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障害者雇用とは?一般雇用との違いや法定雇用率・助成金制度を解説

障害のある方が就職を考えるとき、多くの人が「障害者雇用」と「一般雇用」という二つの選択肢の間で悩みます。「障害者手帳を使うことに、なんとなく抵抗がある…」「自分の障害をオープンにしたら、キャリアはどうなってしまうのだろう?」「給料や待遇にどれくらいの違いがあるのか」「そもそも、自分に合った求人はどうやって探せば良いのか」など、疑問や不安は尽きないでしょう。

この記事では、「障害者雇用」と「一般雇用」のそれぞれの特徴を徹底的に比較し、メリット・デメリット、給料や業務内容の傾向、具体的な求人の探し方まで、網羅的に分かりやすく解説します。どちらが良い・悪いという話ではありません。ご自身の特性やキャリアプラン、そして「どんな働き方を大切にしたいか」という価値観に合った、納得のいく選択をするための、確かな道しるべとしてお役立てください。

障害者雇用とは?制度の目的と対象者

まず、障害者雇用の基本的な仕組みについて理解を深めましょう。これは、障害のある方がその人らしく、安心して働き続けられるように国が定めた、非常に重要な制度です。

障害のある方の職業の安定を図るための制度

障害者雇用とは、障害者手帳を持つ方を主な対象とした、特別な採用枠のことです。この制度の根幹にあるのは、「障害の有無にかかわらず、すべての人がその能力と適性に応じて働く機会を得て、一人の職業人として社会に参加する」という共生社会の理念です。障害のある方が働く上で直面しがちな物理的・心理的な困難を取り除き、一人ひとりが能力を最大限に発揮できるよう、企業側に様々な配慮を求めることで、長期的に安定して働ける環境を整えることを目的としています。

障害者雇用促進法と法定雇用率

障害者雇用は、「障害者の雇用の促進等に関する法律(障害者雇用促進法)」によって、企業の義務として定められています。この法律では、一定数以上の従業員を雇用する民間企業や国・自治体に対して、全従業員のうち一定の割合(法定雇用率)以上の障害者を雇用することを義務付けています。この法定雇用率は、社会全体の労働者数や障害のある方の数の変動に応じて定期的に見直されており、近年は段階的に引き上げられています。

<民間企業の法定雇用率の推移>

  • 〜2024年3月:2.3%(従業員43.5人以上に1人以上の雇用義務)
  • 2024年4月〜:2.5%(従業員40.0人以上に1人以上の雇用義務)
  • 2026年7月〜(予定):2.7%(従業員37.5人以上に1人以上の雇用義務)

この法定雇用率を達成できない企業(常用労働者100人超)は、国に「障害者雇用納付金」を支払わなければなりません。その納付金は、雇用率を達成している企業への助成金(調整金・報奨金)の原資となります。このように、社会全体で障害者雇用を支え、促進する仕組みが作られているのです。

障害者雇用の対象となる人

障害者雇用の対象となるのは、原則として以下のいずれかの障害者手帳を所持している方です。

    • 身体障害者手帳
    • 療育手帳(知的障害のある方)
    • 精神障害者保健福祉手帳

 

この障害者手帳を企業に提示し、自分の障害について情報を開示した上で就職活動を行うことを「オープン就労」と呼びます。一方、障害を企業に伝えず、一般の採用枠で就職することを「クローズ就労」と呼びます。どちらの働き方を選ぶかは、その後の職業生活に大きく影響するため、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、慎重に検討することが重要です。

