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【ADHDの悩み】仕事や日常生活での困りごとと今すぐできる対処法を解説

「約束や締め切りをつい忘れてしまう」「仕事でのケアレスミスが減らない」「部屋がどうしても片付かない」…このような悩みを抱え、自分を責めてしまってはいませんか。もし、これらの悩みが長く続いているなら、それは本人の性格や努力不足の問題ではなく、ADHD(注意欠如多動症)という発達障害の特性が原因かもしれません。

ADHDの特性による困りごとは、決して珍しいことではありません。そして、大切なのはその特性を正しく理解し、具体的な工夫や対処法を知ることです。そうすることで、悩みは大きく軽減できます。

この記事では、ADHDの特性によって生じやすい具体的な悩みと、今日からすぐに実践できる対処法を分かりやすく解説します。また、一人で抱え込まずに相談できる専門機関や、治療的アプローチについても紹介します。この記事が、あなたが自分らしく、より快適な毎日を送るための一助となれば幸いです。

ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる主な悩み

ADHDは、「不注意(集中し続けるのが苦手)」「多動性(じっとしているのが苦手)」「衝動性(思いつくとすぐに行動する)」という3つの特性を主な特徴とする発達障害です。これらの特性は、脳の機能の一つである「実行機能(目標達成のために思考や行動を管理する能力)」や「ワーキングメモリ(情報を一時的に記憶し処理する能力)」の偏りから生じると考えられており、仕事や日常生活のさまざまな場面で悩みの原因となることがあります。

悩み(1):スケジュール管理や時間配分が苦手

ADHDの特性の一つに、時間の感覚が掴みにくいという点が挙げられます。作業にかかる時間を実際より短く見積もってしまったり、夢中になっているうちに時間を忘れてしまったりすることがあります。

具体的な悩み

    • 約束の時間に遅刻しやすい
    • 仕事の締め切りや提出物を忘れてしまう
    • 複数の予定を詰め込みすぎて、結局どれも中途半端になってしまう
    • 「5分だけ」と思って始めたことが、気づくと1時間経っている

 

悩み(2):作業の優先順位がつけられない

多くのタスクを抱えた時、どれから手をつければ良いか分からなくなり、混乱してしまうことがあります。全てのタスクが同じくらい重要に見えたり、逆に興味のあることや簡単な作業から手をつけてしまい、緊急性の高い重要なタスクを後回しにしてしまったりする傾向があります。

具体的な悩み

    • 目の前の仕事に追われ、長期的な計画が立てられない
    • 何から始めるべきか悩んでいるうちに、時間が過ぎてしまう
    • 上司から「急ぎで」と言われた仕事を後回しにしてしまう
    • 複数の指示を同時に受けると、頭が真っ白になってしまう

 

悩み(3):集中力が続かず注意が逸れやすい

会議中やデスクワーク中など、集中すべき場面で、周囲の物音や人の動き、あるいは頭に浮かんだ別の考え事など、さまざまな刺激に注意がそれてしまうことがあります。

具体的な悩み

    • 会議の内容が頭に入ってこない
    • メールやチャットが来るたびに、作業が中断してしまう
    • 一つの作業を終える前に、別の作業を始めてしまう
    • 人の話を最後まで聞くのが難しく、途中で上の空になってしまう

 

悩み(4):片付けや整理整頓ができない

必要なものをどこに置いたか分からなくなったり、デスクの上が書類で山積みになったりするのは、整理整頓の手順を考え、実行に移すのが苦手という特性が関係している場合があります。

具体的な悩み

    • 部屋やデスクの上がいつも散らかっている
    • 必要な書類や物を探すのに多くの時間を費やしてしまう
    • 「後でやろう」と思っているうちに、物がどんどん溜まっていく
    • 分類や取捨選択が苦手で、物を捨てられない

 

