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コミュニケーション障害とは?種類別の特徴や原因・仕事での悩みの対処法

コミュニケーション障害(コミュニケーション症群)とは?
「相手の意図がうまく汲み取れない」「雑談の輪に入るのが苦手で、職場で孤立しがち」「指示された内容を誤解して、ミスをしてしまうことが多い」そんな風に、日々のコミュニケーションに難しさを感じ、悩んでいる方はいませんか。それは単なる「人見知り」や「口下手」ではなく、もしかしたら「コミュニケーション障害」という、発達の特性が関係しているのかもしれません。コミュニケーション障害は、本人の努力不足や性格の問題ではありません。生まれ持った脳機能の特性などが原因で、言葉や非言語的なサインのやり取りに困難が生じる状態です。この記事では、コミュニケーション障害とは何か、その主な種類と症状、そして多くの方が悩む仕事の場面での具体的な対処法について、分かりやすく解説していきます。ご自身の特性を正しく理解し、適切な工夫を知ることで、コミュニケーションの悩みはきっと軽くなります。この記事が、あなたが自分らしく、安心して社会生活を送るための一助となれば幸いです。
まず、「コミュニケーション障害(コミュニケーション症群)」とは何か、その基本的な定義と、関連の深い発達障害との関係について見ていきましょう。
社会的状況での言語・非言語のやり取りに困難が生じる障害
コミュニケーション障害とは、言葉を理解したり、話したり、あるいは言葉や身振り手振りなどを使って他者と円滑なやり取りをしたりすることに、継続的な困難が生じている状態を指します。アメリカ精神医学会が作成した国際的な診断基準「DSM-5」では、「コミュニケーション症群」として分類されており、単なる会話の得意・不得意とは異なる、医学的な診断名です。この障害は、本人の知的な能力(IQ)とは関係なく、特定のコミュニケーションスキルに困難を抱えているのが特徴です。そのため、本人の困難さが周りから理解されにくく、「空気が読めない」「真面目に聞いていない」といった誤解を受け、本人が孤立感や自己肯定感の低下に苦しむことも少なくありません。
発達障害(ASD・ADHDなど)との関連
コミュニケーションの困難さは、自閉スペクトラム症(ASD)の主要な特性の一つです。ASDの人は、言葉の裏の意味を理解したり、相手の表情や声のトーンから気持ちを推測したり、その場の空気に合わせた言動をとったりすることが苦手な傾向があります。また、ADHD(注意欠如・多動症)のある人も、不注意や衝動性といった特性から、相手の話を最後まで聞かずに話し始めたり、思ったことをすぐに口にしてしまったりと、結果的にコミュニケーションに困難が生じることがあります。このように、コミュニケーション障害はASDやADHDといった他の発達障害の症状として現れることが多いですが、次に紹介する「社会的(語用論的)コミュニケーション症」のように、他の発達障害の特性は見られないものの、社会的なコミュニケーションにのみ困難がある、という独立した診断がつく場合もあります。
コミュニケーション障害の主な種類と症状
「コミュニケーション症群」は、DSM-5において、主に以下の5つの種類に分類されています。それぞれに異なる症状や特徴があります。
障害の種類 | 主な症状・特徴 |
---|---|
言語症(言語障害) | 言葉の習得や使用そのものに困難がある(語彙が少ない、文章を作るのが苦手など)。 |
語音症(語音障害) | 特定の言葉の音を正しく発音できない(「さかな」が「たかな」になるなど)。 |
吃音(児童期発症流暢症) | 言葉が滑らかに出ない(音を繰り返す、引き伸ばす、言葉に詰まるなど)。 |
社会的(語用論的)コミュニケーション症 | 言葉の社会的ルールや文脈の理解が苦手(冗談が通じない、会話のキャッチボールが苦手など)。 |
特定不能のコミュニケーション症 | 上記のいずれにも明確に分類できないが、コミュニケーションに著しい困難がある場合。 |
言語症(言語障害)
言葉の「内容」に関わる障害です。言葉を理解したり、語彙を増やしたり、文法に沿って文章を組み立てたりすることに、年齢相応のレベルよりも著しい困難が見られます。例えば、「知っている言葉の数が少ない」「短い文章でしか話せない」「複雑な指示を理解できない」といった症状が特徴です。
