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【わかりやすく解説】精神科デイケアとは?プログラム内容・効果・費用や利用の流れを紹介

精神科での治療が始まり、少しずつ症状が落ち着いてくると、「日中は家で何をしよう」「社会復帰したいけど、すぐに働くのは不安」といった、次のステップへの期待と悩みが生まれてくるのではないでしょうか。そんな時に、心と体のリハビリを行いながら、社会参加への準備をサポートしてくれる心強い場所が「精神科デイケア」です。

この記事では、精神科デイケアがどのような場所で、どんな目的で利用するのかを基本から解説します。具体的なプログラム内容や期待できる効果、気になる費用や利用開始までの手続きの流れまで、分かりやすくご紹介します。一人で悩まず、社会への扉をもう一度開くための選択肢として、ぜひ参考にしてください。

精神科デイケアとは?

まずは、精神科デイケアの基本的な役割や目的について見ていきましょう。

社会復帰を目的としたリハビリテーションの一環

精神科デイケアとは、精神疾患を持つ方が、地域社会でその人らしい生活を送れるようになることを目指し、日中、病院やクリニックに通いながらリハビリテーションを行う場所です。医療保険が適用される、外来治療の一つとして位置づけられています。自宅にこもりがちになるのを防ぎ、日中の活動の場として、様々なプログラムに参加しながら心身の回復を図ります。単に「過ごす場所」ではなく、症状の安定再発防止対人関係の改善、そしてその先の就労や復学といった、一人ひとりの目標達成を支援するための「治療の場」です。

精神科デイケアの目的と期待できる5つの効果

利用する方の状況によって目的は様々ですが、主に以下のような効果が期待できます。

生活リズムの確立
決まった時間に通うことで、昼夜逆転などを改善し、規則正しい生活リズムを取り戻します。これは安定した社会生活の最も重要な土台となります。

 

体力・集中力の向上
様々なプログラムに継続して参加することで、休職や自宅療養中に低下しがちな基礎体力や、一つのことに取り組む集中力を段階的に高めていきます。

 

対人関係スキルの向上
スタッフや他の利用者との交流を通じて、安心して人との関わりに慣れることができます。SST(ソーシャルスキルトレーニング)などのプログラムを通じて、円滑なコミュニケーションの取り方を学びます。

 

病気の再発防止
自分の病気や障害の特性、再発のサインなどを正しく理解し、ストレスへの対処法を身につけることで、症状の安定とセルフコントロール能力の向上につなげます。

 

自己肯定感の回復
「プログラムに最後まで参加できた」「仲間と楽しく会話できた」といった小さな成功体験を積み重ねることで、「自分にもできる」という自信と、ありのままの自分を受け入れる自己肯定感を回復します。

 

多職種の専門スタッフによるチームアプローチ

精神科デイケアは、精神科のある病院やクリニックなどの医療機関で実施されており、様々な分野の専門スタッフが連携して利用者をサポートします。

医師
全体の治療方針を決定し、医学的な管理を行います。

 

看護師
日々の健康状態のチェックや服薬管理、生活面の相談に応じます。

 

作業療法士(OT)
創作活動やレクリエーションといった「作業」を通じて、心身機能の回復や社会適応能力の向上を支援します。

 

精神保健福祉士(PSW)
利用できる福祉制度の紹介や、経済的な問題、家族関係の悩みなど、生活全般に関する相談に応じ、関係機関との連携を図ります。

 

臨床心理士
カウンセリングや心理検査、心理教育プログラムなどを担当し、心理的な側面からサポートします。

 

このように、多職種の専門家がチームとなって、一人ひとりの目標に合わせたサポートを提供してくれるので、安心して通うことができます。

精神科デイケアのプログラム内容

デイケアのプログラムは、施設によって特色がありますが、主に以下のような内容が組み合わされて提供されています。

① 創作活動やスポーツなどのレクリエーション

楽しみながら心と体を動かし、意欲の向上や気分の安定を図るプログラムです。

創作活動
絵画、陶芸、手芸、料理、俳句、音楽鑑賞、合唱など

 

