ADHD(注意欠如・多動症) お役立ち情報 各種支援センター(障害者就業・生活支援センター、地域活動支援センターなど)
ADD(注意欠陥障害)とは?ADHDとの違いや症状・仕事での悩みを解説

ADD(注意欠陥障害)とADHD(注意欠如多動症)の違い
「集中力が続かず、簡単なミスを繰り返してしまう」「いつも探し物ばかりしている」「約束や締め切りをうっかり忘れてしまう」。もし、このようなことで日常生活や仕事に支障が出て悩んでいるなら、それはADD(注意欠陥障害)の特性によるものかもしれません。周りからは「だらしない」「やる気がない」と誤解され、自分を責めていませんか?一生懸命努力しても結果が出ず、自信を失いかけていませんか?その困難さは、あなたの性格や努力不足が原因ではない可能性があります。この記事では、ADDとは何か、よく聞くADHDとの違い、具体的な症状や特徴、そして仕事で直面しがちな悩みと、その対処法について分かりやすく解説します。ご自身の特性を正しく理解し、適切なサポートを得ることで、困りごとを減らし、自分らしく活躍するための第一歩を踏み出しましょう。
「ADD」と「ADHD」、二つの言葉の違いがよく分からないという方も多いのではないでしょうか。まずは、この二つの関係性から解説します。
ADDはADHD(不注意優勢型)の古い呼び方
結論から言うと、ADD(注意欠陥障害)は、現在では正式には使われていない古い診断名です。医学的な診断基準が改訂される中で、現在ではADHD(注意欠如・多動症)という診断名に統合され、その中の一つのタイプである「不注意優勢型」が、かつてのADDに該当します。1990年頃まではADDという名称が使われていましたが、それ以降はADHDという診断名が主として使われるようになりました。そのため、現在、医療機関で「ADD」と診断されることは基本的にはありません。この記事では、分かりやすさを重視し、かつてのADDに当たる「不注意優勢型ADHD」を指して、ADD(不注意優勢型ADHD)と表記して解説を進めます。
多動性・衝動性の有無が大きな違い
ADHDの主な特性は、「不注意」「多動性」「衝動性」の3つです。このうち、どの特性が優勢に現れるかによって、ADHDは3つのタイプに分類されます。
ADHDの3つのタイプ
- 不注意優勢型(Predominantly Inattentive Presentation)
- 「不注意」の特性が強く、かつてのADDがこれに当たります。多動性・衝動性はほとんど見られないか、あっても目立ちません。
- 多動性・衝動性優勢型(Predominantly Hyperactive-Impulsive Presentation)
- 「多動性(じっとしていられない、そわそわする等)」や「衝動性(順番を待てない、思ったことをすぐ口にする等)」の特性が強く現れます。
- 混合表現型(Combined Presentation)
- 「不注意」「多動性」「衝動性」の3つの特性を、いずれも同じくらい併せ持っているタイプです。
ADD(不注意優勢型ADHD)は、多動性や衝動性が目立つ他のタイプに比べて、おとなしく「ぼんやりしている」「やる気がない」「人の話を聞いていない」と見られがちで、周囲から障害の特性だと気づかれにくい傾向があります。そのため、本人も自覚がないまま、困難さだけを抱え込んでしまうケースが少なくありません。
ADD(不注意優勢型ADHD)の主な症状・特徴
ADD(不注意優勢型ADHD)の「不注意」という特性は、具体的にどのような症状や行動として現れるのでしょうか。代表的なものを詳しく解説します。
集中力が続かずケアレスミスが多い
ADDの最も代表的な症状の一つが、集中力を維持することの難しさです。これは「ワーキングメモリ」という、情報を一時的に記憶しながら作業するための脳の機能が弱いことに関連していると考えられています。
- 注意が逸れやすい
- 外部の些細な物音や光、人の動きなどですぐに注意が逸れてしまい、目の前の作業に集中し続けることが困難です。
- ケアレスミスが多い
- 書類の誤字脱字や計算間違い、作業手順の抜け落ちなど、細部への注意が散漫になりがちで、簡単なミスを繰り返してしまうことがあります。
- 話を聞き逃す
- 直接話しかけられていても、話の途中で他のことを考えてしまい、重要な部分を聞き逃したり、内容を誤解したりすることがあります。
