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障害者雇用とは?一般雇用との違いや法定雇用率・助成金制度を解説

「障害者雇用と一般雇用は何が違うのだろう?」

「自分も対象になるのか、どんなサポートが受けられるのか知りたい」

就職や転職を考える際に「障害者雇用」という言葉を目にする機会は増えましたが、その具体的な内容を詳しく知る人はまだ少ないかもしれません。障害者雇用は、障害のある方が能力や適性を活かし、安心して働き続けられるよう国が定めた法律に基づく制度です。この制度を正しく理解することは、ご自身に合った仕事を見つけ、自分らしいキャリアを築くための重要な一歩となります。

この記事では、障害者雇用の基本的な仕組みから、一般雇用との主な違い、法律で定められた法定雇用率、そして企業と働く人を支える助成金制度まで、網羅的かつ分かりやすく解説します。障害者雇用の全体像を掴み、ご自身の未来の選択肢を広げるために、ぜひ本記事をお役立てください。

障害者雇用とは?一般雇用との違い

まず、「障害者雇用」がどのような制度で、「一般雇用」と何が違うのか、その本質から理解していきましょう。

障害者雇用促進法に基づく雇用制度

障害者雇用とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」に基づき、企業や国、地方公共団体が、障害のある方を一定の割合以上で雇用することを義務付ける制度です。これは、単なる企業の社会貢献活動や任意で行われるものではありません。障害の有無にかかわらず、誰もが能力を活かして職業に就き、自立した生活を送れる共生社会を実現するための、法律に基づいた社会全体の仕組みです。この法律により、障害のある方は就職の機会を得やすくなると同時に、職場で必要な支援を受けながら働くことが可能になります。

一般雇用との最大の違いは「合理的配慮」の提供義務

障害者雇用と一般雇用の最も大きな違いは、「合理的配慮」が提供される点にあります。

一般雇用
障害の有無を問わず、同じ条件で採用選考が行われます。採用後、企業は障害に対して特別な配慮を提供する法的な義務はありません。

 

障害者雇用
企業は、障害のある方が働く上での障壁(バリア)を取り除くため「合理的配慮」を提供することが法的に義務付けられています。

 

「合理的配慮」とは、障害のある方が他の従業員と等しく能力を発揮して働けるよう、一人ひとりの特性や状況に応じて行われる工夫や調整のことです。具体的には、以下のような配慮が挙げられます。

配慮の種類 合理的配慮の具体例
物理的環境への配慮 ・車椅子で移動しやすいようスロープや手すりを設置する
・本人の体格に合わせ机の高さを調整したり、負担の少ない椅子を用意したりする
・視覚情報が見やすいよう、照明の明るさやPC画面のコントラストを調整する
業務内容・方法への配慮 ・口頭での指示とあわせて、メールや文書でも指示を伝える
・一度に多くの業務を任せず、優先順位をつけて具体的に指示する
・本人の体力や集中力に合わせ、休憩を取りやすいようにする
・定期的な面談の機会を設け、業務上の困難や不安を相談しやすくする
勤務条件への配慮 ・通院などに配慮し、柔軟な勤務時間(フレックスタイム、時間単位の休暇)を認める
・通勤ラッシュを避けられるよう、時差出勤を許可する
・本人の体調に合わせ、在宅勤務や短時間勤務を可能にする

このように障害者雇用では、本人が働く上で困っていることに対し、企業側が「過重な負担にならない範囲で」協力し、共に働きやすい環境を構築していくことが求められます。

障害者雇用の対象者

障害者雇用制度の対象となるのは、原則として、特定の障害者手帳を所持している方です。

身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の所持者

法律上の障害者雇用率にカウントされる対象者は、以下のいずれかの手帳を所持している方です。

身体障害者手帳
身体の機能に一定以上の障害があると認められた方に交付されます。

 

