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統合失調症で仕事がつらい方へ|向いている仕事の探し方や支援機関を解説

「幻聴や妄想で仕事に集中できない」「意欲がわかず疲れやすい」など、統合失調症を抱えながら働くことには、目に見えない症状との闘いが伴います。周囲の誤解から仕事が続かず、悩んでいる方も少なくないでしょう。しかし、統合失調症は適切な治療を受け、自身の特性に合った環境を選ぶことで、症状をコントロールしながら安定して働き続けることが可能です。この記事では、統合失調症の症状が仕事に与える影響、仕事を続けるためのポイント、ご自身に合った仕事の探し方、活用できる支援機関までを深く掘り下げて解説します。一人で抱え込まず、あなたらしい働き方を見つけるための一歩を踏み出しましょう。
統合失調症が仕事に与える影響 3つの主な症状
統合失調症の症状は「陽性症状」「陰性症状」「認知機能障害」の3つに大別され、それぞれが仕事の様々な場面で困難を引き起こす可能性があります。
陽性症状:幻覚や妄想による対人関係の悩み
陽性症状とは、健康な時にはなかった状態が新たに出現する症状です。代表的なものに「幻覚」と「妄想」があります。幻覚は、現実にはないものをあるように感じる症状で、特に悪口や命令などが聞こえる「幻聴」が多く見られます。妄想は、事実とは異なることを確信してしまう症状です。
仕事での具体的な困りごと
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- 集中力の阻害:仕事中に「お前はダメだ」といった幻聴が聞こえ、作業に集中できなくなる。
- 対人関係の悪化:「職場の皆が悪口を言っている」「誰かに監視されている」といった被害妄想から同僚を避け、孤立してしまう。
- コミュニケーション不全:上司や同僚との会話中に、話の内容とは無関係な考えが次々と浮かぶ「思考の連合弛緩」が起こり、会話が成り立たなくなる。
陰性症状:意欲がわかず疲れやすい
陰性症状とは、これまで持っていた感情や意欲などが失われたり、乏しくなったりする症状です。感情の平板化(喜怒哀楽の表現が乏しくなり、表情が硬くなる)、意欲の低下(何事にも興味や関心がわかず、自発的な行動が難しくなる)、思考の貧困(会話が少なくなる、または内容が乏しくなる)といった症状が見られます。これらの症状は、周囲から「やる気がない」「怠けている」と誤解されやすい傾向があります。
仕事での具体的な困りごと
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- 継続勤務の困難:非常に疲れやすくなるため、週5日・フルタイムで働き続けることが体力的に難しい。
- 業務遂行の遅れ:意欲がわかず、仕事に取り掛かるまでに時間がかかったり、作業ペースが落ちたりする。
- 人間関係の壁:感情表現が乏しくなるため、職場で「何を考えているかわからない」と敬遠され、うまく関係を築けない。
認知機能障害:記憶力や集中力の低下によるミス
認知機能障害は、記憶力、注意力、判断力といった知的な機能が低下する症状です。陽性症状や陰性症状に比べて目立ちにくいため見過ごされがちですが、仕事に大きく影響します。具体的には、記憶力の低下(新しい仕事の手順を覚えられない、指示をすぐに忘れてしまう)、注意・集中力の低下(一つの作業に集中し続けることが難しく、ミスが増える)、遂行機能障害(仕事の段取りを考え、計画的に進めることが苦手になる)などがあります。
仕事での具体的な困りごと
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- ケアレスミスの多発:集中力が続かず、単純な入力ミスや確認漏れが増える。
- 指示理解の困難:一度に複数の指示を受けると混乱し、何をすべきか分からなくなる。
- 業務効率の低下:物事の優先順位をつけたり、計画的に作業を進めたりすることができず、納期に間に合わなくなる。
統合失調症の方が仕事を続けるためのポイント
症状と付き合いながら仕事を続けるためには、治療の継続を土台とし、セルフケアや周囲のサポートを得ることが重要です。
主治医と相談し治療を継続する
最も重要なのは、主治医に相談し治療を継続することです。統合失調症は、薬物療法を中心とした継続的な治療によって症状を安定させ、再発を防ぐことが可能な病気です。自己判断で服薬を中断すると、高い確率で再発し、回復が遅れる危険性があります。定期的に通院し、病状や薬の副作用、仕事の状況などを正直に報告・相談することが、安定した職業生活の土台です。
再発のサイン(前兆)を把握し早めに対処する
統合失調症は再発しやすい病気ですが、多くの場合、本格的な再発の前に「再発のサイン(前兆)」が現れます。サインは人それぞれですが、例として以下のようなものがあります。
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- 不眠や過眠
- イライラや焦り
- 音や光への過敏さ
- 不安感の増大
- 人の視線が気になる
主治医や家族と協力し、自身の再発サインをあらかじめ把握しておきましょう。サインに気づいたら無理をせず、すぐに主治医に相談して休息を取る、薬を調整してもらうといった早期対処が、再発を防ぎ仕事を長く続けるための鍵となります。
ストレスと上手に付き合うための工夫
症状の安定のためには、日常生活や職場で感じるストレスを管理することが不可欠です。ご自身に合ったストレス対処法(ストレスコーピング)を見つけ、実践しましょう。
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- 休息を意識する:疲れを感じたら、短時間でも休憩する。休日はしっかり心と体を休める。
- 相談できる相手を持つ:家族、友人、主治医、支援者など、困った時に話を聞いてもらえる相手を見つけておく。
- リフレッシュ方法を見つける:散歩や音楽鑑賞、軽い運動など、気分転換になる活動を生活に取り入れる。
- 生活リズムを整える:睡眠時間や食事の時間を一定にし、体調の波を小さくする。
自分を責めすぎず、ストレスサインに気づいたら早めにセルフケアを行うことが、安定した就労につながります。
職場に相談し合理的配慮を求める
