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大人の学習障害(LD・SLD)とは?仕事での困りごとや種類別の特徴・相談先を解説

大人の学習障害(LD・SLD)とは?
「何度確認しても、メールの文章で些細なミスをしてしまう」「会議の資料を読むのに、他の人より倍以上の時間がかかって内容が頭に入らない」「簡単な計算や売上の集計が、なぜかとても苦手」このような困難に対して、「自分が怠けているからだ」「努力が足りないせいだ」と、一人で悩み、自分を責め続けていませんか。その「なぜか、うまくいかない」という困難さの背景には、もしかしたら「学習障害(LD・SLD)」という、生まれつきの脳機能の特性が関係しているかもしれません。この記事では、近年注目されている「大人の学習障害」とは何か、その主な種類と特徴、仕事で直面しがちな困りごと、そして頼れる相談先まで、分かりやすく解説していきます。ご自身の特性を正しく理解し、あなたに合った働き方を見つけるための第一歩として、ぜひお役立てください。
学習障害は、決して珍しいものではなく、その特性を抱えながら社会で活躍している人は大勢います。まずは、その基本的な定義について理解しましょう。
知的な遅れはないのに特定の学習が困難な状態
学習障害(LD/SLD)とは、全般的な知的発達に遅れはないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」といった、特定の分野の学習や使用に著しい困難を示す、神経発達障害(発達障害)の一つです。その原因は、本人の努力不足や、家庭環境などによるものではなく、脳機能の生まれつきの偏りにあると考えられています。視覚や聴覚の障害、あるいは教育環境が直接の原因となるものでもありません。見た目では分かりにくいため、周囲から「怠けている」「やる気がない」と誤解され、つらい思いをすることが少なくありません。
大人になってから診断されるケースも
学習障害の特性は生まれつきのものですが、大人になって社会に出てから、初めてその困難さが顕著になり、診断に至るケースが増えています。子どもの頃は、本人の多大な努力や、親や先生のサポートによって、困難がそれほど目立たなかったり、「勉強が苦手な子」として見過ごされたりすることがあります。しかし、社会人になると、メールや報告書の作成、マニュアルの読解、データ分析など、読み書き計算の能力がより複雑な形で求められるようになります。そのため、これまで何とかカバーしてきた苦手さが表面化し、「どうして自分だけできないんだろう」と悩み、医療機関を受診するのです。
うつ病などの二次障害につながることも
学習障害のある方は、子どもの頃から、努力しているにもかかわらず、周囲から「なまけている」「やる気がない」と叱責されたり、からかわれたりといった、否定的な経験を積み重ねてきていることが少なくありません。その結果、自尊心がひどく傷つき、自己肯定感が低くなってしまいます。こうした経験が積み重なることで、うつ病や不安障害といった「二次障害」を引き起こしてしまうことがあります。大人になって診断を受けることは、こうした二次障害を防ぎ、自分を肯定的に捉え直すきっかけにもなります。
学習障害の主な種類と症状・特徴
学習障害は、困難が現れる分野によって、主に3つのタイプに分けられます。複数のタイプを併せ持つ方もいます。
読字障害(ディスレクシア):読むのが苦手
文字や文章を読むことに著しい困難があるタイプです。
【仕事での困りごとの例】
-
- メールやマニュアル、企画書などを読むのに非常に時間がかかる。
- 文字を一つひとつ拾って読むため、文章全体の意味を理解するのが難しい。
- 「め」と「ぬ」、「わ」と「ね」など、形の似た文字を読み間違える。
- 行を飛ばして読んだり、同じ行を何度も読んでしまったりする。
書字表出障害(ディスグラフィア):書くのが苦手
文字や文章を書くことに著しい困難があるタイプです。
【仕事での困りごとの例】
-
- 会議の議事録やメモを、話すスピードについていって書くことができない。
- 「お」と「を」、「は」と「わ」など、助詞や同音異義語の使い分けをよく間違える。
- 鏡文字になったり、文字の形や大きさがバラバラになったりする。
- 頭の中では考えがまとまっているのに、文章として書き出すことが非常に苦手。
算数障害(ディスカリキュリア):計算や推論が苦手
数の概念の理解や、計算、論理的な推論に著しい困難があるタイプです。
【仕事での困りごとの例】
- 簡単な暗算や、レジでの金銭の計算が苦手。
- 数字の位を間違えたり、数字を書き写す際にミスをしたりする。
- グラフや図表のデータを読み解くのが難しい。
- 在庫管理や予算作成など、数量的な見通しを立てることが苦手。
学習障害の診断と治療
「もしかしたら自分も…」と感じた場合、どこで相談・診断を受けられ、どのような対処法があるのでしょうか。
診断はどこで受けられる?
