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大人の吃音症とは?症状の種類や原因・仕事での悩みを楽にする方法を解説

大人の吃音症の主な症状・特徴

「言いたいことは頭に浮かんでいるのに、最初の言葉がどうしても出てこない」「電話で自分の名前を言うのが怖くて、電話が鳴るたびに緊張する」そんな、話すことへの強い苦手意識や恐怖心から、仕事や日常生活で悩んでいませんか。こうした話し方の困難は、単なる「緊張しい」や「話し下手」ではなく、「吃音(きつおん)症」という、音声の流暢性(なめらかさ)に関わる障害の一つかもしれません。吃音症は、本人の意思や努力とは関係なく起こるもので、決して珍しいものではありません。この記事では、大人の吃音症の主な症状や原因、治療や改善方法、そして仕事での悩みを楽にするための具体的なヒントまで、分かりやすく解説していきます。吃音症を正しく理解し、あなたらしいコミュニケーションの形を見つけるための一歩として、ぜひお役立てください。

吃音症の症状は、単に「どもる」という言葉で片付けられるものではなく、いくつかの特徴的なタイプに分けられます。これらは一つだけが現れることもあれば、複数が混ざって現れることもあります。

中核症状:言葉の非流暢性

吃音の核となる、意図せず起こってしまう話し方の特徴です。

言葉の繰り返し(連発)
特定の音や言葉の一部を繰り返してしまいます。
音の繰り返し:「あ、あ、あ、りがとうございます」
音節の繰り返し:「こ、こ、こんにちは」
単語の繰り返し:「あの、あの、明日の件ですが」

 

引き伸ばし(伸発)
言葉の一部分を、長く引き伸ばして発音します。
「あーーーりがとうございます」
「すーーーみません」

 

言葉の詰まり(難発・ブロック)
話そうとしているのに、喉や口が詰まったようになり、言葉や音が出てこなくなる症状です。これは、本人にとって最も苦痛が大きく、大人の吃音症で特に多く見られます。声を出そうと体に力が入り、顔の筋肉がこわばることもあります。

 

二次的行動(随伴症状)と内面的な苦痛

上記の核となる症状に加えて、吃音から抜け出そうともがいたり、吃音を隠そうとしたりすることで、二次的な行動や心理的な問題が現れます。

二次的行動(随伴症状)
吃音から抜け出そうと無意識に行う行動です。
体を揺する、足を踏み鳴らす、顔をしかめる
話しやすい言葉を先に言う(例:「えーっと、あのー」)
苦手な言葉を、別の言いやすい言葉に言い換える(迂言)

 

内面的な苦痛
吃音の経験を重ねることで、話すこと自体に予期不安や恐怖を感じるようになります。また、「どもったら笑われる」「変に思われる」といったネガティブな感情が強まり、自己肯定感の低下や、社交不安につながることもあります。

 

症状の「波」について

吃音の症状は常に一定ではありません。体調や心理状態、話す相手、場面(電話、自己紹介など)によって、症状がひどく出る時期と、比較的楽に話せる時期を繰り返す「波がある」のが大きな特徴です。この変動性が、本人を混乱させ、周囲からの理解を得にくくする一因にもなっています。

吃音症の2つの原因

吃音症は、いつ、どのようなきっかけで発症したかによって、大きく2つのタイプに分けられます。

発達性吃音

全吃音者のうち、9割以上を占めるのがこの「発達性吃音」です。多くは、言語能力が急速に発達する2歳から5歳頃の幼児期に発症します。原因はまだ完全には解明されていませんが、以下の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

体質的要因
遺伝的な要素や、生まれ持った気質。

 

発達的要因
言語能力や運動能力の発達の過程における、脳機能の何らかのアンバランス。

 

環境要因
周囲の環境や、心理的なストレスが発症のきっかけとなったり、症状を悪化させたりすることがあります。吃音を厳しく指摘されたり、からかわれたりした経験が、症状を固定化させてしまうこともあります。

 

大切なのは、親の育て方やしつけが直接の原因ではないということです。

獲得性吃音

それまで問題なく話せていた人が、成人してから何らかの原因で吃音を発症するケースで、非常に稀なタイプです。

神経原性吃音
脳梗塞や脳出血、頭部外傷、パーキンソン病といった、脳の損傷や神経疾患が原因で発症します。

 

心因性吃音
非常に強い精神的ショックや、心的外傷(トラウマ)がきっかけとなって、突然発症します。

 

吃音症の診断と治療・改善アプローチ

「自分の話し方は、もしかして吃音症かもしれない」と感じたとき、どこに相談し、どのような治療や改善方法があるのでしょうか。

診断はどこで受けられる?

