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パーソナリティ障害の方の仕事の悩みとは?続けるための工夫や適職探しのヒントを解説

「職場での人間関係がいつも上手くいかない」「感情の波が激しくて、仕事に集中できない」「ささいなミスを過剰に気にしてしまい、仕事が進まない」

パーソナリティ障害のある方は、その特性から、仕事の場面でこうした根深い悩みを抱え、転職を繰り返したり、働くこと自体に困難を感じたりすることが少なくありません。「自分の性格が悪いからだ」と、一人で自分を責めていませんか。

その「働きづらさ」は、あなたの努力不足や性格の問題ではありません。障害の特性を正しく理解し、あなたに合った工夫と環境を見つけることで、安定して働き続ける道は必ず開けます。

この記事では、パーソナリティ障害が仕事に与える影響や具体的な悩みを整理し、今の仕事を続けるための工夫や、あなたに合った「適職」探しのヒントを詳しく解説します。さらに、利用できる支援制度や専門機関についてもご紹介します。あなたの「働きづらさ」を「働きやすさ」に変えるための第一歩を、ここから一緒に踏み出しましょう。

パーソナリティ障害が仕事に与える影響|主な悩み

パーソナリティ障害の特性である「考え方や感情、対人関係のパターンの著しい偏り」は、多くの人が関わる職場という環境において、様々な困難となって現れます。

悩み1:対人関係のトラブルや孤立

パーソナリティ障害のある方が抱える悩みの多くは、対人関係に起因します。

不信感と孤立(A群など)
他人への強い不信感から、同僚を過度に警戒したり、チームでの共同作業を避けたりして、職場で孤立してしまうことがあります。「報告・連絡・相談」が苦手で、必要な情報共有ができずにトラブルになることもあります。

 

激しい対立や依存(B群など)
「理想化」と「こき下ろし」を繰り返し、特定の上司や同僚に依存したり、逆に激しく攻撃したりして、周囲を巻き込むトラブルに発展することがあります。衝動的に退職を決めてしまうケースも少なくありません。

 

過度な遠慮と回避(C群など)
批判や拒絶を極度に恐れるため、自分の意見が言えなかったり、新しい仕事や責任のある立場を避けたりして、正当な評価を得られないことがあります。

 

こうした対人関係のパターンは、本人に悪気がない場合がほとんどですが、周りからは「扱いにくい」「何を考えているか分からない」と誤解され、人間関係の悪化や孤立を招いてしまいます。

悩み2:感情の不安定さによる業務への支障

特にB群(境界性パーソナリティ障害など)に見られる特徴ですが、感情のコントロールが難しく、その波が仕事のパフォーマンスに直接影響します。ささいなことで激しく落ち込んだり、怒りを爆発させたりして、仕事が手につかなくなります。また、慢性的な空虚感から、仕事への意欲やモチベーションを維持することが困難な場合もあります。

悩み3:強い不安やこだわりによる業務効率の低下

特にC群(回避性、強迫性パーソナリティ障害など)に見られる特徴です。

不安による確認作業の繰り返し
「失敗したらどうしよう」という強い不安から、何度も同じ箇所を確認し直したり、一つの作業に異常に時間がかかったりして、全体の業務効率が低下します。

 

完璧主義による非効率
細部にこだわりすぎるあまり、物事の優先順位がつけられず、締め切りに間に合わなくなるといった事態を招きます。

 

指示待ちと決断の遅れ
自分で判断することへの恐怖心から、常に上司の指示を待ったり、決断を先延ばしにしたりして、業務を停滞させてしまうことがあります。

 

パーソナリティ障害と付き合いながら仕事を続けるための工夫

今の職場で働き続けるためには、障害の特性と上手く付き合い、困難を軽減するための工夫が不可欠です。

工夫1:専門家による治療を継続する

パーソナリティ障害の特性をご自身一人の力でコントロールするのは、非常に困難です。精神科や心療内科での精神療法(カウンセリング)などを通じて、専門家と一緒にご自身の思考や行動のパターンを見つめ直し、より良い対処法を学んでいくことが、安定した就労の基盤となります。定期的な通院は、ご自身を客観的に見つめる大切な機会です。

