お役立ち情報 ソーシャルスキルトレーニング(SST) リワーク(復職支援) 就労支援サービス 治療法・リハビリ 認知行動療法(CBT)
【復職支援】リワークとは?3種類の違いやプログラム内容・費用をわかりやすく解説

うつ病や適応障害などで休職中の方が復職を目指す際、「また体調を崩さないか」「仕事のペースについていけるか」「職場に自分の居場所はあるだろうか」といった不安は尽きないものです。こうした復職への不安を解消し、安定した就労と職場定着までをサポートするのが「リワーク(復職支援)」です。本記事では、リワークの対象者、メリット・デメリット、具体的なプログラム内容、費用、そしてご自身の状況に合ったリワークの選び方のポイントまで、深く掘り下げて分かりやすく解説します。復職への一歩を安心して踏み出すための、確かな知識としてお役立てください。
リワーク(復職支援)とは?
リワークは、休職から職場復帰を目指すための準備期間に留まりません。休職に至った原因を安全な環境で振り返り、心身ともに健康な状態で働き続けるための土台を再構築する重要なプロセスです。
休職からの職場復帰と再休職の予防を目指すプログラム
リワークとは「Return to Work」の略で、精神的な不調により休職している方を対象とした、職場復帰支援プログラムの総称です。自宅療養だけでは生活リズムが乱れたり、業務に必要な体力や集中力が低下したりする場合があります。リワークは、オフィスに近い環境で通勤の練習や日中の活動を通じて心身のコンディションを整え、療養から就労への「橋渡し」の役割を担います。さらに、専門プログラムを通じて休職の根本原因を分析し、ストレスへの対処法を学ぶことで、再休職を予防することを最大の目的としています。単に職場に戻るだけでなく、復職後に安定して働き続けるためのスキルを身につける場です。
リワークの対象となる方
リワークは、主に以下のような方を対象としています。
- 精神的な不調(うつ病、双極性障害、適応障害、不安障害など)が原因で休職中の方
- 病状はある程度回復し、主治医から日中の活動許可が出ている方
- 元の職場への復職の意思がある方(※就労移行支援事業所のリワークでは転職を目指す方も対象)
- 規則的に施設へ通所することが可能な方
復職への意欲はあっても、生活リズムの乱れや体力・集中力への不安から、すぐに行動に移すのが難しいと感じている方にこそ、利用を検討する価値があります。
リワークを利用するメリット・デメリット
リワークの利用には多くのメリットがありますが、注意すべき点も存在します。双方を深く理解し、ご自身の状況に合わせて利用を検討することが大切です。
メリット
- 生活リズムの再構築
- 決まった時間に起床し、施設へ通うという習慣を通して、乱れがちな療養中の生活リズムを整え、安定した勤怠の土台を作ります。
- 客観的な復職判断
- スタッフが集中力や勤怠の安定性、他者との関わり方などから、復職の準備が整っているかを客観的に評価します。この客観的な評価は、復職可否を判断する会社や主治医への説得力のある根拠にもなります。
- 再発防止スキルの習得
- 休職の原因を分析し、自身の思考の癖を理解した上で、ストレス対処法やコミュニケーションスキルなどを具体的に学びます。これは復職後の困難を乗り越えるための「お守り」になります。
- 孤立感の解消と仲間との出会い
- 休職中に感じやすい孤立感も、同じ目標を持つ仲間と悩みを共有することで、「一人ではない」という安心感が得られ、前向きにリハビリに取り組めます。
デメリット
- 時間的な制約
- プログラムは平日の日中に行われることが多く、利用期間は3ヶ月から半年以上になる場合もあります。会社の休職期間満了日を考慮し、計画的に利用する必要があります。
- 費用負担の可能性
- 利用するリワークの種類によっては費用が発生します。事前に経済的な見通しを立てておくことが重要です。
- 精神的な負担
- 規則的な通所が体力的な負担になるほか、他の利用者と自分を比較して焦りや劣等感を抱いてしまう可能性もあります。
- 新たな人間関係のストレス
- グループワークが中心となるため、他の利用者との相性によっては、新たな人間関係のストレスを感じる可能性もゼロではありません。
リワークの主なプログラム内容
