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障害者控除の金額はいくら?対象者や年末調整・確定申告の申請方法を解説

障害のある方や、そのご家族をサポートするための制度は、私たちの身近にたくさんあります。その中でも、税金の負担を軽くすることで、家計を直接的に支えてくれる重要な制度が「障害者控除」です。「自分も対象になるの?」「税金はいくら安くなるの?」「どうやって申請すればいいの?」そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
この記事では、障害者控除という制度について、その基本的な仕組みから、対象となる人の具体的な条件、控除される金額、そして年末調整や確定申告での申請方法まで、一つひとつ分かりやすく解説していきます。この制度を正しく理解し、きちんと活用することは、ご自身の生活を守る上でとても大切です。この記事が、あなたの経済的な不安を少しでも和らげるための一助となれば幸いです。
障害者控除とは?税金の負担を軽くする制度
まずはじめに、「障害者控除」がどのような仕組みで、私たちの税金の負担を軽くしてくれるのか、その基本から理解していきましょう。
そもそも所得控除って何?
障害者控除は、税金の制度における「所得控除」の一つです。「控除」と聞くと、少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に言うと「税金を計算する元となる金額(所得)から、一定の金額を差し引くことができる仕組み」のことです。お給料などの収入(所得)の全額に税金がかかるわけではありません。そこから、様々な事情に応じて「所得控除」として一定額を差し引き、残った金額に対して税率がかけられます。
(所得金額 - 所得控除額) × 税率 = 税額
つまり、所得控除の金額が大きければ大きいほど、税金を計算する元となる金額が小さくなり、結果として納める税金の額が少なくなる、という仕組みです。障害者控除は、この「所得控除」の中でも、障害のある方やそのご家族のために設けられた、特別な控除枠なのです。
障害者控除の目的と概要
障害者控除は、障害のあるご本人や、障害のあるご家族を扶養している方の税負担を軽減するために作られた制度です。納税者本人、または生計を同一にする配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に当てはまる場合に、一定の金額を所得金額から差し引くことができます。この制度は、国に納める「所得税」と、お住まいの市区町村に納める「住民税」の両方に適用されます。
控除は、障害の程度などに応じて「障害者」「特別障害者」「同居特別障害者」の3つの区分に分けられており、それぞれ控除される金額が異なります。
障害者控除の対象者となるのはどんな人?
では、具体的にどのような人が障害者控除の対象となるのでしょうか。障害者手帳の有無や、障害の程度によって条件が異なります。
障害者控除の対象者
原則として、その年の12月31日時点で、以下のいずれかの手帳の交付を受けている方が対象となります。
-
- 身体障害者手帳
- 療育手帳(自治体によって「愛の手帳」「みどりの手帳」など名称が異なります)
- 精神障害者保健福祉手帳
また、これらの手帳を持っている本人だけでなく、その方を扶養している配偶者やご家族も、障害者控除を受けることができます。ここでいう「扶養」とは、税法上の扶養親族(16歳以上で、年間の合計所得金額が48万円以下など)の要件を満たす場合を指し、この場合、扶養控除と障害者控除の両方を適用できます。
なお、「生計を同一にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。例えば、単身赴任中の配偶者や、地方の大学に通う子どもに生活費や学費を仕送りしている場合なども、「生計を同一にする」関係に含まれます。
特別障害者・同居特別障害者とは
障害の程度が特に重いと認められる場合は「特別障害者」として、より手厚い控除が受けられます。さらに、その特別障害者の方が、納税者本人や配偶者、親族のいずれかと同居している場合は「同居特別障害者」として、最も大きな控除額が適用されます。
区分 | 主な対象者の例 |
---|---|
障害者 | ・身体障害者手帳 3級~6級 ・療育手帳 B ・精神障害者保健福祉手帳 2級・3級 |
特別障害者 | ・身体障害者手帳 1級・2級 ・療育手帳 A ・精神障害者保健福祉手帳 1級 ・常に寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする方 ・原子爆弾被爆者手帳の交付を受けている方 |
同居特別障害者 | 上記の 特別障害者 のうち、納税者本人、配偶者、または生計を同一にする親族のいずれかと 常に同居 している方 |
※「常に同居」について、病気の治療のために一時的に入院している場合は同居とみなされますが、老人ホームなどの施設に長期間入所している場合は、同居とはみなされないため注意が必要です。
障害者手帳がなくても対象になるケース
障害者手帳の交付を受けていなくても、障害者控除の対象となる場合があります。それは、65歳以上の方で、市区町村長から「障害者控除対象者認定書」の交付を受けた場合です。この認定書は、寝たきりの状態であったり、認知症などにより、身体障害者や知的障害者に準ずる状態であると認められた場合に発行されます。
介護保険の要介護認定を受けている方などが対象となる可能性がありますので、一度お住まいの市区町村の高齢福祉担当窓口などに問い合わせてみることをお勧めします。
障害者控除で税金はいくら安くなる?控除額を解説
