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聴覚過敏とは?症状や原因・仕事中にもできる対処法や治療について解説

聴覚過敏の症状・特徴

「周りの人には平気な音が、自分だけひどく不快に聞こえる」「特定の音が頭に響いて気分が悪くなる」といった経験はありませんか。もしかしたら、それは「聴覚過敏」の症状かもしれません。聴覚過敏とは、多くの人が気にならない日常の音に対し、耐えがたいほどの苦痛を感じる状態です。この記事では、聴覚過敏の具体的な症状や原因、日常生活や仕事でできる対策、そして専門機関での治療法について、客観的な情報に基づき分かりやすく解説します。この記事を読むことで、聴覚過敏への理解が深まり、ご自身や周りの方が抱える悩みを軽くするための具体的なヒントが見つかるはずです。一人で抱え込まず、適切な対処法を知り、より快適な毎日を送るための一歩を踏み出しましょう。

特定の音や大きな音が不快に聞こえる

聴覚過敏は、単に「聴力が良い」というわけではなく、音に対して著しい不快感や苦痛を伴う状態を指します。代表的な症状は、特定の音や大きな音に対して強い苦痛を感じることです。他の人には問題ない音量が、まるで大音量で聞こえたり、音が歪んだり、頭に突き刺さるように感じられたりします。

感じ方には個人差が大きく、以下のような表現で訴えられることがあります。

  • 音が割れて聞こえる
  • 音が頭の中で反響する
  • 金属音や甲高い音が耳に突き刺さるように痛い
  • 雑音の多い場所だと、全ての音が同じ大きさで聞こえて気分が悪くなる

人によって苦手な音は様々ですが、一般的に以下のような音が挙げられます。

不快に感じやすい音の例

生活音
食器がぶつかる音、掃除機のモーター音、ドアの開閉音、キーボードのタイピング音

 

人の声
子供の甲高い声、特定の人の話し声、大勢の人の雑談

 

公共の場の音
駅のアナウンス、電車の走行音、スーパーのレジの音、救急車のサイレン

 

自然の音
セミの鳴き声、激しい雨音、強風の音

 

これらの音は日常生活にあふれているため、聴覚過敏の症状がある方にとっては、自宅ですら心から休まることが難しいと感じるケースも少なくありません。

聴覚過敏のセルフチェックリスト

ご自身やご家族が聴覚過敏かもしれないと感じたら、以下の項目を確認してみましょう。これは医学的な診断に代わるものではありませんが、ご自身の状態を客観的に理解し、専門家へ相談する際の参考になります。

チェック項目 はい いいえ
食器の「カチャカチャ」という音がひどく気になる
子供の甲高い声や泣き声を聞くと、頭が痛くなる
掃除機やドライヤーの音が我慢できない
大勢の人が話している場所に行くと、ひどく疲れる
映画館やコンサートホールの大きな音が苦痛に感じる
駅のアナウンスや電車の警笛が耳に突き刺さるように聞こえる
キーボードを叩く「カチカチ」という音が気になって集中できない
レジ袋の「ガサガサ」という音が不快に感じる
上記のような音によって、めまいや吐き気を感じることがある
音が原因で、外出をためらったり、人付き合いを避けたりすることがある

「はい」が多く当てはまる方は、聴覚過敏の可能性があります。専門家への相談をご検討ください。

聴覚過敏が原因で起こる頭痛やめまいなどの二次的症状

聴覚過敏は、耳の不快感だけでなく、様々な身体的・精神的な症状を引き起こすことがあります。不快な音を聞き続けることが強いストレスとなり、心身の自動的な調節機能を担う自律神経のバランスが乱れることが一因と考えられています。具体的には、以下のような二次的な症状が現れることがあります。

聴覚過敏に伴う主な身体・精神症状

身体症状

    • 頭痛、偏頭痛
    • めまい、ふらつき
    • 吐き気、嘔吐
    • 動悸
    • 耳鳴り
    • 肩や首の慢性的なこり
    • 極度の疲労感

 

精神症状

  • 集中力の低下
  • イライラ、不安感
  • パニック発作
  • うつ状態

これらの症状は、日常生活や社会生活に大きな支障をきたす可能性があります。例えば、職場での電話の音や同僚の話し声が苦痛で仕事に集中できなかったり、外出先での様々な音によって疲弊してしまったりするなど、活動が著しく制限されるケースも少なくありません。

聴覚過敏の主な原因

聴覚過敏がなぜ起こるのか、その原因は一つではなく、複数の要因が関わっていると考えられています。大きく「耳の機能」「脳の機能」「心理的な要因」の3つに分けられます。原因によって対処法も異なるため、ご自身の状態を正しく理解することが大切です。

耳の機能が原因の場合(補充現象など)

