の忘却: 上司からの指示や会議の決定事項などを忘れ、業務に支障をきたすことがあります。
    • 業務プロセスの欠落: 担当した業務の過程を思い出せないため、トラブル時の原因究明や報告が困難になります。
    • 自己評価の低下: 度重なる物忘れで自信を失い、「自分は仕事ができない」とさらにストレスを増大させる悪循環に陥りやすくなります。

 

解離性障害の方が仕事を続けるための5つの工夫

工夫1:メモやリマインダーで記憶を補う

解離による記憶の途切れは、意志の力では防げません。そのため、「自分の記憶に頼らず、外部ツールに記録する」習慣が重要です。

    • 手帳やノート: 指示されたことやToDoリストを「いつ」「誰から」「何を」のように具体的に記録します。交代人格がいる場合は、人格間で情報を共有するための「共有ノート」として活用するのも有効です。
    • スマートフォンアプリ: リマインダー機能でタスクの抜け漏れを防ぎ、音声メモで会話を録音することも可能です。
    • PCのメモ機能: デスクワークでは付箋アプリなどを活用し、タスクを常に表示させておくと意識しやすくなります。

 

工夫2:ストレスの少ない仕事や職場環境を選ぶ

解離症状はストレスで悪化するため、要因の少ない仕事や職場を選ぶことが安定就労の鍵となります。

    • 向いている仕事の例: 業務内容や手順がある程度決まっているルーティンワーク(データ入力、倉庫でのピッキング、清掃など)や、自分のペースで進めやすい単独作業(Webライティング、プログラミング、文字起こしなど)は、見通しが立ちやすく安心です。
    • 避けた方がよい仕事の例: 予測不能な事態への対応が求められる仕事(クレーム対応、救急医療など)や、複数の業務を同時にこなすマルチタスク、高度な対人折衝が常に必要な営業職などは、強いストレスを感じる可能性があります。
    • 働き方: 在宅勤務は、通勤や対人関係のストレスを大幅に軽減できる有効な選択肢です。

 

工夫3:会社に相談し「合理的配慮」を求める

現在の職場で働き続けたい場合、会社に必要な配慮を求めることも大切です。障害者雇用促進法は、企業に対して障害のある従業員への「合理的配慮」の提供を義務付けています。

相談する際は、まず信頼できる上司や人事部の担当者、産業医などにアポイントを取ります。「業務のことでご相談したいことがあります」と切り出し、症状を具体的に伝え、どうしてほしいかを明確にすることがポイントです。「記憶が途切れるため、指示は口頭だけでなくメールでも頂けると助かります」のように伝えます。主治医の診断書や支援機関の意見を添えると、より理解を得やすくなります。

合理的配慮の具体例

    • 指示の文書化・メール化
    • 業務の優先順位の明確化
    • 急な業務変更を避ける
    • 対人ストレスの少ない業務・部署への配置
    • 体調不良時に休憩できる場所の確保

 

工夫4:信頼できる相談相手を見つける

職場での孤立は、症状の悪化につながる大きなストレス要因です。社内に一人でも良いので、自分の状況を理解し、いざという時に話を聞いてくれる人を見つけましょう。それは上司や同僚かもしれませんし、産業医やカウンセラーかもしれません。

また、社外に相談できる相手を持つことも非常に重要です。後述する専門の支援機関の担当者や、同じような悩みを持つ当事者会の仲間など、利害関係のない第三者だからこそ安心して話せることもあります。一人で抱え込まず、悩みを共有できる存在は、安定して働き続けるための大きな支えとなります。

工夫5:症状を悪化させる飲酒や不規則な生活を避ける

アルコールは脳の機能を低下させ、解離症状を誘発する危険性を高めます。仕事上の付き合いでも、心身の安定を最優先し、飲酒は控えましょう。「医師に止められています」と伝えるのが有効です。

また、アルコールだけでなく、睡眠不足や過労も症状を悪化させる大きな要因です。規則正しい生活を心がけ、意識的に心身を休ませる時間を確保することが大切です。

つらい時は無理に働き続けるのではなく、一度仕事から離れて治療に専念することも「前向きな選択」です。限界の状態で働き続けると回復が遅れる可能性があります。休職を検討する際は、会社の就業規則を確認し、医師の診断書を添えて上司や人事部に相談しましょう。

