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【発達障害】取得できる障害者手帳の種類やメリット・申請方法を解説

発達障害の方が取得できる障害者手帳は2種類

発達障害の診断を受け、「今後の生活や仕事のために、障害者手帳を取得した方が良いのだろうか」と悩んでいる方や、そのご家族は少なくありません。「手帳を持つことで、周りの目が変わってしまうのでは」「どんなサービスが受けられるのか、具体的にイメージが湧かない」「申請は面倒なのでは?」など、様々な疑問や不安が浮かぶことでしょう。障害者手帳は、決して「障害者である」というレッテルではありません。むしろ、あなたが社会の中でより安心して、自分らしく生活し、働くための様々なサポートを受けるための「パスポート」のようなものです。この記事では、発達障害のある方が取得できる障害者手帳の種類から、取得による具体的なメリット・デメリット、詳細な申請・更新方法まで、公的な情報に基づき分かりやすく丁寧に解説します。また、手帳がない場合でも利用できる支援サービスも網羅していますので、ご自身にとって最適な選択をするための一助として、ぜひ最後までお読みください。

発達障害のある方が取得の対象となる可能性のある障害者手帳は、「精神障害者保健福祉手帳」と「療育手帳」の2種類です。どちらの手帳の対象となるかは、知的障害(知的発達症)を伴うかどうかによって主に異なります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、統合失調症やうつ病、てんかんなどの精神疾患のほか、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)といった発達障害も対象に含まれます。この手帳は、精神疾患や発達障害が原因で、日常生活や社会生活に長期的な制約がある場合に交付されます。重要なのは、単に診断名があるかどうかだけでなく、その特性によって「生活の中でどれくらいの困難さが生じているか」という視点で総合的に判断される点です。障害の程度に応じて1級から3級までの等級があり、数字が小さいほど障害の程度が重いことを示します。

3級
精神障害の状態が、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、または日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のものである。例えば、基本的な身の回りのことは一人でできるものの、対人関係の構築や計画的な業務の遂行に困難があり、働く上で周囲の支援が必要な状態などが想定されます。障害者雇用で働く方の多くがこの等級に該当します。

 

2級
精神障害の状態が、日常生活が著しい制限を受けるか、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものである。例えば、一人での外出が困難で付き添いが必要であったり、金銭管理や服薬管理に日常的な援助が必要であったりする状態です。

 

1級
精神障害の状態が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものである。例えば、他者の援助なしには食事や入浴、着替えといった身辺の清潔保持ができず、常時介護が必要な状態を指します。

 

療育手帳

療育手帳は、知的機能の発達に遅れがあり、日常生活に支援が必要であると判定された方(知的障害者)に交付される手帳です。判定は、18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所といった専門機関で行われます。発達障害と知的障害を併せ持つ(併存する)方も少なくなく、その場合は療育手帳の対象となります。また、それぞれの基準を満たせば、精神障害者保健福祉手帳と療育手帳の両方を取得することも可能です。

療育手帳制度は国の法律ではなく、各自治体の要綱に基づいて運営されているため、障害程度の区分(例:A重度、B中度・軽度など)や手帳の名称、受けられるサービス内容が地域によって異なります。例えば、東京都では「愛の手帳」、埼玉県では「みどりの手帳」と呼ばれています。お住まいの地域の制度を確認することが大切です。

障害者手帳の申請・取得ができないケース

障害者手帳は、希望すれば誰でも取得できるわけではありません。ここでは、申請しても取得できない代表的なケースについて解説します。

手帳の認定基準を満たしていない場合

申請をしても、審査の結果、手帳の交付が認められない場合があります。

初診日から6ヶ月経過していない
精神障害者保健福祉手帳の場合、原則として「その精神疾患での初診日から6ヶ月以上経過していること」が申請の条件となります。これは、症状が一時的なものではなく、慢性的・持続的なものであることを確認するために必要な期間です。そのため、発達障害の診断を受けてから日が浅い場合は申請できません。

 

生活上の制約が基準に満たない
診断名がついていても、日常生活や社会生活における制約の程度が比較的軽く、各手帳の認定基準に満たないと総合的に判断された場合は、非該当となることがあります。