忘れ物やなくし物が多い
計画的に物事を考えたり、注意を払ったりすることが苦手なため、忘れ物やなくし物が多くなる傾向があります。これは記憶力が悪いというよりも、注意が逸れやすく、物を置いた瞬間や、何かをしようと思った瞬間に、そのことを意識から消し去ってしまうために起こります。
- 物をなくしやすい
- 鍵や財布、携帯電話など、日常生活で頻繁に使うものをどこに置いたか忘れてしまい、いつも探し物をしている状態になりがちです。
- 忘れ物が多い
- 仕事で使う書類や道具、あるいは人との約束や提出物の締め切りなどを、うっかり忘れてしまうことがあります。
- 約束を忘れる
- カレンダーや手帳に書き込んでいても、それを見ること自体を忘れてしまい、約束をすっぽかしてしまうことがあります。
片付けや整理整頓が苦手
物事を順序立てて考えたり、計画的に実行したりすることが苦手なため、身の回りの整理整頓がうまくできないという特徴があります。
- 机や部屋が散らかりやすい
- どこから手をつけて良いか分からず、後回しにしているうちに、物がどんどん溜まってしまいます。
- タスクの整理が苦手
- 複数の仕事や作業を抱えた時に、どれを優先すべきか、どのような手順で進めるべきかを計画するのが困難です。
うつ病など二次障害との関連
ADDの特性は、子どもの頃は「忘れん坊」「おっちょこちょい」といった性格の問題として見過ごされがちです。しかし、大人になって社会に出ると、仕事でのミスや人間関係のつまずきから、周囲に叱責されたり、孤立したりする経験を重ねやすくなります。このような状況が続くと、自己肯定感が低下し、失敗を補おうと過剰に頑張り心身ともに疲れ果ててしまうなどの悪循環に陥り、うつ病や不安障害、適応障害といった二次障害を発症してしまうケースが少なくありません。二次障害は、ADDの特性そのものよりも本人を苦しめることがあるため、早期に自身の特性に気づき、適切な対処法を身につけることが非常に重要です。
ADD(不注意優勢型ADHD)の診断と治療
「自分はADDかもしれない」と感じたら、どこで相談し、どのように診断・治療が進められるのでしょうか。
診断が行われる場所(精神科・心療内科など)
ADD(ADHD)の診断は、成人の発達障害を専門とする精神科や心療内科、一部の大学病院などで行われます。いきなり専門の医療機関を受診するのに抵抗がある場合は、まずはお住まいの地域の保健センターや、発達障害者支援センターといった公的な相談機関に連絡し、どこに相談すればよいか尋ねてみるのも良いでしょう。
診断の基準と方法
診断は、アメリカ精神医学会が作成した『DSM-5』などの国際的な診断基準に基づいて行われます。血液検査や画像検査で分かるものではなく、問診、心理検査、行動観察といった情報を総合的に評価して、専門医が慎重に判断します。診断の際には、『DSM-5』に定められた「不注意」に関する9つの症状のうち、大人の場合は5つ以上が当てはまり、それらの症状が12歳以前から存在し、家庭や職場といった複数の場面で、生活に支障をきたしていることなどが基準となります。
主な治療方法(環境調整・薬物療法など)
ADD(ADHD)の治療は、一つの方法だけでなく、心理社会的治療、薬物療法、環境調整などを組み合わせて行うのが一般的です。
- 心理社会的治療
- 認知行動療法やソーシャルスキルトレーニング(SST)など、自分の思考や行動のパターンを理解し、より適応的なスキルを身につけるためのトレーニングです。
- 薬物療法
- 不注意などの症状を緩和するために、脳内の神経伝達物質に作用する薬が処方されることがあります。薬物療法は、あくまで症状をコントロールするための補助的な手段であり、心理社会的治療と並行して行うことが重要です。
- 環境調整
- 集中を妨げる刺激が少ない環境を整えることが基本です。To-Doリストの作成やタイマーの活用、デスク周りを整理する、ノイズキャンセリングイヤホンを使う、タスク管理アプリを活用するなど、自分でできる工夫も多くあります。
仕事での悩みと求められる配慮
ADDの特性は、仕事の場面で様々な困難さを引き起こすことがありますが、一方で強みとして活かせる側面もあります。
ADDの特性による仕事での悩み
-
- ミスや抜け漏れが多い:集中力が続かず、単純な入力ミスや確認漏れを繰り返してしまいます。
