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【ADHD(注意欠如多動症)】向いている仕事10選!強みを活かす適職探しのポイント

「仕事でケアレスミスが多い」「会議中など、じっとしているのが苦手で集中できない」といった悩みを抱えていませんか。それは、もしかしたらADHD(注意欠如多動症)の特性が関係しているかもしれません。ADHDは発達障害の一つですが、その特性は決して弱点ばかりではありません。むしろ、環境や仕事内容が合っていれば、その特性は「行動力」や「独創性」といった大きな強みになります。大切なのは、ご自身の特性を正しく理解し、それを活かせる仕事や働き方を見つけることです。

この記事では、ADHDの主な特性から、仕事で強みになる場面、具体的な困りごとへの対策、そして向いている仕事の例までを詳しく解説します。さらに、自分に合った働き方や相談できる支援機関も紹介しますので、適職探しのヒントを見つけて、あなたらしく輝けるキャリアの一歩を踏み出しましょう。

ADHD(注意欠如多動症)の主な特性

ADHD(注意欠如多動症)は、発達水準に不相応な「不注意」と「多動性・衝動性」を主な特徴とする発達障害の一つです。これらの特性の現れ方は人によって異なり、不注意が目立つタイプ、多動性・衝動性が目立つタイプ、両方が混合しているタイプに分けられます。重要なのは、これらの特性は本人の「怠慢」や「わがまま」が原因ではないということです。脳の機能的な違いによるものであり、本人の努力だけではコントロールが難しい側面があります。ADHDの診断は、専門の医師によって様々な状況での行動やエピソードを聞き取り、心理検査を行うなど、慎重に行われます。

不注意(集中力・注意力のコントロールが難しい)

「不注意」の特性が強い場合、集中力を持続させたり、細かい点に注意を払ったり、物事を順序立てて行うことが苦手な傾向があります。

具体的な特徴の例

    • 仕事や勉強でケアレスミスが多い
    • 長時間、一つのことに集中し続けることが難しい
    • 話を聞いていないように見えたり、上の空になったりすることがある
    • 忘れ物や失くし物が多い
    • 仕事や作業の段取りを立てるのが苦手
    • 片付けや整理整頓が苦手

 

一方で、自分の興味・関心があることに対しては、時間を忘れて没頭し、驚くほどの集中力(過集中)を発揮することがあります。この過集中は、専門的な分野で高いパフォーマンスを発揮する原動力にもなりますが、休憩を忘れて心身を消耗してしまったり、他のことが全く目に入らなくなったりする側面もあります。

多動性(落ち着きがなくじっとしているのが苦手)

「多動性」は、その場の状況にそぐわない落ち着きのなさが特徴です。特に子どもの頃に顕著に現れ、大人になると、あからさまに動き回ることは減るものの、内面的な落ち着きのなさやそわそわ感、貧乏ゆすりなどの形で現れることもあります。

具体的な特徴の例

  • 会議中など、長時間じっと座っているのが苦痛に感じる
  • 貧乏ゆすりやペン回しなど、無意識に体の一部を動かしている
  • そわそわして落ち着かない感じがする
  • 静かにするように求められる場面で、おしゃべりをしすぎてしまうことがある

この特性は、見方を変えれば「エネルギッシュ」「行動的」「フットワークが軽い」といった長所として、仕事の推進力になり得ます。

衝動性(思いつくと即座に行動に移しやすい)

「衝動性」は、行動を抑制することが苦手で、結果をよく考えるより先に行動してしまう傾向を指します。感情のコントロールが難しく、対人関係で誤解を生んでしまうこともあります。

具体的な特徴の例

  • 相手が話している最中に、さえぎって話し始めてしまう
  • 順番を待つことが苦手で、列に割り込んでしまうことがある
  • 思いついたことをよく考えずに発言・行動してしまう
  • 些細なことでカッとなりやすいなど、感情の起伏が激しいと感じることがある

この特性も、裏を返せば「決断が早い」「失敗を恐れないチャレンジ精神がある」「正直で裏表がない」といった強みとして発揮されることがあります。

ADHDの特性が仕事で強みになる場面

ADHDの特性は、仕事の場面で困難さを生むことがある一方で、大きな強みにもなり得ます。自分の特性をポジティブな側面から捉え直し、それを活かせる環境を見つけることが適職探しの鍵となります。

好奇心や行動力が強みになる

ADHDの特性がある人は、好奇心旺盛で興味の対象が次々と移り変わる傾向があります。この特性は、新しい情報やスキルを積極的に学ぶ姿勢につながります。また、思い立ったらすぐに行動に移せる「衝動性」や「多動性」は、フットワークの軽さや行動力として評価される場面も多いでしょう。