一人で困難を抱え込まず、職場に相談して必要な配慮を得ることも大切です。改正障害者雇用促進法により、事業主は障害のある従業員に対して「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。
【統合失調症に関する合理的配慮の例】
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- 業務内容:複数の作業を同時に行うのではなく、一つの作業に集中できる業務への変更。
- 指示方法:口頭だけでなく、マニュアルやメモなど文字による指示の併用。
- 環境:幻聴などで集中しにくい場合、パーテーションのある静かな座席への変更や、耳栓の使用許可。
- 勤務時間:通院のための休暇取得や、体調に合わせた時短勤務、休憩の柔軟な取得。
- コミュニケーション:上司と定期的に面談する時間を設け、困っていることを相談しやすくする。
自分に合った仕事の探し方 5つのステップ
症状が安定し、新たに仕事を探す際には、焦らず、段階を踏んで進めることが大切です。
ステップ1:まずは体調を安定させる
仕事を探し始める前に、何よりもまず心身の体調を安定させることを最優先してください。主治医と相談し、日中の活動時間や生活リズムが安定しているかを確認しましょう。
ステップ2:自己分析で得意・不得意を整理する
次に、主治医や支援者などと協力しながら、ご自身の障害特性や、得意・不得意を客観的に整理してみましょう。この自己分析が、ご自身に合った仕事を見つけるための指針となります。
ステップ3:ストレスの少ない働き方を検討する
自己分析の結果をもとに、どのような仕事や働き方が自分に合っているかを検討します。統合失調症のある方には、一般的にストレスが少なく、自分のペースで進められる定型的な仕事が向いています。
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- 軽作業(検品、梱包、組み立てなど)
- 清掃業務
- 事務補助(データ入力、ファイリングなど)
- 倉庫内作業(ピッキングなど)
フルタイムだけでなく、短時間勤務や在宅勤務といった選択肢も視野に入れ、無理のない働き方を探しましょう。
ステップ4:オープン就労かクローズ就労かを選択する
障害に関する情報を勤務先に開示して働く「オープン就労」と、開示せずに働く「クローズ就労」のどちらを選ぶかは、重要な選択です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の状況に合わせて判断しましょう。
メリット | デメリット | |
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オープン就労 | ・症状や特性に応じた合理的配慮を受けやすい ・通院や体調不良への理解を得やすい ・障害者雇用枠で応募できる |
・クローズ就労に比べて求人数が少ない傾向がある ・障害に対する偏見を受ける可能性がゼロではない |
クローズ就労 | ・一般雇用枠のため求人が豊富で、職種の選択肢が広い ・障害を気にせず、他の社員と同じ条件で働ける |
・合理的配慮や業務上のサポートを求めにくい ・体調管理をすべて自己責任で行う必要がある ・症状が悪化した際に孤立しやすい |
どちらが良いかは一概には言えません。主治医や支援機関の担当者とよく相談し、慎重に決めることが大切です。
ステップ5:支援機関を活用する
仕事探しは一人で行う必要はありません。専門の支援機関を積極的に活用することが成功への近道です。
仕事探しをサポートする支援機関と制度
障害者手帳の取得と障害者雇用の活用
統合失調症と診断された場合、「精神障害者保健福祉手帳」を取得できる可能性があります。この手帳を取得すると、前述のオープン就労(障害者雇用枠)での就職活動が可能になります。障害のある方の就職活動は、以下の公的な支援機関で相談できます。
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- ハローワーク:障害のある方向けの専門窓口があり、障害者雇用の求人紹介や、就職に関する様々な相談ができます。
- 地域障害者職業センター:ハローワークと連携し、より専門的な職業評価や、職業準備支援、ジョブコーチによる職場定着支援などを行います。
- 障害者就業・生活支援センター:「なかぽつ」などの愛称で呼ばれ、仕事と生活の悩みを一体的に相談できる身近な支援機関です。
- 就労移行支援・就労継続支援事業所:障害福祉サービスの一環で、就労に関する訓練や働く場の提供を行います。
就労継続支援A型・B型の違い
就労継続支援には「A型」と「B型」の2種類があり、雇用契約の有無や対象者が異なります。
就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
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雇用契約 | あり | なし |
賃金 | 最低賃金が保障される給与 | 生産物に対する工賃(最低賃金の保障はない) |
対象者例 | ・就労経験があり、年齢や体力の面で一般企業での雇用が困難となった方 ・就労移行支援を利用したが、就職に結びつかなかった方 |
・就労経験がない、またはブランクが長い方 ・年齢や体力、病状からA型での勤務が難しい方 ・まずは短時間から働くことに慣れたい方 |
一般企業への就職を目指す「就労移行支援」と合わせ、ご自身の状態や目的に合ったサービスを選ぶことが重要です。
統合失調症と向き合いながら働く準備をしませんか 就労継続支援B型事業所オリーブ
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- 静かで落ち着いた環境:陽性症状や認知機能障害があっても、集中して作業に取り組めるよう、ストレスの少ない環境を整えています。
- 柔軟な働き方:陰性症状で意欲がわかない日も、週1日・1日2時間といった短時間から無理なく利用を始められます。
- 安心できる居場所:同じような悩みを持つ仲間や、あなたのつらさを理解してくれるスタッフがいる、温かいコミュニティがあります。
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