工夫2:自分の障害特性を理解し、職場に伝える(セルフアドボカシー)

まずは、ご自身が「自分はどんな時に、どんなことで困りやすいのか」という障害特性を理解することが第一歩です。その上で、信頼できる上司や人事担当者に、その特性と、どんな配慮があれば働きやすくなるのかを具体的に伝えてみましょう。これを「セルフアドボカシー(自己権利擁護)」と言います。

例えば、以下のように伝えます。

    • 「口頭での指示は、一度にたくさん受けると混乱してしまうので、メモを取る時間をいただけますか」
    • 「不安が強いので、業務の優先順位を一緒に確認していただけると助かります」
    • 「感情の波が激しい時は、少しだけ一人でクールダウンする時間をいただけると、落ち着いて仕事に戻れます」

 

全てを受け入れてもらえるとは限りませんが、あなたの困難を伝えることで、職場側の理解が深まり、具体的な配慮(合理的配慮)を得られるきっかけになります。

工夫3:十分な睡眠などセルフケアを心がける

心身のコンディションを整えることは、感情の安定や衝動性のコントロールに直結します。特に、十分な睡眠は、脳を休息させ、感情のコントロール機能を正常に保つために不可欠です。夜更かしを避け、毎日決まった時間に寝起きする習慣をつけましょう。また、バランスの取れた食事や、ウォーキングなどの軽い運動、リラックスできる趣味の時間なども、ストレスを軽減し、心を安定させる上で重要です。

工夫4:一人で抱えず、相談できる相手を見つける

仕事での悩みや人間関係のストレスを、一人で抱え込まないことが大切です。職場の上司や同僚だけでなく、ご家族や友人、あるいは主治医やカウンセラー、後述する支援機関のスタッフなど、あなたの状況を理解し、安心して話せる相談相手を複数見つけておきましょう。「困ったときには、あの人に相談しよう」と思える存在がいるだけで、心の大きな支えとなります。

パーソナリティ障害の方の適職探しのヒント

今の職場環境がどうしても合わない場合、ご自身に合った環境を求めて転職するのも、前向きな選択肢です。ここでは、適職を探す上でのヒントをご紹介します。

ヒント1:対人関係のストレスが少ない仕事

他者との頻繁なコミュニケーションや、不特定多数の人と接する仕事は、ストレスが大きくなる傾向があります。

仕事の例
データ入力、プログラマー、Webライター、工場のライン作業、ピッキング、清掃、研究職、伝統工芸の職人など、個人で黙々と進められる作業が多い仕事。

 

ヒント2:自分のペースで進められる仕事

感情の波があり、日によってパフォーマンスが変動しやすい特性を考えると、納期やノルマに厳しく追われる仕事より、裁量権が大きく、自分のペースで進めやすい仕事が向いています。

仕事の例
フリーランス(Webデザイナー、イラストレーターなど)、事務職(中でもルーティンワーク中心のもの)、図書館の司書、倉庫管理など、比較的、突発的な業務が少ない仕事。

 

ヒント3:ルールやマニュアルが明確な仕事

曖昧な指示や、「空気を読んで」対応することが苦手な特性があるため、やるべきことや手順が明確に定められている仕事は、安心して取り組みやすいでしょう。

仕事の例
品質管理、校正・校閲、経理、総務(定型業務)、公務員(事務職)など、ルールや基準に沿って、正確さが求められる仕事。

 

休職や退職も選択肢|利用できる経済的な支援制度

どうしても仕事が続けられないほどつらいときは、無理をせず、一度仕事から離れて治療に専念することも、大切な選択です。

無理せず休職し、治療に専念する

心身ともに疲れきっている状態で、働きながら治療を続けるのは非常に困難です。そんなときは、思い切って休職し、心と体を回復させることを最優先しましょう。復帰後のことは、まず元気になってから考えれば大丈夫です。