スポーツ
卓球、バドミントン、ウォーキング、ヨガ、ストレッチなど

 

文化活動
映画鑑賞、パソコン教室、図書館への外出など

 

② 病気や障害と付き合うための心理教育

自分の病気や障害の特性を正しく理解し、上手な付き合い方を学ぶためのプログラムです。薬の役割や副作用について学ぶ「服薬指導」や、ストレスの原因や自分の反応パターンを理解し、対処法を身につける「ストレスコーピング」、自分の良いところを見つけて元気を取り戻すための行動計画を立てる「WRAP(元気回復行動プラン)」などがあります。

③ SSTなど対人関係を学ぶプログラム

SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング/社会生活技能訓練)は、対人関係を円滑にするための具体的なコミュニケーション技術を学ぶプログラムです。5~8人程度のグループで、ロールプレイング(役割演技)などを通じて、「上手な頼み方・断り方」「会話を始めるきっかけの作り方」といった、日常生活で役立つスキルを実践的に練習します。

④ 就労に向けた準備

将来的に就労を目指したい方向けのプログラムです。基本的なPCスキル(Word, Excel)の習得や、履歴書の書き方、模擬面接、ビジネスマナー講座など、就職活動に備えた準備を行います。リワーク(復職支援)に特化したプログラムを用意しているデイケアもあります。

精神科デイケアと他の類似サービスとの違い

日中に通う場所として、デイケアの他にもいくつかの選択肢があります。それぞれの違いを理解し、自分の目的に合った場所を選ぶことが大切です。

サービス 精神科デイケア 就労移行支援 地域活動支援センター
実施主体 医療機関 福祉サービス事業所 市町村または受託法人
根拠法 医療保険 障害者総合支援法 障害者総合支援法
主な目的 治療・リハビリ(病状安定・再発防止) 一般企業への就職 日中の居場所・交流
費用 医療保険(1〜3割負担)
※自立支援医療適用可
所得に応じた負担(多くは無料) 原則無料(実費負担あり)
スタッフ 医師・看護師など医療職が中心 職業指導員・就労支援員など 職員(資格要件は様々)

簡単に言うと、「治療とリハビリが最優先ならデイケア」「2年以内の一般就職を強く目指すなら就労移行支援」「まずは気軽に通える居場所が欲しいなら地域活動支援センター」といった使い分けが考えられます。

利用対象者・利用時間・費用

次に、どのような人が利用できるのか、また、どのくらいの費用がかかるのかを見ていきましょう。

利用の対象となる人

精神疾患のために生活のしづらさを抱えており、主治医からデイケアの利用が必要と判断された方が対象となります。具体的には、「病気の再発を防ぎたい」「生活リズムを整えたい」「人付き合いが上手になりたい」「安心して話せる仲間や居場所が欲しい」「就職や復学の準備をしたい」といった希望や目標を持つ方が利用しています。

利用時間と通う頻度

デイケアは、利用時間によっていくつかの種類に分かれています。

デイケア(6時間)
朝から夕方まで、昼食をはさんで1日過ごす、最も標準的な形式です。

 

ショートケア(3時間)
午前または午後の半日だけ利用する形式です。

 

デイナイトケア(10時間)
朝から夜まで利用する形式で、夕食も提供されます。

 

ナイトケア(4時間)
夕方から夜にかけて利用する形式です。

 

通う頻度は、週1回の半日から始め、慣れてきたら週5日まで増やすなど、主治医やデイケアのスタッフと相談しながら、自分の体調や目的に合わせて柔軟に決めることができます。

利用料と自立支援医療制度

精神科デイケアは医療保険が適用されるため、自己負担は原則3割です。しかし、「自立支援医療(精神通院医療)制度」という公費負担医療制度を利用することで、自己負担をさらに軽減できます。この制度を利用すると、自己負担は原則1割になります。さらに、世帯の所得に応じて月々の自己負担上限額が設定されており、上限額を超えた分の負担はありません。

