お役立ち情報 受診と診断 各種検査(知能検査など) 発達障害

発達障害の検査方法や診断について|受診先・相談先を解説

「職場でのコミュニケーションがうまくいかない」「ケアレスミスが多く、段取りを立てるのが苦手」「特定の音や光がひどく気になって、集中できない」…こうした日常生活や仕事での「生きづらさ」の背景に、もしかしたら発達障害という特性が関係しているのかもしれない、と悩んでいる方はいませんか。

発達障害の特性は、本人の「努力不足」や「性格」の問題ではありません。脳機能の生まれつきの偏りによるものです。検査や診断を通じて自身の特性を正しく理解することは、生きづらさの原因を知り、自分に合った対処法や環境を見つけるための、非常に大切な第一歩となります。

この記事では、大人の発達障害の検査や診断がどのように行われるのか、その具体的な流れや内容、費用、そして受診・相談できる場所まで、分かりやすく解説していきます。検査を受けることへの不安を和らげ、あなたが次の一歩を踏み出すための手助けとなれば幸いです。

発達障害の検査・診断の流れ

発達障害の診断は、一度の検査だけで「はい、あなたは発達障害です」と決まるような単純なものではありません。医師による丁寧な問診や、客観的な心理検査、そして生育歴(生まれてから現在までの育ちの経緯)などを総合的に評価して、慎重に行われます。

ステップ1:診察・問診(インテーク面接)

まず最初に行われるのが、医師による詳しい問診です。診断において最も重要なプロセスであり、多くの時間をかけます。主に、以下のような内容について質問されます。

問診で聞かれる内容の例

  • 現在困っていること:仕事、対人関係、日常生活など、どのような場面で、具体的にどんなことに困っているのかを詳しく聞き取ります。
  • 子どもの頃の様子:発達障害は生まれつきの脳機能の障害であるため、子どもの頃の様子を知ることが非常に重要です。集団行動は得意だったか、友達との関係、学習面でのつまずき、忘れ物の多さ、通知表の所見などを振り返ります。
  • 生育歴・職歴:出生時の状況、乳幼児健診での指摘の有無、学歴、これまでの職歴や転職歴、仕事が続かなかった理由なども、診断の手がかりとなります。
  • 家族について:家族に発達障害の診断を受けている人がいるかなども、参考情報として質問されることがあります。

可能であれば、母子健康手帳や小・中学校の通知表を持参する、あるいはあなたの幼少期をよく知る家族(親など)に同席してもらうと、客観的な情報が増え、より正確な診断につながりやすくなります。

ステップ2:心理検査の実施

問診と並行して、本人の認知機能の特性(得意なこと・苦手なこと)や、発達障害の傾向を客観的に評価するために、様々な心理検査が行われます。これにより、本人が感じている「生きづらさ」が、どのような認知の偏りから生じているのかを探っていきます。具体的な検査内容は、次の章で詳しく解説します。

ステップ3:診断と結果の説明

最終的な診断は、以下の情報を総合的に考慮して、医師が判断します。

  • 問診(生育歴の聴取など)
  • 診察時の行動観察
  • 心理検査の結果
  • 国際的な診断基準(DSM-5など)との照らし合わせ
  • 日常生活や社会生活に、特性による著しい困難が生じているか

大切なのは、検査の点数だけで診断が決まるわけではないということです。あくまで、問診で得られたエピソードや本人の困りごとが中心となり、検査結果はそれを裏付けたり、特性を客観的に理解したりするための補助的な材料として用いられます。

検査・診断を受けるか悩んでいる方へ

検査や診断を受けることには、メリットもあれば、心理的な負担などのデメリットを感じる方もいるかもしれません。

診断を受けるメリット

    • 自分の「生きづらさ」の原因が特性にあると分かり、自分を責めなくなる
    • 自分の得意・不得意が客観的に分かり、具体的な対策が立てやすくなる
    • 周囲の人に、自分の特性として説明し、理解や協力を求めやすくなる
    • 必要に応じて、障害者手帳の取得や、障害福祉サービスの利用など、公的な支援につながりやすくなる

 

考えられるデメリット

  • 「障害」という診断名(ラベル)を貼られることへの心理的な抵抗感
  • 診断結果を受け入れるまでに時間がかかり、気持ちが落ち込む場合がある

診断はゴールではなく、自分を理解し、より良い生活を送るためのスタートです。診断名がつかなくても、特性の傾向(いわゆる「グレーゾーン」)を理解するだけで、対策が立てやすくなることもあります。

大人の発達障害の検査方法と内容

大人の発達障害の診断のために行われる、代表的な心理検査を紹介します。これらの検査を複数組み合わせることで、多角的に本人の特性を評価します。

検査の種類 代表的な検査名 目的・内容
知能検査 WAIS-Ⅳ(ウェイス・フォー) 16歳以上を対象とした、世界で最も標準的な知能検査です。全体のIQ(知能指数)だけでなく、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」という4つの指標を測定します。これらの指標の間に大きな差(ディスクレパンシー)がある場合、それが発達の偏りや、生活上の困難さの原因となっている可能性を探ります。
ASD(自閉スペクトラム症)傾向の検査 AQ-J(自閉症スペクトラム指数 日本語版) 質問紙形式の検査で、ASDの特性がどの程度見られるかを測定します。「社会性スキル」「注意の切り替え」「細部へのこだわり」などの項目について、自己評価で回答します。
ADHD(注意欠如・多動症)傾向の検査 CAARS(コナース) ADHDの症状の有無や重症度を評価するための質問紙検査です。「不注意」「多動性・衝動性」などの項目について、自己評価や、家族など近しい人からの他者評価で回答します。
遂行機能(実行機能)の検査 BADS(遂行機能障害症候群の行動評価) 「計画を立てる」「段取りを考える」「目標を達成するために行動を調整する」といった、社会生活に不可欠な遂行機能を評価する検査です。いくつかの課題(パズルやカードゲームのようなもの)を通して、問題解決能力を測定します。
視覚認知・協調運動の検査 DTVP-2(フロスティッグ視知覚発達検査) 物の形や位置、空間関係などを目で見て正確に捉える力(視知覚)を評価します。「不器用さが目立つ」「図形を写すのが苦手」といった困難さの背景を探ります。