 

発達障害の診断が確定していない「グレーゾーン」の場合

発達障害の特性は見られるものの、診断基準を完全には満たさないため、確定診断が下りていない状態は、一般に「グレーゾーン」と呼ばれます。この状態では、医師が手帳申請に必要な診断書を作成することが難しいため、原則として障害者手帳の申請・取得は困難です。もし、ご自身の困りごとが大きく、確定診断や手帳取得を考えるのであれば、医師に現状を正確に伝えるための準備が有効です。日常生活や仕事での困りごとを具体的に記録したメモや、子どもの頃の通知表、職場の評価など、客観的な資料を持参すると、診察の助けになります。また、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談することも一つの方法です。

発達障害の方が障害者手帳を取得するメリット・デメリット

障害者手帳を取得することには、様々なメリットがある一方、人によってはデメリットと感じられる側面もあります。両方を正しく理解した上で、ご自身の状況と照らし合わせて判断することが重要です。

メリット:経済的負担の軽減と就労・生活の安定

障害者手帳を取得する最大のメリットは、経済的な負担を軽くし、社会生活上の困難を和らげるための様々な支援を受けられる点です。

税金の控除・減免

本人または生計を同じくする扶養者が、所得税や住民税の「障害者控除」を受けることができます。障害の等級により控除額は異なり、例えば所得税の場合、年間で27万円(障害者)または40万円(特別障害者)が所得から控除されます。このほか、相続税や贈与税の控除、自動車税などの減免(条件あり)といった税制優遇措置があります。

公共料金・施設利用料などの割引

JRや私鉄、バス、タクシーといった公共交通機関の運賃割引が受けられます。また、携帯電話会社の障害者割引プランや、NHK放送受信料の減免制度を設けている事業者もあります。美術館や博物館、映画館などの入場料も割引になることが多く、経済的な負担を気にせず文化・娯楽活動に参加しやすくなります。

就職・就労における大きなサポート(障害者雇用枠)

働く世代にとって、手帳を持つことの最も大きなメリットの一つが「障害者雇用枠」への応募が可能になることです。障害者雇用枠で採用されると、企業から障害特性に応じた「合理的配慮」を受けながら働くことができます。

合理的配慮の例:

  • 業務指示を口頭だけでなく、メモやチャットでも伝えてもらう
  • 騒がしい場所が苦手なため、静かな座席にしてもらう
  • 一度に多くの業務をこなすのが苦手なため、業務量を調整してもらう
  • 定期的に上司と面談の機会を設け、困りごとを相談できるようにする

このような配慮により、自分の能力を発揮しやすく、安定して長く働き続けられる可能性が高まります。

障害福祉サービスの利用

日常生活や社会生活で困難がある場合に、ホームヘルプサービスやグループホーム、移動支援といった、個々のニーズに応じた障害福祉サービスを利用しやすくなります。

デメリット:手続きの手間や心理的な側面

手帳を所持していることは、自ら提示しない限り他人に知られることはありません。しかし、人によっては以下のような点をデメリットと感じるかもしれません。

申請・更新の手間と費用
申請には、役所での手続きや、医師に診断書を書いてもらうといった手間と時間がかかります。診断書の作成には、医療機関によりますが数千円から1万円程度の費用が必要です。また、手帳には有効期限があり、精神障害者保健福祉手帳の場合は2年ごとに更新手続きが必要です。

 

心理的な抵抗感
「障害者」という言葉の響きから、手帳を持つことに心理的な抵抗を感じる方も少なくありません。しかし、これは「障害者のレッテル」ではなく、あくまで「必要な支援を受けるためのツール(手段)」と捉えることも大切です。

 

生命保険などへの影響
一部の民間の生命保険や住宅ローンでは、手帳を持っていることで加入の条件が厳しくなったり、加入自体が難しくなったりする場合があります。ただし、近年は持病や障害のある方向けの「引受基準緩和型保険」なども増えており、選択肢は広がっています。

 

障害者手帳の申請・更新の方法

ここでは、実際に手帳を申請・更新する際の、具体的な流れとポイントを解説します。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