吃音症の診断や相談は、言語聴覚士(ST)という、話す・聞く・食べる、といったコミュニケーション機能全般のリハビリテーションを専門とする国家資格者がいる機関で行うのが一般的です。言語聴覚士は、主に以下のような場所に在籍しています。

    • 大学病院や総合病院のリハビリテーション科
    • 耳鼻咽喉科
    • 地域の保健センター
    • 吃音症を専門とする民間のクリニックやカウンセリングルーム

 

治療の目標:QOL(生活の質)の向上

大人の吃音症の場合、「吃音を完全になくす(完治させる)」ことだけを目標にするとは限りません。むしろ、吃音と上手に付き合いながら、話すことへの不安や恐怖を和らげ、より楽に、自分らしくコミュニケーションが取れるようになること、つまりQOL(生活の質)の向上を目標とすることが多いです。言語聴覚士などが行うアプローチには、主に以下のようなものがあります。

直接法(流暢性形成法)
話し方そのものに働きかけ、より楽になめらかに話すためのテクニック(呼吸法、やわらかな発声など)を練習します。

 

直接法(吃音緩和法)
吃音を完全になくすのではなく、「どもっても良い」というスタンスで、どもるときの心身の緊張を和らげ、楽にどもれるようになることを目指します。

 

間接法(心理的アプローチ)
吃音に対する考え方や感情に焦点を当てます。認知行動療法などを用いて、「どもってはいけない」といった否定的な考え方の癖を修正し、話すことへの不安や恐怖心を軽減していきます。

 

吃音症のある方の仕事での悩みと対策

吃音症のある方にとって、仕事の場面、特に発話を求められる状況は、大きなストレスや困難を伴うことがあります。

電話応対やプレゼンなど仕事での悩み

多くの吃音当事者が、仕事で特に困難を感じる場面として、以下のような状況を挙げます。

電話応対
相手の顔が見えず、即座の応答が求められるため、緊張が高まりやすい。「もしもし、株式会社〇〇の田中です」といった決まったフレーズや、自分の名前が特に言いにくい。

 

自己紹介や朝礼での発言
大勢の前で、決まった内容を話さなければならないというプレッシャーから、言葉が出にくくなる。

 

プレゼンテーションや会議での発言
準備してきた内容が、緊張で頭から飛んでしまったり、言葉が詰まってしまったりする。

 

上司への報告・連絡・相談
急な報告を求められたり、簡潔に説明しなければならない場面で、焦って言葉が出なくなる。

 

働きやすくなるための環境調整(合理的配慮)

こうした困難は、本人の努力だけで解決するものではありません。職場の理解を得て、少し環境を調整してもらう(合理的配慮を求める)ことで、働きやすさが大きく改善されることがあります。

電話応対
一次対応は他の人に代わってもらい、用件を聞いてから折り返す形にする。メールやチャットでのやり取りを基本にさせてもらう。

 

会議・プレゼン
事前に資料を配布させてもらう。発表内容を読み上げる形でも良いことにしてもらう。発言の際に、少し時間をかけても待ってもらう。

 

報告・連絡
口頭だけでなく、報告書や日報など、文書での報告を認めてもらう。

 

周囲への周知
信頼できる上司や同僚に、吃音の特性について伝え、理解を求める。「焦ると余計に言葉が出にくくなるので、ゆっくり待ってもらえると助かります」と具体的に伝えることが大切です。

 

吃音の特性を考慮した仕事選びのポイント

苦手な可能性のある仕事の特徴
電話応対が業務の大部分を占める仕事(コールセンターなど)、即興での発言や交渉が頻繁に求められる仕事(営業職の一部など)。

 

働きやすい可能性のある仕事の特徴
メールやチャットなど、文字でのコミュニケーションが中心の仕事、自分のペースで黙々と取り組める仕事、専門的な知識やスキルが重視される仕事など。

 

(職種例)
Webライター、プログラマー、データ入力、事務職(電話応対が少ない場合)、研究職、設計職など。

 

活用できる支援制度や相談先

仕事に関する悩みは、一人で抱え込まず、専門の支援機関に相談することができます。

ハローワーク(専門援助窓口)
障害のある方のための専門窓口があり、吃音の特性を理解した上で、求人紹介や就職相談に応じてくれます。

 

障害者就業・生活支援センター
就職のことから生活のことまで、幅広く相談できる身近な支援機関です。

 

吃音の当事者団体(セルフヘルプ・グループ)
同じ悩みを持つ仲間と出会い、情報交換をしたり、気持ちを分かち合ったりする場です。

 

障害者手帳と福祉サービス
吃音症は、障害者総合支援法の対象となる「音声機能、言語機能の障害」に該当します。医師の診断に基づき、精神障害者保健福祉手帳を取得できる場合があり、手帳を取得することで、障害者雇用枠での就労や、後述する就労移行支援・就労継続支援といった福祉サービスの利用が可能になります。

 

吃音の悩みを相談できる 就労継続支援B型事業所オリーブ

「吃音のことで、面接に自信がない」「電話応対が必須の仕事が多くて、応募できる求人が見つからない」「まずは、話すことへのプレッシャーが少ない環境で、働くことに慣れたい」そんな思いを抱えている方に、私たち就労継続支援B型事業所オリーブという選択肢があります。

オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、吃音症などの障害のある方が、ご自身のペースを大切にしながら、安心して働ける場所を提供しています。私たちの事業所では、データ入力や軽作業、Web制作の補助など、必ずしも流暢な発話が求められない仕事を中心に提供しています。コミュニケーションは、口頭だけでなく、筆談やチャットツールなど、ご本人が最も楽な方法で行うことができます。

雇用契約を結ばないB型事業所なので、週に1日、1日1時間といったごく短い時間からスタートし、体調や自信に合わせて、少しずつステップアップしていくことが可能です。オリーブは、働くことを通じて、社会参加への自信を取り戻すための「安心できるリハビリの場」です。話すことへのプレッシャーから解放された環境で、あなたの新しい一歩を始めてみませんか。見学や相談はいつでも歓迎しています。ご連絡を心よりお待ちしています。

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