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雇用保険の傷病手当とは?失業保険との関係・条件・期間・申請方法を解説

会社を退職後、新たな仕事を探している期間に病気やけがで働けなくなった場合、「求職活動ができないと、失業保険(基本手当)も受け取れないのでは?」と経済的な不安にかられるかもしれません。このような事態に備え、雇用保険には「傷病手当」という制度があります。これは、失業保険(基本手当)の受給資格がある方が、病気やけがにより15日以上継続して求職活動を行えない場合に、基本手当の代わりに支給される生活保障の給付金です。

本記事では、雇用保険の「傷病手当」について、混同されやすい健康保険の「傷病手当金」との違い、支給条件、期間、金額、申請方法までを分かりやすく解説します。もしもの時に備え、制度の正しい知識を身につけておきましょう。

雇用保険の傷病手当とは?基本手当(失業保険)との関係

雇用保険の「傷病手当」の概要

雇用保険の傷病手当とは、離職後にハローワークで求職の申し込みをした方が、その後病気やけがが原因で、継続して15日以上、職業に就くことができなくなった場合に支給される手当です。本来、雇用保険の基本手当(通称:失業保険)は、「働く意欲と能力があるにもかかわらず、職業に就けない状態」の方を対象とします。しかし、病気やけがで働けなくなると「働く能力がある」という条件を満たせなくなります。そこで、基本手当を受けられない期間の生活を支えるため、基本手当に代わって支給されるのが傷病手当です。これは、求職活動を再開できる状態に回復するまでの一時的な生活保障を目的としています。

基本手当(失業保険)と傷病手当の違い

「基本手当」と「傷病手当」は、いずれも雇用保険から支給されますが、対象となる方の状態によって区別されます。

基本手当(いわゆる失業保険) 傷病手当
対象となる状態 働く意思と能力があり、求職活動ができる状態 病気やけがのため、求職活動ができない状態(継続して15日以上)
役割 次の仕事が見つかるまでの生活を支える 求職活動ができない期間の生活を支える
日額 同額 同額

簡単にまとめると、ハローワークへの求職申込後、働ける状態で仕事を探せる日は「基本手当」、病気やけがで15日以上仕事を探せない日は「傷病手当」が支給対象となります。両方の手当を同時に受け取ることはできません。

「失業保険」と「雇用保険」の正式名称について

多くの方が「失業保険」という名称を使用しますが、これは通称です。制度の正式名称は「雇用保険」であり、「失業保険」と呼ばれている給付は、雇用保険制度における「基本手当」を指します。雇用保険は、労働者の生活および雇用の安定と、就職の促進を目的とする社会保険制度です。本記事で解説する「傷病手当」も、この雇用保険制度に含まれる給付の一つです。

雇用保険の「傷病手当」と健康保険の「傷病手当金」の違い

特に混同しやすいのが、雇用保険の「傷病手当」と健康保険の「傷病手当金」です。名称は似ていますが、根拠となる法律や目的が異なる全く別の制度であり、同時に受給することはできません。両制度の最も大きな違いは、病気やけがをしたタイミングです。

雇用保険の「傷病手当」 健康保険の「傷病手当金」
根拠となる保険制度 雇用保険 健康保険
病気やけがをしたタイミング 会社を退職(離職)した後 会社に在籍中
目的 離職後、求職活動ができない期間の生活保障 在職中、療養で仕事を休み給与が受けられない期間の所得保障
申請先 ハローワーク 勤務先の会社が加入する健康保険組合や協会けんぽ

在職中に病気やけがで会社を連続4日以上休み、給与が支払われない場合に申請するのが健康保険の「傷病手当金」です。一方、会社を退職後に病気やけがで15日以上働けなくなった場合に申請するのが雇用保険の「傷病手当」となります。もし、在職中から傷病手当金を受給しており、退職後も継続して受給資格がある場合は、その期間中は雇用保険の基本手当や傷病手当を受け取ることはできません。