療育手帳
知的障害があると判定された方に交付されます。(自治体により「愛の手帳」「みどりの手帳」など名称が異なります)

 

精神障害者保健福祉手帳
一定の精神疾患により、長期にわたり日常生活や社会生活への制約があると認められた方に交付されます。

 

これらの手帳を持っていることで、ハローワークの専門援助窓口を利用した就職相談や、障害者雇用枠の求人への応募が可能になります。

障害者雇用で働く前に知っておきたいこと

障害者雇用での就職を考える際、「オープン就労」と「クローズ就労」の違いや、それぞれのメリット・デメリットを理解しておくことが重要です。

オープン就労とクローズ就労の違い

オープン就労
企業に対し、自身に障害があることを開示(オープンに)して就職・就労することです。障害者雇用枠での応募は、オープン就労にあたります。

 

クローズ就労
自身に障害があることを開示せず(クローズにして)就職・就労することです。一般雇用枠で応募し、採用選考や入社後の業務においても障害について伝えない働き方です。

 

どちらの働き方を選択するかに正解はなく、ご自身の状況や考え方によって最適な選択は異なります。

障害者雇用(オープン就労)のメリット・デメリット

 

【メリット】

    • 合理的配慮を受けられる:最大のメリットは、障害特性に応じた配慮を受けられる点です。通院への配慮、業務量の調整、職場環境の整備など、安定して働き続けるためのサポートが期待できます。
    • 障害への理解を得やすい:採用時点で障害について伝えているため、上司や同僚から理解や協力を得やすく、困ったときに相談しやすい環境で働ける可能性が高いです。
    • 定着率が高い傾向にある:必要な配慮を受けながら働けるため、心身の負担が軽減され、結果的に長く働き続けやすい傾向があります。

 

【デメリット】

    • 求人の選択肢が少ない:一般雇用に比べると、求人数や職種が限られる場合があります。
    • 給与水準が低い場合がある:業務内容や勤務時間が配慮される分、給与水準が一般雇用の同職種より低くなることがあります。
    • 障害を開示する必要がある:自身のプライバシーである障害情報を、企業に開示する必要があります。

 

ご自身の体調を安定させながら長く働くことを重視するのか、あるいは職種や給与の選択肢の広さを優先するのか、メリットとデメリットを比較検討することが大切です。

障害者雇用率制度と法定雇用率

障害者雇用促進法は、企業などが雇用すべき障害者の割合を「法定雇用率」として定めています。これは、障害者雇用を社会全体で推進するための重要なルールです。

民間企業の法定雇用率は2.5%(2024年4月以降)

2024年4月1日から、民間企業に適用される法定雇用率は2.5%に引き上げられました。これにより、法定雇用の対象となる企業の範囲も、従業員を40.0人以上雇用する事業主へと拡大されています。さらに、法定雇用率は今後も段階的に引き上げられる予定で、2026年7月からは2.7%となります。

法定雇用率(2024年4月1日時点)
民間企業 2.5%
国・地方公共団体など 2.8%
都道府県などの教育委員会 2.8%

また、雇用率の計算では、障害の程度や労働時間に応じて、実際の人数より多くカウントする特例が設けられています。

    • 週所定労働時間20時間以上30時間未満の短時間労働者:1人を「0.5人」としてカウント
    • 重度身体障害者・重度知的障害者:1人を「2人」としてカウント(ダブルカウント)
    • 重度身体・知的障害者の短時間労働者:1人を「1人」としてカウント

 

未達成企業に課される障害者雇用納付金制度

法定雇用率を達成していない企業には、ペナルティとして「障害者雇用納付金」の支払いが義務付けられています。

対象企業
常時雇用している労働者数が100人を超える企業

 

納付額
不足している障害者1人あたり、月額50,000円

 

この納付金は罰金ではなく、法定雇用率を超えて障害者を雇用する企業への調整金や、後述する各種助成金の財源として活用されます。これにより、社会全体で障害者雇用にかかる経済的負担を調整し、雇用を促進する公平な仕組みが作られています。