休職や退職時に利用できる支援制度

休職や退職に伴う経済的な不安を和らげるため、以下のような公的な支援制度があります。

傷病手当金
会社の健康保険に加入している方が、病気を理由に連続4日以上仕事を休み、給与が支払われない場合に、給与のおおよそ3分の2が支給される制度です。休職中の大きな支えとなります。

 

失業保険(雇用保険の基本手当)
退職後、次の仕事を探す間の生活を支えるための給付金です。パーソナリティ障害が原因で、働くことが困難になり退職した場合、「正当な理由のある自己都合退職」として、給付制限なく手当を受けられる可能性があります。

 

自立支援医療(精神通院医療)
精神科への通院にかかる医療費の自己負担額を、通常3割のところを1割に軽減できる制度です。

 

精神障害者保健福祉手帳
症状の程度によっては交付対象となり、税金の控除や公共料金の割引、障害者雇用枠での就職活動が可能になります。

 

ご家族や周囲の方ができること

ご本人がパーソナリティ障害の特性に苦しんでいるとき、ご家族や職場の同僚など、周りの人の関わり方が大きな影響を与えます。

病気の特性として理解する
まずは、本人の言動が「性格が悪い」のではなく、病気の特性によるものであると理解しましょう。

 

感情に巻き込まれない(境界線を引く)
本人が感情的になったとき、一緒になって感情的になるのは避けましょう。「あなたの気持ちは分かった。でも、その要求には応えられない」と、冷静に、しかし穏やかに一貫した態度をとることが、お互いを守ります。

 

専門家への相談を勧める
本人が一人で抱え込んでいる場合は、一緒に医療機関を探したり、受診を勧めたりすることも重要なサポートです。

 

職場復帰や就職をサポートする専門機関

一人での就職活動は困難が伴います。積極的に専門機関を頼り、サポートを受けながら進めましょう。

ハローワーク
障害のある方向けの専門窓口があり、パーソナリティ障害の特性に理解のある職員が、仕事探しの相談や求人紹介を行ってくれます。

 

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
仕事のことだけでなく、生活習慣や金銭管理といった、働く土台となる生活面の相談にも乗ってくれる身近な支援機関です。

 

就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指し、職業訓練やコミュニケーションスキルの向上、職場探しなどをサポートしてくれます。

 

就労継続支援事業所
すぐに一般企業で働くのが難しい場合に、支援の整った環境で働きながら、工賃を得ることができる福祉サービスです。

 

パーソナリティ障害と向き合いながら働く準備をしませんか|就労継続支援B型事業所オリーブ

パーソナリティ障害と向き合いながら、安定して働き続けるためには、ご自身の特性に合った環境で、働くための「準備」や「練習」をすることが非常に有効です。

私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」 は、まさにその 「働く準備」をするための場所です。オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、パーソナリティ障害をはじめ、様々な生きづらさを抱える方の「働きたい」という気持ちを、その人らしくサポートしています。

オリーブのようなB型事業所は、ルールやマニュアルが明確で、自分のペースで進められる作業が多く、対人関係のストレスが少ないという、パーソナリティ障害のある方が安心して働きやすい環境が整っています。

    • 支援員がいるので、困った時にすぐに相談できる
    • 対人トラブルが起きても、スタッフが間に入ってくれる
    • 週1日・数時間から、自分の体調に合わせて通える
    • 同じような悩みを持つ仲間と、安心できる距離感で関われる

 

こうした環境で、まずは「毎日通う」「決まった時間作業する」という習慣を身につけ、働くことへの自信を少しずつ育んでいきませんか。あなたの「働きづらさ」に寄り添い、次のステップを一緒に考えるパートナーとして、オリーブはあなたをお待ちしています。

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