大人の学習障害の診断は、主に精神科・心療内科、神経内科、高次脳機能障害の専門外来などで行っています。事前に「大人の発達障害の診断や検査を行っているか」と、電話やホームページで確認することが重要です。
学習障害の診断基準
学習障害の診断は、単一の検査だけで行われるものではありません。医師による詳しい問診、知能検査、そして読み書き計算などの学力検査の結果を総合的に評価して、慎重に判断されます。
- 問診
- 現在の困りごとに加え、子どもの頃の学校の成績など、生育歴を詳しく聞き取ります。
- 知能検査(WAIS-Ⅳなど)
- 全体的な知的能力が平均の範囲内にあることを確認します。同時に、認知機能のバランスを調べ、得意な部分と苦手な部分の差(ディスクレパンシー)を見ます。
- 学力検査
- 読み書きや計算の能力を客観的に測定し、本人の年齢や知能水準から期待されるレベルよりも、著しく低いかどうかを評価します。
これらの結果から、「全般的な知的発達に遅れはないが、特定の学習能力に著しい困難がある」という状態が確認された場合に、学習障害と診断されます。
学習障害の対処法
学習障害は生まれつきの脳機能の特性であり、薬を飲んで「治す」という類のものではありません。そのため、支援は、本人の困難を軽減するための「環境調整」と、苦手な部分を補うための「代替スキルの獲得」が中心となります。
職場での合理的配慮の具体例
職場に障害特性を伝え、配慮を求めることを「合理的配慮」と言います。障害者雇用促進法により、企業には過重な負担にならない範囲で、障害のある人が働きやすくなるような配慮を提供することが求められています。
読字障害(ディスレクシア)のある方へ
- 重要な指示やマニュアルは、口頭での説明に加えて、図やイラストを多く使った資料で補足してもらう。
- 会議の資料を事前に共有してもらい、目を通す時間を確保する。
- 業務に必要な情報を読み上げるテキスト読み上げソフトや、文字を拡大するツールの使用を許可してもらう。
書字表出障害(ディスグラフィア)のある方へ
- 手書きでの報告書作成を避け、PCでの文書作成を基本としてもらう。
- 会議の議事録作成係から外してもらうなど、書字が中心となる業務を調整してもらう。
- 音声入力ソフトや、テンプレート、予測変換機能などのテクノロジー活用を認めてもらう。
算数障害(ディスカリキュリア)のある方へ
- 金銭の計算やデータ集計が伴う業務では、電卓や表計算ソフト(Excelなど)の使用を必須としてもらう。
- 業務マニュアルや指示書に、具体的な数字だけでなく、図やグラフを多く用いて説明してもらう。
- ダブルチェックの体制を整えてもらい、計算ミスが大きな問題に発展しないよう協力してもらう。
代替スキルとしてのテクノロジー活用
近年、学習障害の困難さを補うための便利なテクノロジー(支援技術)が数多く開発されています。
- 読むのが苦手な場合
- スマートフォンのカメラで写した文字を読み上げてくれるアプリや、Webページの内容を音声で聞けるブラウザの拡張機能などを活用しましょう。
- 書くのが苦手な場合
- 話した言葉をリアルタイムで文字にしてくれる音声入力機能は、メモや議事録作成の強力な味方になります。
- 計算が苦手な場合
- 電卓や表計算ソフトはもちろん、レシートを撮影するだけで支出管理ができる家計簿アプリなども役立ちます。
仕事での困りごとと利用できる支援機関
学習障害のある方が、その特性を活かしながら、安心して働き続けるためのポイントと、頼れる支援機関を紹介します。
学習障害のある方が仕事を続けるうえで大切なこと
まず最も大切なのは、ご自身の得意・不得意なことを客観的に理解し、受け入れることです。「苦手なことを、努力だけで克服しよう」と無理をするのではなく、「得意なことでカバーする」「苦手なことは、ツールや周りの助けを借りる」という発想に転換することが重要です。その上で、自分の特性に合った職種や職場環境を選ぶことが、安定した就労につながります。
ハローワーク
全国のハローワークには、障害のある方のための専門援助窓口が設置されています。学習障害の特性を理解した専門の職員が、キャリアカウンセリングや、障害に理解のある企業の求人紹介、面接の練習など、きめ細やかなサポートを提供してくれます。
障害者就業・生活支援センター
就職に関する支援と、日常生活における支援を一体的に行ってくれる、地域に密着した身近な相談機関です。就職活動のサポートだけでなく、就職後に職場で困ったことが起きた際の相談や、体調・金銭管理といった生活面の相談にも乗ってくれます。
就労移行支援事業所
一般企業への就職を目指す障害のある方が、最長2年間、職業訓練や就職活動のサポートを受けられる福祉サービスです。パソコンスキルの習得や、ビジネスマナー、コミュニケーション訓練のほか、企業での実習を通じて、自分に合った仕事を見つける手助けをしてくれます。
読み書きや計算の苦手さを相談できる 就労継続支援B型事業所オリーブ
「自分の特性は分かったけれど、すぐに企業で働くのは自信がない」「読み書きや計算が少ない仕事で、まずは働くことに慣れたい」そんなふうに感じている方には、私たち就労継続支援B型事業所オリーブという選択肢があります。
オリーブは、大阪、兵庫、京都、奈良の関西エリアで、障害のある方がご自身のペースを大切にしながら、安心して働ける場所を提供しています。
学習障害のある方にとって、オリーブは以下のような点で安心して働ける環境です。
- 業務内容の工夫:仕事の指示は、文書だけでなく、写真や見本を見せながら丁寧に行います。複雑なマニュアルの読解は必要ありません。
- 作業の選択肢:データ入力、シール貼り、部品の組み立てといった軽作業が中心で、読み書きや計算が苦手な方でも、安心して取り組める仕事が多くあります。
- 自分のペースで:雇用契約を結ばないため、週に1日、1日1時間といった短時間から利用を開始できます。スピードよりも、一つひとつを丁寧に行うことを大切にしています。
自分の苦手なことに過度にストレスを感じることなく、得意なことを活かしながら、働く自信と生活のリズムを取り戻す。オリーブは、そんなあなたの「社会への第一歩」を全力で応援します。まずはお気軽に見学・ご相談ください。