強みとして活かせるポイント

    • 新規プロジェクトの立ち上げや、変化のスピードが速い業界での情報収集
    • 次々と新しいタスクに取り組む仕事
    • 体を動かすことが求められる現場での作業
    • 営業活動やイベント運営など、社外での活動が多い仕事

 

独創的なアイデアや発想力が評価される

注意がそれやすいという「不注意」の特性は、一つの物事に固執せず、多角的な視点を持つことにつながります。他の人が思いつかないような斬新なアイデアや、ユニークな問題解決策を生み出す力は、大きな武器になります。

強みとして活かせるポイント

    • 企画、マーケティング、商品開発
    • デザインや執筆などのクリエイティブな業務
    • 既存の枠組みにとらわれない発想が求められる場面
    • ブレインストーミングなどでのアイデア出し

 

ADHDの特性による仕事での困りごとと実践的な対策

ADHDの特性を強みとして活かすためには、一方で困難を感じやすい部分について、自分なりの工夫や対策を立てておくことが大切です。「自分はダメだ」と責めるのではなく、「どうすればうまくいくか」という視点で、仕組みやツールを活用しましょう。

不注意による困りごと(ケアレスミス・抜け漏れなど)への対策

 

困りごと 具体的な対策例
ケアレスミスが多い ・作業手順をチェックリスト化し、一つずつ確認しながら進める
・ダブルチェックを自分で行う、または可能であれば他の人にお願いする
タスクの抜け漏れ・忘却 ・やるべきことを全てタスク管理ツール(Trelloなど)やメモ帳に書き出し、見える化する
・スマートフォンのリマインダーやアラーム機能を徹底活用する
・重要なことは付箋に書いて、PCモニターなど目立つ場所に貼る
段取り・時間管理が苦手 ・仕事の優先順位を上司に確認する、または「重要度」と「緊急度」で分類する
・一つの作業にかかる時間を予測し、タイマーで区切って取り組む(ポモドーロ・テクニックなど)
・長期的なタスクは、細かく分割(タスクブレイクダウン)してスケジュールを立てる
整理整頓ができない ・物の定位置を決め、写真に撮って貼っておくなど、誰が見ても分かるようにする
・一日の終わりに5分間だけ片付けの時間を設ける
・書類はすぐにデータ化するか、「未処理」「処理済」「保管」のようにカテゴリー別のファイルボックスに入れる

多動性・衝動性による困りごと(集中力の維持・対人関係など)への対策

困りごと 具体的な対策例
じっとしていられない ・許可を得て、定期的に席を立ってストレッチするなどの休憩を取る
・手に持っていても不自然でない、ハンドグリップなどのグッズを活用する
・可能であれば、スタンディングデスクの利用や、Web会議中に少し歩き回ることを検討する
集中が途切れる ・ノイズキャンセリングイヤホンや耳栓を使い、外部の刺激を遮断する
・パーテーションで区切るなど、物理的に集中しやすい環境を整えてもらう
・作業前にPCの不要なタブを閉じ、スマートフォンを視界に入らない場所に置く
思いつきで発言・行動する ・発言する前に、一度メモに書き出して内容を整理する癖をつける
・会議などでは、意識的に他の人の話を最後まで聞き、「つまり〇〇ということですね」と要約してから自分の意見を言う
・感情的になったら、その場を一旦離れて6秒数えるなど、クールダウンの時間を設ける

 

ADHD(注意欠如多動症)の方に向いている仕事・職業の例

ADHDの特性は、特定の仕事において大きな強みとなります。ここでは、その特性を活かしやすい仕事の例を紹介します。ただし、これらはあくまで一例です。最も大切なのは、あなた自身の興味・関心や得意なことです。

クリエイティブな発想を活かす仕事

枠にとらわれない独創的なアイデアや、旺盛な好奇心を活かせる仕事です。

    • デザイナー(Web、グラフィックなど):斬新なアイデアや独自の感性を形にする仕事です。
    • 企画・マーケティング:新しい商品やサービスのアイデアを出したり、プロモーション戦略を考えたりする仕事です。
    • ライター・編集者:情報を集めて分かりやすく伝えたり、面白いコンテンツを企画したりする能力が活かせます。
    • 動画クリエイター:構成、撮影、編集といった多様な作業があり、変化に富んでいるため飽きずに取り組める可能性があります。

 

変化とスピード感が求められる仕事

じっとしているよりも、アクティブに動くことや、臨機応変な対応が求められる仕事です。

  • 営業職:特にルート営業よりも、新規開拓など変化の多い営業スタイルが向いている場合があります。
  • 販売・接客業:マニュアル通りではない、お客様一人ひとりに合わせた提案力が活かせます。
  • ジャーナリスト・記者:好奇心を持って情報を追いかけ、フットワーク軽く取材に飛び回る仕事です。
  • イベントプランナー:企画から設営、当日の運営まで、ダイナミックな動きと臨機応変な対応力が求められます。