これらの検査は、専門のトレーニングを受けた臨床心理士などが行い、結果の分析にも専門的な知識を要します。

発達障害の検査を受けられる場所と費用

発達障害の検査や診断は、どこで受けられるのでしょうか。主に病院か、地域の支援機関が窓口となります。

病院で受ける場合

精神科または心療内科が専門の診療科となります。特に、「大人の発達障害」を専門としている、あるいは標榜している医療機関を受診することが重要です。

すべての精神科で発達障害の詳しい検査や診断ができるわけではないため、事前に病院のホームページを確認したり、電話で問い合わせたりして、大人の発達障害の診療を行っているかを確認してから予約しましょう。専門機関は数が少なく、予約が数ヶ月先になることも珍しくありません。

支援機関で相談・検査を受ける場合

各都道府県・指定都市に設置されている「発達障害者支援センター」でも、発達障害に関する相談や、必要に応じた簡易的な検査を受けられる場合があります。どこに相談すればよいか分からないときに、まず頼れる窓口です。

ただし、支援機関はあくまで相談や支援を行う場所であり、確定診断(病名を診断すること)ができるのは医師のみです。支援センターで検査を受けた場合でも、最終的な診断のためには、センターから紹介された医療機関を受診する必要があります。

発達障害の検査にかかる料金

発達障害の検査や診断にかかる費用は、基本的に健康保険が適用されます。

  • 診察・問診:保険適用となり、3割負担の場合で初診で数千円程度です。
  • 心理検査:保険適用となる場合が多いですが、医療機関の方針や検査の種類によっては自費(保険適用外)となることもあります。費用は1万円から数万円程度と幅がありますので、事前に医療機関に確認するとよいでしょう。

診断後の通院治療については、医療費の自己負担額が軽減される「自立支援医療(精神通院医療)」制度を利用できる場合があります。

発達障害に関する相談先

診断を受けるかどうかに関わらず、発達障害に関する悩みや、仕事・生活上の困りごとを相談できる専門機関があります。一人で抱え込まず、こうした支援機関を積極的に活用しましょう。

支援機関名 主な役割と特徴
発達障害者支援センター 各都道府県・指定都市に設置されている、発達障害に特化した総合相談窓口です。本人や家族からのあらゆる相談に応じ、適切な支援機関への紹介(リエゾン)も行います。
障害者就業・生活支援センター 就職に関する支援と、日常生活における支援を一体的に行ってくれる、地域に密着した相談機関です。就職後の定着支援や、金銭管理、体調管理といった生活面の相談にも乗ってくれます。
地域障害者職業センター 各都道府県に設置され、ハローワークなどと連携しながら、より専門的な職業リハビリテーションを提供します。専門のカウンセラーによる職業評価や、ジョブコーチによる職場適応支援などを受けられます。
ハローワーク 全国のハローワークには、障害のある方の就職を専門にサポートする「専門援助窓口」があります。障害の特性を理解した担当者が、求人紹介や面接対策など、きめ細やかな支援を提供してくれます。

 

発達障害の方が利用できる就職支援サービス

発達障害の特性によって、仕事探しや、職場で働き続けることに困難を感じる方は少なくありません。そうした方々の「働きたい」をサポートする専門の福祉サービスがあります。

    • 就労移行支援:一般企業への就職を目指す障害のある方が、最長2年間、職業訓練やビジネスマナー、コミュニケーションスキルの向上、職場実習、就職活動のサポート、就職後の定着支援まで、トータルで受けられる障害福祉サービスです。
    • 就労継続支援:すぐに一般企業で働くことが難しい方向けに、支援を受けながら働く場を提供するサービスです。「A型(雇用型)」と「B型(非雇用型)」があります。

 

発達障害に関する就労相談は就労継続支援B型事業所オリーブへ

診断を受けて自分の特性が分かり、様々な支援機関があることも理解した。しかし、「すぐに一般企業で働くのは、まだ自信がない」「まずは安定して通える場所で、働くことに慣れることから始めたい」…そう感じている方も多いのではないでしょうか。

就労移行支援が、いわば「就職のための予備校」だとすれば、私たち就労継続支援B型事業所オリーブは、「働くための基礎体力をつける、安心できるジム」のような場所です。

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、発達障害などの障害のある方が、ご自身のペースを大切にしながら働ける場所を提供しています。雇用契約を結ばないため、週に1日、1日1時間といったごく短い時間からスタートし、体調や目標に合わせてステップアップしていくことが可能です。

データ入力や軽作業など、一人で集中して取り組める仕事を通じて、まずは安定した生活リズムを築き、働くことへの自信を育む。オリーブは、そんなあなたの「社会参加への第一歩」を、全力でサポートします。自分の特性と向き合いながら、あなたらしい働き方を見つけるために。まずはお気軽に、オリーブへ見学・ご相談ください。

お問い合わせ

就労に関する疑問やお悩み、
お気軽にご相談ください。

お問い合わせ