リワーク施設では、復職と再発防止のため、多角的なプログラムが提供されています。ここでは、代表的な内容をより詳しく紹介します。
認知行動療法(CBT)
認知行動療法(CBT)は、うつ病などへの有効性が科学的に示されている心理療法です。ある出来事への「受け取り方・考え方(認知)」が、気分や行動に影響を与えるという考えに基づきます。例えば「上司に資料の修正を指示された」際に、「自分の能力が低いからだ」と捉えると思考が否定的になります。CBTでは、こうした思考の癖に気づき、「より良い資料にするための協力だ」といった、より現実的で柔軟な考え方ができるよう練習を重ね、ストレスへの耐性を高めます。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)
SSTは、円滑な対人関係のスキルを実践的に学ぶトレーニングです。特に、相手も自分も尊重する自己表現「アサーティブ・コミュニケーション」の習得を目指します。職場での場面を想定したロールプレイングを通じ、「業務過多の際に相手を不快にさせずに仕事を断る方法」や「自分の意見を適切に伝える方法」などを練習し、健全な人間関係を築く力を養います。
オフィスワークシミュレーション
実際の職場環境を想定し、パソコンでの書類作成、データ入力、電話応対、軽作業などの模擬的な業務を行います。決められた時間内で指示された業務をこなすことで、復職後に必要となる集中力や持続力、正確性などを回復・向上させることを目指します。また、他の利用者と共同で作業を行うことで、報告・連絡・相談といった実践的なコミュニケーションスキルも養います。
自己分析とストレスマネジメント
休職期間は、これまでの働き方を見つめ直す機会です。プログラムでは、休職原因を多角的に振り返り、自身のストレスパターンや不調をきたしやすい状況といった特性を客観的に理解します。その上で、自身の価値観や強みを再認識し、「どのような働き方をしたいか」というキャリアプランを考え、同じ状況を繰り返さない持続可能な働き方を見つけることを目指します。
体調管理とリラクゼーション
心身のコンディションを安定させる実践的な方法を学びます。決まった時間の起床・就寝といった生活リズムの管理から、ウォーキングなどの軽い運動、ヨガや瞑想、呼吸法といったリラクゼーション法まで内容は多岐にわたります。自身のストレスサインを把握し、限界に達する前にセルフケアを行う能力を高めます。
リワークの3つの種類とそれぞれの違い
リワークは主に3つの機関で提供され、それぞれ特徴が異なります。自分に合ったプログラムを選ぶために、違いを理解しましょう。
種類 | 実施機関 | 主な目的 | 費用 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
医療リワーク | 病院、クリニック | 病状の回復・安定、再発防止(治療の一環) | 各種健康保険、自立支援医療制度が適用 | 医師や看護師など医療専門職が密接に関わる。医学的観点からの手厚いサポートが受けられる。 |
職リハ・リワーク | 障害者職業センター(JEED) | 職場復帰支援、企業との連携強化 | 原則無料 | 公的機関。利用者・主治医・企業の三者間で復職に向けた調整を積極的に行ってくれる。 |
就労移行支援 | 就労移行支援事業所 | 復職支援、転職支援、実践的な職業訓練 | 前年の所得に応じた上限額あり(多くは無料) | 民間事業者が運営。復職だけでなく転職も視野に入れた多様なプログラムや資格取得支援がある。 |
自分に合ったリワークの選び方 4つのポイント
数あるリワーク施設の中から最適な場所を選ぶために、以下の4つのポイントを確認しましょう。
-
- 目的を明確にする(復職か、転職か)元の職場への復職を強く希望している場合は、企業との連携に強い「職リハ・リワーク」が適している場合があります。一方で、休職を機に働き方を見直し、新しい職種や職場への転職も視野に入れているなら、多様な職業訓練プログラムを持つ「就労移行支援」が合っているでしょう。
-
- プログラム内容を確認する各施設が提供するプログラムは特色豊かです。ストレス対処法を学びたいのか、PCスキルを向上させたいのかなど、自分の課題や目標に合ったプログラムがあるか、ウェブサイトやパンフレットでしっかり確認しましょう。