悩み(5):対人関係で誤解されやすい

衝動性や不注意の特性から、悪気なく相手を不快にさせてしまったり、誤解されたりして、人間関係に困難を感じることも少なくありません。

具体的な悩み

    • 相手の話を最後まで聞かずに、さえぎって話し始めてしまう
    • 思ったことをすぐ口に出してしまい、相手を傷つけたり、場を凍らせてしまったりする
    • 約束を忘れたり、遅刻したりして、相手からの信用を失ってしまう
    • 感情のコントロールが難しく、些細なことでイライラしたり、落ち込んだりする

 

【悩み別】今すぐできる具体的な対処法

ADHDの特性による悩みは、本人の意識や努力だけで解決するのは困難です。しかし、ツールを使ったり、やり方を工夫したりすることで、格段に生活しやすくなります。

スケジュール・時間管理の対処法:ツールやアラームの徹底活用

時間管理の苦手さは、スマートフォンやタイマーといった外部のツールを「第二の脳」として活用することでカバーできます。

  • カレンダーアプリの活用:Googleカレンダーなどのデジタルツールに、予定が入ったらすぐに入力する習慣をつけましょう。移動時間も予定に含め、「30分前」「1時間前」などリマインダー(通知)機能を複数設定するのがおすすめです。
  • アラームの徹底活用:タスクの開始・終了時間、休憩時間、薬を飲む時間など、行動の切り替えのタイミングでアラームが鳴るように設定します。
  • タスクの細分化:「資料作成」のような大きなタスクは、「①情報収集(1時間)」「②構成案作成(30分)」「③執筆(2時間)」のように小さなステップに分け、それぞれにかかる時間を設定すると、見通しが立ち、取り組みやすくなります。

優先順位付けの対処法:タスクの「見える化」と相談

頭の中だけで考えようとすると混乱してしまうため、やるべきことを書き出して「見える化」することが重要です。

    • ToDoリストの作成:その日にやるべきタスクを全て書き出します。完了したらチェックを入れることで、達成感も得られます。
    • 優先順位が分からなければ相談する:自分で判断できない時は、ためらわずに上司や同僚に「〇と△と□の仕事がありますが、どれを一番先にやるべきですか?」と具体的に確認しましょう。
    • 「緊急度・重要度マトリクス」の活用:タスクを「①緊急かつ重要」「②重要だが緊急でない」「③緊急だが重要でない」「④緊急でも重要でもない」の4つに分類するフレームワークです。視覚的に優先順位を整理できます。

 

集中力維持の対処法:作業環境の物理的な調整

注意が逸れやすい特性は、集中せざるを得ない環境を物理的に作ることで対策できます。

    • 刺激を減らす:作業に関係ないものは机の上に置かず、引き出しにしまいましょう。可能であれば、パーテーションで区切られた席や、静かな場所で作業するなどの工夫も有効です。
    • デジタル・デトックス:作業中はスマートフォンの通知をオフにしたり、PCの不要なウェブサイトやアプリを閉じたりして、デジタルな刺激を最小限に抑えましょう。
    • 時間を区切って作業する:「25分集中して5分休む」といったポモドーロ・テクニックのように、タイマーを使って短時間の集中と休憩を繰り返すことで、集中力を持続させやすくなります。

 

整理整頓の対処法:「考えなくてもできる」仕組み作り

片付けが苦手な場合は、「考えなくても元に戻せる」仕組みを作ることがポイントです。

    • 物の定位置を決める:「鍵は玄関のこのトレイ」「ハサミはこの引き出し」というように、全ての物の住所を決め、使ったら必ずそこに戻すことを徹底します。
    • ラベリングをする:引き出しや箱に、何が入っているかを書いたラベルを貼りましょう。写真を貼ったり、中身が見える透明なケースを使ったりするのも効果的です。
    • 「とりあえず箱」を用意する:すぐに分類できない書類や小物は、一時的に「とりあえず箱」に入れておき、週末など時間がある時にまとめて整理するルールにすると、散らかりを防げます。

 