耳の最も奥にある「内耳」には、音を電気信号に変換する「有毛細胞」が存在します。この細胞が病気や騒音などによってダメージを受けると、音の強弱をうまく調節できなくなることがあります。この状態は「補充現象(リクルートメント現象)」と呼ばれます。補充現象が起こると、小さな音は聞こえにくい一方、ある一定の音量を超えた途端に急激に音が大きく響くように感じられます。これが聴覚過敏の症状として現れるのです。補充現象を引き起こす代表的な病気には、以下のようなものがあります。

  • 突発性難聴
  • メニエール病
  • 加齢性難聴
  • 騒音性難聴(ロックコンサートや工事現場など強大な音にさらされた後に発症)

これらの病気が疑われる場合は、早期に耳鼻咽喉科を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

脳の機能が原因の場合(発達障害の特性など)

耳から入った音の情報は、電気信号として脳に送られ、そこで「何の音か」「重要な音か」などが処理されます。この脳の情報処理機能に特性がある場合にも、聴覚過敏が起こることがあります。特に、発達障害のある方に感覚過敏の一症状として見られることが少なくありません。

発達障害と聴覚過敏

自閉スペクトラム症(ASD)のある方は、感覚に特有の偏りを持つことが多く、その一つとして聴覚過敏の症状が現れることがあります。これは、脳が必要な音とそうでない音を取捨選択する「フィルター機能」がうまく働かないためと考えられています。その結果、あらゆる音が等しく重要であるかのように聞こえてしまい、人混みや雑音の多い場所では情報過多となり、強い疲労感や混乱を招きます。その他、ADHD(注意欠如・多動症)のある方にも、特定の音に過集中してしまったり、逆に音が気になって注意が散漫になったりする形で聴覚過敏が見られることがあります。また、うつ病や不安障害、てんかん、片頭痛、脳卒中の後遺症などが聴覚過敏の原因となることもあります。これらのケースでは、耳鼻咽喉科の検査では異常が見つからないことも多くあります。

ストレスなど心理的な要因が原因の場合

身体的な原因がはっきりしないにもかかわらず、聴覚過敏の症状が現れる場合、心理的なストレスが大きく影響している可能性があります。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、交感神経を過剰に優位にさせます。これにより、身体が常に緊張・興奮状態となり、音に対する感受性が異常に高まってしまうことがあります。仕事のプレッシャーや人間関係の悩み、生活環境の急激な変化などが引き金となり、それまで気にならなかった音が急に不快に感じられるようになるのです。また、一度不快だと感じた音に対し、「またあの嫌な音がするかもしれない」という予期不安が生まれることもあります。この不安がさらにストレスとなり、症状を悪化させるという悪循環に陥ることも少なくありません。このような心因性の聴覚過敏の場合、ストレスの原因を特定し、それに対処するためのアプローチが重要になります。

聴覚過敏の治療や対処法

聴覚過敏の症状を和らげ、日常生活の負担を減らすには、原因に応じた専門的な治療と、ご自身でできるセルフケアの両方が大切です。ここでは、具体的な治療法や仕事中にもできる対策を解説します。

原因に応じた専門的な治療

聴覚過敏の症状に悩んだら、まずは専門の医療機関に相談することが第一歩です。原因を特定するためにも、自己判断せずに専門医の診察を受けましょう。

耳鼻咽喉科
突発性難聴やメニエール病など、耳の病気が疑われる場合に受診します。聴力検査などを行い、耳の状態を詳しく調べます。

 

心療内科・精神科
ストレスや発達障害などが背景にあると考えられる場合に受診します。カウンセリングや薬物療法などを通じて、心の問題にアプローチします。

 

治療法は原因によって異なりますが、代表的なものには以下のようなものがあります。

薬物療法
ビタミン剤や血流改善薬、また不安や緊張を和らげるための精神安定剤などが、原因や症状に応じて処方されることがあります。

 

TRT(耳鳴り再訓練療法)
小さな環境音を流すサウンドジェネレーターと専門家によるカウンセリングを組み合わせ、脳が特定の音を苦痛と感じないように慣らしていく訓練法です。耳鳴りの治療法として知られますが、聴覚過敏にも有効な場合があります。

 

認知行動療法(CBT)
専門家とのカウンセリングを通じて、音に対する否定的な考え方の癖(自動思考)や、音を避けようとする行動パターンを見直します。音に対する過剰な不安を和らげ、より現実的で柔軟な捉え方ができるよう働きかける心理療法です。

 

仕事中にできる対策(イヤーマフ・耳栓の活用など)

すぐにできる対策として、不快な音を物理的に遮断したり、和らげたりする方法があります。特に、様々な音が混在する職場環境では、これらのアイテムが有効です。

音を遮る・和らげるアイテム

イヤーマフ
ヘッドホンのような形状で、耳全体を覆って物理的に音を遮断します。遮音性が非常に高いのが特徴で、人の声も聞こえにくくなるため、一人で集中したい作業の時などに適しています。

 

