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感覚過敏とは?種類別の特徴と仕事や日常生活でできる対策・対処法

感覚過敏とは?

「オフィスの蛍光灯が眩しくて、すぐに頭が痛くなる」「周りの人の話し声や物音が気になって、仕事に集中できない」「服のタグがチクチクして、一日中不快感が続く」このような、特定の感覚刺激に対して、他の人よりも強く、あるいは苦痛に感じてしまうことはありませんか。もし、こうした感覚の敏感さによって、日常生活や仕事に大きな支障が出ている場合、それは単なる「わがまま」や「我慢が足りない」のではなく、「感覚過敏」という特性が関係しているのかもしれません。この記事では、感覚過敏とは何か、その主な種類と特徴、そして日常生活や職場でできる具体的な対策・対処法まで、分かりやすく解説します。ご自身の特性を正しく理解し、心身の負担を減らしながら、より快適に過ごすためのヒントを見つけていきましょう。

感覚過敏は、特定の病名ではありません。その基本的な概念と、どのような種類があるのかを見ていきましょう。

特定の感覚刺激を過剰に感じ取ってしまう状態

感覚過敏とは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚といった五感から入ってくる情報を、脳が過剰に強く処理してしまうことで、日常生活に困難が生じている状態のことです。多くの人が何とも思わないような、ごくありふれた刺激が、感覚過敏のある方にとっては、耐えがたいほどの苦痛や不快感として感じられます。例えるなら、他の人には「普通の音量」で聞こえている音が、自分にだけ「大音量のスピーカー」で聞こえているような状態です。これは、本人の気持ちの持ちようや、我慢強さの問題では決してありません。脳の感覚情報を処理する機能の、生まれつきの「特性」なのです。

感覚鈍麻(どんま)との関係

感覚過敏とは逆に、刺激を感じにくい「感覚鈍麻」という特性もあります。感覚鈍麻のある方は、痛みや暑さ・寒さなどを感じにくいため、怪我や体調の変化に気づきにくいことがあります。また、より強い刺激を求めて、大きな音を出したり、体を強くぶつけたりといった行動が見られることもあります。感覚過敏と感覚鈍麻は、一人の人が併せ持っていても不思議ではなく、例えば「音には過敏だが、痛みには鈍感」というように、感覚の種類によって異なる現れ方をすることもあります。

感覚過敏の主な種類

感覚過敏は、どの感覚が敏感かによって、いくつかの種類に分けられます。複数の感覚に過敏さを持つ方も少なくありません。

視覚過敏

光や色、形といった、目から入る情報に困難を感じるタイプです。

太陽の光や、室内の蛍光灯、パソコンの画面などが、針のように突き刺さるように感じたり、チカチカして見えたりします。

 

色・形
特定の色や、ストライプなどの幾何学模様、人の多い場所の雑多な情報などを見ると、気分が悪くなったり、めまいがしたりすることがあります。

 

聴覚過敏

音に対して、非常に敏感に反応してしまうタイプです。

大きな音
工事の音や、救急車のサイレン、子どもの泣き声などが、耳をつんざくような轟音に聞こえ、パニックになることがあります。

 

特定の音
時計の秒針の音や、キーボードのタイピング音、他人の咀嚼音など、特定の種類の音が耐えがたいほど気になります。

 

複数の音
複数の人が同時に話しているざわめきの中から、特定の人の声だけを聞き分けることが難しく、非常に疲れてしまいます。

 

触覚過敏

肌に触れるものに対して、強い不快感や苦痛を感じるタイプです。

衣類
特定の素材(ウールなど)の服や、服のタグ、縫い目などが、チクチク、ザラザラして感じられ、着ることができません。

 

人との接触
他人から予期せず触れられると、ビクッとしたり、強い嫌悪感を感じたりします。満員電車などは大きな苦痛となります。

 

その他
ベタベタしたものや、特定の感触(粘土など)に触れることが極端に苦手な場合もあります。

 

味覚・嗅覚過敏

味や匂いに対して、極端に敏感なタイプです。

味覚
特定の食感(ドロドロしたもの、パサパサしたものなど)や、苦味、酸味などを強く感じてしまい、食べられるものが極端に少ない(偏食)ことがあります。

 