対人関係の対処法:コミュニケーションのコツを意識する

対人関係の悩みは、自分の特性を理解した上で、コミュニケーションのワンクッションを意識することで軽減できます。

    • 相手の話を遮りそうな時:言いたいことが浮かんでも、ぐっとこらえてメモを取る。相手の話が終わってから、「先ほど〇〇とおっしゃっていましたが」と切り出す。
    • 思ったことをすぐ口に出しそうな時:「これを言ったら相手はどう思うか?」と一瞬考える癖をつける。難しい場合は、「ちょっと確認したいのですが」と前置きするだけでも印象が変わります。
    • 感情的になった時:カッとなったら、心の中で6秒数える。可能であればその場を少し離れて冷静になる時間を作りましょう。

 

ADHDの特性と付き合うための治療的アプローチ

セルフケアだけでは困難が続く場合、専門家のサポートを受けることで、より効果的に特性と付き合っていく方法を見つけられます。治療にはいくつかの選択肢があり、医師と相談しながら進めていきます。

    • 環境調整:本人が過ごしやすいように、周囲の環境を整えるアプローチです。これまで紹介した対処法も環境調整の一環ですが、職場や学校に協力を求め、刺激の少ない席にしてもらったり、指示を口頭だけでなく文書でもらうようにしたりといった、より積極的な働きかけも含まれます。
    • 認知行動療法 (CBT):自分の思考の癖や行動パターンに気づき、より現実的でバランスの取れた考え方や行動を身につけていく心理療法です。例えば、「ミスをしてしまった、自分はダメだ」という自動的な思考を、「ミスは誰にでもある。次はどうすれば防げるか考えよう」という建設的な思考に変える練習などを行います。
    • 薬物療法:ADHDの特性である不注意や多動性・衝動性は、脳内の神経伝達物質の働きの偏りが関係していると考えられています。薬物療法は、その働きを調整する薬を用いることで、症状を和らげる治療法です。症状が緩和されることで、本人が落ち着いて物事に取り組めるようになり、環境調整などの効果も出やすくなるという利点があります。

 

就職や仕事に関する悩みと相談先

「自分に合う仕事が分からない」「今の職場で働き続けるのがつらい」といった仕事に関する悩みは、一人で抱え込まずに専門の支援機関に相談することが大切です。

  • 障害者雇用という働き方:自分の障害特性を企業に開示した上で就職する「障害者雇用」という働き方があります。障害者手帳の取得が必要ですが、自分の苦手なことについて職場から配慮を受けやすくなるため、安心して長く働き続けやすいというメリットがあります。
  • 頼りになる支援機関
      • 就労移行支援事業所:一般企業への就職を目指す障害のある方を対象に、職業訓練や求職活動、就職後の定着までをサポートする福祉サービスです。
      • ハローワーク(公共職業安定所):障害のある方向けの専門窓口があり、求人紹介や就職相談に応じてくれます。
      • 障害者就業・生活支援センター:就業面と生活面の両方から一体的な支援を行う機関です。
      • 発達障害者支援センター:発達障害に関する専門的な相談に応じ、必要な情報提供や、他の適切な支援機関への紹介などを行ってくれます。

     

ADHDの悩みについて相談できる 就労継続支援B型事業所オリーブ

ここまで様々な対処法や支援機関を紹介しましたが、「すぐに企業で働くのは不安」「まずは自分のペースで働くことに慣れたい」と感じている方もいらっしゃるでしょう。そのような方には、私たち就労継続支援B型事業所オリーブが、あなたの新しい一歩をサポートします。

オリーブは、関西(大阪、兵庫、京都、奈良)に拠点を置く、障害や病気のある方のための「働く場所」です。雇用契約を結ばないため、週1日・1日数時間からなど、ご自身の体調やペースに合わせて無理なくスタートできます。

「集中力が続くか心配」「複雑な作業は苦手」といった不安にも、経験豊富なスタッフが一人ひとりに寄り添い、あなたに合った作業を一緒に見つけます。まずは簡単な作業から始めて、少しずつ自信をつけていくことができます。同じような悩みを持つ仲間と交流しながら、安心して過ごせる居場所がここにあります。見学や相談はいつでも歓迎していますので、ぜひ一度、お気軽にお問い合わせください。

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