耳栓
手軽に使える最も一般的なアイテムです。ウレタン製やシリコン製など様々な素材があり、遮音性能も製品によって異なります。完全に音を遮断するのではなく、全体の音量を下げる効果が期待できます。

 

デジタル耳栓
ノイズキャンセリング機能により、空調音や機械の作動音といった持続的な環境騒音を選択的にカットしつつ、人の声やアナウンスなどは聞こえるように設計されています。仕事中のコミュニケーションが必要な場面で役立ちます。

 

ノイズキャンセリングイヤホン
デジタル耳栓と同様の機能に加え、音楽を聴くこともできます。周囲に配慮しながら、リラックスできる音楽を聴いて作業に集中したい場合に便利です。

 

職場への相談と合理的配慮

聴覚過敏の症状により業務に支障が出ている場合、職場に相談し、環境調整などの配慮を求めることが大切です。障害者雇用促進法では、事業主に対し、障害のある従業員が働く上での障壁を取り除くための「合理的配慮」の提供が義務付けられています。相談する際は、まず自身の症状(どのような音が、どの程度つらいのか)や、それによって業務上どのような困難が生じているのかを具体的に伝えます。その上で、以下のような配慮が可能か相談してみましょう。

  • 座席の調整:電話やコピー機、出入り口から離れた静かな席へ移動させてもらう。
  • 業務内容の調整:電話応対が多い業務を減らしてもらう、騒がしい場所での作業を免除してもらうなど。
  • 休憩の配慮:体調に応じて別室や静かな場所で休憩を取ることを許可してもらう。
  • 指示伝達の工夫:口頭での指示と合わせて、チャットやメールなど文字情報で伝えてもらう。
  • ツールの使用許可:イヤーマフや耳栓などの使用について、職場のルールとして正式に許可をもらう。

上司や人事担当者に相談しにくい場合は、社内の産業医や保健師、障害者職業生活相談員に相談することも有効です。

日常生活でできるセルフケア

ストレスは聴覚過敏の症状を悪化させる大きな要因です。日頃から意識的にリラックスする時間を作り、心と体の緊張をほぐすことが症状のコントロールにつながります。

リラックスできる方法を見つける
深呼吸や瞑想、ぬるめのお風呂での入浴、アロマテラピー、ウォーキングなどの軽い運動、心地よい音楽を聴く、趣味に没頭するなど、自分に合った方法を見つけましょう。

 

こまめな休息
疲れたと感じたら無理をせず、静かな環境で休息をとることを心がけましょう。音の刺激から離れる時間を持つことが重要です。

 

外出の工夫
混雑する時間や場所を避けて行動計画を立てる、予め目的地の音環境を調べておくなど、音の刺激を予測し、コントロールすることも有効です。

 

自分の心と体の声に耳を傾け、セルフケアを優先することが、症状の改善につながります。

シンボルマークの活用

自分の状態を言葉で説明するのが難しい場合や、周囲に理解を求めたい時にシンボルマークが役立ちます。

耳マーク
一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が定める、聞こえが不自由なことを表すマークです。このマークを身につけている人には、ゆっくり、はっきり話すなどの配慮が求められますが、聴覚過敏の方が「大きな声で話されることを避けたい」という意図で使うこともできます。

 

ヘルプマーク
外見からは分かりにくい障害や病気のある人が、周囲に配慮や援助を必要としていることを知らせるためのマークです。東京都が作成し、全国の自治体で普及が進んでいます。カバンなどにつけて使用します。

 

これらのマークは、あなたの「困っている」状況を視覚的に伝え、周囲の理解を得るための一助となります。無理に我慢せず、こうしたツールを活用することも検討してみましょう。

聴覚過敏の悩みを相談しながら働ける就労継続支援B型事業所オリーブ

聴覚過敏の症状があると、「周りに迷惑をかけるのではないか」「仕事に集中できないのでは」といった不安から、働くこと自体をためらってしまうかもしれません。そのような時は、一人で悩まずに専門の支援機関に相談することをおすすめします。私たち「就労継続支援B型事業所オリーブ」は、障害や心身の不調を抱える方々が、ご自身のペースで無理なく働ける場所を提供しています。オリーブでは、利用者さん一人ひとりの特性や体調に合わせた個別支援計画を作成し、きめ細やかなサポートを行っています。

例えば、聴覚過敏の症状がある方には、以下のような配慮が可能です。

  • 比較的静かな作業スペースの提供
  • イヤーマフや耳栓の着用許可
  • 体調に合わせた休憩の取得
  • 短時間からの利用開始
  • 音の少ない作業内容の提案

経験豊富な支援員が常駐しており、仕事のことはもちろん、日常生活での悩みについても気軽に相談できる環境が整っています。まずは見学や相談だけでも大歓迎です。安心して働ける環境で、社会とのつながりを見つける一歩を、オリーブで踏み出してみませんか。お気軽にお問い合わせください。

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