障害者雇用(オープン就労)と一般雇用(クローズ就労)の違い

では、障害者雇用と一般雇用では、具体的に何が違うのでしょうか。ここでは、選考過程から入社後の働き方まで、3つの大きな違いについて深く掘り下げて解説します。

① 応募条件と採用選考の違い

障害者雇用の採用選考は、単にスキルや経験を測るだけでなく、応募者と企業が「長期的に良い関係を築けるか」という「マッチング」の視点が非常に重視されます。

障害者雇用(オープン就労) 一般雇用(クローズ就労)
応募条件 障害者手帳の所持が必須 障害の有無は問われない
採用選考の視点 応募者と企業双方にとって持続可能な働き方を探る「マッチング」重視 スキルや経験を基に応募者を選抜する「競争」が基本
面接での質問例 ・ご自身の障害特性と、それに対するセルフケアについて教えてください
・安定して働くために、会社にどのような配慮を希望しますか?
・通院の頻度や、体調を崩しやすい状況はありますか?
・これまでのご経験と、それを当社でどう活かせますか?
・あなたの強みと弱みは何ですか?
・キャリアプランについて教えてください

このように、障害者雇用の面接では、自分の障害特性や、それに対してどのような配慮があれば能力を発揮できるかを、自分の言葉で具体的に説明することが不可欠です。

② 合理的配慮の有無

障害者雇用と一般雇用の最も本質的な違いが、この「合理的配慮」の有無です。合理的配慮とは、障害のある方が職場で働く上での障壁(バリア)を取り除くために、企業が提供する個別の調整や配慮のことです。障害者雇用促進法により、オープン就労の場合、企業には合理的配慮を(過重な負担にならない範囲で)提供することが法的に義務付けられています。一方、クローズ就労の場合は、障害を伝えていないため、この合理的配慮を法的に求めることはできません。

<合理的配慮の具体例>

    • 物理的環境への配慮: 車いすで移動しやすいように机の配置を工夫する、明るすぎる照明を調整する。
    • 働き方・時間への配慮: 通勤ラッシュを避けるための時差出勤や在宅勤務を許可する、通院のための中抜けや休暇取得を柔軟に認める。
    • 業務内容・指示方法への配慮: 指示は口頭だけでなくメールでも伝える、一度に多くの業務を任せず優先順位を明確にする、分かりやすいマニュアルを作成する。
    • コミュニケーションへの配慮: 騒音が苦手な人のために静かな席を用意する、相談する担当者を決めて定期的な面談の機会を設ける。

 

③ 給料や業務内容の傾向

法律上、障害があることのみを理由に、賃金などで不当な差別的扱いをすることは禁止されています。しかし、厚生労働省の調査によると、障害者雇用の平均給与は、一般雇用の平均よりも低い傾向にあります。その理由としては、通院や体調管理のためにフルタイムではなく時短勤務を選択する人が多いことや、障害特性に配慮した結果、比較的単純な業務や補助的な業務(バックオフィス業務など)を担うことが多いことなどが挙げられます。

ただし、これはあくまで全体の傾向です。近年は、企業の障害者雇用への理解も深まり、ITエンジニアやデザイナーといった専門職で、一般雇用と変わらない待遇で採用されるケースも増えています。

働き方の選択:メリット・デメリットの比較

オープン就労とクローズ就労、それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、ご自身の価値観と照らし合わせることが重要です。

障害者雇用(オープン就労)のメリット

    • 障害への配慮を得やすく、定着しやすい: 最大のメリットは「合理的配慮」を受けられることです。無理に健康な人のように振る舞う必要がなく、心身のエネルギーを仕事に集中させることができます。この安心感が、結果的に長く安定して働き続けること(職場定着)につながります。
    • 競争率が比較的低い傾向にある: 応募者が障害者手帳を持つ方に限定されるため、一般雇用に比べて応募の競争率が低い傾向にあります。企業側も法定雇用率達成という目的があるため、スキルだけでなく、人柄やポテンシャルも重視される傾向があり、未経験の職種に挑戦できるチャンスも多いと言えます。

 

障害者雇用(オープン就労)のデメリット

    • 求人数や職種の選択肢が少ない場合がある: 一般雇用の求人と比較すると、求人の総数はまだ少なく、高い専門性やマネジメント経験を要する職種の求人は限られる傾向にあります。
    • 給与水準が一般雇用より低い場合がある: 短時間勤務や業務内容の特性から、給与水準が一般雇用よりも低くなる可能性があります。
    • キャリアアップが限定的になる可能性: 配慮の結果、責任範囲の狭い業務に配置されることが続き、昇進やキャリアアップの機会が少なくなる可能性もゼロではありません。