雇用保険の傷病手当を受給するための条件

傷病手当は、以下のすべての条件を満たす場合に受給できます。

ハローワークで求職の申し込みを行い、基本手当の受給資格決定を受けていること。
求職の申し込み後に生じた病気やけがにより、職業に就くことができない状態であること。(離職前からかかっていた病気やけがが悪化した場合なども対象となることがあります)
上記の職業に就けない状態が、待期期間(7日間)の満了後、継続して15日以上であること。
病気やけがが治癒しておらず、療養のために職業に就くことができない状態であること。
健康保険の傷病手当金や、労災保険の休業(補償)給付など、他の法令に基づく同様の趣旨の給付を受けていないこと。

自己都合退職の場合の給付制限期間について

自己都合で退職した場合、待期期間満了後に原則2か月(過去5年間に2回以上自己都合退職している場合は3か月)の給付制限期間が設けられます。この給付制限期間中に病気やけがで働けなくなった場合も、その期間と日数分について傷病手当の支給対象となります。

30日以上働けない場合は「受給期間の延長」

病気やけがの療養が長く続き、継続して30日以上職業に就くことができない場合は、傷病手当ではなく「受給期間の延長」を申請します。これは、本来1年である受給期間を、働けない日数を加算して最大で4年まで延長できる制度です。延長手続きは、働けなくなった状態が30日続いた日の翌日から、1か月以内に申請する必要があります。どちらの手当に該当するかは、個々の状況に応じてハローワークが判断するため、まずは速やかに電話などで状況を報告し、相談することが重要です。

雇用保険の傷病手当の受給期間と日数

傷病手当を受給できる合計日数は、基本手当の「所定給付日数」から、すでに基本手当を受給した日数を差し引いた残りの日数が上限です。例えば、所定給付日数が90日の方が、10日分の基本手当を受給した後に働けなくなった場合、傷病手当として受給できる日数の上限は、残りの80日分となります。所定給付日数は、離職理由、年齢、雇用保険の被保険者であった期間に応じて決まります。

会社の都合などで離職した方(特定受給資格者など)

倒産・解雇など、会社の都合によって離職を余儀なくされた方や、正当な理由のある自己都合退職者(特定理由離職者)などが対象です。

被保険者だった期間 ~29歳 30~34歳 35~44歳 45~59歳 60~64歳
1年未満 90日 90日 90日 90日 90日
1年以上5年未満 90日 90日 90日 180日 150日
5年以上10年未満 120日 120日 180日 240日 180日
10年以上20年未満 180日 210日 240日 270日 210日
20年以上 240日 270日 330日 240日

自己都合で離職した方(一般の受給資格者)

転職や独立など、ご自身の都合で離職した方が対象です。

被保険者だった期間 全年齢
10年未満 90日
10年以上20年未満 120日
20年以上 150日

 

就職が困難な方

障害者手帳をお持ちの方など、就職が特に困難であるとハローワークに認められた方が対象です。

被保険者だった期間 45歳未満 45歳以上65歳未満
1年未満 150日 150日
1年以上 300日 360日

ご自身の所定給付日数は、ハローワークで交付される「雇用保険受給資格者証」で確認できます。

雇用保険の傷病手当の支給金額と申請方法

傷病手当の支給金額

傷病手当として1日あたりに支給される金額(日額)は、本来受け取るはずだった基本手当の日額と同額です。基本手当の日額は、原則として離職前6か月間の賃金総額を180で割った「賃金日額」に、所定の給付率(約50%~80%)を乗じて算出されます。この給付率は、賃金が低い方ほど高くなるよう設定されています。なお、賃金日額と基本手当日額には、年齢区分に応じた上限額と下限額が定められています。