企業が障害者雇用で活用できる主な助成金

国は、企業が障害者を雇用し、働きやすい環境を整えることを支援するため、様々な助成金制度を用意しています。ここでは代表的なものを紹介します。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

ハローワーク等の紹介により、高齢者や障害者といった就職困難者を継続して雇用する事業主に対して支給されます。

対象者 支給額(中小企業の場合) 助成期間
重度障害者等(重度身体・知的障害者、精神障害者など) 1人あたり 120万円 2年間
上記以外の身体・知的障害者 1人あたり 50万円 1年間

 

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

職業経験の不足などから就職に不安のある求職者を、企業が原則3ヶ月間、試行的に雇用(トライアル雇用)する場合に支給されます。企業は実際の働きぶりを見て本採用を判断でき、求職者は仕事との相性を試せます。

支給額
対象者1人あたり、月額最大4万円(精神障害者の場合は、最初の3ヶ月間は月額最大8万円)が最長3ヶ月間支給されます。

 

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

パートタイマーや契約社員など非正規雇用の労働者の、企業内でのキャリアアップを支援する助成金です。有期雇用の障害者を正規雇用に転換した場合、一般の労働者より高い助成額が設定されており、安定した雇用を後押しします。

障害者雇用の求人はどう探す?主な相談先

障害者雇用枠での就職を目指す場合、一人で活動するのではなく、専門の支援機関を頼ることが成功への近道です。

ハローワーク(公共職業安定所)
障害のある方向けの専門窓口があり、専門の職員が担当制で求人紹介や就職相談に応じてくれます。障害者雇用枠の求人が最も多く集まる場所です。

 

就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害のある方が、職業訓練や就職活動の支援を受けられる福祉サービスです。事業所によっては、企業との橋渡しや職場定着支援も行います。

 

障害者専門の転職エージェント
民間の人材紹介会社で、障害者雇用に特化したサービスを提供しています。非公開求人の紹介や、企業との条件交渉を代行してくれるのが強みです。

 

地域障害者職業センター
ハローワークと連携し、職業能力の評価や、個別の職業リハビリテーション計画の作成など、専門的な支援を提供しています。

 

本格的な就職活動の前に 就労継続支援B型事業所オリーブで準備を

ここまで見てきたように、障害者雇用は法律や助成金で支えられた制度です。しかし、すぐに企業で働くことに不安を感じる方も少なくないでしょう。

「長く仕事から離れていたから、毎日通えるか自信がない」

「まずは、働くこと自体に体を慣らすところから始めたい」

そうお考えなら、本格的な就職活動を始める前の「準備の場」として、就労継続支援B型事業所オリーブで、働く練習を始めてみませんか。

オリーブは、障害や心身の不調のある方が、雇用契約を結ばずにご自身の体調やペースに合わせて、軽作業などの生産活動に取り組める福祉事業所です。

自分のペースで働く練習
週1日・1時間からでも利用を始められます。まずは「事業所に通う」習慣をつけ、少しずつ時間や日数を増やしていくことで、無理なく働くための体力と生活リズムを整えられます。

 

多様な作業で適性探し
簡単な軽作業からPC作業まで、様々な仕事をご用意しています。色々な作業を試す中で、「どんな作業が得意か」「どんな仕事なら集中できるか」といった自己理解を深めることができます。

 

専門スタッフによるサポート
経験豊富なスタッフが、あなたの悩みや不安に寄り添い、今後のキャリアプランや、ハローワークの利用方法などについても一緒に考えます。

 

障害者雇用というステージに本格的に挑戦する前に、まずはオリーブという安心できる場所で、働く自信とスキルをじっくりと育てる。その一歩が、あなたの未来をより確かなものにするはずです。見学やご相談はいつでも歓迎しておりますので、お気軽にご連絡ください。

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