世帯の所得区分 自己負担上限月額
生活保護 0円
低所得1(住民税非課税世帯で、本人の収入が80万円以下) 2,500円
低所得2(住民税非課税世帯で、本人の収入が80万円超) 5,000円
中間所得1(住民税課税世帯で、所得割が3万3千円未満) 5,000円
中間所得2(住民税課税世帯で、所得割が3万3千円~23万5千円未満) 10,000円
一定所得以上(住民税課税世帯で、所得割が23万5千円以上) 制度対象外(20,000円※経過的特例)

 

精神科デイケアの利用開始までの流れ

申し込み・手続きの5ステップ

主治医への相談
まずは、かかりつけの精神科の主治医に「デイケアを利用したい」と相談します。主治医の許可と指示が必要です。

 

施設の見学・相談
利用したい施設(主治医のいる医療機関、または他の医療機関)に連絡を取り、見学や体験をします。

 

施設の診察・面談
デイケアの担当医師による診察や、スタッフとの面談を行います。

 

利用申し込み・手続き
利用が決まったら、正式な申し込み手続きを行います。自立支援医療制度を利用する場合は、お住まいの市区町村の窓口で申請が必要です。

 

利用開始
全ての手続きが完了したら、スタッフと相談して作成した利用計画に沿って、デイケアの利用がスタートします。

 

デイケアを選ぶ際のポイント:見学で確認したいこと

自分に合ったデイケアを見つけるためには、見学や体験が非常に重要です。その際には、以下の点を意識して確認しましょう。

プログラム内容
自分の目的(例: 就労準備、体力回復、仲間作りなど)に合ったプログラムが充実しているか。

 

施設の雰囲気
清潔感があるか、掲示物や作品はどのようなものか、自分がリラックスして過ごせそうか。

 

スタッフの対応
説明は丁寧か、利用者への接し方はどうか、気軽に相談できそうか。

 

他の利用者の様子
年齢層や男女比、利用者同士の交流の様子などが自分に合いそうか。

 

規模
大規模でにぎやかな雰囲気が良いか、小規模で落ち着いた雰囲気が良いか。

 

通いやすさ
自宅からの距離や交通手段、交通費は無理のない範囲か。

 

複数の施設を見学し、それぞれの特徴を比較検討することで、最も納得のいく選択ができます。

デイケア卒業後の多様な進路

精神科デイケアは、安定した地域生活を送るためのリハビリの場であり、多くの方にとって「通過点」となります。デイケアで自信と安定を取り戻した後の進路は、一つではありません。

復職・復学
元の職場や学校に戻ることを目指します。リワークデイケアなどを利用していた場合は、主なゴールとなります。

 

就労
一般企業への就職を目指し、就労移行支援事業所などを活用する方もいます。

 

福祉的就労
就労継続支援A型・B型事業所などで、サポートを受けながら働くという選択肢もあります。

 

その他
アルバイトを始めたり、地域活動支援センターで日中の活動を続けたりと、その人らしい多様なステップがあります。

 

デイケアのスタッフと相談しながら、自分の目標に合った次のステップを考えていくことが大切です。

デイケアの次のステップに 就労継続支援B型事業所オリーブという選択肢

精神科デイケアに通い、生活リズムが整い、心身の状態が安定してくると、「もう少しステップアップしたい」「何か仕事のようなことにも挑戦してみたい」と考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、デイケアからすぐに一般企業で働くことには、まだハードルを感じるかもしれません。そんな、デイケアの次のステップとして、また、卒業後の多様な進路の一つとして、「就労継続支援B型事業所オリーブ」という選択肢があります。

就労継続支援B型は、デイケアと同じように自分のペースで通える場所ですが、より「働く」ことに重点を置いた福祉サービスです。オリーブでは、簡単な作業を通じて工賃(お給料)を得ながら、働くことへの自信と経験を少しずつ積んでいくことができます。

デイケアで築いた生活リズムや安定した状態を維持しながら、社会参加への新たな一歩を踏み出したいとお考えの方は、ぜひ一度、オリーブにご相談ください。あなたの「働きたい」気持ちを、私たちが全力でサポートします。

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