-
- 施設の雰囲気やスタッフとの相性を見る必ず見学や体験利用に参加し、施設の清潔さや明るさ、他の利用者の様子、スタッフの対応などを肌で感じることが重要です。安心して悩みを相談できそうなスタッフがいるか、自分がリラックスして過ごせる環境かは、継続の鍵となります。
-
- 通いやすさを確認するリワークは一定期間、定期的に通う必要があります。自宅からの距離や交通手段、交通費などを考慮し、無理なく通える範囲の施設を選びましょう。通所自体が大きなストレスにならないことが大切です。
リワークの利用手続きと費用
実際にリワークを利用する場合の、基本的な手続きの流れと費用の目安を解説します。
利用開始までの基本的な流れ
- 主治医と会社への相談
- まずは「リワークを利用して復職を目指したい」という意思を主治医に相談し、利用が可能かどうかの判断を仰ぎます。同時に、会社の人事担当者や上司にもその旨を伝え、休職期間や復職に関する会社の制度(試し出勤制度の有無など)を確認しておきましょう。
- リワーク施設の情報収集と比較検討
- インターネットなどで情報を集め、候補となる施設をいくつか見つけます。それぞれの施設のウェブサイトを熟読し、プログラム内容や利用者の声などを比較します。
- 見学・相談・体験利用
- 候補を絞ったら、必ず見学や体験利用を申し込みましょう。施設の清潔さや雰囲気、スタッフや他の利用者さんの様子、自分に合いそうかなどを肌で感じることが非常に重要です。疑問点は遠慮なく質問し、納得できる場所を選びます。
- 利用申請の手続き
- 利用したい施設が決まったら、利用申請を行います。ほとんどの場合、主治医による意見書(診療情報提供書)の提出が求められます。就労移行支援の場合は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で「障害福祉サービス受給者証」の申請手続きも並行して進めます。
- 利用開始
- 全ての手続きが完了し、利用契約を結んだら、いよいよプログラムの開始です。焦らず、自分のペースで取り組んでいきましょう。
プログラムごとの費用の目安
- 医療リワーク
- 各種健康保険が適用され、自己負担は3割です。さらに、精神科の通院医療費の負担を軽減する「自立支援医療制度」を申請すれば、自己負担を原則1割にできます。また、所得に応じて月間の自己負担上限額が設定されているため、高額な負担が続くことはありません。
- 職リハ・リワーク
- 国の公的サービスのため、利用料は原則無料です。交通費は自己負担となります。
- 就労移行支援
- 障害福祉サービスの一環であるため、前年の世帯所得に応じて自己負担額が定められます。しかし、国の調査では利用者の約9割の方が無料で利用しています。住民税の課税世帯であっても、月々の負担上限額(9,300円または37,200円)が定められており、利用した日数に関わらずそれ以上の負担は発生しません。
復職ではなく新しい働き方を探すなら 就労継続支援B型事業所オリーブも
リワークを通じて自分と深く向き合う中で、「元の職場のような厳しい環境に戻るのではなく、もっと自分に合った環境で、自分のペースで働きたい」と感じる方もいるかもしれません。また、休職と復職を繰り返す中で、フルタイムで決められた時間働くことへの自信を失ってしまうこともあるでしょう。
そのような場合は、復職だけが選択肢ではありません。一度立ち止まり、より負担の少ない働き方を探すことも、あなた自身の心と体を守るための、前向きで重要な決断です。
就労継続支援B型事業所オリーブは、そのような方々のための「新しい働くステージ」です。雇用契約を結ばずに、ご自身の体調や目標に合わせて、週1日・2時間といったごく短い時間からでも利用を開始できます。パソコンを使ったデータ入力やWebサイトの制作補助、軽作業などを通じて、社会とのつながりを保ちながら、働くことの喜びや自信を少しずつ、ご自身のペースで取り戻していくためのサポートをしています。
もし、あなたが復職以外の新しい道、より穏やかで自分らしい働き方を模索しているのであれば、ぜひ一度、お近くのオリーブへ見学・相談にお越しください。専門の相談員が、あなたのこれからの働き方を一緒に考えます。