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パニック障害と仕事|症状への対処法や無理なく働くためのポイントを解説

「通勤電車に乗るのが怖い」「会議中に発作が起きたらどうしよう」といった、目に見えない多くの困難との闘いが、パニック障害を抱えながら働くことには伴います。突然のパニック発作や、「また発作が起きるかもしれない」という強い不安(予期不安)は、仕事のパフォーマンスに直接影響し、職場での人間関係やキャリアに深刻な悩みをもたらすことがあります。しかし、パニック障害だからといって、働くことを諦める必要は全くありません。病気の特性を正しく理解し、適切な対処法と周りのサポートを得ることで、症状と上手く付き合いながら、自分らしく働き続けることは十分に可能です。この記事では、パニック障害が仕事に与える具体的な影響から、仕事を続けるための対処法、そして無理なく働ける仕事探しのヒントまで、詳しく解説します。さらに、いざという時に頼りになる経済的な支援制度や、専門の相談機関についてもご紹介します。あなたの「働きづらさ」を、具体的な知識と工夫で「働きやすさ」に変えていきましょう。
パニック障害が仕事に与える影響|3つの主な症状と困りごと
パニック障害の「パニック発作」「予期不安」「広場恐怖」という3つの主な症状は、仕事の様々な場面で困難となって現れます。
① パニック発作:突然の強い恐怖と身体症状
パニック発作は、強い恐怖感や不快感を伴い、動悸、息苦しさ、めまい、吐き気といった身体症状が突然現れる状態です。特に、仕事に関連する以下のような状況は、発作の引き金となりやすいと言われています。
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- 通勤中の満員電車やバス:「すぐに降りられない」「逃げ場がない」という閉塞感が、強い不安を引き起こします。
- 会議やプレゼンテーション:大勢の人の前で話すことへの緊張感や、注目を浴びているというプレッシャーが発作を誘発することがあります。
- エレベーターやトンネル:閉鎖された空間への恐怖から、動悸や息苦しさを感じることがあります。
- 上司からの叱責や、重要な仕事のプレッシャー:強いストレスや緊張が、自律神経を乱し、発作につながることがあります。
仕事中に発作を経験すると、「周りに迷惑をかけてしまった」「みっともない姿を見られた」という気持ちから、職場に居づらさを感じてしまうことも少なくありません。
② 予期不安:「また発作が起きるのでは」という恐怖
一度でも職場で発作を経験すると、「また会議中に発作が起きたらどうしよう」「次のプレゼンは大丈夫だろうか」という強い予期不安に苛まれるようになります。この「恐怖を恐れる気持ち」は、常に心に大きな負担をかけ、仕事への集中力を奪います。常に自分の体調にばかり意識が向き、本来の業務に能力を発揮できなくなってしまいます。また、予期不安から、重要な会議や出張などを避けるようになり、仕事の機会を失ってしまうことにもつながります。
③ 広場恐怖:苦手な場所を避けることによる支障
予期不安が強まると、発作が起きそうな場所や状況を避ける「広場恐怖」の症状が現れ、仕事に直接的な支障をきたします。
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- 特定の電車やバスに乗れず、通勤に倍以上の時間がかかる、あるいは通勤できなくなる。
- 営業や出張など、会社の外に出る業務が困難になる。
- 会食や懇親会など、人が多く集まる場所に参加できず、社内でのコミュニケーションが取りづらくなる。
- 美容院や歯医者に行けず、社会人としての身だしなみや健康管理に影響が出る。
このように、回避行動がエスカレートすることで、任される仕事の範囲が狭まったり、昇進の機会を逃したりと、キャリア形成に大きな影響を与えてしまうことがあります。
パニック障害と付き合いながら仕事を続けるための対処法
パニック障害の症状を抱えながらも、仕事を続けるためには、セルフケアと周囲の理解を得るための工夫が不可欠です。
対処法1:まずは専門医による適切な治療を受ける
何よりもまず、精神科や心療内科といった専門の医療機関で、適切な治療を受けることが大前提です。パニック障害は、薬物療法や精神療法(認知行動療法など)によって、症状を大きく改善できる病気です。医師の指導のもとで治療を続け、症状を安定させることが、働き続けるための土台となります。自己判断で治療を中断してしまうと、症状が悪化し、かえって仕事への影響が大きくなるため、絶対にやめましょう。
対処法2:生活リズムを整え、リラックスを心がける
不規則な生活や睡眠不足、疲労の蓄積は、パニック発作を引き起こしやすくします。毎日決まった時間に寝起きし、十分な睡眠時間を確保することを心がけましょう。また、自分なりのリラックス方法を見つけることも大切です。深呼吸や瞑想、音楽を聴く、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かるなど、日々の生活の中に、意識的に心と体を休ませる時間を取り入れましょう。カフェインやアルコールの過剰摂取は、不安を増強させることがあるため、控えるのが賢明です。
もし仕事中に発作が起きたら?その場でできること
発作の兆候を感じたら、安全な場所に移動し、ゆっくりとした呼吸を心がけましょう。息を吸うことよりも「ゆっくり長く吐く」ことを意識すると、副交感神経が働き、心身の興奮が収まりやすくなります。また、「これは病気の症状で、命に別状はない」「数分で収まる」と心の中で唱えることも、パニックを乗り越える助けになります。
対処法3:職場に相談し、必要な配慮(合理的配慮)を求める
勇気がいることかもしれませんが、信頼できる上司や人事担当者に、ご自身の病状について相談し、無理なく働けるような配慮を求めることも重要です。障害者雇用促進法では、企業に対して、障害のある従業員が働きやすいように「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。
<パニック障害に関する合理的配慮の例>
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- 通勤に関する配慮:時差出勤やフレックスタイム制度の利用を認め、満員電車を避けられるようにする、または在宅勤務(リモートワーク)を許可する。