語音症(語音障害)
言葉の「音」に関わる障害で、構音障害とも呼ばれます。特定の音を正しく発音することが難しいため、言葉が不明瞭になり、相手に聞き返されることが多くなります。例えば、「さかな」を「たかな」、「くるま」を「くうま」のように、特定の音を別の音に置き換えたり、省略したりするのが特徴です。
吃音(きつおん)(児童期発症流暢症)
言葉の「流暢さ(なめらかさ)」に関わる障害です。話そうとする時に、言葉がスムーズに出てこない状態を指します。具体的には、音や言葉の一部を繰り返す(例:「ぼ、ぼ、ぼくは」)、音を引き伸ばす(例:「ぼーーくは」)、言葉を出そうとしても詰まって出てこない(ブロッキング)といった症状が見られます。これにより、本人は話すこと自体に強い不安や恐怖を感じ、コミュニケーションを避けてしまうこともあります。
社会的(語用論的)コミュニケーション症
言葉の文法や発音には問題がないものの、その場の状況や文脈に合わせて、言葉を適切に使いこなすことに困難がある障害です。大人の発達障害において、仕事の場面で問題になりやすいのは、このタイプが多いと言われています。
- 挨拶や会話の始め方・終わり方がわからない
- 相手や状況に合わせて話し方を変えられない
- 会話のキャッチボールが続かず、一方的に話してしまう
- 冗談や皮肉、比喩表現などが理解できず、言葉通りに受け取ってしまう
- 相手の表情や身振りから意図を読み取ることが苦手
こうした困難さから、対人関係を築く上で大きな障壁を感じることがあります。
コミュニケーション障害の原因と診断
コミュニケーション障害は、なぜ起こるのでしょうか。また、どのように診断されるのでしょうか。
原因は生まれつきの脳機能の特性
コミュニケーション障害の原因は、完全には解明されていませんが、多くは生まれつきの脳機能の特性が関係していると考えられています。特に、言語や社会性を司る脳の領域に、何らかの機能的な偏りがあるのではないかと推測されています。遺伝的な要因も関連すると言われており、家族に同じような特性を持つ人がいる場合もあります。重要なのは、本人の育てられ方や努力不足が原因ではないということです。
診断プロセスと基準
コミュニケーション障害の診断は、医師や言語聴覚士などの専門家によって、国際的な診断基準である「DSM-5」などに基づいて行われます。診断プロセスでは、主に以下のことが行われます。
- 問診
- 本人や家族から、幼少期からの発達の様子、現在困っていることなどを詳しく聞き取ります。
- 行動観察
- 診察中の会話の様子や、他者との関わり方を観察します。
- 心理検査・発達検査
- 知能検査や、コミュニケーション能力を測るための専門的な検査を行い、特性を客観的に評価します。
これらの情報を総合的に評価し、どのタイプのコミュニケーション障害に該当するか、あるいは他の発達障害(ASDなど)の特性が背景にあるのかなどを、慎重に判断していきます。
仕事の場面での悩みと具体的な対処法
コミュニケーション障害のある方は、その特性から、仕事の場面で様々な困難に直面しがちです。ここでは、よくある悩みと、今日から実践できる具体的な対処法をご紹介します。
よくある仕事での悩み
- 指示の聞き間違いや誤解が多い
- 口頭での指示だと、内容を正確に記憶できなかったり、曖昧な表現の意図を汲み取れなかったりする。
- 「報・連・相」が苦手
- どのタイミングで、誰に、何を報告すればよいか判断できず、結果的に報告漏れを指摘される。
- 会議での発言ができない
- 話すタイミングが掴めなかったり、頭の中で意見がまとまらなかったりして、発言できない。
- 雑談や電話対応が苦痛
- 相手の話にどう返せばいいか分からず、会話が続かない。電話では相手の表情が見えないため、さらに困難を感じる。
- 「空気が読めない」と思われる
- 相手の気持ちを察することができず、悪気なく相手を不快にさせるような発言をしてしまうことがある。
今日からできる対処法(自己理解と工夫)
こうした悩みは、少しの工夫で軽減することが可能です。自分に合った方法を見つけて、試してみてください。