- スケジュール管理ができない:複数のタスクの優先順位付けや、時間配分が苦手で、納期に遅れてしまいがちです。
- 重要な指示を聞き逃す:会議中などに他のことを考えてしまい、重要な決定事項や指示を聞き逃してしまいます。
- 整理整頓ができず、物をなくす:机の上が散らかってしまい、必要な書類や備品を探すのに時間がかかったり、紛失したりします。
- 単調な作業が苦痛:興味の持てないルーティンワークは、特に集中力を維持するのが難しく、強い苦痛を感じることがあります。
ADDの特性が強みになることも
一方で、ADDの特性は、環境によっては大きな強みにもなります。
- 独創性・発想力
- 注意が色々な方向に向かうため、他の人が思いつかないようなユニークなアイデアや、斬新な解決策を生み出すことがあります。
- 過集中(ハイパーフォーカス)
- 自分の興味があることに対しては、驚異的な集中力を発揮し、高いパフォーマンスを見せることがあります。
- 行動力
- 好奇心が強く、面白いと思ったことに対しては、すぐに行動に移すことができます。
デザイナー、企画職、研究開発、起業家など、独創性や高い集中力が求められる仕事で、その能力を存分に発揮している方も少なくありません。
職場で求められる合理的配慮の例
こうした悩みは、職場の理解と協力(合理的配慮)によって、大幅に軽減できる可能性があります。障害者手帳を取得し、障害者雇用枠で就職することで、以下のような配慮を求めやすくなります。
- 指示の出し方の工夫
- 口頭での指示だけでなく、メールやチャット、メモなどで、視覚的に分かりやすく指示を出してもらう。一度に一つの指示にしてもらう。
- 作業環境の調整
- 電話や人の往来が少ない、静かで集中しやすい席にしてもらう。
- ツールの使用許可
- ノイズキャンセリングイヤホンの使用や、タスク管理ツール、タイマーなどの使用を許可してもらう。
- 業務内容の調整
- 本人の負担になりにくいように業務量を調整してもらう。タスクを細分化し、チェックリストを作成してもらう。
- 定期的な面談
- 相談する担当者を一人に決め、定期的に進捗確認や困りごとの相談をする時間を設けてもらう。
仕事や生活に関する相談先・支援機関
ADDの特性に関する悩みは、一人で抱え込まず、専門の支援機関に相談することが大切です。
- 発達障害者支援センター
- 発達障害に関する専門的な相談支援機関です。日常生活の悩みから就労に関することまで、本人や家族からの相談に応じ、必要な情報提供や、医療・福祉・労働などの関係機関への紹介を行います。
- 障害者就業・生活支援センター
- 「なかぽつ」とも呼ばれ、就職に関する相談から職場定着、金銭管理や健康管理といった生活面まで、一体的な支援を提供しています。
- ハローワーク(専門援助部門)
- 障害者手帳を持つ方を対象に、専門の職員や相談員が担当となり、求人紹介や応募書類の添削、面接練習など、きめ細やかな就職サポートを受けられます。
- 就労移行支援事業所
- 一般企業への就職を目指す障害のある方が、原則2年間利用できる福祉サービスです。ビジネスマナー、PCスキルなどの職業訓練、自己分析、企業探し、職場実習、就職後の定着支援など、就職に向けた包括的なサポートを提供します。
自分に合った環境で働く練習なら 就労継続支援B型事業所オリーブへ
ADDの特性を理解し、様々な工夫をしても、すぐに一般企業で働くことに不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。「まずは、ミスをしても受け入れてもらえる安心できる環境で、働くことに慣れたい」「自分のペースで、得意なことを見つけたい」。そう考えるなら、就労継続支援B型事業所の利用も一つの有効な選択肢です。
就労継続支援B型事業所オリーブでは、ADDなどの発達障害の特性を持つ方が、それぞれのペースを大切にしながら、データ入力や軽作業などの仕事に取り組んでいます。例えば、作業手順は分かりやすくマニュアル化され、スタッフが丁寧にサポートします。雇用契約を結ばないため、週1日・短時間からでも利用でき、安定した生活リズムを作りながら、働くことへの自信を育んでいくことができます。
自分の特性と上手に付き合いながら、あなたらしい働き方を見つけるために、ぜひ一度、お近くのオリーブへ見学・相談にお越しください。専門の支援員が、あなたの悩みや希望を丁寧に伺い、一緒に考えます。