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双極性障害(双極症)の方が仕事を続けるポイントは?適職探しのコツも解説

「仕事が絶好調で、大きな契約を次々と取ってきたかと思えば、次の月にはベッドから起き上がれず、欠勤を繰り返してしまう…」。双極性障害(双極症)の特性である気分の大きな波は、仕事のパフォーマンスに直接影響し、ご本人のキャリアや自信を大きく揺るがします。「このまま今の仕事を続けられるだろうか」「自分に合った仕事なんてあるのだろうか」と、一人で悩みを抱えていませんか?
双極性障害は、適切な治療を受け、病気と上手に付き合っていくためのポイントを押さえることで、仕事を継続し、安定した社会生活を送ることが十分に可能です。この記事では、双極性障害の方が仕事を続けるための具体的な4つのポイントから、自分に合った仕事を見つけるためのヒント、そして利用できる支援機関まで、詳しく解説していきます。
双極性障害が仕事に与える影響|躁状態・うつ状態での困りごと
双極性障害が仕事に与える影響は、気分が高揚する「躁(そう)状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」のそれぞれで大きく異なります。この両極端な状態を行き来することで、周囲からの評価が安定せず、人間関係のトラブルや信用の失墜につながりやすいのが、仕事における大きな悩みとなります。
躁状態のときに見られる仕事上の悩み
躁状態のときは、エネルギーに満ち溢れ、本人も周囲も「絶好調」だと感じることがあります。しかし、その言動は客観的に見ると度を越しており、後々のトラブルの原因となることが少なくありません。
躁状態での仕事上の困りごとの例
- 過剰な自信と活動性
- 「自分なら何でもできる」という万能感から、自分の能力を過信し、無謀な計画を立てたり、一人で大量の仕事を抱え込んだりする。
- 判断力の低下と衝動性
- 会議で根拠のない壮大なアイデアを延々と語ったり、重要な契約を独断で結んでしまったりする。また、会社の経費を使い込んだり、高額な備品を購入したりすることもある。
- 注意散漫・多弁
- 一つのことに集中できず、次から次へと別の仕事に手をつけるため、結局どれも中途半端に終わる。また、人の話を遮って一方的に話し続け、会議を長引かせる。
- 対人関係のトラブル
- 些細なことで同僚や上司に攻撃的になったり、過度に馴れ馴れしく接したりして、人間関係を悪化させる。
躁状態のときの言動は、本人の意思でコントロールできるものではありません。しかし、その結果として職場の信用を失い、うつ状態になったときに「あの時の自分はなんてことをしてしまったんだ」と激しい自己嫌悪に陥ることがあります。
うつ状態のときに見られる仕事上の悩み
躁状態の後には、多くの場合、深いエネルギーの枯渇状態である「うつ状態」がやってきます。躁状態のときとは一転して、心と体のすべてにブレーキがかかったような状態になります。
うつ状態での仕事上の困りごとの例
- 意欲・気力の低下
- 朝、ベッドから起き上がれず、会社に行くことができない。身だしなみを整えたり、入浴したりすることさえ億劫になる。
- 思考力・集中力の低下
- 頭が働かず、簡単な指示が理解できなかったり、文章が読めなくなったりする。仕事の効率が著しく低下し、普段ならしないようなミスを連発する。
- 判断力の欠如
- 簡単な業務の優先順位もつけられなくなり、何から手をつければいいか分からず、ただ時間だけが過ぎていく。
- 身体的な不調
- 原因不明の頭痛やめまい、倦怠感が続き、仕事を続けるのが困難になる。
- 欠勤・休職
- 症状が悪化し、出社できなくなり、長期の欠勤や休職に至ることがある。
このように、躁状態とうつ状態を繰り返すことで、安定したパフォーマンスを維持することが難しくなり、キャリア形成に大きな影響を及ぼします。
双極性障害と付き合いながら仕事を続けるための4つのポイント
気分の波に振り回されず、安定して仕事を続けるためには、病気の特性を理解し、適切に対処していくことが不可欠です。ここでは、そのための重要な4つのポイントを紹介します。
ポイント1:主治医と相談しながら治療を継続する