- 指示を文字情報で補う
- 口頭での指示が苦手な場合は、「お手数ですが、後でメールかチャットでも指示をいただけますでしょうか?」とお願いしてみましょう。文字として残すことで、誤解や抜け漏れを防ぐことができます。
- 指示内容を復唱して確認する
- 指示を受けたら、「〇〇という理解でよろしいでしょうか?」と、自分の言葉で要約して確認する癖をつけましょう。認識のズレをその場で修正できます。
- 「報・連・相」をルール化・ツール化する
- 「毎日夕方5時に、今日の進捗をチャットで報告する」「困ったことがあれば、まず〇〇さんに相談する」など、報告のタイミングや方法を上司と相談して具体的に決めておくと、迷いがなくなります。チェックリストやテンプレートを活用するのも有効です。
- テンプレートやスクリプトを用意する
- 電話対応やメールの返信など、定型的な業務については、あらかじめ台本(スクリプト)やテンプレートを用意しておくと、落ち着いて対応できます。
- クッション言葉を活用する
- 質問したり、反論したりする際に、「恐れ入りますが」「もし差し支えなければ」といったクッション言葉を使う練習をすると、相手に柔らかい印象を与えることができます。
職場に求める合理的配慮
信頼できる上司や人事担当者に、自分のコミュニケーションの特性(例:「口頭の指示が少し苦手です」)を伝え、必要な配慮を相談することも大切です。障害者手帳を持っている場合は、企業に対して「合理的配慮」を求めることができます。
コミュニケーションの悩みに関する相談先・支援機関
仕事に関する悩みや困りごとは、一人で抱え込まずに専門の支援機関に相談することが、解決への近道です。
- 発達障害者支援センター
- 発達障害に関する専門的な相談支援機関です。日常生活の悩みから就労に関することまで、本人や家族からの相談に応じ、必要な情報提供や、医療・福祉・労働などの関係機関への紹介を行います。
- 障害者就業・生活支援センター
- 「なかぽつ」とも呼ばれ、就職に関する相談から職場定着、金銭管理や健康管理といった生活面まで、一体的な支援を提供しています。
- ハローワーク(専門援助部門)
- 障害者手帳を持つ方を対象に、専門の職員や相談員が担当となり、求人紹介や応募書類の添削、面接練習など、きめ細やかな就職サポートを受けられます。
- 就労移行支援事業所
- 一般企業への就職を目指す障害のある方が、原則2年間利用できる福祉サービスです。ビジネスマナー、PCスキルなどの職業訓練、自己分析、企業探し、職場実習、就職後の定着支援など、就職に向けた包括的なサポートを提供します。
実践的なコミュニケーションの練習なら就労継続支援B型事業所オリーブへ
コミュニケーションの悩みは、一人で解決するのが難しい問題です。知識として対処法を知っていても、それを実践する場がなければ、なかなかスキルとして身につきません。もしあなたが、「安心してコミュニケーションの練習ができる場所がほしい」「失敗を恐れずに、人とのやり取りに慣れていきたい」と感じているなら、私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」が、その練習の場となります。
オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、コミュニケーション障害をはじめ、様々な障害のある方の「働きたい」という気持ちをサポートしています。実際の職場に近い環境で、支援員のサポートを受けながら、「報告・連絡・相談」や、他の利用者さんとの共同作業など、仕事で必要となるリアルなコミュニケーションを、あなたのペースで実践・練習することができます。
失敗しても大丈夫。ここでは、誰もあなたのことを責めません。むしろ、その失敗を次に活かすための方法を、スタッフが一緒に考えます。データ入力や軽作業といった、コミュニケーションの負担が少ない仕事から始め、少しずつ自信をつけていくことも可能です。あなたの「働きたい」という気持ちと、「コミュニケーションがうまくなりたい」という願いを、オリーブで形にしてみませんか。見学やご相談は随時受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。