  1. 市区町村の窓口で申請書類を入手:お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で、申請に必要な書類一式をもらいます。自治体のウェブサイトからダウンロードできる場合も多いです。
  2. 主治医に診断書の作成を依頼:精神科の初診日から6ヶ月以上経過した時点で、主治医に診断書の作成を依頼します。その際、日常生活や仕事で困っていることを具体的にメモして医師に渡すと、実態に即した診断書を書いてもらいやすくなります。
  3. 必要書類を窓口に提出:以下の書類を揃えて、市区町村の窓口に提出します。
    • 申請書
    • 診断書(手帳用)
    • 本人の顔写真(縦4cm×横3cmが一般的)
    • マイナンバーカードなどの本人確認書類
  4. 審査・交付:提出された書類をもとに、都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターで審査が行われます。申請から交付までは、2〜3ヶ月程度かかるのが一般的です。交付が決定すると通知が届き、後日窓口で手帳を受け取ります。

療育手帳の申請方法

  1. 市区町村の窓口に相談・申請:まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、申請手続きを開始します。
  2. 判定の実施:窓口の案内に従い、判定の予約をします。18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所で、発達検査や知能検査、医師の診察、生活状況の聞き取りなどの判定を受けます。
  3. 審査・交付:判定結果に基づき、自治体で審査が行われ、手帳の交付が決定します。

障害者手帳の更新について

障害者手帳には有効期限があり、継続してサービスを受けるためには更新が必要です。

  • 精神障害者保健福祉手帳:有効期限は交付日から2年間です。有効期限の3ヶ月前から更新手続きが可能なので、早めに準備を始めましょう。
  • 療育手帳:自治体によって異なり、数年ごとに再判定の時期が定められています。

更新を忘れると各種サービスが停止してしまうため、注意が必要です。また、引っ越しをした場合は、新しい居住地の市区町村で住所変更の手続きを忘れずに行いましょう。

手帳がなくても利用できる相談先・支援サービス

発達障害の診断が確定していない「グレーゾーン」の方や、手帳を取得しない選択をした方でも、利用できる支援機関はたくさんあります。一人で悩まず、ぜひ専門家を頼ってください。

発達障害者支援センター

各都道府県・指定都市に設置されている、発達障害のある方とその家族のための専門機関です。保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携し、日常生活の悩みから仕事のことまで、様々な相談に応じてくれます。手帳の有無にかかわらず、無料で利用できます。

障害者就業・生活支援センター

「なかぽつ」の愛称で呼ばれ、障害のある方の「就業面」と「生活面」を一体的に支援してくれる身近な相談窓口です。就職活動の支援だけでなく、金銭管理や体調管理など、安定した職業生活を送るための生活面のサポートもしてくれるのが特徴です。手帳がなくても相談できる場合があります。

就労移行支援事業所

一般企業への就職を目指す障害のある方が、職業訓練や就職活動のサポートを受けられる福祉サービスです。ビジネスマナー研修やPCスキルトレーニング、企業での職場実習などを通じて、働くための準備を整えます。医師の意見書などがあれば、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。

手帳の有無に関わらず働き方の相談ができる就労継続支援B型事業所オリーブ

「すぐに一般企業で働くのは不安」「まずは自分のペースで働くことに慣れるところから始めたい」。そう感じている方は、就労継続支援B型事業所の利用も一つの選択肢です。就労継続支援B型事業所オリーブでは、障害者手帳の有無にかかわらず、医師の診断や意見書などにより、自治体から障害福祉サービスの利用許可が下りれば、利用の相談が可能です。雇用契約を結ばずに働くため、週1日・短時間からでも、ご自身の体調や目標に合わせて働く練習を始めることができます。

手帳を取得するかどうか、そして、どのような働き方を選ぶかは、あなたの人生における大きな決断です。手帳を取得するにせよしないにせよ、あなたが今、働き方について悩んでいるのであれば、その気持ちに寄り添い、一緒に考えてくれる場所があります。オリーブでは、専門の相談員が、一人ひとりの状況や想いを丁寧に伺い、最適な道筋を一緒に考えます。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

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