 

専門性を追求する仕事

興味のある分野に対して、驚異的な集中力(過集中)を発揮できる特性を活かせる仕事です。

  • ITエンジニア・プログラマー:論理的思考と集中力が求められます。技術の進化が速いため、新しい知識を学ぶ意欲も活かせます。
  • 研究職:自分の探究心を突き詰め、一つのテーマに没頭できる環境です。
  • 職人・技術者:自分のスキルをとことん磨き、質の高いものづくりに集中できます。
  • Webアナリスト:データを分析し、隠れたパターンや改善点を見つけ出す仕事は、探究心や集中力を活かせます。

ADHDの方が自分に合った仕事を見つけるための働き方

自分に合った仕事内容を見つけると同時に、どのような「働き方」を選ぶかも非常に重要です。ここでは、主な働き方の選択肢と、働く上で知っておきたいポイントを解説します。

一般雇用(クローズ・オープン)と障害者雇用の違い

就職を考える際、「一般雇用」と「障害者雇用」という2つの入り口があります。さらに一般雇用の中には、障害を会社に伝えない「クローズ就労」と、伝えた上で働く「オープン就労」があります。

雇用形態 メリット デメリット
一般雇用(クローズ) ・求人数が多く、職種の選択肢が広い
・給与水準が高い傾向がある
・障害への配慮を求められない
・特性を全て自己管理する必要があり、心身の負担が大きい
・困りごとを相談しにくく、孤立しやすい
一般雇用(オープン) ・クローズよりは配慮を相談しやすい
・障害を理解してくれる同僚がいるかもしれない
・合理的配慮の提供は企業の任意
・求人数はクローズより少ない
・障害への理解が十分でない職場もある
障害者雇用 ・障害特性への合理的配慮が前提となっている
・勤務時間や業務内容の調整がしやすい
・定着率が比較的高い傾向がある
・求人数や職種が一般雇用より限られる
・給与水準が一般雇用より低い場合がある
・応募には障害者手帳が必要

 

職場に求める合理的配慮を整理する

障害者雇用で働く場合、企業に対して「合理的配慮」を求めることができます。これは、障害のある人が他の従業員と平等に働けるよう、職場での障壁を取り除くための調整や配慮のことです。就職活動を始める前に、「自分にはどのような配慮があれば働きやすくなるか」を具体的に整理しておくことが、ミスマッチを防ぐ鍵となります。

合理的配慮の伝え方の例

    • 「私は口頭での指示を忘れてしまうことがあるので、メールやチャットでも指示をいただけると、抜け漏れなく業務を遂行できます。」
    • 「周囲の雑音が気になって集中できないことがあるため、可能であればパーテーションのある座席にしていただけると助かります。」

 

就職・転職で頼れる支援機関

仕事探しは一人で抱え込む必要はありません。ADHDの特性に詳しい専門機関のサポートを積極的に活用しましょう。

ハローワーク
全国に設置されている公的な職業紹介所です。障害のある方向けの専門窓口があり、障害者雇用の求人紹介や就職相談に応じてくれます。

 

障害者職業センター
各都道府県に設置され、ハローワークなどと連携しながら、専門的な職業リハビリテーションを提供しています。職業能力の評価や、就職後の職場適応支援など、一貫したサポートを受けられます。

 

就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、就職に必要なスキルのトレーニングや求職活動の支援を行う通所型の福祉サービスです。2年間の利用期間の中で、自己分析や企業実習など、個別の計画に沿った支援を受けられます。

 

発達障害者支援センター
発達障害のある方やその家族からの様々な相談に応じ、助言や情報提供、関係機関の紹介などを行う専門機関です。

 

自分のペースで働くことから始めたい方は就労継続支援B型事業所オリーブへ

ここまで様々な働き方や支援機関を紹介してきましたが、「いきなり企業で働くのはハードルが高い」「まずは生活リズムを整えながら、短時間から働いてみたい」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。

そのような方は、就労継続支援B型事業所オリーブで「働くこと」への第一歩を踏み出してみませんか?

オリーブは、関西(大阪、兵庫、京都、奈良)で複数の事業所を運営しており、障害や病気のある方が自分のペースを大切にしながら安心して働ける場所です。雇用契約を結ばないため、週1日・1日数時間といった短時間からの利用も可能で、体調に合わせて無理なく通うことができます。

経験豊富なスタッフが、一人ひとりの特性や「やってみたい」という気持ちに寄り添い、軽作業から専門スキルが身につく作業まで、あなたに合った仕事を提供します。困ったことや不安なことがあればすぐに相談できる環境で、まずは「働くことの楽しさ」や「できる自信」を育んでいきませんか。見学や相談は随時受け付けていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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