嗅覚
人の香水や化粧品、芳香剤、食べ物の匂いなどが、他の人よりも何倍も強く感じられ、気分が悪くなったり、頭痛がしたりします。

 

感覚過敏のセルフチェックリスト

「自分にも当てはまるかもしれない」と感じた方は、以下のチェックリストを参考に、ご自身の感覚について振り返ってみましょう。※これは簡易的なセルフチェックであり、医学的な診断に代わるものではありません。

視覚過敏のチェックリスト

    • □ 室内の蛍光灯が、チカチカして眩しく感じる。
    • □ 晴れた日の日差しが苦手で、サングラスがないと外出がつらい。
    • □ パソコンやスマートフォンの画面を長時間見ていると、ひどく疲れる。
    • □ 人混みや、物がたくさんある場所に行くと、情報が多すぎて気分が悪くなる。
    • □ 細かい文字や、白黒のコントラストが強いものを見るのが苦手だ。

 

聴覚過敏のチェックリスト

    • □ 突然の大きな音(ドアが閉まる音など)に、心臓が飛び出るほど驚く。
    • □ 時計の秒針の音や、冷蔵庫のモーター音など、他の人が気づかないような小さな音が気になる。
    • □ 複数の人が話していると、会話の内容が頭に入ってこない。
    • □ 映画館やイベント会場など、音の大きい場所が苦手だ。
    • □ ドライヤーや掃除機の音が、うるさくて耐えられない。

 

触覚過敏のチェックリスト

    • □ 服のタグや縫い目が気になり、切らないと着られない。
    • □ 特定の素材(セーターなど)の服は、肌触りが不快で着ることができない。
    • □ 人に軽く触れられたり、髪を触られたりするのが苦手だ。
    • □ 雨やシャワーが肌に当たる感覚が、痛いと感じることがある。
    • □ 絆創膏を貼ったり、湿布を貼ったりすることが苦痛だ。

 

味覚・嗅覚過敏のチェックリスト

    • □ 食べ物の好き嫌いが極端に多く、食べられるものが限られている(偏食)。
    • □ 複数の食材が混ざった料理が苦手だ。
    • □ 他の人の香水や柔軟剤の匂いで、気分が悪くなることがある。
    • □ 電車やバスの中の、様々な匂いが混じった空気が苦手だ。
    • □ 苦手な匂いを嗅ぐと、頭痛や吐き気がする。

 

感覚過敏の原因と相談先

感覚過敏は、なぜ起こるのでしょうか。その原因と、悩んだ時に相談できる場所について解説します。

主な原因は脳機能の偏りや心身の状態

感覚過敏の根本的な原因は、脳の感覚情報を処理する機能の、生まれつきの偏りにあると考えられています。特に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)といった発達障害の特性の一つとして、感覚過敏が現れることが非常に多くあります。また、もともと過敏さの素質がある人が、精神的なストレスや、身体的な疲労、睡眠不足といった心身の不調をきっかけに、症状が強く現れるようになることもあります。その日の体調によって、過敏さの程度が変動することも珍しくありません。

感覚過敏について相談・受診できる場所

感覚過敏の悩みや、その背景に発達障害があるかもしれないと感じた場合、以下の専門機関に相談することができます。

発達障害者支援センター
各都道府県・指定都市に設置されている専門機関です。発達障害に関する様々な相談に応じており、情報提供や、適切な医療機関への紹介などを行ってくれます。

 

精神科・心療内科
特に、発達障害の診断や治療を専門としているクリニックに相談することで、感覚過敏の背景にある原因を明らかにしたり、症状を和らげるためのアドバイスを受けたりできます。

 

作業療法士のいる医療機関
感覚過敏へのアプローチとして「感覚統合療法」というリハビリテーションがあり、これを行うのが作業療法士です。専門的なサポートを受けられる場合があります。

 

市区町村の障害福祉窓口
地域の相談窓口として、利用できる福祉サービスの情報などを提供してくれます。

 