傷病手当の申請方法

傷病手当の申請は、原則として、病気やけがが治り、再び求職活動ができるようになった後の最初の失業認定日に、管轄のハローワーク窓口で行います。

【申請手続きの基本的な流れ】

ハローワークへの報告
病気やけがで継続して15日以上求職活動ができない、またはできなくなった場合は、速やかに管轄のハローワークに電話などで連絡し、指示を仰いでください。

 

「傷病手当支給申請書」の準備
ハローワークの窓口で「傷病手当支給申請書」を受け取ります。この用紙はハローワークインターネットサービスからダウンロードすることも可能です。

 

申請書の作成と医師の証明
申請書の本人記入欄に必要事項を記入します。その後、診療を受けた医療機関に申請書を提出し、医師に「傷病名」「傷病の経過」「労務不能と認められた期間」などの証明欄を記入してもらいます。(※証明には別途、文書料がかかる場合があります)

 

ハローワークへの提出
記入・証明済みの「傷病手当支給申請書」に「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」を添えて、ハローワークの窓口に提出します。郵送や代理人による提出が可能な場合もあるため、事前にハローワークへご確認ください。

 

提出後、審査を経て支給が決定されると、後日、指定した金融機関の口座に手当が振り込まれます。

雇用保険の傷病手当に関するよくある質問(Q&A)

Q1. うつ病などの精神疾患も傷病手当の対象になりますか?

はい、対象となります。身体的な病気やけがだけでなく、うつ病、適応障害といった精神疾患が原因で働くことができない場合も、医師が「労務不能」であると診断・証明すれば、傷病手当の支給対象となります。申請には、他の条件と同様に医師による客観的な証明が必要です。

Q2. 傷病手当の受給中、家族の健康保険の扶養に入れますか?

受給額によっては可能です。健康保険の被扶養者に認定されるための収入要件は、一般的に年間収入見込みが130万円未満(60歳以上の方や障害者の方は180万円未満)とされています。傷病手当の日額に360を掛けた額がこの基準を下回る場合、扶養に入れる可能性があります。ただし、認定基準の詳細は加入先の健康保険組合等で異なるため、必ずご家族の勤務先を通じて担当の健康保険組合や協会けんぽにご確認ください。

Q3. 療養中に内職やアルバイトをしても問題ありませんか?

傷病手当は「労務不能」な状態の方を対象とするため、原則として労働による収入を得ることは想定されていません。もし療養中に内職や手伝いなどで収入を得た場合は、金額にかかわらず、必ずハローワークに提出する「失業認定申告書」で申告しなければなりません。申告を怠ると不正受給とみなされ、厳しい罰則が科される場合があります。収入があった日については手当が支給されない、または減額される可能性があるため、自己判断せずに必ず事前にハローワークへ相談してください。

療養後の就労相談は就労継続支援B型事業所オリーブへ

雇用保険の傷病手当は、失業中に予期せぬ病気やけがに見舞われた際の重要な生活支えとなる制度です。療養期間中はこれらの制度を有効に活用し、心身の回復に専念することが最も大切です。そして体調が回復し、改めて「働きたい」と考え始めたとき、「以前のようにフルタイムで働けるだろうか」「また体調を崩さないか」といった、新たな不安に直面する方も少なくありません。

もし、あなたが社会復帰への第一歩として、ご自身のペースで無理なく働ける場所をお探しなら、私たち就労継続支援B型事業所オリーブにご相談ください。

オリーブは、関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良)で、病気や障害のある方が安心して働ける環境を提供しています。雇用契約を結ばないため、週1日、1日1時間といった短時間から、ご自身の体調に合わせて利用を開始できます。

データ入力や軽作業など、心身への負担が少ない仕事を通じて、まずは安定した生活リズムを取り戻し、働く自信を少しずつ育んでいく。オリーブは、そのような「働くためのリハビリ」に最適な場所です。傷病手当の受給を終え、次のステップを考え始めたら、ぜひ一度、オリーブの見学・相談にお越しください。あなたらしい働き方を、一緒に見つけていきましょう。

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