双極性障害と付き合っていく上で、最も重要なのが治療の継続です。特に、気分の波を小さくし、安定させるための「気分安定薬」を中心とした薬物療法は、仕事を続ける上での土台となります。症状が落ち着いている(寛解)時期でも、自己判断で薬の量を減らしたり、服用を中止したりすると、高い確率で再発し、以前よりも症状が重くなることがあります。調子が良いときこそ、その安定した状態を維持するために治療が必要なのだと理解しましょう。定期的に通院し、現在の心身の状態や仕事の状況などを主治医に報告し、相談することが大切です。
ポイント2:生活リズムを整え、気分の波を安定させる
双極性障害の気分の波は、生活リズムの乱れによって大きく影響を受けます。不規則な生活は、気分の波を不安定にする大きな要因です。逆に言えば、生活リズムを一定に保つことは、薬物療法と同じくらい重要な「治療」の一つと言えます。
- 起床・就寝時間を一定にする
- 休日でも平日と同じ時間に起き、同じ時間に寝ることを心がけましょう。特に、朝、決まった時間に起きて太陽の光を浴びることは、体内時計をリセットし、気分の安定に非常に効果的です。徹夜や夜更かしは絶対に避けましょう。
- 適度な運動を習慣にする
- ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動は、ストレス解消や睡眠の質の向上に役立ちます。ただし、躁状態のときに過度な運動にのめり込まないよう注意が必要です。
- バランスの取れた食事を摂る
- 1日3食、決まった時間に食事を摂ることも、生活リズムを整える上で重要です。
ポイント3:自分の体調変化のサインを把握し、早めに対処する
気分の波が本格的に大きくなる前には、多くの場合、何らかの「予兆(サイン)」が現れます。この初期のサインにいち早く気づき、早めに対処することが、大きな波を防ぐための鍵となります。
躁状態・うつ状態の予兆の例
- 躁状態のサイン
- 睡眠時間が短くても平気になる、口数が増える、次々とアイデアが浮かぶ、お金遣いが荒くなる、人付き合いが活発になる など
- うつ状態のサイン
- 朝、起きるのがつらくなる、寝つきが悪くなる・途中で目が覚める、食事が美味しくない、口数が減る、好きなことに興味がなくなる など
自分自身でこうしたサインを把握するために、日々の気分や睡眠時間、活動量などを記録する「気分グラフ」などをつけることが推奨されます。また、ご家族や信頼できるパートナーに協力してもらい、「最近、少し話しすぎじゃない?」など、客観的な変化を指摘してもらうことも有効です。サインに気づいたら、無理をせず、意識的に休息をとる、仕事のペースを落とす、早めに主治医に相談するといった対策を講じましょう。
ポイント4:職場の理解を得て、無理のない働き方を相談する(合理的配慮)
双極性障害と付き合いながら長く働くためには、職場からの理解と配慮を得ることが非常に重要です。病気について職場に伝える(オープン就労)ことで、以下のような「合理的配慮」を受けやすくなるというメリットがあります。
合理的配慮の具体例
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- 勤務時間を調整してもらう(時短勤務、フレックスタイム制の活用など)
- 業務量の変動が少ない部署への配置転換をしてもらう
- 大きなプレッシャーのかかる業務や、頻繁な出張を免除してもらう
- 定期的な通院のために、休暇を取得しやすくしてもらう
- 体調が悪いときに、短時間の休憩や休息をとれる場所を確保してもらう
双極性障害の方の適職探しのヒント
「今の仕事がどうしても合わない」「これから仕事を探したい」という方のために、自分に合った仕事を見つけるためのヒントをいくつか紹介します。
ヒント1:自己分析で得意・不得意やストレス要因を理解する
自分に合った仕事を探す第一歩は、自分自身を深く理解することです。これまでの経験を振り返り、躁状態・うつ状態それぞれのときの自分の行動パターンや、どういう状況でストレスを感じ、気分の波が起きやすいのかを分析してみましょう。
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- 得意なこと、能力を発揮できた場面は? (例:一人で集中して作業するのは得意、アイデアを出すのは好き)
- 苦手なこと、失敗しやすかった場面は? (例:急な予定変更に対応するのが苦手、マルチタスクは混乱する)