仕事でできる感覚過敏への対策・対処法

感覚過敏は、職場の環境によって大きな影響を受けます。ここでは、仕事の場面でできる具体的な対策を、種類別にご紹介します。これらは、職場に「合理的配慮」として相談することも可能です。

視覚過敏の対策

    • 照明の調整 : デスクの照明を暖色系のものに変えてもらう、間接照明にしてもらう、あるいは一部の蛍光灯を消してもらうなどの相談をしてみましょう。
    • 座席の配慮 : 窓際の直射日光が当たる席や、照明の真下の席を避けて、比較的暗い場所へ移動させてもらいましょう。
    • PC・ツールの工夫 : PCの画面の輝度を下げる、ブルーライトカットのフィルターやメガネを使用する、資料の紙を白黒反転印刷してもらう、などの工夫が有効です。
    • サングラス等の着用 : 業務に支障のない範囲で、色の薄いサングラスや遮光眼鏡の着用を許可してもらうことも、有効な対策です。

 

聴覚過敏の対策

    • 耳栓・イヤーマフの活用 : 集中したい作業の時間だけでも、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンやヘッドホン、耳栓、イヤーマフなどの使用を許可してもらいましょう。
    • 座席の配慮 : 電話の音やコピー機の音が頻繁にする場所、人の往来が激しい通路側などを避け、静かな角の席などに移動させてもらうと効果的です。
    • コミュニケーションの工夫 : 口頭で話しかけられるのが苦手な場合、チャットやメールでの連絡を基本にしてもらうよう、チーム内でルールを共有してもらうことも有効です。

 

触覚過敏の対策

    • 服装の工夫 : 制服がある職場の場合、肌触りの良い素材のインナーを着用することを許可してもらったり、素材の異なる制服を選ばせてもらったりするなどの配慮を相談してみましょう。私服の場合は、自分が最も快適だと感じる素材(綿など)の服を選びましょう。
    • 備品の工夫 : 静電気が起きにくい椅子に変えてもらう、共有で使う文房具などで苦手な触感のものがあれば、私物の使用を許可してもらう、などの方法があります。

 

味覚・嗅覚過敏の対策

    • マスクの着用 : 職場の匂いがつらい場合、性能の良いマスクを着用するだけでも、ある程度匂いを軽減できます。
    • 座席・休憩場所の配慮 : 強い香水をつけている人の近くの席を避けてもらったり、休憩時間に匂いの少ない別室で食事をとることを許可してもらったりするなどの配慮が考えられます。
    • 食事の工夫 : 昼食は、無理に社員食堂などで食べる必要はありません。匂いや音が気にならない場所で、自分の食べられるものを持参して食べることが、心身の安定につながります。

 

感覚過敏の悩みを相談しながら働ける就労継続支援B型事業所オリーブ

ここまで様々な対策をご紹介しましたが、一般企業の中で、こうした配慮をすべて得るのは難しい場合もあります。「周りに迷惑をかけてしまうのでは」と、自分のつらさを言い出せずに、我慢し続けている方も多いかもしれません。

もしあなたが、感覚過敏の苦痛や悩みによって、働くことに困難を感じているなら、就労継続支援B型事業所オリーブという選択肢があります。オリーブは、雇用契約を結ばず、一人ひとりの特性や体調を最優先に考えながら、自分のペースで働ける場所です。感覚過敏の特性に深い理解を持つスタッフが、あなたが安心して、そして快適に作業に取り組めるよう、環境調整の工夫を一緒に行います。

  • 照明の少ない落ち着いた空間
  • 静かな環境での個別作業
  • 匂いの少ない作業内容の提供
  • あなたのペースに合わせた、こまめな休憩

など、一般企業では難しいような、きめ細やかな配慮が可能です。まずはオリーブという安心できる環境で、心身の負担を減らしながら、「自分にもできる」という自信を取り戻すことから始めてみませんか。

関西エリア(大阪、兵庫、京都、奈良)で、感覚過敏と向き合いながら働ける場所をお探しなら、ぜひ一度、オリーブに見学・ご相談ください。

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