障害者控除を利用すると、実際に税金はどのくらい安くなるのでしょうか。ここで注意が必要なのは、「控除額」が、そのまま手元に戻ってくる(還付される)金額ではないという点です。あくまで、税金を計算する前の所得から差し引かれる金額です。
所得税の障害者控除額
国に納める所得税から控除される金額は、以下の通りです。
区分 | 所得税の控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
住民税の障害者控除額
お住まいの市区町村に納める住民税から控除される金額は、以下の通りです。
区分 | 住民税の控除額 |
---|---|
障害者 | 26万円 |
特別障害者 | 30万円 |
同居特別障害者 | 53万円 |
【簡単計算】控除額に税率をかけてみよう
では、実際に手取りに影響する「減税額」はいくらになるのでしょうか。目安となる金額は、以下の式で簡単に計算できます。
減税額の目安 = 控除額 × 税率
例えば、所得税率が10%の方が「障害者」の控除を受ける場合、
- 所得税の減税額:27万円 × 10% = 27,000円
- 住民税の減税額:26万円 × 10%(住民税の税率は原則一律10%) = 26,000円
となり、合計で年間約53,000円の税負担が軽減される計算になります。
障害者控除の申請方法(年末調整・確定申告)
障害者控除は、自動的に適用されるわけではなく、ご自身で申請手続きを行う必要があります。申請方法は、働き方によって異なります。
会社員の場合(年末調整)
会社にお勤めの方は、年末に行われる「年末調整」で手続きをします。会社から配布される「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」という書類に、必要事項を記入して提出します。
申告書の「C 障害者、寡婦、ひとり親又は勤労学生」という欄で、まず「障害者」の項目にチェックを入れます。そして、ご自身が対象の場合は「本人」の欄で「一般の障害者」「特別障害者」などを選択します。配偶者や扶養親族が対象の場合は、その方の氏名やマイナンバーを記載し、障害の区分や人数を記入します。障害の状況を記載する欄には、障害者手帳の種類、等級、交付年月日などを転記しましょう。
個人事業主や年の途中で退職した場合(確定申告)
個人事業主の方や、フリーランスの方、また、年末調整を受けずに年の中途で退職した方などは、ご自身で「確定申告」を行う必要があります。
確定申告書の「所得から差し引かれる金額」の項目の中に「障害者控除」の欄がありますので、そこに該当する控除額を記入して、税務署に申告します。
過去5年分はさかのぼって申請可能
「障害者控除の制度を知らずに、これまで申請してこなかった…」そんな方も、あきらめる必要はありません。障害者控除は、過去5年分までさかのぼって申請し、払い過ぎた税金の還付を受けることができます。この手続きを「更正の請求」と言います。
会社員だった方は源泉徴収票を、確定申告をしていた方は申告書の控えなどを用意して、お住まいの地域を管轄する税務署に相談してみましょう。
障害者控除に関するよくある質問(Q&A)
- Q1. 年の途中で障害者手帳を取得しました。その年の控除は受けられますか?
- A1. はい、受けられます。障害者控除の対象になるかどうかは、年末調整や確定申告を行うその年の12月31日時点の状況で判断されます。そのため、年の途中で手帳の交付を受けた場合でも、その年分の所得税・住民税から控除の対象となります。
- Q2. 夫婦共働きで、障害のある子どもを扶養しています。どちらが控除を受けられますか?
- A2. 扶養控除と同じく、夫婦のどちらか一方のみが障害者控除を受けることができます。重複して控除を受けることはできません。一般的には、所得金額が多く、所得税率が高い方が控除を受けた方が、世帯全体での減税額は大きくなります。
- Q3. パート収入が103万円以下で所得税がかかりません。障害者控除は意味がないですか?
- A3. 所得税については、もともと非課税のため減税効果はありません。しかし、住民税については、障害者控除を申告することで非課税となる所得の上限額が引き上げられます。お住まいの自治体によりますが、通常は合計所得金額が125万円以下の場合は非課税となるところ、障害者控除の対象者は合計所得金額が204万4千円未満であれば非課税となります。そのため、所得税がかからない方でも、住民税が非課税になる可能性があるため、申告するメリットは十分にあります。
障害者控除の活用と「働く」を考えるなら就労継続支援B型事業所オリーブへ
障害者控除は、働く上で、また生活する上で、とても心強い制度です。しかし、こうした制度を利用してもなお、障害を抱えながら働くことには、様々な不安や困難がつきまとうかもしれません。
「自分に合ったペースで働ける場所はないだろうか」
「税金や制度のこと、もっと気軽に相談できる相手がほしい」
もしあなたがそんな風に感じているなら、私たち 就労継続支援B型事業所オリーブが、あなたの新しい一歩をサポートできるかもしれません。
オリーブは、障害や心身の不調のある方が、ご自身の体調やペースに合わせて、軽作業やPC入力などの生産活動に取り組める福祉事業所です。オリーブで働くことで得られる「工賃」は、税法上、給与所得とはならず非課税所得として扱われるため、所得税や住民税がかかりません。
また、オリーブの経験豊富なスタッフは、仕事のサポートだけでなく、障害者控除のような福祉制度の活用や、日々の生活に関する相談にも、親身になって応じています。障害者控除について、あるいはご自身の「働く」ということについて、少しでも不安や疑問があれば、一人で抱え込まずに、ぜひ一度オリーブにご相談ください。