- どういう職場環境だとストレスを感じるか? (例:ノルマが厳しい、人間関係が複雑、騒がしい場所)
これらの自己分析を通じて、自分が仕事に求める条件や、避けるべき環境を明確にしていくことが、ミスマッチを防ぐことにつながります。
ヒント2:勤務時間や業務内容に柔軟性のある仕事を選ぶ
双極性障害の特性を考えると、一般的に以下のような特徴を持つ仕事や職場環境が、比較的働きやすいと言えるでしょう。
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- 勤務時間や休日が安定している、または柔軟に調整できる
- 業務量の変動が少なく、自分のペースで仕事を進めやすい
- ノルマや厳しい納期に追われることが少ない
- 対人関係のストレスが比較的少ない
- シフト制勤務や交代勤務、夜勤がない
例えば、事務職、データ入力、プログラマー、Webデザイナー、研究職、軽作業、清掃など、個人の裁量で進められる部分が多い仕事や、ルーティンワークが中心の仕事が選択肢として考えられます。
ヒント3:障害者雇用で働くという選択肢
一般企業の採用枠(一般雇用)で働くことに困難を感じる場合は、「障害者雇用」という働き方も有力な選択肢です。障害者雇用とは、企業が障害者手帳を持つ人を対象に設けている採用枠のことです。病気や障害に対する理解や配慮を得やすく、安定して長く働きやすい環境が整っています。
休職や退職も選択肢|利用できる経済的な支援制度
どうしても治療と仕事の両立が困難な場合、無理をし続けるのではなく、一度仕事から離れることも、自分を守るための大切な選択肢です。
制度名称 | 制度の概要 |
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傷病手当金 | 在職中に会社の健康保険に加入している方が、病気で休職し給与が支払われない場合に利用できる制度。最長で通算1年6ヶ月間、給与のおおむね3分の2が支給されます。 |
自立支援医療制度 | 双極性障害の治療のための通院医療費の自己負担額を、通常3割のところを1割に軽減できる制度です。 |
精神障害者保健福祉手帳 | 症状が一定の基準を満たす場合に交付を受けられます。税金の控除や公共料金の割引、障害者雇用枠での就職活動など、様々な福祉サービスを利用できます。 |
障害年金 | 病気や障害によって生活や仕事が制限される場合に受給できる公的な年金です。 |
仕事の悩みを相談できる就労支援機関
- ハローワーク
- 全国のハローワークには、障害のある方の就職を専門にサポートする「専門援助窓口」が設置されています。
- 地域障害者職業センター
- 各都道府県に設置されており、より専門的な支援を提供しています。職場復帰支援(リワーク)も行っています。
- 障害者就業・生活支援センター
- 仕事の悩みだけでなく、日常生活の困りごとまで、一体的に相談できる身近な支援機関です。
- 就労移行支援・就労継続支援事業所
- 障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。一般企業への就職を目指す訓練や、サポートのある環境で働く機会を提供します。
双極性障害と向き合いながら働く準備をしませんか|就労継続支援B型事業所オリーブ
「すぐに一般企業で働くのは不安」「まずは安定した生活リズムを取り戻したい」「安心して働ける場所で、働くことへの自信をつけたい」…もしあなたがそう考えているなら、就労継続支援B型事業所オリーブで、働くための準備を始めるという選択肢があります。
オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、双極性障害などの障害のある方が、ご自身のペースを大切にしながら働ける場所を提供しています。雇用契約を結ばないB型事業所なので、体力や体調に合わせて「週に1日、1日1時間」といった短時間の利用からスタートできます。
データ入力や軽作業など、自分のペースで進められる仕事を通じて、まずは規則正しい生活習慣を身につけ、安定して通所することを目指します。経験豊富なスタッフが、あなたの体調の変化や不安な気持ちに寄り添い、主治医とも連携しながら、あなたが安心して力を発揮できるようサポートします。安定して長く働くための土台作りとして、まずはオリーブを見学してみませんか。