 

一般雇用(クローズ就労)のメリット

    • 求人・職種の選択肢が圧倒的に多い: 全ての求人が対象となるため、職種や業種、勤務地など、自分の希望に合った仕事を幅広く探すことができます。
    • 給与水準が高い傾向にある: 責任の重い業務やフルタイム勤務が基本となるため、障害者雇用に比べて給与水準は高くなる傾向があります。
    • 対等な立場でキャリアを築ける: 障害を意識されることなく、実績や能力のみで評価されるため、キャリアアップの機会は平等に与えられます。

 

一般雇用(クローズ就労)のデメリット

    • 障害への配慮がない: 障害について伝えていないため、業務や環境に関する配慮を求めることができません。体調が悪化しても自己責任となり、無理を重ねてしまうリスクがあります。
    • 心身の負担が大きく、定着が難しい: 周囲に理解されないまま一人で困難を抱え込み、精神的に不安定になったり、体調を崩してしまったりして、離職につながるケースも少なくありません。
    • 解雇のリスク: 体調不良による欠勤や、業務上のミスが続いた場合、障害が理由であると主張できないため、能力不足と判断されて解雇に至るリスクがあります。

 

障害者雇用の求人を探す主な方法

障害者雇用の求人を探すには、専門の支援機関を有効活用することが成功への近道です。ここでは、代表的な4つの方法を紹介します。

  • ハローワークの専門援助部門: 全国のハローワークに設置されている、障害のある方のための専門窓口です。求人情報が最も多く、地域の中小企業から大企業まで幅広い選択肢があります。無料で求職登録から職業紹介、面接練習まで一貫したサポートを受けられます。
  • 障害者向けの転職エージェント: 民間企業が運営する、障害者雇用専門の転職支援サービスです。専門のアドバイザーが担当につき、非公開求人を含む多数の求人の中から最適な企業を提案してくれます。企業の内情に詳しく、給与交渉などを代行してくれる手厚いサポートが魅力です。
  • 就労移行支援事業所: 一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、最長2年間、就職に必要な知識やスキルを体系的に学ぶ福祉サービスです。職業訓練から職場実習、就職活動の伴走、就職後の定着支援まで、トータルでサポートしてくれます。
  • 地域障害者職業センター: ハローワークや企業と連携しながら、専門的な職業リハビリテーションを提供する公的機関です。職業能力の評価や、ジョブコーチ(職場適応援助者)の派遣など、より専門的で個別性の高い支援を行っています。

 

いきなり企業で働くのは不安…まずは就労継続支援B型事業所オリーブで準備を

ここまで障害者雇用について詳しく解説してきましたが、「制度のことは分かったけれど、すぐに企業で働くのは体力的に不安」「まずは働くことに慣れるところから、ゆっくり始めたい」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

そのように感じているなら、焦って就職活動を始める必要はありません。まずはご自身のペースで働ける場所で、心と体のコンディションを整え、働く自信を育むことから始める、という選択肢があります。「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、まさにそのような方のための場所です。

オリーブでは、雇用契約を結ばないため、ノルマや時間に縛られることなく、週1日・2時間といったごく短い時間からでも利用を開始できます。パソコンでのデータ入力や軽作業などを通じて、「自分にもできることがある」という感覚や、働くことの喜び、安定した生活リズムを少しずつ取り戻していくことができます。

障害者雇用での就職は、あくまでゴールではなく、選択肢の一つです。あなたにとって最適な働き方を見つけるために、まずは一歩、安心できる環境から踏み出してみませんか。オリーブでは、専門の相談員がいつでもあなたのお話をお伺いします。ぜひお気軽にご相談ください。

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