休職中や退職後に利用できる経済的支援制度

 

制度名 内容 対象者・相談窓口など
傷病手当金 病気やケガで連続4日以上休業し給与がない場合に、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給される。 対象者:会社の健康保険に加入している方
相談窓口:勤務先、全国健康保険協会(協会けんぽ)、各健康保険組合
自立支援医療(精神通院医療) 精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担が原則1割に軽減される。 対象者:精神疾患で通院治療を継続している方
相談窓口:市区町村の障害福祉担当窓口
精神障害者保健福祉手帳 精神疾患により生活に制約があることを証明する手帳。税金の優遇措置や公共料金の割引などが受けられる。 対象者:精神疾患の初診日から6ヶ月以上経過した方
相談窓口:市区町村の障害福祉担当窓口
障害年金 病気やケガで生活や仕事が制限される場合に受け取れる年金。 対象者:原則として初診日から1年6ヶ月経過し、一定の障害状態にある方
相談窓口:年金事務所、市区町村の国民年金担当窓口
雇用保険(失業手当) 離職後、次の仕事が見つかるまでの生活を支える給付金。障害等で就職が困難な方は給付日数が長くなる場合がある。 対象者:雇用保険に加入していた方
相談窓口:ハローワーク

 

仕事復帰や就職をサポートする専門機関

ハローワーク

障害のある方向けの専門窓口があり、専門知識を持つ職員が職業相談や求人紹介など、きめ細やかなサポートを提供します。障害者手帳がなくても、医師の診断書や意見書があれば利用できる場合があります。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

仕事と生活の悩みを一体的に支援する身近な相談窓口です。就職活動から就職後の職場定着まで、継続的なサポートを行います。具体的には、金銭管理や住居に関するアドバイスなど、安定した職業生活を送るための生活面のサポートも受けられます。

就労移行支援・就労継続支援事業所

障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、自分のペースで働く準備ができます。

    • 就労移行支援: 一般企業への就職を目指し、職業訓練や就職活動支援を受けるサービス。原則2年間利用可能です。
    • 就労継続支援: 福祉的なサポートのある環境で働きながら工賃(給料)を得るサービスです。「A型」と「B型」の2種類があり、A型は事業所と雇用契約を結びますが、B型は雇用契約を結ばないため、より本人の体調やペースに合わせた柔軟な働き方が可能です。

 

解離性障害と向き合いながら働きたいあなたへ|就労継続支援B型事業所オリーブ

「一般企業はまだ不安」「まずは安心できる環境で、働くことに慣れたい」と感じているなら、就労継続支援B型事業所オリーブが力になれるかもしれません。

オリーブは、障害や心身の不調を抱える方が、雇用契約を結ばずにご自身のペースで作業に取り組める福祉事業所です。私たちは、解離性障害のつらさを理解し、あなたが安心して過ごせる「安全基地」となることを目指しています。

    • ストレスの少ない穏やかな環境: ノルマはなく、穏やかな雰囲気の中で、データ入力や軽作業、創作活動など、ご自身の興味や適性に合わせた作業に取り組めます。
    • あなたの「今」を尊重: 記憶が途切れても、体調が優れなくても、誰も責めません。週1日・1時間からの短時間利用も可能で、その日の状態に合わせて作業時間を調整できます。
    • いつでも相談できる支援員: 経験豊富な支援員が、仕事のことはもちろん、あなたの悩みや不安に寄り添い、医療機関や他の支援機関とも連携しながら、生活全体の安定をサポートします。
    • 確かな「居場所」がある安心感: 社会とのつながりを持てる「居場所」は、心の安定に大きく貢献します。オリーブでは、同じような悩みを抱える仲間と無理なく交流できる機会もあり、孤立感を和らげることができます。

 

治療と両立しながら社会参加への一歩を踏み出したいあなたを、オリーブは温かくお迎えします。まずは見学から、お気軽にご連絡ください。

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