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ひきこもりの原因と心理とは?仕事への一歩を踏み出すための相談先・支援機関を解説

「部屋から出るのが怖い」「人と関わるのがつらい」「働きたい気持ちはあるけれど、社会に出る自信がない」
様々な理由から自宅にひきこもり、社会との接点を失ってしまう「ひきこもり」。ご本人だけでなく、支えるご家族も、出口の見えない深い悩みを抱えているのではないでしょうか。「本人のやる気の問題」「いつか何とかなる」と、一人で、あるいは家族だけで抱え込んでしまうケースも少なくありません。

しかし、ひきこもりは単なる「怠け」や「甘え」ではなく、多様な要因が複雑に絡み合った結果として生じる、誰にでも起こりうる状態です。そして、その状態から抜け出すためには、適切な理解と外部のサポートが不可欠です。

この記事では、ひきこもりの定義や原因、特有の心理状態について詳しく解説します。さらに、ご家族ができること、一歩を踏み出すための具体的な相談先、社会復帰を支える支援機関についても分かりやすくご紹介します。あなたと、あなたの大切な人の「これから」のために、まずは正しい知識を得ることから始めましょう。

ひきこもりとは?その定義と実態

「ひきこもり」という言葉は広く知られていますが、その定義や原因については、誤解されていることも少なくありません。まず、公的な定義と社会的な実態について知識を整理しましょう。

厚生労働省による「ひきこもり」の定義

厚生労働省のガイドラインでは、「ひきこもり」は特定の病気や診断名ではなく、「状態」として定義されています。具体的には、「様々な要因の結果として、就学・就労・家庭外での交遊などの社会参加を避け、原則的には6ヶ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態」とされています。統合失調症などの精神疾患が原因で自宅療養が必要な場合は、基本的にはひきこもりに含めませんが、判断が難しいケースも多く、柔軟な対応が求められます。重要なのは、背景にある原因が何であれ、社会的に孤立している状態そのものが支援の対象となるという点です。

ひきこもりの実態と「8050問題」

内閣府の調査(2023年3月公表)によると、15歳から64歳までのひきこもり状態にある人は、推計で約146万人にのぼるとされています。かつては若者特有の問題と捉えられがちでしたが、現在では40歳以上の中高年層が半数以上を占めており、ひきこもりの長期化・高年齢化が大きな社会課題となっています。このような状況から、「80代の親が50代のひきこもりの子の生活を支える」といった、親子共倒れの危機に瀕する「8050問題」も深刻化しています。ひきこもりは、もはや特定世代の問題ではなく、どの家庭にも起こりうる身近な問題なのです。

ひきこもりの原因と心理

ひきこもりに至る経緯や、その渦中にある本人の心の中は、非常に複雑で多様です。原因を一つに特定するのではなく、多角的に理解することが支援の第一歩となります。

ひきこもりの原因は一つではない

「なぜ、ひきこもりになったのか」その原因は、決して一つではありません。いじめや受験の失敗、就職活動のつまずき、職場での人間関係といった心理的・社会的な要因。そして、うつ病や不安障害、発達障害といった精神医学的な要因。これらが複雑に絡み合い、相互に影響し合ってひきこもりという状態につながると考えられています。

カテゴリー 具体例
心理的・社会的要因 ・学校でのいじめ、不登校
・受験や就職活動の失敗
・職場での人間関係のトラブル、退職
・大きな病気やケガ
・親しい人との死別
精神医学的要因 ・うつ病、双極性障害
・不安障害(パニック障害、社交不安障害など)
・統合失調症
・発達障害(ASD、ADHDなど)

ひきこもりは、本人の「性格」や「育てられ方」だけに原因を求めるべきではありません。様々な要因が重なり、誰にでも起こりうる状態であるという認識が重要です。

ひきこもり状態にあるときの心理と段階

ひきこもっている本人は、決して楽をしているわけではありません。その心の中は、様々な葛藤や苦しみで満ちています。ひきこもりの状態は、一般的に以下のような段階を経て長期化すると言われています。

葛藤期(ひきこもり前期)
学校や仕事に行けなくなり始めた時期。「行かなければ」という気持ちと、「行けない」という現実の間で激しく葛藤します。この時期は、プライドの高さと自己評価の低さが同居し、家族にイライラをぶつけてしまうこともあります。

 

諦観・混乱期(ひきこもり中期)
ひきこもりが長期化し、社会復帰への焦りや葛藤が薄れていく時期。昼夜逆転の生活になり、無気力な状態が続きます。一方で、自分の将来への漠然とした不安や、社会から取り残される恐怖に苛まれます。

 

安定・膠着期(ひきこもり後期)
ひきこもり生活がある種の「日常」となり、本人は精神的に安定しているように見える時期。しかし、社会との断絶がさらに進み、親が高齢化していく中で、将来への不安はより深刻なものとなります。

 

どの段階においても、本人は「こんなはずではなかった」という後悔や、「自分はダメな人間だ」という自己否定感、そして「社会復帰したいけれど、どうすればいいか分からない」という無力感に苛まれています。

ひきこもりから抜け出すために:家族ができること・相談先

ひきこもりの問題は、家庭内だけで解決するのは非常に困難です。ご家族が適切な対応を知り、外部の専門機関に相談することが、状況を好転させるための大きな一歩となります。