- 業務に関する配慮:発作の引き金となりやすい業務(長時間の会議、出張、顧客対応など)を、一時的に他の業務に替えてもらう。
- 休憩に関する配慮:不安が強い時に、一時的に休憩できる場所(休憩室、保健室など)の利用を認めてもらう。
- 職場環境に関する配慮:発作が起きた際の対応(誰に連絡するかなど)を、事前に決めておく。
医師に相談し、必要な配慮について書かれた診断書や意見書を提出すると、よりスムーズに会社側の理解を得やすくなります。
職場の同僚や上司ができること
もし、職場の同僚がパニック発作を起こしたら、周りの人は冷静に対応することが大切です。
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- 冷静に、安心させる言葉をかける:「大丈夫だよ」「ここは安全な場所だよ」と優しく声をかけ、一人ではないことを伝えます。
- 静かな場所へ誘導する:可能であれば、人目につかない会議室や休憩室など、静かで安心できる場所へ一緒に移動しましょう。
- ゆっくり呼吸するよう促す:「ゆっくり息を吐いてみよう」と一緒に呼吸のペースを合わせるように、穏やかに促します。
- 批判や詮索をしない:発作が収まった後、「なぜ?」「どうしたの?」と問い詰めたり、「気の持ちようだ」と精神論を言ったりすることは避けましょう。
ご本人が事前に希望する対応を伝えてくれている場合は、それに沿って行動することが何よりの助けになります。
休職や退職も選択肢|利用できる経済的な支援制度
どうしても症状がつらく、仕事を続けるのが困難な場合は、無理をせず、一度仕事から離れて治療に専念することも大切な選択です。
無理せず「休職」して治療に専念する
働きながら治療を続けることが、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。そんなときは、思い切って休職し、心と体を回復させることを最優先しましょう。経済的な不安があるかもしれませんが、後述する支援制度を活用することで、負担を軽減できます。
休職や退職時に利用できる支援制度一覧
休職や退職をする際に、経済的な不安を和らげてくれる公的な支援制度があります。
制度名称 | 制度の概要 |
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傷病手当金 | 会社の健康保険の被保険者が、病気で連続4日以上働けず、給与が出ない場合に、給与のおおよそ2/3が最長で通算1年6ヶ月支給される。 |
自立支援医療制度 | パニック障害を含む精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担が、原則1割に軽減される制度。 |
精神障害者保健福祉手帳 | 精神障害により、長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある場合に交付される手帳。税金の控除や公共料金の割引などが受けられる。 |
障害年金 | 病気やケガで生活や仕事が制限される場合に支給される公的な年金。パニック障害の症状が重く、生活に大きな支障がある場合に支給対象となる可能性がある。 |
生活保護 | あらゆる支援制度を活用してもなお生活が困窮する場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障する制度。 |
パニック障害の方の仕事探しと相談できる支援機関
治療を経て、再就職や転職を考える際には、一人で活動するのではなく、専門家のサポートを積極的に活用しましょう。
仕事探しのポイント:不安を感じにくい環境を選ぶ
再発を防ぎ、長く働き続けるためには、ご自身の特性に合った職場環境を選ぶことが何よりも重要です。
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- 通勤の負担が少ない:在宅勤務が可能な仕事、自転車や徒歩で通える範囲の職場。
- 業務内容が明確:自分のペースで進められる、マニュアルが整備された定型的な業務。
- 対人ストレスが少ない:電話対応や接客が少ない、少人数の落ち着いた職場。
- いざという時に休みやすい:休暇制度が整っており、個人の事情に理解のある社風。
ハローワークや就労支援機関などを活用する
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- ハローワーク:障害のある方向けの専門窓口があり、病気に理解のある求人を紹介してくれたり、応募書類の添削や面接練習などのサポートを受けられたりします。
- 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ):仕事だけでなく、生活面も含めた総合的な相談ができます。
- 就労移行支援事業所:一般企業への就職を目指すための、スキルアップやコミュニケーションの訓練を受けられます。
- 就労継続支援事業所:一般企業での就労が難しい場合に、支援を受けながら働き、工賃を得ることができます。
パニック障害の悩みや働きづらさは、就労継続支援B型事業所オリーブへ
パニック障害を抱えながら、毎日満員電車で通勤し、プレッシャーのかかる職場で働き続けることは、想像を絶する困難を伴います。「症状への理解が得られず、働き続けるのがつらい」「まずは安心して通える場所から、社会復帰を始めたい」そんなふうに感じていませんか。私たち**「就労継続支援B型事業所オリーブ」**は、パニック障害などの理由で「働きづらさ」を感じている方が、自分のペースで、安心して働くための準備ができる場所です。オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、障害のある方の「働きたい」という気持ちに寄り添っています。雇用契約を結ばずに利用できるB型事業所なので、あなたの不安や体調を第一に考えた働き方が可能です。
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- ラッシュを避けた、自分のペースでの通所
- 体調が悪い時は、気兼ねなく休める安心感
- 在宅での作業という選択肢
- 専門の支援員がいるので、不安なことをすぐに相談できる環境
こうした環境で、まずは「決まった時間に、決まった場所へ行く」という自信を取り戻し、働くことへの不安を少しずつ解消していくことができます。パニック障害と上手く付き合いながら、あなたらしい働き方を見つけるための一歩を、オリーブで踏み出してみませんか。