家族が心がけたい本人への接し方

焦りや心配から、つい本人を追い詰めてしまうような言葉をかけてしまいがちですが、まずは本人が安心して心の内を話せる環境を作ることが大切です。

    • 安心感を与える: まずは本人の存在そのものを肯定し、「味方である」というメッセージを伝えましょう。

 

    • 本人の話を聞く: 無理に聞き出そうとせず、本人が話したくなった時に、じっくりと耳を傾ける姿勢が重要です。

 

    • NGワードを避ける: 「頑張れ」「いつまでそうしているの?」「甘えるな」といった言葉は、本人をさらに追い詰めるだけです。

 

    • 小さな変化を褒める: 「朝起きられたね」「一緒にご飯が食べられて嬉しい」など、ごく小さなことでも言葉にして認めることで、本人の自己肯定感を育みます。

 

家族自身のための相談先

本人を支える家族もまた、心身ともに疲弊してしまいます。家族が先に外部に相談し、サポートを受けることが、結果的に本人を助けることにつながります。

    • ひきこもり地域支援センター: 本人だけでなく、家族からの相談にも専門的に応じてくれます。家族向けのセミナーや家族会を開催している場合もあります。

 

    • 保健所・精神保健福祉センター: 家族がどのように本人と関わればよいか、具体的なアドバイスを受けられます。

 

    • 家族会: 同じ悩みを抱える家族と出会い、情報交換や悩みの共有ができます。孤立しがちな家族にとって、大きな心の支えとなります。

 

ひきこもりの背景に病気が考えられる場合の受診と治療

ひきこもりの原因として、うつ病や不安障害、発達障害などが隠れているケースは少なくありません。その場合は、医療機関での適切な診断と治療が、回復への鍵となります。

精神科や心療内科を受診するメリット

専門医の診察を受けることで、ひきこもりの背景にある病気の有無が明らかになり、漠然とした不安から解放されます。もし病気が見つかれば、薬物療法や精神療法など、症状を和らげるための専門的な治療を受けられます。さらに、医師の診断書があることで、後述する様々な公的支援が利用しやすくなるという大きなメリットがあります。

利用できる可能性のある公적支援制度

自立支援医療(精神通院医療)
精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担額が、原則1割に軽減される制度です。

 

精神障害者保健福祉手帳
税金の控除や公共料金の割引など、様々な福祉サービスを受けるために必要となる手帳です。

 

障害年金
病気やけがによって生活や仕事などが制限される場合に受け取れる年金です。

ご本人が受診を拒否する場合は、まずはご家族だけで相談に行くことも可能です。家族が医師から、本人への適切な関わり方についてアドバイスをもらうだけでも、状況が変化することがあります。

ひきこもりから仕事へ 社会復帰に向けた支援ステップ

ひきこもり状態から、いきなり社会復帰や就職を目指すのは非常にハードルが高いものです。焦らず、段階を踏んでいくことが何よりも大切です。

就職だけがゴールではない「準備段階」の重要性

長期のひきこもりによって体力や集中力、コミュニケーション能力などが低下していることが多く、社会に出ることへの強い不安感を抱えています。そこで重要なのが、就職を最終ゴールとしつつも、そこに至るまでのスモールステップを設定することです。まずは「安心して家から出られる場所を見つけること」「生活リズムを整えること」「短時間でも誰かと関わることに慣れること」といった準備段階を大切にしましょう。

利用できる主な相談先・支援機関

地域若者サポートステーション(サポステ)
働くことに悩む15歳~49歳までの方が対象。コミュニケーション訓練や職場体験などを通じて就労を支援します。

 

ひきこもり地域支援センター
ひきこもりに関する専門の相談窓口。相談から訪問支援、居場所の提供まで、包括的なサポートを行います。

 

就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害のある方が、最長2年間、職業訓練や職場探し、就職後の定着支援を受けられます。

 

就労継続支援事業所(A型・B型)
すぐに一般企業で働くのが難しい方が、支援を受けながら働き、賃金(A型)や工賃(B型)を得ることができます。

 

サービス種別 雇用契約 対象者のイメージ
就労継続支援A型 あり 支援があれば、安定して働く力がある方。
就労継続支援B型 なし まずは短時間から、自分のペースで働くことに慣れたい方。

自分のペースで社会とのつながりを作るなら 就労継続支援B型事業所オリーブへ

長期間ひきこもり状態にあった方にとって、社会復帰への道は不安と希望が入り混じる未知の道のりでしょう。「毎日通えるだろうか」「人と上手く話せるだろうか」「作業についていけるだろうか」。そんな不安で、一歩を踏み出せずにいませんか。

その一歩を、最も安全で、最も小さな歩幅から始められる場所が、私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」です。

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、ひきこもり経験のある方など、様々な事情を抱える方の「社会とのつながりを取り戻したい」という気持ちをサポートしています。雇用契約を結ばずに利用できるB型事業所なので、あなたの「今」の状態に合わせた、無理のないスタートが可能です。

  • 週に1日、1日1時間からでも通える
  • 家から出る練習の場として利用できる
  • 簡単な作業を通じて、生活リズムと自信を取り戻せる
  • 支援員がいるので、対人関係の不安を相談できる
  • 同じような仲間がいる、安心できる「第3の居場所」になる

就職という高いハードルをいきなり目指すのではなく、まずは「安心して過ごせる場所」で、社会参加へのウォーミングアップを始めませんか。ご本人様はもちろん、ご家族様からのご相談も心よりお待ちしております。オリーブが、あなたの新しい一歩を、全力で応援します。

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